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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第三章 トルナージュの出来事、そして“ルナ”

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第88話  帰るための戦いへ

翌朝、宿の食堂には温かなパンとスープの香りが満ちていた。

ジャン、ルナ、そしてフィリーネは静かに席につき、湯気の立つ朝食を前にしていた。


「ドラゴンは強い相手よ。あなたたちは・・・・・・無事に戻ってきてくれれば、それでいいの」

フィリーネは落ち着いた声でそう言った。


けれど、その言葉の奥には、抑えきれない心配がにじんでいた。


「エヴァンたちのことは任せて。私が何とかするわ」

淡々と口にしながらも、瞳は揺れている。


ジャンは短く「頼んだ」とだけ告げ、深く頷いた。

ルナは椅子から身を乗り出すようにして、「ソフィアたち、お願いね!」と、真っ直ぐな笑顔を向ける。


3人の間に、短い沈黙が落ちた。

だがそれは、言葉にしなくても互いを信じている証のような静けさだった。



食事を終えると、3人は宿を後にする。

裏路地で立ち止まり、それぞれの道を選ぶ時が来た。


「いってらっしゃい」

フィリーネは小さく手を振り、寂しさを押し隠すように微笑んだ。


ジャンは無言で頷き返し、ルナは胸を張って「頑張って来るから!」と力強く応じた。


次の瞬間、2人の身体は光を帯びて宙へと舞い上がる。


風を切りながら飛ぶジャンが提案する。

「古代文明の遺跡に寄って、少し休んでいこう」


ルナは頷き、言葉はなくとも同意を示した。




やがて2人は、石造りの遺跡へと降り立った。

ルナは慎重に両手を掲げ、サーチ魔法を展開する。だが・・・・・・。


「え? 何も見えないよ?」

得意なはずの魔法が地下を映し出さず、ルナは眉をひそめた。


ジャンも試すが、やはり同じだ。

「遺跡が蘇ったっていうのは・・・・・・こういうことか?」


「うーん、蘇って・・・・・・、結界とか?」

ルナは首を傾げ、不安と好奇心を入り混ぜた声を漏らす。


ジャンが首をかしげる。

「以前は見えていたのにな」


ルナは頷く。


2人はしばし考え込み、やがて肩の力を抜いて、遺跡の石段に腰を下ろした。

軽い雑談とともに、ほんのひとときの休憩を取る。


その後、再び空を仰いだジャンが言った。

「海沿いを回って、アステリアに行こう」


ルナは目を丸くして、「えっ、大回りじゃない?」と驚く。


ジャンはニヤリと笑みを浮かべ、彼女の顔を覗き込んだ。

「昨日のデートの続き、ってことでどうだ?」


ルナは顔を上げてぱっと花のように笑った。

「うんっ! 行く! デートだね!デート!」


ぴょんぴょん跳ねて喜ぶルナ。


その無邪気さにジャンの口元も自然とほころぶ。

2人は手を取り合い、南東の空へと飛んでいった。




やがて視界いっぱいに青く広がる海が現れた。


潮風を頬に受けながら、2人は並んで飛び、海沿いをゆっくりとアステリアへ向かう。


街が近づいてきた頃、視界の下に、無残に壊された馬車が転がっているのを見つけた。


つい先ほど襲撃されたばかりなのだろう。

周囲には激しい争いの痕跡が生々しく残されていた。


ジャンとルナは急いで地上へ降り、生存者を探す。

だが、どれだけ声をかけても返事はなく、人影ひとつ見当たらない。


