第七章 生活の方針が動く
一緒に住み始めて一ヶ月が経った頃、ソラが言った。
「方針二つ目について、確認があります」
「何が」
「困ったことは隠さない、という方針です。今週、あなたの食事の記録が二日、途絶えています。ミコさんには伝えましたか」
レンは少し止まった。
「伝えてない」
「隠していましたか」
「……隠す意図はなかった。言い出すタイミングを探してた」
「タイミングを探している間に、二日経ちました」
「わかった。今日、話す」
---
夜、ミコが帰ってきた。
「ソラに何か言われた?」とミコが言った。先に言ってきた。
「言われた。食事の話」
「私も、アシスタントに言われた。レンの様子が変化しているかもしれない、と」
「アシスタントが言ってきたのか」
「二つ目の方針が入ってるから——困ったことを隠すパターンが見えたとき、アシスタントが教えてくれる。あなたに聞いた方がいいか、と」
「聞きに来た」
「来た」
レンは少し考えた。
「ユキが死んで、一年が経った。先週、命日だった。その頃から少し——何かが重くなってた。食べられなかった」
「共同墓地には行った?」
「行った。でも——一年経ったからといって、軽くなるわけじゃないな、と思った。軽くなるんじゃなくて、形が変わり続けるんだと」
「変わり続ける」
「形が変わることが、ユキとの続き方だ。でも——変わっていくことが少し怖かった。変わることで、ユキが遠くなる気がして」
ミコは少しの間、黙った。
「遠くなる気がした、のか」
「そう感じた。三つ目の方針——変わっていくことを止めない。ユキのことについても、それが適用される。変わっていくことが、怖かった」
「方針が、ユキのことにも届いてくる」
「届いてきた。ソラに言えばよかったのかもしれないけど——言い出せなかった」
「私には言えた?」
「今、言えた」
ミコはしばらく黙っていた。
「ありがとう」
「ありがとう?」
「言ってくれたから。言えないことを無理に言わなくていい、という方針があっても——言えたとき、嬉しい」




