2011/11
絶句
襲春
間雲浮蒼昊
青柳之姿昂
夢浅驚鶯囀
襲春愁満昌
間雲蒼昊に浮かびて
青柳の姿昂たり
夢浅うして鶯囀に驚き
春を襲ふ愁ひ満ちて昌んなり
○間雲 閑雲に通じる。静かに浮かぶ雲。
○蒼昊 青空。
○昂 あきらか。
○鶯囀 ウグイスのさえずり。
独演
言溟溟独語
未識己之狂
如酔淆真詐
何時知演傷
言溟溟として独語す
未だ識らず己の狂を
酔ひたる如くして真と詐を淆ふ
いつか知らん傷みを演べたると
○溟溟 くらい。
小人嘆息
雖志功名年少徒
却嘆故弱昧蒙痩
才華不就寡知己
天覆無人心迹弧
功名を志すといへども年少の徒
却って嘆く弱きゆゑ昧蒙にして痩せたるを
才華就らず知己寡し
天覆人無く心迹弧なり
○昧蒙 蒙昧。くらい。おろか。
○才華 才能。
○天覆 天のした。
○心迹 心跡に同じ。心とそれによる言動。
短歌
春ぞとふ峰の白雲花かとぞ見てし年月いくへなるらむ
うつろへばまたたれかとはむ桜花人待てがちにながめてぞ見る
桜花うつろひにけりなかきくもり日影の落つる世のけしきかな
忘るなよ春の夜の月いくめぐり袖置く露の払ひはてぬも
つれなくも宿るや袖に月影のしげかる露の絶え間なきまで
寄秋風恋
秋風の吹くるよるよる離れにけり昔の月もまた見まくほし