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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第四章-新たるは欲望の彼方より-
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第三地区

先にも言ったが、第三地区には魔術師が多く住んでいる。

W.W.Sに近いから、らしい。

W.W.S内に住める魔術師は、名を冠す者と同化している人か、若しくは教鞭を執れる人だけだならな。

だから中級と呼ばれる様な魔術師は第三地区に集まるって訳だな。

[小堀弘雄は第三地区の三等地、W.W.Sから一番遠い所に居を構えていた訳か。]

ジェイカーさんの言葉を借りるなら、下の上だからな。

それくらいが大概だろうよ。

周辺住民への聞き込みによって、それなりの情報は得られた。

纏めてみよう。

・3月1日、つまり事件当日の夜、何やら腐敗臭の様な物が漂ってきて不快だった

・赤い何かが、小堀弘雄の家から出てくるのを目撃したが、一瞬で消えてしまったので何だったかは不明

・小堀弘雄宅の前に、何やら肉片の様な物が落ちていたが、触れた瞬間消えてしまった

……これだけ見ると、何がなんだかさっぱりだな。

[凡そ人の犯行と思える証拠は何一つ無い。]

赤い何かが犯人の可能性が高いが、何かじゃ何なのか分からないしな。

[まさか“発現”を使った者が……いやそれはないか。]

中の者を具現化する呪文だったっけ。

[そうだ。あれを使えば“ちゃち”な悪魔、天使でもこの世に激しい災厄を齎す。目に見えてその様な戯れ事が起きていないのだ、“発現”が使われたなど可能性の内に入れる事すら戯れ言だ。]

成る程ね。

さて、これからどうしようか。

ジェイカーさんはW.W.S内で情報収集。

セナリア(さん付けは気持ち悪いからやめろと言われた)は自宅でティータイム。

……いやいや待て待て。

よく考えたらティータイムっておかしいだろ。

いや、確かにティータイムは心の浄化という点でかなり大切だ。

でも俺だけ現地で聞き込みっておかしくないですか?

[何と言う事はない。貴様は最下級メンバーなのだからな。]

……そういうもんですか。

納得しにくいが、ま、いいだろう。

改めて……。

→ジェイカーに連絡をつける

 セナリアに連絡をつける

ふむ……やはり、こうだな。

 ジェイカーに連絡をつける

◯セナリアに連絡をつける

言っておくが、疚しい気持ちはまるでない。だから口出しも許さない。

ベリネから、メンバーを呼び出し、セナリア・ベイグラント・サブナクを選択しコール。


「<ベイグラント家長女、セナリア・ベイグラント・サブナクですわ。あら、涼治。>」


さん付け破却させた覚えはないが……。

ま、フレンドリーでいいか。


<どうもセナリア。アフタヌーンティーをお楽しみの所失礼。>


「<構いませんわ。でも、わざわざ連絡を寄越すということは、進展があったのね?そうでないのに私のティータイムを邪魔したというなら、何度腐らせても納得出来ないわよ。>」


<勿論。伊達に最下級メンバーじゃないからな。>


あまり威張る事ではないが。


<ああそうだ、説明するのはいいが、あまり気持ちのいい話じゃない。>


「<安心なさい。伊達に“腐食”を得意にしている訳ではないわ。>」


<そりゃいい。じゃあ手短に話す。事件当日の夜、腐敗臭が漂っていた。被害者宅から、赤い何かが出てくるのを近隣住民が目撃。被害者宅の前に、肉片の様な物が落ちていたが、触った瞬間消えてしまった。と、これが今までに俺が得た情報だ。>


「<成る程。誰がどう考えても、その赤いのが怪しいってのは分かるわね。>」


<ああ。ただ、赤い何かってのじゃ何なのかさっぱりだ。>


「<そうね。人かもしれないし、悪魔かもしれないし、天使かもしれないし。人工兵装かもしれないわね。>」


つまり、まるで断定出来ない訳だな。

[如何せん、情報が少な過ぎる。議論するにしろ、推論するにしろ、真実の内四割を知らねば永久に真実に辿り着く事はない。寧ろ着く先には嘘の塊しか待っていないだろう。]

