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2011/12
絶句
夜在茅屋思物
嵐声遠夜半寒空
冬月凛然幾許充
我欲何之邪不識
心唯惑乱破窓衷
嵐声遠し夜半の寒空
冬月凛然幾許か充つ
我は何に之かんと欲するや知らず
心唯だ惑乱す破窓の衷
○嵐声 嵐の音
○凛然 冷たく厳しいさま
○破窓 破れ窓
涙下
君想何人歟
為誰濕袖頻
其眸無映者
涕涙跡常新
君は何人を想ふぞや
誰が為にか袖を濕らすことの頻りなる
其の眸に映ずるは無くて
涕涙の跡常に新たなり
○涕涙 なみだ。
仏足石歌
たまざさの身を切りぬべく唐衣たちそふるかと見てしくれなゐ浅くそむるや
短歌
あふことも渡しもはてぬ葛城や夜ごと漏りくる波の架け橋
いそのかみふる年ごとに老いつもる思ひも雪と消えなましかば
はかなくぞ待ちわびぬれば面影の夢路にかよふここちこそすれ
独り寝る片敷き衣風寒みなげきわびぬる夜は幾重ぞ
面影不留といふ心を
我が袖に宿るや影ぞとめられぬこほり閉づるは涙のみして
あかねさす日影も空になしはてて暗き道にぞ入りにけるかな
君をこふあまりに涙の満ちぬればみをつくしをもしずめけるかな
秋風に庭の蓬生なびくとも待つとしせしまのゆふぐれの空