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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第一章-Wizard-
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Marionette

「“操脳”とは名の通り脳を操ることだ。対象を操り自らの僕とする呪文。そしてそのまま僕に命じ、気になる異性の恋路を辿らせる訳だ。ただ、我々は操脳した相手の目や耳を借りるということは出来ない。つまりどういう意味か。テーゼスタ・ストルクム、答えてみなさい。」


テーなんたらと呼ばれた女の子が、教師であるベルサーチに答えるため立ち上がる。


「他人をちゃんと見張りたいなら、外部記録機器を装着させなければなりません。」


はきはきとした口調で答えると、教師が返事をする前に着席した。

それに対しては別段何の反応も見せないまま、ベルサーチが口を開く。


「その通り。操脳しようがなんだろうが、動物は自らのキャパシティー以上の行動は取れない。例えば犬に空を飛ぶよう指示を出しても、跳ぶことしか出来ない。勿論文字なんて書けやしないし、絵を描く才能も恐らくない。とくればやはり、テーゼスタが言ってくれたように、カメラやボイスレコーダーを装着させなければ、気になるあの子を恋敵の手から守る事は出来ない訳だ。」


「……なんであんなに絡めてくるんですか?」


隣でニコニコしながら座っているネクローシスに話し掛ける。


「ははは。見逃してあげて下さい。」


と言いつつニコニコが加速した気がする。

[あのベルサーチとかいう男は、過去にそういったことをしてきたのではないか。]

そうなんかね。

巨大なデータディスプレイの前で、“操脳”と、ストーキングについて熱弁しているのは、ベルサーチ・マリオネット。

惑天使と同化している“操脳”のエキスパートらしい。

25歳、綺麗な赤の髪を、前髪はオイルで撫で付けオールバックに、後ろ髪は肩まで伸ばしている。

黒いスーツに身を包んだ細身の紳士といった具合の先生だ。

そんな人がストーキングなんてあまり想像に難い。

[人は見掛けによらぬ。貴様の隣に座る奴が良い例だ。]

確かに。ネクローシスにしてもニコニコした柔弱な、所謂優男っぽい奴だが、悪魔によればかなりの力の持ち主らしいからな。


「さて、では“操脳”を使う上で最も重要な事を説明しよう。んん?……いや、その前に先ず質問することにしよう。更月涼治。」


……あれ?今俺の名前が出された気がするが。

[気がするだけではなく、しっかり呼ばれている。]

やっぱり?


「ほら、返事をした方がいいよ更月君。」


ネクローシスに促され、取りあえず立ち上がる。


「は、はい。何でしょう?」


途端に、教室にいる約600の目がこちらを向く。

さっき受け答えをしていたテーなんたらもこっちを向いている。


「君は、今日からW.W.Sに通いはじめたんだったね。」


「はい。」


正確には今日は転入手続きをしにきただけで、通学しているという訳ではない。

ま、説明は面倒なので割愛させてもらうけど。


「魔術に対する知識は如何ほど持ち合わせているのかな?」


「えーっと、一般人が知るくらいは、って具合だと思います。」


「よろしい。では私の質問にも答えられるだろう。」


「はあ。」


いきなり質問されるのかよ。

横目でネクローシスを見ると、相変わらずニコニコ、じゃないなこりゃ。

ニヤニヤだ。


「では聞こう。“操脳”は動物を操る呪文だが、操れない動物も存在する。それを挙げてはくれないかな。」


「“操脳”で操れない……。」


何だっけ?

[人だ。]


「ああ。人。人です。」


「その通りだ。おっとまだ座らないでくれ。」


「へ?」


正解に安心して座ろうとしたが止められた。

……あれか。これが所謂新入生いびり?


「では更に質問だ。何故人を操る事は出来ない?」


「……。」


そんな事まで一般人は知らないだろ。

[教えてやろうか?]

……頼む。


「えーっと、なになに…。油断してはいるけれど、“操脳”に対する意識は持っているから……ですか?」


周りの生徒は若干見開いていたが、ベルサーチはにこりと笑っただけだった。


「よろしい。座ってくれ更月涼治。意地悪をして済まなかったな。君が勤勉家だということは分かった。また後でネクロと一緒に私の所に来たまえ。では次に“操脳”と“魅惑”の組み合わせについて話していく。」


話しつづけるベルサーチから視線を外し席に席につく。


「よく分かったね更月君。」


座ると、ニコニコに戻ったネクローシスが話し掛けてきた。


「たまたまですよ。昔本で読んだんで。」


[間違ってはいないな。私の存在自体古文書の様な物だからな。]

確かに。

その後の授業は聞き流し、ぼーっとしながら20分間を過ごした。

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