胸に重いものを抱えながら、2人はただならぬ事態を悟り、急ぎアステリアへと飛んだ。




ギルドの扉を押し開けると、2人はそのまま受付へ駆け寄り、ギルド長を呼び出してもらった。


「おお、ジャン! ルナ! 無事だったか」

リーザンは2人の姿を認め、心底安堵したように声を上げる。


だが、2人から馬車襲撃の報告を聞いた途端、その表情は険しくなった。

「襲われた馬車だと!?・・・・・すぐに調査隊を出そう。よく知らせてくれた」


ジャンは一息つき、本題を切り出す。


「明日、ドラゴン討伐に向かいます。リリエルを含めた3人で」

リーザンは深く息を吐き、眉間にしわを寄せる。


「前回と同じだな・・・・・・止めても行くつもりなのだろう? いいか、絶対に生きて帰って来い」


その力強い言葉に、ジャンは短く「はい」と応じ、ルナも真剣な眼差しで頷いた。


決戦は明日。2人の心はすでに固く決まっていた。




ギルドを出ると、午後の日差しがアステリアの街を金色に照らしていた。


白い石畳の道は柔らかく光を反射し、家々の赤い屋根が鮮やかに浮かび上がる。


大通りには行き交う人々の活気があふれ、露店からは焼き菓子や果実酒の香りが漂っていた。


まだ昼の賑わいが残る通りを、ジャンとルナは肩を並べて歩く。

「ねぇ、ジャン。あの角の店、覚えてる?」


ルナが指さしたのは、かつて皆で立ち寄った装備屋だった。


「もちろんさ。ルナが『重いのはいや!』って鎧を片っ端から放り投げてた店だろ」


「ちょっと!? そんな言い方しないでよ!!」

ルナは頬をふくらませるが、やがて笑い声をこぼす。


ジャンもつられて笑い、緊張を抱えながらもどこか懐かしい気持ちになった。



「ねえ、ジャン。あの噴水、覚えてる?」

ルナが小さな指をさして笑う。


そこには、まだEクラスだった頃、ルシウスたちと、待ち合わせをした広場の噴水があった。


「ああ・・・・・・ここに戻ってくるのは、久しぶりだな」

ジャンは目を細め、懐かしげにその景色を見つめる。


「ここ、サーチ魔法の練習もしたよね。その時はまだ付き合っていなくて・・・・・」

ルナも懐かしそうに目を細めると、ジャンが話し出す。


「テレパシーを試して、ルナがモジモジしたんだったな」


「そうだね。いま、幸せだよ!!」

ルナはそう言うと、ジャンの腕にしがみついた。


ジャンの心には、戦いや冒険の記憶だけではない。

仲間と過ごした日常や、何気ないひとときが胸に甦ってきた。



街路樹の葉が風に揺れ、どこからか子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくる。

2人の歩みは自然とゆっくりになり、束の間の平穏を味わっていた。


やがて歩き疲れた2人は、小さなカフェを見つけて入った。


木の看板が吊り下げられたその店は、こぢんまりとして温かな雰囲気に包まれている。

窓際の席に腰を下ろすと、海風を運ぶような爽やかな香りが鼻をくすぐった。


紅茶と焼き立てのパンが運ばれ、2人は静かに語り合う。

「アステリアでの思い出、いっぱいあるね」


ルナが窓の外を眺めながらつぶやく。


「初めて会ったのも、ここだった」

ジャンがそう言うと、ルナの瞳が懐かしそうに輝いた。


「うん。あの時は片思いだったから、こんなふうに一緒に笑えるなんて思ってなかったけど・・・・・・」


彼女は少し頬を染め、俯いた。

ジャンはその横顔を見て、胸の奥に温かいものを感じる。


