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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第七章-真実操作-
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真実操作

「っと。待たせて済まなかったな毬。」


この世に戻ってきて開口一番、ネフィリムは毬に謝った。


「別にいいわよよー。」


謝られた毬は気を悪くしている様子も無くあっけらかんとしている。


「でー?どうだったかなー涼治君?」


「いや、何と言うか、恐かった。」


「おーよしよ~し恐かったね~。」


「わ!馬鹿止めろよ!」


毬は背伸びをして俺の頭を撫でてきた。

[……貴様、止めろと言いながら避けんな。]

……ドキッ。

いやだって何か気持ちいいから。

頭撫でられるなんて久しぶりだし。


「……さて、俺は帰る。」


「あ……。」


「なんだ?」


この場合、何て言うべきなんだ?

ありがとう?

それともまた会ったら覚悟しとけよ?

普通にさよならか?

[貴様が好きな物を選べば良いだろう。]


「えーっと、……ありがとう、また会った時は覚悟しろ、さようなら。」


「……なんだそれは。流石の俺も失笑するレベルだぞ。」


「いや……済まん。」


「謝る事ではないだろう。礼を言われればやった甲斐もあったと思える。」


失敗だった……。

[言いたい事はすべて言えたのだから結果オーライだろう。]

……お前オーライとか使うんだ。


「ああそうだ。帰る前に一つ言っておこう。」


「まだ何かあるのか?」


「俺の強さを以てすればW.W.Sの本校舎を全て灰燼と化す事が出来る。」


「そりゃ、そうだろうな。」


「俺達エグリゴリ、またライノセンス勢の敵は主にW.W.S。特に君達だ。」


「……?」


なんで今更当然の事を言うんだこいつは。


「現在C.D.Cに在籍中、またHAJACKにいるものは総勢5名。在籍中のみが1名。」


「そうだな。……ってあれ?5人の間違いじゃないか?」


俺、ジェイカーさん、セナリア、神杉紳、御剣爽。

俺の指の神経がいかれてでもなきゃ数え間違える筈がない。


「……そうか。君は芽部には会っていないか。」


「メベ?」


随分変な……元い特徴的な名前だ。


「知らないのも無理は無いだろう。彼女は孤立狼を狩るため外国に行ったきりらしいからな。」


「へえ。それが言いたい事か?」


「いいや違う。これは前置きだ。強さの順序で言えば芽部>ジェイカー=紳>更月=爽≒セナリアと言った所だろう。」


「ほうほう。」


「しかしだ、最も強い芽部は今HAJACKにいない。つまり、こちらが総攻撃を掛ければW.W.Sは壊滅する。」


……確かにそうなりそうだ。

目の前にいるネフィリムに加え、蟲使いの糸井草春、更にネフィリムの上に立つライノセンス。

それらが一気に攻めて来たらと思うと……ぞっとする。


「何故そうしないか。一つ、面白くないから。一つ、単純な破壊を求めていないから。一つ、実はあまり強くないから。さあどれだと思う。」


「クイズかよ……。えーっと、一番?」


「正解は一番と二番だ。」


……答が複数なんて聞いてない。


「面白いというのはとても重要な事だ。詰まらない事を延々と続けていては人間は痛みと同等の苦しみを味わう事になる。一気に殲滅などルーチンワークにも劣る苦行だ。やはり一対一でやらなければ面白くない。違うか?」


「いや、まあそうかな。」


「そして単純な破壊は我々の好みではない。天災などによる破壊の恩恵は美しい。だが、我々不自然の塊である人類が齎す破壊などは忌避すべき愚行だ。」


「天災が、美しい……?それで、人が死んでもか。」


俺が聞くのが当然と言える問いを口にすると、ネフィリムはこれは滑稽とでも言うが如く呵呵大笑した。


「くははははははははは!それこそ美しい。不自然の淘汰、大いに結構じゃないか。それこそが俺の望みなんだからな。」


「……つまり、あんたらがやりたい事って人類の虐殺か。」


「虐殺などしない。そんな不自然な行為をする訳がない。俺達は自然に沿った人類滅亡の仕方を知っている。手にしている。」


[……。]

く……頭が痛くなってくる様な話だ。

いや……これは、実際に頭が痛くなってきた。


「どうした?眼が痛むか。」


「……眼?」


確かに、言われてみればこれは頭痛じゃなくて、眼痛……?

そんな言葉知らないが、そうなんだろう。


「君は幸運だ。いつの日か過去の真実を見る事になるんだからな。」


「過去の、真実……?」


「その通り。さて言いたい事は言った。俺は帰る。『FADE-out』。」


ネフィリムの姿が一瞬で消えた。

これは新型フェイドか……。


「うう……っ。」


「だいじょぶ?じゃないよねどう見ても~♪」


当たり前だと言ってやりたい。

だが、痛みがそれを許してはくれない。

本当に痛い。

この痛みが消えるのなら、世界が死んでもいいって言えるくらいの痛みだ。


「まー仕方ないよ。面白い事を感じるための対価を受けていると思って我慢して。」


「って言っても……!」


痛いもんは痛い。


「その状態で聞いて理解出来るか分からないけど聞いてね。ベルさんを殺したのは私じゃない。これは嘘でも冗談でもないの。けしかけたのはライノセンスとあの子だから、私に全く罪が無いとは言えないわ。」


「……っ。」


痛い。

痛いけど、毬が言っている事は聞こえているし理解も出来る。

だが、細々した所はあまり分かっていない。

ベリネ、で、録音……しとこ。


「甘んじて受けるけどねそれくらいの罪。私はもっと先に行きたい。だから仕方なく見ていたの。これだけは覚えておいてね。」


ピリリと体に刺激。

俺の体は望む事、その場に蹲る事を拒否されて歩きはじめた。


「女にお姫様抱っこなんてされたくないでしょ?歩くのに支障はないから頑張って歩いてね~。」


「ぬー……く、いたっ!」


俺の体はベンチに投げ出された。


「……まあ今言ったことを嘘偽り、真実操作だと思うのは君の勝手だよー。所詮私はライノセンス側、信じられないのも仕方のない事だからね~。」


「……。」


痛みが、段々と引いてきた。


「いや……信じてやる。お前は、確かに支離滅裂で訳の分からない奴だ。でも、俺が再び歩けるようにしてくれて、剰え命を救ってくれた。なら……命の恩人の言う事なら、信じるに値する。」


「そかー。よしよし。」


再び頭を撫でられる。

痛みがあるせいか、まるで嫌な感じはしない。


「じゃあねー涼治君。君が過去を見て何を思うか楽しみだよ~。また会ったらお喋りしよーねー♪」


毬が俺から手を離し、存在すらも離していく。

足音は段々消え、喧しいと感じていた喧騒も全て消え失せた。

同時に目の痛みも消えてくれた。

真実操作、か。

過去の真実……それは……。

悪魔:悪魔 『“魔眼”』

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