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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第三章 トルナージュの出来事、そして“ルナ”

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第78話  絶望するソフィア

リディアは、ジャンたちの前で足を止めた。

頬は真っ青で、胸を押さえながら、必死に声を振り絞る。


「ソフィアが・・・・・、 ソフィアが誘拐されたのよ!」


ルナの瞳が大きく見開かれ、ジャンもすぐに駆け寄った。

「詳しく話してくれ!」


リディアは荒い呼吸を繰り返しながら、途切れ途切れに言葉を紡いだ。

「私はエヴァンと話していたの。ソフィアは・・・・・朝日を見ながら、歩いていたのよ・・・。ほんとに、普通に・・・・・笑ってたのにっ!」


少しだけ息を整えて、続ける。


「突然、ソフィアの後ろから2人組が襲いかかるのが見えた! 1人が首に黒い輪をつけたの。ソフィアはすぐに魔法を発動しようと杖を構えたのに・・・・・魔法が出なくて! 『どうして?魔法が出ない!?』って・・・・・必死に叫んでっ!」


リディアの声は震え、唇を噛みしめる。


「もう1人がそのままソフィアを担ぎ上げて! あたし、追いかけたけど間に合わなかった! 直後、男2人とソフィアは黒いモヤに包まれて・・・・・消えたのよ!」


ジャンは眉をひそめ、低く問いかける。

「目撃者は?」


リディアははっとして、首を振った。

「そういえば・・・・・わたしとエヴァン以外、誰もいなかったの! 街路にも、人影ひとつなかった! 早朝だったとしても、おかしいでしょ!? なんで・・・・・なんで誰もいなかったのよっ!」


ルナは迷いなく、強い声で言った。

「ソフィアを助けに行こうよ!」


その言葉に、ジャンは短くうなずき、フィリーネも真剣な眼差しを向けた。

「ああ」

「もちろんよ」




3人の決意が重なったその直後、ルナがぽつりと口を開いた。

「でもさ、お腹すいちゃった」


「はぁ!? ルナ、今はそれどころじゃないでしょ」

リディアが思わず怒鳴り、フィリーネが額に手を当てる。


「だって、今日はまだ朝ごはん食べてないもん」


ルナの、その言葉に、リディアは思わず口を滑らせてしまった。

「依頼する人・・・、間違えたかも?」


ジャンは苦笑いしつつ、収納魔導具からパンを取り出し、ルナに差し出した。

「ほら」


「やったぁ!」

ルナはパンを大きくかじり、頬をふくらませながら満面の笑みを見せる。


「ほふぃあふぉふぁふふぇふぃふぃふぉうふぉ!」


ジャンは呆れながら言う。

「何言ってるか、さっぱり分からん」


ルナはパンを飲み込んでから、改めて言った。

「ソフィアを助けに行こうよ!」


「まったく・・・」

フィリーネは肩をすくめつつも、真剣な瞳で言い直した。

「助けに行きましょう」


「ああ。必ず助ける」

ジャンの声もまた、固い決意を帯びていた。


そのやり取りを見ていたリディアは、胸の奥に小さな不安を抱えたまま口を開いた。

「ほんとに・・・・・大丈夫なの?」


するとルナが、残ったパンを片手に胸を張って笑う。

「任せて! 絶対助けるから!」


その勢いに、リディアは思わず吹き出しそうになった。

「あんた、緊張って言葉知らないでしょ」


ルナは"にへっ"と笑い返す。

「だって、心配しててもソフィアは帰ってこないもん!」


その言葉に、リディアの表情がふっと和らぐ。

緊張で張り詰めていた心が、少しだけほぐれた。


「はぁ・・・・・あなたたちって、本当に・・・・・。でも・・・・・お願い。ソフィアを、助けて」


「ああ、必ず」

ジャンが静かにうなずくと、ルナとフィリーネも続いた。


そして彼らは、ソフィアが消えた場所へ向かうため、リディアの案内で足を踏み出した。




(ソフィア サイド)


