会議
「では始めよう。」
場を仕切るのは大蔵。
書記はいない。
会議とは名ばかりの閑談とも言える。
「先ずアフリカ組から頼む。」
「俺が答えよう。」
気怠そうに立った直太が話し出す。
「えー、現在アフリカは以前の姿を取り戻そうとしている。火の原点使いが死んでから、そう、3年も経つのにまだ統一出来ねえたあ、無能極まれりって感じだな。」
統一出来ない理由は、現地民有力者達が覇権争いや利権争いに興じているからだ。
んなもん何処の国、どんな組織でもあることだと一蹴しそうだが、現代のアフリカの場合そんな簡単には締められない。
今まで抑圧されてきた鬱憤は、既に彼らのキャパシティーを超えているだろう。
それが爆発し、権力闘争に注ぎ込まれているのだ。
他のどんな国、どんな組織で起こるソレより激しいのは言うまでもない。
もしかしたら、時既に遅しなのかもしれないな。
他国の介入無くして終わるかどうか危ういからな。
「正直危ないぜ?アフリカ。カニバリズムやら移民制裁は無くなったが、内戦が激しい。とてもパンピーが踏み込める土地じゃない。ワレラも孤立狼も参加してもう泥沼だった。」
「アフリカとの国交回復はまだ時期ではない訳だな。了解した。次、TASC。」
「ハーイ、ワタシの出番ね。」
パーキンスが立ち上がる。
「マー、取り立てて話す事はないネ。強いて言うなら孤立狼がヤバイってだけ。」
「パキン、それ重要だと思うんだけど。」
パーキンスの“ヤバイ”発言に、すかさず頼子ちゃんが突っ込む。
「ンーそうネ。そいつの名前は糸井草春。通称蟲使い言う奴ねー気色悪いよ。」
「他にも。」
エルステッドが続ける。
「鏡使い、脳電使いもいた。操り師の孤立狼が3人、怪しかったぜ。」
「怪しいどころじゃないぜソレ。W.W.Sに連絡した方がいいんじゃないか?」
思わず口を挟む。
「無論知らせたヨ。サッキ知らせが来たんだけど、蟲使いがHAJACKに来てるらしいヨAHAHAHAHAHAHA。」
いやアハハじゃないだろ。
結構マズイ事だぞ・・・。
「ま、そっちは本業に任せときゃいいだろ。基本的に俺達が気にすることじゃない。関心する必要性はまるで無し。これでTASC組の報告終わり。」
エルステッドが締め、パーキンスが座った。
「ご苦労。では次HAJACKは……太一、新型『FADE-out』の説明も兼ねて頼む。」
「はいはい、俺だけ指名で嬉しいね全く。」
太一が椅子を傾けながら話し出す。
「んじゃ取りあえずフェイドから説明するよ。皆知ってるとは思うけど。」
「そういうのはいいからさっさと説明しろよ太一。」
これまた椅子を傾け座る直太が茶々を入れる。が、意に介さず太一は続ける。
「服型が光を吸収、屈折させ纏う物、つまり鏡みたいな光学迷彩だったのに対し、今回組み込んだデータ型は、エルステッドの『変換』を、啓治がベリネ用に変換したモノだ。戦闘用ベリネに組み込まれたソレは、スイッチが入った瞬間に、体中を透明に変える。原子配色を電気で変換することでな。億に一度くらい戻らなくなるかもしれんが、そうなった時はエルスを頼れ。以上。」
ハーイとそこらから声が上がる。
いや、その程度で許していいことかそれ?
「じゃあ次HAJACKについてね。今年度W.W.Sに入った魔術師は37人。」
「ホー。相当少ないネ。」
「そろそろ打ち止めなんじゃね。ワレラについては情報無し。」
「ふん。無しなんじゃなくて集めてねえだけだろ。」
切裂男の一言をスルーし太一が続ける。
「ただ、殺人者と殺人鬼、それに選択者の情報はあるぞ。」
……それ全部ワレラについての情報じゃねえか。
「殺人者、『繊細なる殺意の国』を使うディートは、HAJACK第四地区で存在を確認した。無償で住人を治療してやっているらしい。」
どんな国、どんな街、どんな地区にも、やはりスラム街と呼べる様な場所はある。
この極端に生活が整っている筈の世の中でもだ。
そしてその頂点にいるであろうHAJACKにもある。
それが第四地区。もう何かわざとやってんじゃねえのって勢いで貧民街だ。
「気をつけなきゃならんことと言えば、奴は治した奴を壊すって点だな。奴の空間転移特性を使ってな。ま、とは言うがワレラ退治は専門外。取りあえず阿部左宇に連絡しておいてやった。」
「それでいい。殺人鬼と選択者についても話せ。」
大蔵が次を促す。
「殺人鬼、ダイオレス。『殺意の咆哮響く国』を使うワレラだが、第一地区で豪遊していた。」
「……それだけ?」
「ああ。実害は無いし、ワレラにも知らせてねえ。どうやら奴は現世の堕落でまどろんでいるらしい。肩書きは公務員だからな。次に『神の意志などないに等しい。取捨はまた容易く』を使う選択者だが、奴は着々と人殺しに励んでる。まるで以て不愉快な話さ。」
「成る程。最近、この国の官僚が次々死んでいたのはソイツのせいか。中々どうして、国のためにはなっているじゃないか。」
コーヒーカップを傾けるエルステッドが、冗談を言う。
冗談じゃないかもしれんが。
「ワレラの悪玉についてはそれくらいの情報しかない。善玉はそもそも隠れていないから情報も糞もない。HAJACK親善大使である田中太一私奴の報告は以上で締めさせて頂きます。あー疲れた。」
「ご苦労太一。では後は閑談でもしてくれ。私はやらねばならん事があるのでね。」
そう言うと、大蔵は部屋から出て行った。




