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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第四章-新たるは欲望の彼方より-
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解除

あるものは鎧に触れ。

あるものは蛇に噛まれ。

そしてまたあるものは一閃の元腐っていく。

いかに軍隊蟻が凶悪で強力だと言っても、体に到達出来なければそんなものまるで意味を持たない。


「おいおい、手塩に掛けたんだぜ?もう少し優しく扱ってくれよ。」


「無理ね。」


ゆっくりと前進しながら蟻を殺す。

重くて走れないのが難点よねこの鎧。

[鍛えればいいんじゃね。]

筋骨隆々美少女なんて嫌よ。

飛びついてくる蟻を刀で切り裂く。

断面から腐食され、落ちていく。

触れられても痛くも痒くもないけど、蟲になんて触られたくないからね。


「ねえおじさん。正直もうぐだぐだよ?今なら見逃してあげるからどっか行ったら?そっちまで行くのも結構めんどいのよ。」


「は。お前がさっき言ったんだぜ。俺は死ぬかもしれないってな。なら試せよ俺に。」


「はあ……。」


退いてくれないみたいなんだけど。

[殺せばいいだろう。奴は孤立狼。殺れば誰もが賞賛するだろうしな。]

そりゃそうなんだけどね。

まあいっか。

これやると筋肉痛になるからやりたくないけど……。


「“攻撃”星四十。全て足へ!」


足に“攻撃”星四十を掛け、それを全て移動に費やす!

鎧の重さを一身に感じながら糸井の前に瞬時に移る。


「お……!ちょっとま―――」


「待たないわよ!」


“多角鋭式六頭霊影刃”を左下から一気に振り上げる。


「いてっ。」


そのまま刃は糸井の右脇腹から左腕にかけて切り裂いた。

腹からは腸が覗き、左腕は完全に落ちた。

なのにどうだ。

糸井が発した言葉は“いてっ”だ。

……究極のドMとか?

[さあな。]


「うっひゃあこりゃ凄い。断面から腐って傷口がどんどん広がっている。腸にも蛇が触れたのかな。腐りはじめてら。はははははははははははは。」


「……確実に変人ね。」


「腕も腐ってるぞ。こりゃ、よっと。」


「っ!」


思わず目を逸らす。

糸井は取り出したナイフで傷口を切りはじめた。

それ以上腐らないように。

当たり前の考えだが、だからってあんな平然と出来ないでしょ普通。

指の先がちょっと切られたとかじゃないのよ?

あーあー……腸まで切ってる。

気持ち悪いわね。


「っとまあこんなもんかね。」


血は滴り芝生をどす赤で染める。

切り取られた肉片も転がっている。


「何にしても、笑顔でやることではないわね。」


「あれ、笑ってた?そりゃ失敬。自傷なんて久しぶりだから可笑しくてな。」


「確かに貴方は可笑しいわね。笑えないけど。」


……“回復”を使おうともしない。

それに斬った時のあの軽さ……。

こいつ“防御”も使わなかったのね。

[変態だな。]


「あはは。はあ。なんで“回復”を使わないか疑問か?」


「ええそうね。けどどうでもいいわ。使わないなら使わないでとっとと倒す。」


刀を振るい蛇を一匹糸井に伸ばす。


「おっと。」


けどあっさり躱された。

……やっぱりさっき受けたのはわざとね。

[その様だ。鍛練が足りんな。]

煩いわよ。


「……もういいか。解明。一重二重三重四重。対象“千からなる死因の共鳴”。並びに“多角鋭式六頭霊影刃”。“解除(エジーリョ)”。」


「え……?」


音が鳴った気がする。

パンッ。

紙袋に空気を入れて潰す様な音。

それを発した元は……鎧と刀?

[……すまん。]


「消えたの?」


「消したんだよ。“解除”は呪文や術式兵装を強制的に消す本の術式兵装さ。」


「あ……れ……。」


あれ……?

地面が近づいた?

視界に多く広がったのは、さっきまでの黒と違い、少し赤い何かが付着した緑。

つまり芝生。


「な……んで?」


顔を上げようとしても上がらない。

同様に手も、足も動かない。

なんか……やたら、眠い。


「すまないな。手と足の腱を切らせてもらった。我が愛しの軍隊蟻によってな。」


「え……?」


頑張って顔を手に向ける。

白い服の袖が赤く染まっている。

多分肘の内側と手首を切られたんだろう。

いつのまに……?

“回復”……使わ、ないと……。


「ああ、因みに“回復”を使っても無駄さ。腱だけじゃなく、周辺の筋繊維もずたずたにした。お前の“回復”がどの程度の物かは知らんが、今の状態で治癒させるのは不可能だろうな。」


「今の状態……?」


「眠いだろ?おまけに、皮膚を突き破られ、内組織にまで損傷が及んでいるのに痛くない。違うか?」


言われてみれば……。

いくら軍隊蟻とはいえ、私にまるで気づかれないまま腱を食い千切られるとは思えない。

……まさか。


「麻酔作用……。」


「御名答。その軍隊蟻達は麻酔作用のある液体を口から分泌する。君は女の子だ。痛みを感じさせないようせめてもの情けさ。」


「く……。」


もう、ダメ。

眠たくて堪らない。


「眠いだろ?寝ろよ。睡眠欲は三大欲求の一つ。抗った所で得はない。それに、眠っちまった方が時は早く過ぎる。」


ニヤニヤしながら近寄ってくる糸井草春。

その顔に不快さを感じながら、私は強制終了した。

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