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ExtraMaxWay  作者: 凩夏明野
第一章-Wizard-
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Tardinessless

{お早うございます。HAJACK第九地区に2224年2月24日の朝が来ました。今日のお天気をお伝えします。今日は概ね晴れでしょう。昼は太陽が燦燦と輝き、夜は月が静かに街を照らすでしょう。降水確率は10%。最高気温6度、最低気温1度。これ以上の詳細はお天気発信地にて確認して下さい。アドレスは、hmjc://wws.otenki-hasshinti/22240224。アドレスはhmjc://w―――}

始めから特殊なんて詰まらない。日常を回顧し延々と廻りつづけるのも詰まらない。

けどよく考えてもらいたい。

異常と通常の同居なんて有り得ることじゃない。

だとするなら、真の意味で面白いのは、日常をある程度回顧し、途中から特殊になることだ。

最近はそういう娯楽小説が多いよね。別に卑下してるんじゃないよ。リスペクトしてる訳でもないけど。

ま、悪いけど今回は最初から特殊なパターンっす。

……はあ。と言っても、今の世の中特殊なのは俺だけじゃない。

異端な力であるADOM(アダム)を使うIVE(イヴ)

死人が咎人を狩るため復活したワレラ。

それに比べれば、世界に普遍として存在している魔術師はまるで通常と言えるだろう。

ま、悪魔同化してる辺り、少しの負い目も無いかと言えばそうではない。若干、いや、かなりチートだ。

それは置いといて、どうだろうか。

こんな俺は確かに特殊だが、“少し”だ。結局他人と比べれば俺なんて単純なもんさ。

こうやって誰ともしれん誰かさんに話すのだって普通さ。ある俺の好きなゲームでは、プレイヤーに語りかけるような場面を序盤に入れてきた。

けどこっちはゲームじゃない。ただ俺が独り言が好きな変人ってだけだ。

[独り言とは随分な言い様だ。私がいるのだから、貴様の虚しいモノローグも決して独り言にはならない。]

……かもな。

あーあ。意味も無い一人会議が出来なくなった事を、喜べばいいのか、悲しめばいいのか。

[それは追い追い考えればいい事だ。それよりいいのか?]

何がさ。

[私は貴様と同化して初めて知った。私の世界は常に無形でな、型に嵌まった事に意味など見出だせなかった。と言うより、意味の見出だしかたを知らなかったと言うべきだろうな。なんたって無形なんだから。]

結局何を知ったんだ?

[型に嵌まったことさ。一つ挙げるなら時間に縛られる事だな。]

時間…?時間?

そうだ、今は……。

8時35分。

……あー。


「もっと早く言ってくれよ!」


[ふ。形式張った事も好きになったが、意味の無い会話を延々と続けるのもまた至高。いい暇つぶしになるからな。]


「あんたはそれでいいかもしれんけど!ああそれより時間だ!完全に遅刻さ!あーもうどうしようもないくらいに遅刻だあ!」


……いや、まあいいか。

[いいのか?]

ああ。大体いつもかっちり行き過ぎなんだ。……?

[どうした?]

いや、よく考えりゃ遅刻もくそもないやん。

世界立魔術学校に登校時間なんて無かった。

そう、俺も今年から晴れて世界立魔術学校、略してW.W.S『World.Witchcraft.School』の生徒になったんだ。

ま、通ってなかった、もとい通えなかった理由は、今まで適正審査を受けてなかったせいだと、周りには言われた。

なんたって今回審査を受けたら数値が1000越えてたからな。

[それも私の膨大な魔力のお陰なのだがな。]


「言うなよ。」


取りあえず遅刻というモノに縛られていない事を思いだし、安堵した。

ホントこういう所は律義にチキンだな俺。

ベッドから降り伸びをする。

[そういえば今日は母君からのお叱りが無いな。どうしたのだ一体?]

忘れたのかよ。今年銀婚式だから二週間世界中を飛び回るって言ってたろ。

[ああ。忘れていたよ。]

だからこれから二週間は自由に自由を謳歌出来るって訳さ!

寝過ごそうが、飯を抜こうが文句を言う奴は誰もいない!

嗚呼是れが天国、楽園か!

[ははは。嬉しそうだな。]

そりゃもうな。

[だが遅刻が無いとは言え、転校初日から怠惰を演じるのはどうかと思うぞ。]

……確かに。

頭もそれなりに冴えてきたしそろそろ下に行くか。

下に降りると、机の上に五万円だけが置いてあった。


「さすが分かってるね母さんは。」


現在、現金を持ち歩く者は極端に、とまで言わないが少ない。

そりゃ基本はクレジットカードか電子マネーなんだけどね。

一周回って現金のがいいと言う人も少なく無い訳さ。

俺もその一人でね。電子マネーも『BetweenLINEビットウィンライン』こと『ベリネ』に十五万程入っているが、やっぱ現金支払いのが好きだ。

確かにベリネでも残金を視覚化し、実際に触ったりも出来るが、やはり三次元情報として触れる方がいい。

[そんなものなのか?]


「そういうもんさ。電子タブレットなんかが出てきて、新聞なんかも紙製は少なくなったが、未だに電子媒体にしない新聞もある。詰まるところそういうことだ。」


かく言う俺も紙媒体は好きだ。

本なんかは紙でないとな。

ベリネでニュース何かを確認しつつテレビを点ける。

テレビも今では壁にマイクロチップを埋め込むだけで見られる、『Ftv』が主流だが、我が家では前時代の、ちゃんとテレビとしてそこにある物を使っている。

何でもかんでも二次元情報にするのはどうかと思う、というのが我が家の考えだからだ。


「特に面白いニュースはないかな。」


[ん?それは何だ?]


「それ?……へえ。」


ベリネを開発した電磁(でんじ)工光学(こうこうがく)成形社(せいけいしゃ)が新製品を発表するらしい。

[だが、軍事マークが付いているからあまり貴様には関係ないな。]


「確かに。」


軍事マークが付いているニュースは、軍隊かイヴ関連のニュースが多い。

他にも国政マーク、天気マーク、世界情勢マーク、エンタメマークなどがあるが今はどうでもい。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し一口含む。


「ごく。ふー。よし、そろそろ行くとしますかね。」


オートロックの、指紋認証式錠が付いたドアを閉め、誰もいない我が家を後にした。

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