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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第一章-Wizard-
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Conversion

「痛……。」


まだ頭がくらくらする。

[不運だったな。]

不運だった?それだけで済ませるなよ。

お前と同化してたから無傷で済んだけど、防御も習っていない俺が、あれをまともに受けてたら骨折してたところなんだぜ?

[では幸運だったな。]

お前な…。

……はあ。一息ついたところで、さっき俺を襲った不運な出来事を振り返ってみようか、


薫と宗司に別れを告げてから歩くこと約十分。目の前にはW.W.Sの巨大な門、高さおよそ100m、幅なんと500mという阿呆みたいにでかい門があった。

キャッチフレーズは“凱旋門なんて目じゃないぜ”、らしい。制作者田中太一。

門の先から5kmは一般人も使用出来る歓楽街だ。

そしてその向こうには、門の大きさを遥かに凌駕する、城のような要塞のような砦のような教会のような塔のような学校が聳え立っていた。

[ほう。知ってはいたがかなりの規模だな。]

ああ。全体面積は不明らしい。

土地は、これまた田中太一が創った『広がる地平』により齎された無限の大地。

学校を制作したのも田中太一で、部屋数不明、大まかに建物と呼べるものは少なくとも千棟。

建物は世界の名建築物をモチーフにしており、城は例えば姫路城やノイシュヴァンシュタイン城、要塞はスオメンリンナの要塞。

他にもカンタベリー大聖堂やサグラダ・ファミリア、五稜郭など訳の分からない、名前しか知らねえよというラインナップが並んでいる。

果てはギザのピラミッド、バビロンの空中庭園、オリンピアのゼウス像、アレクサンドリアの大灯台、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟、姫路城を跨ぐロードス島の巨像、エフェソスのアルテミス神殿と訳分からない物まである。

[ほれさっさと進まんか。]

あ。そうだなさっさと行こう。

門を潜ると煉瓦造りの街道で、色んな店が軒を連ねていた。

へー。聞いてはいたが活気あるなあ。

[その口ぶりからすると、来るのは初めてなのか?]

ああ。今まで興味が無かったし、適正審査はW.W.Sで受ける訳じゃないからな。

[成る程。]

しっかし、これだと寮住まいにした方が効率いいってのは嘘じゃ―――

ティロリロリーン♪

お、メール―――

最後まで考えられなかった。

横から強い衝撃を受けたんだ。

勢いに押され、無様にも倒れ込み、頭を街灯にぶつけてしまった。


「い、一体なんだ?」


[強化されたBB弾が直撃したんだ。あれはガスガンだな。M92F、貴様も今肩に下げてるそれだ。]

何?ちょっと記憶くれ!

悪魔から直前の記憶を引き抜く。

衝撃は俺の右から来た。

そして悪魔の目はそれをしっかり捉えていた。

白いBB弾が右脇腹に着弾し、直後粉々に砕けている。

もう少し記憶を巻き戻すと、誰かがこちらにM92Fを構えている記憶が見えた。

視界を元に戻し、記憶で見た方を向いたが、当然その誰かは何処にもいなかった。






「不運でしたねいきなり。」


「いえ。寧ろ幸運ですよ。まだ防御“も”習っていないのに頭の鈍痛“しか”残らなかったんですからね。」


所々に含みを入れ、隣で苦笑しながら歩を共にするネクローシスに返事を返す。


「誰がやったか分かれば詫びを入れさせます。分かれば、ですがね。」


より一層苦笑を深くしネクローシスは言う。


「いや、別にいいですよもう。」


見つかる訳がない。

[だろうな。私の目を以てしても捉えられなかった顔だ。“魅惑”か大規模な“操脳(そうのう)”だろう。監視カメラでは捉えられる筈がない。]

それがなくてもだ。ここの魔術師が一体何人いると思う?

七万だぞ七万。“魅惑”、“操脳”が得意な奴を見つけたとして、そこから犯人を見つけるなんて土台不可能な話だ。

それよりさ、もしかして拗ねてる?

[ははは。言うようになったな。楽しみなのだけだ。単純にな。]

……やっぱちょっと怒ってるな。こういう時は放っとくに限る。


「君は、何に優れているか聞いていいかな?」


ネクローシスが苦笑でない笑みを含ませつつ聞いてきた。


「えーっと、適正審査の結果によればオールラウンダーらしいです。」


「へえ。羨ましいな。私は名前の通り“腐食”なんだ。肉体を壊死させたりが得意なんてな~。」


な~。と言われても困る。

[奴からはかなりの力を感じる。一番得意なのが腐食というだけで、他も使いこなすかなりの手練れであるのは違いない。]

へえ。

因みに俺達は今、第一校舎の中を歩いている。W.W.Sには数知れぬ程の建物があるが、そのうち学び舎として機能しているのは第一校舎から第三十校舎までだ。

他の建物は研究棟やら戦闘訓練用だったりする。


「分かっているかもしれないけど、本学のカリキュラムについて説明しよう。授業の数は呪文の数だけ存在する。君はそれを毎日いくつ受けても構わない。時間の許す限り受けるも良し。一度だけ受けるも良し。選び方は様々だ。好きな科目だけ集中的に受けるのも構わない。寧ろそれを推奨している。生徒としてW.W.Sに通う八年間だが、その間に消化しなければならないノルマは存在しないという訳さ。」


「書類を読んでいたんで知ってましたけど、実際に聞くと驚きがありますね。」


「ははは。確かにそうだね。昔の人が聞けばゆとり教育だとか、学力低下に繋がるだとか言われそうだが、私はそうは思わない。学力低下を招くのはカリキュラムではなく本人のやる気なんだからね。だとするなら、彼等のやる気を奮い立たせる様なカリキュラムを組むのが当然なんだよ。」


「そうですね。」


[見た目に反し熱い男だな。]

意外ではあるな確かに。


「お。此処でちょうど授業をやっているよ。“操脳”の授業だね。教師はベルサーチだ。どうだい?少し受けていく?」


「……そうですね。じゃあ受けます。」


W.W.S、俺が受ける記念すべき最初の授業は“操脳”だ。

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