激しい光と轟音に包まれたと思ったら、気がつけば私はどこかの薄暗い通路に転移していた。

状況を理解する暇もなく、男が、無理やり私を担ぎ直して歩き出した。


「放して! 放してったら!」

必死に叫び、暴れて抵抗するけれど、彼らの腕力の前には無力だった。


乱暴に床へと投げ出され、私はうつぶせに転がってしまう。

床に打ちつけられた衝撃で息が詰まり、目の前が一瞬白く霞んだ。


「おとなしくしろ!」

頭上から怒鳴り声が響く。


恐怖が全身を貫き、思わず身体が震えた。

次の瞬間、2人の重みが背にのしかかり、両腕を後ろ手に縛られてしまう。


荒い縄の感触が食い込み、すぐに目隠しをされ、口元にも布を押し当てられた。


息苦しさと恐怖で胸が締めつけられる。

必死に身をよじっても、縛られた手はびくともしない。


やっとの思いで立ち上がり、後ずさる。

けれどすぐに壁にぶつかり、行き場を失った。

挿絵(By みてみん)


「その状況でどこに逃げる? おとなしくしてろ!」

冷たく吐き捨てる声。


その直後、腹部に強烈な衝撃が走る。

「うぅっ!」

思わず声が漏れる。


意識が遠のきかけるけれど、必死に食らいつくように意識をつなぎ止めた。


(誰か、助けて!)

心の中で必死に叫んだ。


恐怖と絶望が押し寄せ、心臓が破裂しそうなほど脈打っている。

こんな状況で、誰が私を助けてくれるというのだろう。


ルナ、エヴァン、エレオス、リディア、ジャン、フィリーネ。

大切な仲間の顔が次々と脳裏に浮かぶ。


みんなは、今どこにいるの? 

私は・・・・・・いったいどこへ連れてこられたの?


恐怖に押しつぶされそうになりながらも、心の奥にしがみつくような希望が芽生える。

きっと、誰かが気づいてくれる。


誰かが必ず迎えに来てくれる。

そう信じなければ、今すぐにでも心が折れてしまいそうだった。


男の1人が再び私を担ぎ上げる。

ごつごつした肩に身体を預けさせられ、振動に合わせて頭が揺れる。彼らの声が耳に飛び込んでくる。


「この方が担ぎやすいな」


「おい、ボスは生かして連れてこいって言ってたろ。傷つけるなよ」


「ちょっと殴っただけだ。どうせ気絶してるだけさ」


その言葉を聞いた瞬間、全身が強張った。

私はまだ意識を保っている。


それを悟られないように、必死で呼吸を整える。

気を失ったふりをして、かろうじて体勢を保った。




生かして連れていく。

彼らはそう言った。


つまり、今のところ私を殺すつもりはない。

そこにかすかな安堵を覚えると同時に、未知の恐怖が胸を締めつけた。


私を生かして何をするつもりなの?

その答えを考えるのが怖くて、頭を振りたくなる。


やがて再び床に降ろされる。

私は耳を澄ませた。

聞こえてくる足音は2つ。


男たちは私から離れ、どこかへ歩いて行く。

通路の奥に響く足音が次第に遠ざかっていくのを、私は固く縛られたままじっと聞いていた。


暗闇の中、布越しの呼吸は熱く、胸は苦しい。

けれど、わずかに訪れた静寂が、かえって恐怖を増幅させていく。


孤独。捕らわれ。

次に何が待っているか分からない。


心細さで胸が張り裂けそうになりながらも、私は必死に自分に言い聞かせた。


大丈夫。必ず助けに来てくれる。

みんなが・・・・・・必ず私を見つけてくれる。だから、諦めちゃだめ・・・・・・!

震える唇の裏側で、声にならない祈りを繰り返しながら、私は闇の中でただ耐え続けていた。




私は必死に体をよじらせ、目隠しと口を塞ぐタオル、そして後ろ手に縛られたロープを外そうとした。


肌に食い込む繊維が擦れて痛む。

それでもやめるわけにはいかない。


諦めたら、本当に終わってしまう気がした。


(ルナ、エヴァン、みんな!)

