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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第一章-Wizard-
18/106

Corrosion

「はい、お早うございます皆さん。」


巨大ディスプレイの前に立つジェイカー・リットネスが、昨日見せた笑顔のまま朝の挨拶をした。


「さて、私が此処に立っている事から分かるように、皆さんには今から“腐食”の授業を受けていただきます。それはさておき、今日は中々冷えますね。こういう日は熱感知細胞に感謝しても仕切れないです。」


「そうですね!」


[……喧しいな。]

確かに。

ジェイカーが喋る度にキャーキャー言っている女が7人いる。

最前列に陣取りキャーキャー言っている。

キャーキャーキャーキャーキャーキャーキャーキャー。

喧しいったらありゃしない。

[だが、苛々しているのは我々だけの様だな。]

言われてみればそうだな。

周りの生徒は手持ち無沙汰といった具合に、ペンを回したり、隣の生徒と話したり、多分ベリネで何かを見ていたりする。

それらをまるで意に介していないのか、ジェイカーはペラペラと“腐食”について関係ない事ばかり話している。

[今日は雑談の日か?だとするならば詰まらん。さっさと此処から出ろ。]

まあ待てよ。授業の前に雑談するなんてよくある事さ。


「ははは。そうですね。ではそろそろ授業を始めましょうか。」


ジェイカーが雑談を始めてからきっかり7分。発したその一言をきっかけとして、今まで余所事に興じ、騒いでいた生徒達が静まり返った。

ほらな?雑談タイムだったんだよ。

[うむ。]


「“腐食”は名前の通り物を腐らせる呪文だ。星の数は腐食速度と腐食範囲に影響を与えます。セナリアさん、例えばどんな物を腐らせる事が出来ますか?」


最前列でキャーキャー言っていた内の一人、真ん中、つまりジェイカーの真ん前に座っている少女が立ち上がる。


「生き物なら何でも。人間から寄生虫まで。木や細菌、ウイルス等も可能です。現代ではそれを応用し、風邪の特効薬も発明されていますジェイカーさん。」


「はいその通り。“腐食”は壊すだけが能ではない。使い方をしっかり知れば修復も可能なんです。」


そうなのか?

[ああ。上手く使えば、癌だって壊死させ消し去る事が出来る。]

マジで?そんな事今まで聞いたことがない。

[だろうな。理論的に可能な事は、“腐食”について学んだ者なら誰でも分かるだろう。]

じゃあやらないのは何故?

[いいか聞け、創造と破壊は常に曖昧だ。創っていたつもりが、実は壊す事に繋がっている等よくある事だ。この場合も同義だ。人間の体が行う生命活動の一つにアポトーシスというモノがある。これについての説明は割愛する。自分で調べろ。このアポトーシスは中々優秀なプログラムでな、人の癌細胞を消してくれる。]

それで?

[“腐食”により癌を消すというのはかなり繊細な作業だ。ピンポイントで消せるのは、負悪魔で、名を冠している奴くらいだ。そうでない奴だと、癌以外の場所にも“腐食”が掛かってしまい、さっき言ったアポトーシスまで損なわれる事になる。]

成る程。つまり更に癌を促進する訳か。

[しかも範囲を広げてな。]


「例えば癌を治療する事も不可能ではない。理論的には、だがね。」


丁度同じ所をジェイカーが説明している。


「これは第二科で話す内容なので割愛するよ。さて、では“腐食”の基本的使用法を詳しく―――」


その後53分きっちり“腐食”についての授業を受けた。

知らないことは、知っている事以上にあったので面白かった。

何となくだけど、俺には向いてないな腐食は。

授業の終了を告げ、俺の方へ感想を聞きに来たジェイカーにそれをそのまま伝えてみた。

すると彼は笑顔のまま、“安心したよ”と言った。


「どういう意味ですか?」


「君が私のポストを狙わないことが分かって、ということさ。」


その一言とウインクを残し、ネクローシスは前へと戻っていった。

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