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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第三章 トルナージュの出来事、そして“ルナ”

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第86話  決着と新たな決意


次の瞬間、ソフィアとエヴァンの全身に力が駆け巡った。


筋肉が震え、視界が鮮明に広がる。

間違いなくジャンの支援魔法、スピードアップだ。


「ふざけるな!」


シャドーは怒りに歪んだ声を吐き出し、ルナの右手を操ってフィリーネに向けてフレアを放とうとした。


炎の赤光が瞬時に膨れ上がる。

だが、その直前。


「させるか!」


エヴァンの鋭い声とともに剣が閃き、刃先がルナの腕に触れる寸前で角度を変え剣の柄が、ルナの腕を空へ弾き上げた。


放たれた炎は標的を失い、真っ青な空に吸い込まれていった。

その一瞬の隙を逃さず、ソフィアがルナの体に体当たりを仕掛ける。


突き飛ばされたルナは地面に崩れ、瞳の奥から覗く異形の影がフィリーネを睨みつけた。


「フィリーネ!」

ルナがかすれた声を上げる。


その声は本人のものか、シャドーのものか、聞く者の心をざわつかせる。


「ディスペ――」

フィリーネが呪文を紡ごうとした瞬間、シャドーが再び両手を操り、炎を纏わせた。



「まだだぁ!フレア!!」

業火がはしり、轟音とともにフィリーネを襲う。


彼女は咄嗟に身を転がし、地面を焦がす炎を紙一重で回避した。

衣の裾が焼け焦げ、土煙が立ちこめる。


それでも彼女はすぐに立ち上がり、怯むことなく杖を構え直す。

その隙にエヴァンが踏み込み、倒れ込んだルナの喉元へ冷たい刃を突きつけた。


「動くな!」


「スターフレア!」


シャドーの声とともに、ルナの体を中心に炎が渦を巻き、燃え盛る壁となってエヴァンを焼こうとするが、既にエヴァンはかわし、次のチャンスを狙っていた。


熱気が頬を刺し、視界を赤に染めた。


炎が弾け飛んだ瞬間、エヴァンの剣閃が疾風のごとく舞い、ルナの首筋すれすれの地面に突き立った。


乾いた音とともに地面が抉れ、砂が舞い上がる。


「何なんだ!? この人間離れした速さは!」

ルナの口を通じ、シャドーが怯えたように叫ぶ。


だが次の魔法を練るより早く。


「もう逃がさない!」

ソフィアが勢いよく飛び込み、ルナの体を押さえつけた。


ソフィアはルナに馬乗りになり、手でルナの両腕を頭上に押しつける。


必死に体重をかけるソフィアの顔には汗が伝い、瞳には恐怖と決意が入り混じっていた。




それを見たフィリーネが杖を掲げ、澄んだ声で呪文を放つ。

「ディスペル・ヴェイル!」


光の奔流がルナを包み込み、まばゆい白金の輝きが影を裂く。

シャドーは拘束され、抗うことすらままならない。


身をよじるのが精一杯だった。


「ぐあああああ! 太陽は・・・・・太陽光はやめろォォォ!」

断末魔の絶叫が林に木霊する。


影の肉体は溶け崩れ、無数の黒い欠片となって空に散った。

やがて陽光に照らされ、それらも霧のように掻き消えていく。



そこに残ったのは、荒い息をつきながらも必死に仲間を見守るルナの体

静かに杖を下ろすフィリーネ


剣を握りしめたまま睨み据えるエヴァン

そして汗だくでルナを拘束し続けるソフィアだった。




みんなが安堵のため息をついた、その瞬間だった。


「ソフィア、そういう趣味があるのか?」

場違いなほど落ち着いた声音で、エヴァンが口を開いた。


「え?」

ソフィアはきょとんと目を丸くする。


頬には戦いの汗が光っていたが、その瞳にはまだ緊張の名残があった。


