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3月2日、涼治から赤いのと戦った事を聞いた日。
彼が去った後私は、W.W.Sの本校舎から1km程離れた所にある未成年女子寮に行った。
友人であるテーゼスタに会う為だ。
彼女はまだ7歳ながら、魔力275というかなり優秀な子。
私が7歳の頃は確か100無かった気がする。
「こんにちはテーゼ。入っていいかしら?」
「んー?セナリア?入っていーよー!」
「はいおじゃましまーす。」
許可をとって部屋に入る。
あるのはベッド、その上にある縫い包み、42型テレビ、勉強机、以上。
7歳の女の子の部屋にしてはかなりシンプルな方だろう。
[諸々の事情は省く。以上。]
「はーいテーゼ。ご機嫌いかが?」
「元気だよー!」
「うふふ、その様ね。」
「あのね、今日は攻撃のダイニカを受けたの!」
「へ~。じゃあもう使えるのかな?」
「うん!あのねあのね、せんせーは、えーっとね、ゲンジ?」
「深宮厳迩さんね。」
「そーその人!その人にね、スジがいいって言われたの!凄いでしょー!」
「それは凄い。さすがテーゼね~よしよしー。」
「えへへ。」
あーんもう可愛い!
妹にしたいわ~。
[確かに可愛い。娘にしたい。]
ロリコン悪魔。
[ふ。愛でるだけなのだ。ロリコンではない。]
そのあと、テーゼの話を聞きながらご飯を作り二人で食べた。
そして現在時刻午後八時。
「じゃあそろそろ私は帰るね。」
「もう行っちゃうの?」
う。
そんなうるうるした目で見ちゃダメ……。
[やはり愛でたいな。]
うるさいロリコン。
「ゴメンねテーゼ。ちょっとC.D.Cが担当しなきゃいけない事件が起きたの。明日はちゃんとお話読んであげるから。ね?」
「うー……。分かった。」
「ゴメンね。はいおいで。」
胸に飛び込んで来たテーゼを、広げた腕で抱く。
「お休みテーゼ。貴女にとって、今日の夢が綺麗でありますように。」
頭を撫でながらいつものおまじないを掛ける。
「お休みセナリア。貴女にとって、えーっと、綺麗でありますように!」
「はいありがと。じゃあねテーゼ。ちゃんとシャワーを浴びて、お布団被って寝るんだよ?」
物足りない風なテーゼから離れ、笑顔を見せる。
「うん。ばいばい、お姉ちゃん。」
扉をゆっくり閉め、部屋を後にする。
[良いのか?別段今することもないだろう。]
うん。でも少し纏めたり調べたりしたいから。
[……なら早く帰った方がいい。何やら不穏な空気を感じる。迎えを呼ぶのもいいかもしれん。]
不穏な空気?
[ああ。俺の杞憂かもしれんがな。]
貴方の勘は良く当たるわ。
<芹沢さん。すまないんだけど迎えを寄越してもらえないかしら。>
「<承知しましたお嬢様。>」
さて、じゃあ門に向かうとしましょうか。
寮を出て門に向か……!
「……貴方、誰。」
「は。はははははは。いやはや、自意識過剰だったかな。俺の名前は魔術師なら誰でも知っているかと思ったが。」
暗がりに潜む男。
“魅惑”を纏っているのか、少し輪郭がぼんやりしている。
[気をつけろ。あれは孤立狼の―――]
「糸井草春。知らないか?」
「……いいえ知っているわ。」
魔術師を5人殺して身を隠した孤立狼。
[台詞取られた。]
そんな事どうでもいいわ。
「ふーん。悪いんだが、君を捕縛する。」
「へえ。そういうこと。あの赤いのは貴方の差し金ね?」
「赤いの?……あー、あの出来損ないの事。俺も関わっているが、あんな奴どうでもいいよ。」
芝生を踏む音を鳴らしながらこちらに向かって来る。
「君を捕縛するのはあいつを俺の仲間に引き入れるためさ。」
「……あいつって赤いのじゃないわよね?」
「はははははは、んな訳ねえだろ。あんなもん今すぐにでも殺してやりたいよ。」
「じゃあ誰!」
「どうせ後で会うんだ。早々にネタバレする事はない。無駄話はこれで仕舞いだ。さっさと殺さない程度に殺して君を連れていく。」
……羽音?
目を凝らすと、何処から現れたのか、カブトムシが糸井の周りを飛んでいた。
やる気満々って訳ね。
[既に避けられる状況ではないだろう。全く、杞憂を感じてみたいもんだ。]
愚痴らないで鬱陶しいから。
目の前の面倒に全てを注ぐわよ。
一応ジェイカーさんにメールを送っておこ。
「ははは。行くぞ腐食の王。10分程踊らせてくれ。」
「そのまま地獄で盆踊りでも踊るといいわ。」




