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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第四章-新たるは欲望の彼方より-
33/106

招きしは我が体の末裔

「これで悪魔と天使の種類についての説明も終わりです。」


「ありがとうございました。」


召喚の説明に10分掛けず。

同化の説明に3分掛けず。

種類の説明には30分掛けた。

[1種類ずつ、しっかり説明していたからな。]

重要な事だしそれが普通だろ。


「さて、これで召喚・同化の授業は終了だ。んー、まだ11時か。どうする?このまま召喚するか、それとも昼ご飯を食べますか?」


「俺はどちらでも…、いや、召喚がいいです。」


[それでいい。]

…本当はどっちでも良かったんだが。


「そう言うと思ったよ。OK行こうか。第四室を取っておいた。」


四とはこれまた不吉な数字だな。

[そうでもない。死とはつまり新たな生命の始まりなのだからな。]

…お前が不吉だよ馬鹿。

先行くジェイカーの後ろに付きながら、不吉な悪魔に毒づく。

[召喚する者の名はちゃんと覚えているか?]

勿論。お前を慕う奴なら取りあえずは俺も安心だからな。

間違っても(たが)えるなんてことはしない。

[ははは。いやしかし、W.W.Sに入って5日で名を冠す者を呼ぼうとするとはな。]

いいだろ別に。

強くなるに越したことはない。

いつ何時何が起こるか分からないからな。

[ふ、その意気だ。早く“兵装環装”を覚えろ。そうすれば貴様も私の力をフルに発揮出来る。]

精進するよ。


「さ、着いたよ。此処が第四室だ。」


歩を進め、ジェイカーの隣に立つ。

目の前には鉄の扉だ。

ジェイカーがドアノブに手を掛け引く。

中から冷たい空気が出てくる。

[さながら霊界だなこの中は。]

そうなのか?おっそろしー。


「どうする?私は此処にいようか?」


「えーっと、はいすみません。待っててもらえますか?」


そう言うと思ったと言いたげな顔でクスクス笑うジェイカー。


「いいよ。流石に優等生、怯えなんてからっきしだね。」


「そういう訳じゃないですけど…。ま、もしもの時は頼みます。」


「承知しました。では頑張って。」


「はい。」


手を振るジェイカーを残し、第四室に入り重たい扉を閉める。

…さて、じゃあやりますかね。

[気を引きしめていけ。]

あいよ任せな。


「すぅー…ふー。……よし。」


呼吸を整え、何も無い部屋の壁を見つめる。

……なんで召喚する時こんな鉄の壁で覆われた部屋に入るか、知ってるか?

[さあな。]

名を冠した者を呼び出した奴が殺され、相手に体を乗っ取られた時、そいつが外に出ないようにするためさ。

[それはまた中々面白い話しだな。]

だろ?

だが今回に限っちゃこの部屋の仕様は、俺のためだけに働く。

防音バッチリ。

俺が名を冠した者を呼び出す事を知る奴は、誰もいないって訳さ。


「……更月涼治、いざ参る。招致。」


招きの文句を唱えはじめる。


「序列13、72の一端。我が(めい)に於いて貴方に命ず。その存在は何だ、個に定まるを善しとせよ。最終的に貴方を招く。王よ、その勇姿を我が眼前にて示せ。来い、『ベレト・ソロモン』。」


瞬間的に俺の意識が乖離する。

何から、か。

そんな事はさして問題ではない。


「これは……。」


方々に聳える古城。

馬に繋がれた戦車。

石化した、もしくは石で作られた兵士を模した石像。

それらが今俺の眼前に広がっている。

[それだけではないぞ。眼を凝らせ、貴様が招いた者がいる。]

……。

言われた通り眼を凝らしてみる。


「…あ。」


「……。」


いた。

3mはあろう巨躯を誇り、黒い髪は逆立っている。

そして…ねえ、もしかしてこの人怒ってる?

[人ではないが、怒っているな。あ。]

…あ?あ、って何だよ?

[忘れていたが、ベレトを召喚する時は、ハシバミの杖と銀の指輪を用意した方がいいぞ。]

……そういうことは先に言ってくれよ!

大体、精神構造にどうやってそんなもん持ち込めっていうんだ。


「……。」


ベレトが黙ったまま近づいて来る。

やばい怖い。

[怖れるな馬鹿者。落ち着き払って待て。]


「……。」


「う…。」


そうは言っても怖いもんは怖い。

黙ったままだとますますだ。


「……。」


「あ、あの…?」


「……!」


「うわったーいごめんなさい!」


目の前に着いた瞬間ベレトが屈んだ。

……ん?

[眼を開け馬鹿者。奴の誇りを汚す気か?]


「え……?」


眼を開いてみると、ベレトは地に膝を付け、頭を垂れている。


「お久しぶりにございます我が真たる主よ。」


「[堅苦しくなるなベレト。]」


ちょっと!

口を開いたのは俺だが、発せられた声は悪魔の物だ。

別にお前が喋るのは構わん。だが一言言ってからにしてくれよ!


「[はっはっは。堅い事言うな。]」


[手助けしてやっているだろう?]

…それを言われると弱い。


「主よ、何か?」


「[いや、何でもない。]」


「そうですか。……再び臣下に下る故、これを受け取っていただきたい。真の影。“影の(スキア)王冠(ステマ)”。」


ベレトが両手を、何かを捧げる様にこちらに差し出す。

次の瞬間、その手に真っ黒な剣が顕現した。

[…漆黒の剣と言ったらどうだ。]

う、うるさい。


「[“影の王冠”、貴様が持ち得る武器の中でも一等の一振り。(しか)とその命受け取った。貴様に代わり、この剣に火を灯す事を誓おう。]」


「恐悦の至りにございます。」


俺が、俺の手が剣に触れると、音もなく形が崩れ、散った。

テッテケテッテッテテテテー。

更月涼治は術式兵装“影の王冠”の使用権利を得た。

な、なんだ?!

謎の音と共に、機械的なアナウンスが流れた。

[ベレトの“影の王冠”を使える様になったのだ。]

……俺が?

[貴様がだ。]


「主よ、恐れながらそろそろ人間に代わっていただけますか。」


「[ああ。代わる。手荒にするなよ。]」


「無論です。」


[という訳だ。後は貴様が話せ。]

お、おう任せろ。


「ん、おほん。…えーっと、どうもベレト・ソロモン。貴方を召喚させて頂いた更月涼治に候。」


「堅くならないで頂きたい。我が真たる主の(あるじ)よ。そうであるならば、貴方はまた私の主なのですから。」


「いや、その……そうなの?」


[狼狽えるな馬鹿者。]

いやだってさ…。

なんか想像してたのと違うから…。


「主、儂に異存はございません。同化になんら憂いはありません。」


「あ、はい。いや……おほん。……改めて聞こう。貴方は、我が前に真実を晒すか。」


「はい。無論です。」


「……宜しい。此処に繋援(けいえん)は誕生した。貴方を私の住人として受け入れよう。」


言いながら、ベレトの体に手を翳す。

瞬間、ベレトの体が収縮し、黒い珠になった。

それを握る。


「……ッ!」


テッテケテッテッテテテテー。

更月涼治は王悪魔、ソロモン72柱の1柱である“ベレト・ソロモン”と同化した。

……雰囲気ぶち壊しだよ馬鹿。

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