確かに。


「<もぐもぐ。では、んくっ。次は私が仕入れた情報を貴方に話す番ね。>」


<へ?情報収集してたのか?>


「<当たり前でしょう?貴方だけ忙しく動かせる訳ないじゃない。執事が集めてくれたわ。>」


……自分では動かないのね。


「<先ず、小堀弘雄に恨みを持っている者の存在の可能性について。これは皆無と言っていいわ。波風立てず、他人とはとにかく浅く付き合う人間だったらしいので。>」


<成る程。>


[彼奴が下の上であるのも頷けるという物だ。]

全くだな。

自分を高めたきゃ他人と比べ、競らなきゃだめだ。


「<もぐもぐ。次に、女絡みか否かだけど、まあこれは言うまでもないわね。>」


<ああ。先にいってくれ。>


「<……んくっ。後はそうね、イヴの犯行の可能性も極めて低いわ。あれ程の切れ味を持つイヴとして挙げられるのが、如月薫、田中太一、春日井直太、切裂男、そして出宮真なんだけど、先の四人はちゃんとIFLCに登録されている。>」


<つまり、こんな詰まらない魔術師を殺してW.W.Sとの関係を悪化させる訳がない。ってことか。>


「<良く出来ました。最後の出宮真なんだけど、アレは特殊過ぎて考慮に入れるのが馬鹿らしいわ。だからイヴの犯行じゃない。>」


<じゃあ一般人の可能性が高いか……。>


「<ワレラがやったって線もあるけど、いまだに死体が消えない所を見ると、その可能性も皆無ね。>」


ワレラは殺った死体を、厳密に言えば魂を、“拠り所”と呼ばれる所に送る。

それにより彼らは魂補充を得るのだ。

だからもしワレラが小堀を殺ったのなら、死体が消えないのはおかしいという訳さ。

大体彼らは、罪を犯していない人間をわざわざ殺したりはしないしな。


<オーケー分かった。つまり俺達は真実に一歩近づいた訳だ。>


「<一応聞くけど、その双六は何ますあるのかしら?>」


<さあ?多分百くらいじゃないかな。>


「<記念すべき一歩目ということねおめでたいわ。>」


<正確には二歩目さ。>


一歩目は小堀弘雄の死だからな。


<じゃあ取りあえず俺は一旦W.W.Sに戻―――>


「う……!?」


何だ……これは。

何かが、日常に於ける何かが圧倒的に変化した。

[これは……呪文の類の様だ。]

夜。

今は昼だったのに夜が来たのだ。


「……はあ。何やらいざこざに巻き込まれたっぽ、ってベリネも繋がらない、か。」


[不味いな。これ程大規模な呪文となると、相手はかなりの手練れだぞ。]

……いやいや。

呪文を使ったということは、相手は魔術師だろ?

なら―――

[間抜けめ。ふつふつと発せられるこの殺気に気付かんとは。]

殺気……?

そういえば何かピリピリ―――

[後ろに跳べ馬鹿者!]


「へ、うわっ!?」


衝撃が襲って来た瞬間、“防御”星一を唱えた。

が、勢いを吸収仕切れず俺は背後に投げ出された。

[貴様は私やベレトと同化しているとは言え、見習い魔術師なのだ。受けられるか否かの判断を誤れば死ぬぞ。]


「く……。忠告どうも。けどそれは後にしてくれ。今は大きな問題が目の前に転がってるからな文字通り。」


[ふ。それくらいの口が叩けるなら良しだ。用心して掛かれ。そうすれば、貴様はいきなり手柄を上げることになる。]

……みたいだな。


「ふぅー……ふぅー……。」


目の前に文字通り転がってる赤い何か。

漂う腐敗臭。

そして、息を吐きつつこちらを見ているそれの右手?には、鋭利且つ巨大な赤い刃物。

……間違いない。

コイツは、コイツが小堀弘雄を殺った赤い何かだ。

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