エヴァンはわざとらしく顎に手をやり、意味ありげに続けた。


「ふむ・・・・・ルナに馬乗りになって、両手を万歳させて押さえ込むとは・・・・・ソフィアはルナに一体、何をするつもりなんだ?」


「なっ!」

ソフィアの顔が一瞬で真っ赤に染まる。


耳まで赤くなり、慌てて立ち上がった彼女は、勢い余って声を裏返らせた。


「ごごご、ごめん、ルナ!」


慌ただしく飛び退くソフィアを見て、ルナは土埃を払いながら上体を起こすと、唇の端をつり上げ、意地悪そうに笑った。


「ふふっ。ソフィアだったら、何をされても良かったんだけどなー」


その軽口に、一同の緊張はふっと緩み、堰を切ったように笑いがこぼれた。

炎の臭いがまだ漂う林の中で、張り詰めていた空気がやっとほどけていく。


ジャンも思わず苦笑を浮かべて首を振った。

「おいおい・・・・・人を心配させといて、その冗談は反則だろ」


フィリーネは胸をなで下ろしながらも、ルナを見て、どこか呆れたように微笑む。

「まったく・・・・・戦いが終わったらすぐに茶化す余裕があるなんて。あなたらしいわね」




だが次の瞬間、エレオスが小さく顔をしかめ、真剣な口調で言葉を挟んだ。


「あのさ、笑ってる場合じゃないと思うんだ。僕、足が痛くて立っているのもやっとなんだけど。まずは全員の怪我の治療が先じゃない?」


その一言に、場の空気が現実へと引き戻される。


ルナも「そうだね・・・・・」と照れくさそうに笑い、頭をかいた。


「よし、まずは傷を治そう」

ジャンが短く言い、両手を掲げる。


淡い光が仲間たちを包み込み、擦り傷や火傷がじわじわと癒えていく。


その傍らで、エレオスも自分の術式を組み合わせ、より深い傷を順番に治していった。


「もう・・・・・・痛いのは嫌だな」

ルナが苦笑しながら足を伸ばすと、ソフィアが隣に膝をつき、そっと背中に視線を落とした。


シャドーに背中から肩、腕にかけて切られた傷がまだ痛むのでは、と心配していたのだ。


先ほどの赤面はまだ引いていないのか、頬にかすかな熱が残っている。


ルナは、ソフィアに言う。

「本当に・・・・・無茶しすぎなんだから」


その声は震えていたが、どこか安堵に満ちていた。


「本当は・・・・・もっと冷静に考えないといけなかったのに・・・・・気持ちが先に走っちゃって・・・・・」

ソフィアは申し訳なさそうに答えた。



やがて傷の手当てが終わると、みんなの表情から疲労の影がゆっくりと解けていった。


夕陽が木々の隙間から差し込み、茜色の光が仲間たちの横顔を照らす。


燃え尽きた草の匂いと、涼しい風が混じり合い、戦いの終わりを告げるように林を吹き抜けた。


ジャンが立ち上がり、空を見上げながら小さく息を吐いた。

「もうすぐ日が暮れるな」


その言葉に、皆が顔を上げる。


空はほんのり赤く染まり始め、長い影を落としていた。

戦いの余韻がまだ体に残る中、それでもどこか穏やかな時間が流れ始めていた。




林を後にした一行は、町へと戻った。


戦いの緊張が解けたせいか、歩きながら誰からともなく「お腹空いたな」という声が上がる。


「確かに・・・・・ずっと緊張しっぱなしだったものね」

フィリーネが小さく微笑むと、ルナはぱっと顔を輝かせる。


「じゃあさ!どこかで食べようよ!私、お腹ぺこぺこだよ!」


その明るさに、ジャンも肩の力を抜いて笑った。

「そうだな。まずは腹ごしらえだ」




町の中心にある食堂に入ると、賑やかな声と香ばしい匂いが迎えてくれる。


木のテーブルに腰を下ろすと、程なくして並べられたのは、香ばしく炙られた大ぶりの魚に、貝の旨みが染み出したスープ、海藻を練り込んで焼き上げた薄いパン、そして豪快に焼かれた肉料理だった。


