第2話 愛と絆でそれいけ!みみたん☆ミ
東横美々子は転生者である。
かつての世界での彼女は、夜の街の歩き方を熟知した、強かなプロの女だった。
キッズと嘲笑される年頃から歌舞伎町の喧騒に紛れ、冷たいコンクリートの上で生き抜く術を学んだ。
成長すれば、活動の場を洗練された港区のラウンジや高級ホテルへと移し、そこを自らの戦場へと変えた。
彼女にとって愛とは、無償で与えられるものではなく、自らの手で掴み取るものだった。
ハイブランドで身を固め、モテる為に勉強と研究を重ねたメイク術。
意識が遠のくほどの過酷な食事制限に、肌に直接栄養を叩き込む高価な美容注射。
ミリ単位で造形にこだわり抜いた度重なる整形。
時には、自分の体すら差し出したこともある。
そうやって掴み取る寵愛。
それが彼女の生き方だった。
★
*
彼女がこの異世界に転生してから、ここが乙女ゲーム『恋と絆のハーモニー』の世界であると気づけたのは偶然だった。
前世の知り合いが「推しが尊すぎて無理」「全ルート完走不可避」などと、聞いてもいないのに熱に浮かされた顔で勧めてきたゲーム。
可憐なピンク色の髪をなびかせたヒロインが、攻略対象である王子や騎士たちと『絆』という名の親密度を深め、彼らから魔力を譲渡してもらうほど、放つ魔法の火力が跳ね上がるとかなんとか。
要するに、たくさんの男を侍らせるほど強くなる『ハーレム推奨』のクソゲーだ。
件の知人に無理やり見せられたパッケージイラスト。
そこに描かれていたヒロインと全く同じ顔を鏡の中に発見したとき、口から漏れたのは感動ではなく、どす黒い嘲笑だった。
「愛と絆の力で魔法がパワーアップぅ? うぇ……キンモー☆」
何のメンテナンスもしていない素肌、ダイエットとも無縁そうな能天気な顔。
大した努力も苦労せず、王子だの騎士だのといった男たちから勝手に見初められ、至れり尽くせりの恩恵を受ける女。
自身がプライドも、体も、人生さえをも切り売りして積み上げてきた『価値』を、たかだか初期設定ひとつで享受する存在。
そんな存在が、この世にあっていいはずがない。
そしてそんな甘ったるい幻想を『恋愛』と呼び、陶酔する夢見がちな女たちも、そしてこの”乙女ゲームという概念そのもの”も、彼女にとっては心底くだらなく、軽蔑すべき対象でしかなかった。
「……でも、このシステムは使えるカモ?」
彼女の唇が、歪な弧を描く。
この恵まれすぎた貌と肉体。そして前世で培った男の転がし方。
これは単なる『嫌がらせ』だ。
自分をこんな安っぽい恋愛シミュレーションの駒に仕立て上げたこの世界を、そして中身のない恋愛ごっこに興じる人間たちを、徹底的に困らせて遊んでやる。
そうして彼女は”最悪な悪戯”を始めた。
★
*
「たくさんの男から奪えば奪うほど、威力が増すなんて。マジ、うける☆ このゲーム作ったやつ、私と違って性格悪いんぢゃね!? 」
先程まで隣で鼻の下を伸ばしていた男から奪い取った魔力を他の分と合わせると、また充分に溜まった。
男たちのドロドロとした下心、歪な支配欲、そして浅ましい劣情。
それらを集めて混ぜて、あとはテキトーな場所に魔法陣として設置して、それでオシマイ。
触れた魔力に反応して起動し、無差別に吹き飛ばす『魔力地雷』の完成だ。
この世界の住人は魔法を”放つもの”としてしか認識していない。
ゆえに、足元に潜む罠に気づかないし、気づく術も持たない。
当然、現場にいない犯人の特定も出来ない。
「さぁて、次はどこに仕掛けよっかな~」
王都のどこかで、またこの世界の誰かの平穏な日常が木っ端微塵に吹き飛ぶ瞬間を想像する。
阿鼻叫喚の中で右往左往するこの世界の人々を眺めるのは、どんなロマンスや予定調和なハッピーエンドよりも素晴らしい娯楽になる。
ふと、王都の中央、街を見下ろすかのようにそびえ立つ城を仰ぎ見る。
「ねぇ、この世界はヒロインが王子様と踊るための素敵な恋の舞台なんかじゃないよ」
彼女にとって、この乙女ゲームの世界は『運命に導かれた感動の物語』でもなければ、『麗しい攻略対象たちと甘い恋に落ちる楽園』でもない。
「ここは、みみたんが飽きるまで壊し尽くすための、最高の遊び場だぉ♡」
いずれ続きを書きたいと思っています。
続きを投稿する際は、連載の状態に戻します。
☆ミ
下にある所から星を投げてくれると喜びます。
※この作品はAIたんとの共同執筆となります。