心の中で何度も何度も叫ぶ。


声にはならないけれど、その叫びが自分を繋ぎ止めてくれる。


私はひとりじゃない。

必ず誰かが、必ずみんなが、私を探してくれる。


そう信じていなければ、恐怖に押し潰されてしまう。

どれくらい時間が経ったのだろう。


必死のもがきはほとんど成果を上げないまま、息が荒くなり、額から汗が滴り落ちていた。


すると、不意に足音が近づいてくる。

だがそれは2人分ではなかった。


ひとつだけ、規則正しい靴音。

そして、その背後にもうひとつ、足音とは違う、重くのしかかるような存在感。


(誰か・・・・・・もう1人いる・・・・・・?)


緊張で心臓が跳ね上がる。




やがて頭上から、聞き覚えのある声が響いた。

私を担いでいた男だ。


「ボス、ターゲット捕獲しました」


ボス。

そう呼ばれた相手が、低く冷たい声で答える。


「もう1人女がいただろう。そいつはどうした?」


私はその言葉に血の気が引いた。

もう1人・・・・・・リディアのこと?


男はわずかに動揺を滲ませながら答える。

「そ、それが・・・・・・別の男が一緒にいたので、連れて来られませんでした」


(やっぱり・・・・・・リディアも狙われていたんだ!)

胸の奥がざわめき、恐怖と混乱が一気に広がる。


なぜ?なぜ彼女まで?何のために?

ボスと呼ばれた人物は、私の不安を踏み潰すように淡々と告げた。


「まあ良い。完全ではないが、これで私の実験はほぼ完成する」


実験?


「ボ、ボス・・・・・・それは一体、どんな実験なんです?」

男が勇気を振り絞るように尋ねる。


だが返ってきたのは冷ややかな拒絶の声だった。

「貴様が知る必要はない。ただ命じられたことを遂行しろ。この小娘を隣の部屋にある魔法陣の中心に寝かせろ。足も縛って、逃げられんようにな」


魔法陣。

実験。

その中心に私を?


背筋が凍りつく。

どんな恐ろしいことが待ち受けているのか想像もつかない。




男は乱暴に私を掴み上げると、腕を引きずるようにして歩かせた。

膝が擦れて痛みが走るが、抵抗する力は残っていなかった。


やがて床に強く押し倒される。

硬い石の冷たさが背中に広がり、身体が震える。


「おとなしくしてろ」


吐き捨てるような声とともに、足首をきつく縛られた。

もう一歩も動けない。

完全に囚われの身になった。


「やめて!お願い」


かすれた声がタオル越しに漏れる。

しかし男には届かない。

暗闇と拘束の中で、私は必死に心を繋ぎ止めるしかなかった。


魔法陣、実験、ボスと呼ばれる者の冷たい声。

何が始まろうとしているのか。


胸の奥で恐怖が渦巻き、鼓動が耳の奥で痛いほど鳴り響いていた。

男が遠ざかっていく足音の後、重々しい扉の軋む音が響き、鈍く閉じられた。


その直後、耳に残るのは少しずつ遠ざかっていく、ボスらしき存在の、低く湿った声だった。

「魔法陣に全ての魔力を吸わせたら完成だ。けけけっ」

笑い声が尾を引き、薄闇の中に消えていく。


だが、更に遠ざかっていく、わずかに残った男の声が、不安を増幅させた。


「あの女、死ぬんじゃないか?」

再びボスの声がかすかに届く。


「死んだところで問題あるか?実験がこれで・・・・・・」

それ以上は、小さすぎて聞き取れなかった。




後は不気味な静寂だけが残された。

胸が締め付けられるように苦しい。

挿絵(By みてみん)


私は必死に心の中で叫ぶ。

(私の魔力を・・・・・・全部吸い取る?)


(そんなことをされたら、私は・・・・・・死んでしまう!)


(でも、どうして?どうしてリディアまで狙われていたの?)


(私の魔力は、特別なわけじゃないのに・・・・・・一体、何のために?)