潮の香りと肉の匂いが食卓に混ざり合い、旅人たちの空腹をさらに刺激していく。


「うわぁ、美味しそう!」

ルナは目を輝かせ、両手を合わせる。


「いただきます!」

ソフィアは少し控えめにスープを口に運び、ほっとしたように微笑んだ。


その横でリディアはパンを、ちぎりながら

「戦いの後に食べるご飯って、どうしてこんなに美味しいのかしら」

とつぶやく。


エヴァンは大きな肉を豪快に食べながら笑った。

「生きて帰ってきたからだろ!この味は、生きてる証だ!」


エレオスも「うん、ほんとだよ」と柔らかい笑みを浮かべ、みんなの様子を眺めていた。


食卓には、さっきまでの恐怖や緊張はなく、温かい笑い声が満ちていた。




やがて、食事を終えた頃には、空はすっかり群青色に変わっていた。


「それじゃ、オレたちは宿に戻るよ」

エヴァンが立ち上がると、エレオスもリディアもソフィアもそれに続いた。


ソフィアは振り返り、ルナに向かって小さく手を振る。

「ルナ、またね」


「うん、またね!」

ルナも嬉しそうに手を振り返す。


その様子を見ながら、ジャンがふっと笑った。

「ルナ、ソフィアに気に入られたな」


「うん、そうだね!」

ルナは頬を染め、心から喜んでいるように頷いた。




そして、残ったのはジャンとフィリーネ、ルナの3人だった。

「少し歩こうか」


ジャンの言葉に、ルナが「うん!」と笑顔で返す。


フィリーネも「ええ、少し夜風に当たるのも悪くないわね」と頷いた。


3人は並んで夜の町を歩き出した。


街灯の柔らかな光に照らされながら、涼しい夜風が頬を撫でていく。

昼間の喧騒は遠く、時折聞こえる笑い声や楽器の音が、町の平穏を感じさせた。


「なんだか・・・・・夢みたいだね」

ルナがぽつりと呟くと、ジャンは横目で彼女を見て小さく笑った。


「でも、これは現実だ。オレたちが乗り越えたんだからな」

フィリーネはその2人のやりとりを聞きながら、どこか安心したように目を細めた。


やがて3人は、自分たちの宿へと戻っていった。




宿のロビーに入ったところで、フィリーネがジャンを呼び止める。

「ねえ、ジャン」


ジャンは立ち止まり、軽く息をついて言った。

「昼間にあんな事があったからな。明日も休みにしよう」


「それは嬉しいけど・・・・・」

フィリーネは目を細めて問いかける。


「今さらアステリアに行くのは、どうして?」


ルナも、答えを求めるようにジャンを見上げて待っている。

「アステリアなら、オレもルナも塔は42階まで行ける。だから36階のドラゴンをまず倒して、45階への道しるべにする」


その言葉に、フィリーネもルナも驚き、思わず顔を見合わせた。

「36階・・・・・ドラゴンを・・・・・」


フィリーネが息を呑む。

「でも、南の塔は私、26階からだったはずよ」


ジャンは真剣な眼差しでフィリーネに問いかける。

「それで、フィリーネはどうしたい?」


少しの沈黙の後、フィリーネはゆっくりと首を振った。


「ドラゴンのいる36階まで、私たち3人なら、26階から攻略しても、そんなに日数はかからないと思う。だけど、早い方が良いでしょう?それに・・・・・」


フィリーネは、ここでしばらく考えて続けた。


「リリエルのことは知っているけれど、そこまで親しいわけじゃないわ。だから、ジャンとルナが帰ってくるまで・・・・・親しくなったエヴァンたちを導きながら待つことにする」


