第三章 冬の問い返し
十二月、ミコと二人で会うことが増えていた。
特別なことは何もしていなかった。食事をする。話す。仕事の話をする。帰る。
でも、そのどれもが、以前とは少し違う感触になっていた。
ある夜、食堂からの帰り道で、ミコが言った。
「レン、少し聞いていい」
「言って」
「ソラって、今のレンの状態について、何か言ってる?」
レンは少し考えた。
「ミコのことについては、少し言ってた」
「何て」
「混ざっていない、と言ってた。俺がユキを亡くしたことと、ミコへの感情が、別の場所にある、と」
ミコはしばらく黙った。
「……AIアシスタントがそういうことを言うんだ」
「ソラは最近、そういうことを言うようになった。二十三年一緒にいたから」
「ミコのアシスタントは、私に何かを言ってくる? そういうこと」
「言ってくる」とミコは言った。「でも、ソラとは言い方が違う。私のアシスタントは——観察と分析を出してくる。感情的な言葉は使わない。でも先月、一度だけ」
「一度だけ、何?」
「生活共同チームの候補として、レン・ハヤセが該当する可能性があります、と言ってきた」
レンは少し止まった。
「アシスタントが、そういうことを言ってきたのか」
「言ってきた。AIによる調査に基づく構成——都市国家の制度として、そういう方法がある。私のアシスタントは、データとして出してきた」
「ミコは、それを聞いてどう思った」
「最初は——驚いた。でも次に、おかしいとは思わなかった」
「おかしくなかった?」
「おかしくなかった。むしろ——九月に好きかどうかを聞いたことが、そういうことに向かっていたのかもしれない、と思った」
レンは夜道を歩きながら、その言葉を持った。
「ソラには、そういう指摘はまだない」
「そうか」
「俺から聞いたことがないから、ソラが言ってこないのかもしれない。ソラは——俺が問いを立てたときに、一緒に考える。俺が立てていない問いには、待っていることが多い」
「ソラらしい」
「ミコのアシスタントは、先に言ってくるんだな」
「私が怖がっていることを知ってるから——先に見えていることを出してくれる。転ばないように、先に言ってくれる」
「ミコの誓い2、か」
「そう。失敗を恐れないこと——そのための補助として、先に見えていることを教えてくれる」
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その夜、帰ってからソラに話した。
「ミコのアシスタントが、ミコに生活共同チームの候補として俺を出したらしい」
「そうですか」
「驚かなかった?」
「驚きはしました。でも——おかしいとは思いませんでした」
「ソラも、同じか」
「ソラもというより——私には、まだその分析を出していませんでした。あなたが問いを立てていなかったから。でも——今日、立てましたね」
「立てた」
「では、私の見方を話してもいいですか」
「話して」
「私はあなたとミコさんの関係を、二年以上観察してきました。その中で見えていることがあります。一つ目、あなたはミコさんの前で、自分の怖さを話せます。他の人間の前では、怖さを持ちながらも外に出すことが少ない。二つ目、ミコさんはあなたの言葉の止まり方を待てます。あなたが言葉にするのに時間がかかるとき、ミコさんは別の話を始めません。三つ目、二人の間で、沈黙が問題になったことがありません」
レンはその三点を、順に考えた。
「三つ目は気づかなかった」
「沈黙は関係の中で問題になることが多い。でも、あなたとミコさんの間の沈黙は、どちらかが埋めようとしない。埋めなくていい沈黙です」
「それが、何を意味してる?」
「二人の間に、言葉の外に、共有されているものがある。そういうことだと、私は思っています」
「ソラが、生活共同チームという言葉を使うとしたら——使うか?」
「今日、あなたが問いを立てたので——使います。該当する可能性があると、私も思います」