戦場で共に立ち、苦しい時を支え合い、そしてこうして穏やかな時間を過ごしている。

2人にとって、それは何より尊いものだった。


やがて西の空が赤みが出て、窓の外が茜色に染まり始めた。

会計を済ませて店を出た後、ジャンが周囲を見渡す。


「さて、今夜泊まる宿を探さないとな」


「そうだね。予約もしてないし・・・・・・空いてるかな?」

ルナは少し不安そうに首をかしげる。



2人は大通りを外れ、宿屋の並ぶ通りへと足を運んだ。


宿屋通りにはいくつもの看板が掲げられており、旅人たちが荷物を抱えて行き来している。


繁盛している宿は軒並み満室の札が出ていたが、数軒目に入った石造りの宿で、ようやく空き部屋を見つけることができた。


帳場の老主人が帳簿をめくりながら言う。

「ちょうど2階に空きが1部屋あるよ。食事つきでどうだい?」


「お願いします」

ジャンが即答すると、ルナはほっとしたように胸に手を当てる。


鍵を受け取り、2人は一度部屋へ向かった。


木の扉を開けると、簡素ながら清潔なベッドが2つ並んでおり、窓からは夕暮れに染まる街並みが見渡せた。


ルナは窓辺に立ち、しばし外の景色に見入る。

「きれい。明日が来るのが怖いくらいだよ」


その声はかすかに震えていた。


ジャンはルナの隣に立ち、静かに言葉をかける。

「大丈夫だ。オレたちは必ず帰ってくる。そう決めてる」


ルナは振り向き、真っすぐに頷いた。


着替えなどを収納魔導具から出すと、2人は再び街へ出た。

夕暮れの光に包まれたアステリアの通りは、昼間とは違う趣を帯びていた。


灯りのともった露店からは香ばしい匂いが漂い、音楽隊が奏でる笛の音が遠くで響く。


ジャンとルナは手をつなぎ、人々の賑わいの中を歩いた。


「こうして歩くの、デートみたいだね」

ルナが小さく笑う。


「ああ、昨日の続きだ」

ジャンの言葉にルナの頬が赤らみ、はにかんだ笑顔を浮かべる。


その瞬間だけは、明日を忘れたかのように穏やかだった。




夕暮れ空に星が1つ、また1つと出始める頃、2人は再びギルドへ向かう。


ちょうどその時、塔から戻ってきたライアス、カイラス、リリエル、ルミア、エルミナの5人が姿を現した。


「あっ! みんな!」

ルナが駆け寄り、声を弾ませる。


懐かしい仲間たちの元気な姿に、ジャンとルナの表情も自然と明るくなる。

全員無事であることが、何よりの喜びだった。


久しぶりの再会を喜び、7人はしばらく雑談に花を咲かせた。

互いの近況を語り合い、笑い声がギルドの広間に響き渡る。



穏やかな時間が続く中、話が途切れたところで、ルナが真剣な顔をしてリリエルの方を見つめた。

「ねぇリリエル、明日ドラゴンを倒しに行くんだよ・・・・・・。一緒に来てくれる?」


リリエルはしばし黙考したが、やがて瞳をまっすぐに向け、静かに頷いた。

「ええ、もちろん。私も力を貸すわ」


その返事を聞いたカイラスが拳を握りしめる。

「なら、オレたちも一緒に行くさ。仲間が命を懸けるのに、黙って見てられるわけないだろ」


ライアスやルミア、エルミナも次々に同意を示す。


だがジャンは、深く息を吸い、静かに首を横に振った。

「気持ちは本当にありがたい。・・・・・・確かに人数が多ければ、その分だけ攻撃力は増すと思う」


一度言葉を切り、仲間たち1人ひとりの顔を見渡す。

「覚えていると思うが、オレとルナ、リリエルは1度ドラゴンと戦った事がある。わずかに傷を負わせたが、結局は圧倒されて逃げ帰るしかなかった。その強さは、想像をはるかに超えていたんだ」