ルナが拳をぎゅっと握りしめ、瞳を輝かせた。

「いよいよだね・・・・・制限魔法の解除への次のステップ!」


「ああ」

ジャンが静かに応える。


それぞれの思いを胸に、3人は階段を上がっていった。

ジャンとルナはダブルルームへ、フィリーネはシングルルームへと戻っていく。




フィリーネは部屋に入ると、そっと扉を閉め、背中を預けるようにして小さく息を吐いた。


昼間の出来事、そしてジャンの言葉が胸の奥で何度も反響している。


「36階のドラゴン・・・・・そして、制限魔法解除」


彼女はベッドの縁に腰を下ろし、膝の上で両手を組む。

南の塔は26階から。


自分が今まで到達できた領域と、ジャンたちが目指している場所との隔たりはあまりにも大きい。

けれど、その差が不思議と苦しくはなかった。


むしろ、自分にしか果たせない役割があるのだと、心が静かに定まっていく。


「エヴァンたちを導くこと。それが、私に託された意味なのね」


言葉にしてみると、思考の霧が少し晴れるような気がした。


窓の外には、静かな港町の夜が広がっている。

海風が薄いカーテンを揺らし、潮の香りを運んでくる。

あの林で聞いた仲間の悲鳴が、一瞬よぎった。


ソフィアの震える瞳も。

だが、それもまた「守るべきもの」として胸に刻み込む。


「ジャンもルナも、無事に帰ってきてね」

祈るように呟く声は、夜の静けさに溶けていった。


ベッドに身を横たえると、張り詰めていた肩の力がほどけていく。


まぶたがゆっくりと重くなり、心地よい疲労が身体を包み込む。


最後にもう一度、仲間たちの笑顔を思い浮かべて、フィリーネは深い眠りに落ちていった。





ダブルルームの扉を閉めると、喧騒はすっと遠ざかり、2人きりの静けさが訪れた。


ジャンは窓際に腰を下ろし、しばし黙って街の夜景を見つめていたが、やがて小さく息を吐いて口を開いた。


「ルナ。あの時、ソフィアに“私を撃て”なんて言ってほしくなかった」


振り返るジャンの瞳は、どこか切なげで、それでも強くルナを見据えて続けた。


「今こうして生きてるから良かったものの・・・・・ソフィアは、本気だったぞ」


ルナは少し目を伏せ、それから素直に頷いた。

「うん・・・・・あれは、たぶん本気だったと思う」


けれどすぐに顔を上げ、いつもの明るさを取り戻した笑顔を見せる。


「だけどね、私は絶対に大丈夫だって思ってたの。ソフィアとエヴァンの支援魔法。あれ、スピードアップだよね」


ジャンはわずかに目を見開いた。

「気づいてたか」


「ふふん」

ルナは胸を張って、ちょっと得意げに言う。


「ジャンは、無傷だったソフィアとエヴァンを見て、もしかしたら?って思ったんでしょ?」


「あ、ああ・・・・・、何で分かった?」


驚くジャンに、ルナは笑顔で答えた。


「一体いつから、ジャンと私はパーティー組んでると思ってるの?」


その一言に、ジャンは堪えきれず笑い、肩の力を抜いた。

「そうだったな」


次の瞬間、ルナは彼の胸に飛び込んでいた。

ジャンは驚きながらも、しっかりとその細い体を抱きしめ返す。

温もりが直に伝わり、互いの鼓動が重なり合った。


「ジャン・・・・・」


ルナが名前を呼ぶと、ジャンは彼女の頬を優しく包み込むように撫で、そのまま唇を重ねた。


最初は触れるだけのキスだったが、やがて深く、熱を帯びていく。

2人の世界には、もはや誰も入り込めなかった。


しばらくして唇を離すと、ルナは恥ずかしそうに目を伏せ、それでも嬉しさを隠しきれない笑顔を浮かべた。


「おやすみ、ジャン」


ジャンはその小さな頭を優しく撫で、囁き返す。


「ああ。おやすみ、ルナ」


抱き寄せられた温もりの中で、ルナの呼吸は次第に落ち着き、やがて穏やかな眠りに沈んでいった。


ジャンはその寝顔を見守りながら、自分もまた静かに目を閉じていった。



エヴァン「読んでくれた皆、感謝する。今回もずいぶん騒がしい展開だったな。まあ、平常運転と言えばその通りだが・・・」


エレオス「ソフィア、もっと胸張って言っていいって! 今回の活躍なんて、いやもう」


ソフィア「つ、続けたら・・・・・・怒ります!」


エヴァン「やめておけ。ソフィアが本気で怒ると、エレオスが消し炭になる」


エレオス「ちょ、ちょっとエヴァン!? 僕、そこまでじゃ・・・」


リディア「いや、アンタ、一回くらい燃えておいた方がいいわよ?」


エレオス「え、なんで!? あ、もしかして彼女になっ――」


ゴッ(リディアのげんこつ)

リディア「調子乗るなっつーの!」


エレオス「いっっってぇぇぇぇ!!」


エヴァン「こういうところだ。反省しろ」


ソフィア「ふふっ、でも、こうやって・・・皆でにぎやかに話せるの・・・、やっぱり嬉しいです」


リディア「そうそう。これからもあたしたちは元気にやってくよ。ジャンやルナ、フィリーネたちも動き出すだろうしね」


エレオス「次、どうなんのかなー。気になるとこだよな!」


エヴァン「ああ。作者のことだ、また何かやらかすだろう。読者の皆も覚悟しておいてくれ」


ソフィア「え・・・、えっと・・・・・・それでは・・・」


全員「次回もお楽しみに!」




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