恐怖と疑問が胸を埋め尽くす。


それでも私は、最後の支えを心の中に必死に描き出した。

(ルナ!エヴァン、エレオス、リディア、ジャン、フィリーネ!きっと、見つけてくれる・・・・・・信じてるから!)


1人ひとりの顔を浮かべるたび、かろうじて自分を繋ぎ止めることができた。


暗闇に飲み込まれそうな意識を、必死で引き戻す。

押し倒されたときに打ちつけた膝や肩が、ジンジンと鈍く痛んでいる。


熱を帯びる感覚から、血が滲んでいるのも分かった。

そして次に訪れたのは、全身を覆う不気味な脱力感だった。


(この感覚・・・・・・まさか本当に!?魔力を・・・・・・強制的に奪われている?)

戦慄が背筋を駆け上がる。


手足は縄で固く縛られ、口には布が押し込まれ、首には冷たい金属の輪が重く食い込んでいる。

これは魔力の流れを阻害する首輪だ。


(魔法が使えない!)

喉の奥がひゅっと詰まり、震えが止まらなくなる。


必死に堪えても、涙は次々にこぼれ落ち、目隠しの布をじっとりと濡らしていった。

(怖い・・・・・・怖いよ!誰か、助けて!)


心が千々に乱れるばかり。


ただ、何かに吸い込まれるような感覚だけがじわじわと広がっていく。




ルナに教えてもらったファイアーストリームとアイスストリーム。


あのときの高揚感、誇らしさ。

仲間を守る力を手に入れたと信じていた。


オロチ・リヴァイアサンの燃え盛る炎から、アイスストリームでみんなを守れたこともあった。


(もっと・・・・・・もっとみんなの役に立つはずだったのに!)

胸が苦しくて、息が乱れる。


拳を握りたいのに動かせない。

その無力さが、さらに心を抉った。


(自分自身さえ、守れないなんて!)


ジャンもルナもフィリーネも、本来は別のパーティーなのに、私たちに手を差し伸べてくれた。

あの温かさが、今も胸に残っている。


ルナがジャンを見る目は、あんなにも幸せそうで・・・・・・心から羨ましかった。


私もいつか、あんなふうに誰かと笑い合える日が来ると、信じていたのに。


(もっとみんなと一緒にいたかった・・・・・・食卓を囲んで、笑って、くだらない話をして・・・・・・)


(ルナって、本当に幸せそうに食事をしていたなぁ、それを見るだけで、こちらも幸せになれるほどだったのに・・・)


記憶の中の風景に触れるたび、涙が止まらなくなった。

喉がひりつき、胸の奥から声にならない嗚咽が込み上げる。


(助けて! 助けて、ルナ、エヴァン!、エレオス、リディア、ジャン、フィリーネ! 誰か、助けて!)

必死に呼びかけても、答える声はない。


だが、次の瞬間。

(ソフィア!)

ルナが叫んだ・・・・・ような気がした。


だけど、声はもちろん、その気配はどこにもない。

(とうとう幻聴まで・・・・・。私・・・・・もう長くないのかな・・・・・)


ただ魔力が、確実に削り取られていく感覚だけが残酷に続く。胸の奥の灯火が、今にも消えそうに揺れていた。少しずつ、だけど確実に、私の中から力が奪われていく。





リディア「今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございます!」


エヴァン「そういえば、なんで毎回ジャンがいないんだ?」


ルナ「本人が“絶対出ない”って言ってたんだよー。私と揉めたくないんだって」


リディア「ルナって恋人がいるのに、他の女とイチャイチャしてたら、揉めて当然!」


エレオス「ははっ、確かにな、だけどそれはあくまで噂じゃん」


フィリーネ「それより、ソフィアが誘拐されたけど、大丈夫かしら?」


ルナ「ソフィア、またみんなで海鮮食べに行こうって約束したのに……」


フィリーネ「ええ。でも、あの子なら必ず覚えているわ。」


リディア「そうそう、食い意地の張ったルナの約束なんて忘れられないでしょ?」


ルナ「えーっ、なにそれー!」


エヴァン「あいつを助けに行こう!」


エレオス「よし、次も元気にいくぞ!」


全員「次回もお楽しみに!」



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