ルナも唇を震わせながら小さく頷く。

「あの時は、本当に・・・・・・怖かった。生きて帰れたのが奇跡みたいだったもん」


リリエルも静かに言葉を重ねた。

「だからこそ、私たちには覚悟がある。あの恐ろしさを知っているから」


カイラスは目を見開き、息を呑んだ。

「そこまで・・・・・・強いのか、ドラゴンってやつは・・・・・・」


拳を握りしめたまま、しばらく考え込む

やがて、真剣な眼差しでジャンたちを見る。


「なら・・・・・・確かにオレたちが軽い気持ちで加わるより、お前たち3人に任せた方がいいかもしれないな」


ジャンは小さく頷き、静かながらも決意に満ちた声で告げる。

「オレとルナ、リリエル。この3人だからこそ、勝機がある。今回はその形で行かせてほしい」


カイラスはしばらく黙っていたが、やがて息を吐き、真剣な顔で言った。

「わかった。だが、必ず戻ってこいよ。オレたちは、それを信じて待ってるからな」


仲間たちもやがてその覚悟を感じ取り、静かに頷く。




それから7人は夜が更けるまで語り合った。

昔の出来事を振り返り、笑い合う。

だが楽しい時間もやがて終わりを告げ、宿へ帰っていった。



夜の帳が降りる中、2人は再び宿へ戻った。


部屋に入ると、ジャンとルナの間には、いつもより言葉が少なかった。

胸の奥に緊張と覚悟を抱え、静かな空気が流れる。


ベッドに横たわったジャンは、ルナの手をそっと握りしめた。

「明日・・・・・・必ず生きて帰ろう」


ルナは真剣な眼差しで頷き、そっと彼の手を握り返す。

互いの温もりを確かめながら、2人は静かに眠りについた。




翌朝。


宿で軽く朝食を済ませたジャンとルナはギルドへ向かう。


少し待つとカイラスたちがやって来て、出発の時が近いことを告げるように肩を叩き、温かな言葉をかけて送り出してくれた。


リリエルを加えた3人は、仲間の視線を背に受けながら塔へと足を進める。


塔の1階に到着すると、ジャンは迷わず転移装置を操作し、目的の18階へと移動した。


瞬間、周囲の空気が張り詰め、肌を刺すような緊張感が漂う。

「全ステータスアップ」


ジャンの声とともに光があふれ、3人の体を包み込む。

力がみなぎるのを確かに感じた。


さらに彼は回復魔法を重ねて唱える。


その瞬間、3人の胸に同じ違和感が走った。

予定通りの、あの感覚だ。


ジャン、ルナ、リリエルは互いの目を見て深く頷き合う。


覚悟は揺るがない。


ジャンは再び転移装置に手をかけ、静かに息を整えた。



カイラス「読んでくれて感謝する。読者の皆さんがいるから物語は動くのだ」


ライアス「で! 問題の36階のドラゴンよ!今度はジャンとルナ、それにリリエルの3人で挑むらしいが、ワシ、正直言って怖ぇぜ! 勝てると思うか、これ!?」


ルミア「ドラゴンは高位魔物よ。3人でも厳しいのは確かだわ。でもリリエルが加わると、安定感は増すと思うの」


エルミナ「“安定”という言葉に安心しすぎないで。リリエルがいるからといって、ルナの暴走は抑えられないわよ」


ライアス「だよな! リリエルが盾でも、ルナが突撃して“戦闘が学芸会化”する未来が見えるわい!」


カイラス「学芸会はやめろ、ドラゴン相手だぞ? だが、3人の布陣は厄介でもある。ジャンが統率し、リリエルが支え、ルナが・・・・・・その、突っ込む」


ルミア「うん、ルナは“予測不能”が最大の武器だわ。相手を翻弄する確率は高いけれど、味方も翻弄する確率も高いわね」


ライアス「ワシはドラゴンよりルナの“無茶”にビビってるんじゃ! 頼むから帰って来いよ、ドラゴンに食われるより先に皆に食われるぞ!」


エルミナ「ライアス、それは言い過ぎだわ」


カイラス「結論としては、勝ち筋はある。だが帰還報告がコメディ混じりになる可能性大、だな」


ライアス「よし、そいつはそれで頼む! 帰って来たら酒でも奢らせるぜ、ジャン!」


ルミア「帰って来ない方が怖いわ。精神的に・・・」


エルミナ「では、読者の皆さんもご期待を。騒がしくも熱い展開をお届けします」


全員「次回もお楽しみに!」



ルナ「みんなひどい!!ドラゴン戦では暴走しないよー!」



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