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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第三章 トルナージュの出来事、そして“ルナ”

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第73話  Dクラスの挑戦とAクラスの戦い方

7人は東の塔の16階へと入った。

「じゃあ、一度みんなの戦い方を見せてもらってもいいか?」


ジャンの言葉に、エヴァンは真剣な表情で頷いた。

「わかった。みんな、行くぞ」


エヴァンがそう言うと、ソフィア、エレオス、リディアもそれぞれ構える。


ほどなくして、モンスターが現れた。

鋭い爪を持つ、大型のモンスターだ。


「リディア!」

エヴァンの指示に、リディアは素早く詠唱を始める。


「マジックアップ、パワーアップ!」


仲間たちの体が淡く光を帯びる。

「ソフィア、行け!」

「はいっ!ファイアボール!」


ソフィアの杖から、燃え上がる炎の球が放たれる。

モンスターはそれを避けようと身を翻したが、その先にはすでにエレオスが立っていた。


「おっと、こっちだぜ!ウインドカッター!」

エレオスが風の刃で、モンスターの動きを誘導する。

そこにソフィアの炎が直撃した。


爆炎が巻き起こる中、エヴァンが背後に回り込み、渾身の一撃を突き立てる。


「再度くらえっ!ウインドカッター!」

エレオスの風の刃が続き、モンスターの体を切り裂いた。


4人の連携は、まるで1つの生き物のように滑らかだった。

それぞれの役割がはっきりと分かれており、一分の隙もない。


その完成度は、Cクラスどころか、Bクラスと呼んでも遜色ないほどだ。

ジャンはその見事な戦いぶりに、思わず感嘆の息を漏らした。


「これだけ連携が取れているのに、ボス戦だと崩れるのか?」

ジャンがそう尋ねると、4人は顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。


「ボスと戦うって思うだけで、もう・・・・・・緊張で手が震えちゃうんです」

ソフィアが、恥ずかしそうに目を伏せる。


「それで、オレたちの動きがバラバラになっちゃうんだよな」

エレオスが、後頭部を掻きながら言った。


「私が狙われると、もう頭の中が真っ白になっちゃって・・・・・」

リディアは、悔しそうに拳を握りしめた。


「なるほどな」

ジャンは、静かに頷いた。


実力は申し分ない。

だが“ボス戦”という特別な状況が、彼らの冷静さを奪ってしまうのだ。


ルナもフィリーネも、その話に頷いた。


「ねぇ、みんな! 20階のボス、ジェイド・クラブに挑戦してみようよ!」

ルナが、元気いっぱいに提案した。


「えっ!?」

4人の表情に、驚きと不安が混じる。


「大丈夫です。私たちが、皆をサポートしますから」

フィリーネは優しく微笑み、4人に穏やかな声で言った。


ジャンもまた、力強く頷く。

「ああ。オレたちがついてる。安心して戦ってくれ」


ジャンの言葉に、4人の表情に、少しだけ希望の光が灯った。


そして7人は、16階の転移装置の前に立ち、装置を起動させる。

光が包み込み、彼らは20階へと到達した。




ボス部屋の扉の前で、エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアの4人は立ち止まった。

その表情には、恐怖と緊張が色濃く浮かんでいる。


「大丈夫だ。オレたちは外からサポートする」

ジャンが落ち着いた声で言うと、ルナもすぐに頷いた。


「うん! 私たちがついてるから、安心して!」


それでも、4人の肩はこわばったままだ。


震える手で扉を押し開けると、重い音とともに光が差し込み、巨大な影が姿を現した。


ボスのジェイド・クラブは、宝石のような甲羅を持つ巨大なカニのモンスター。

2本の巨大なハサミをカチカチと鳴らし、威嚇するように身を揺らす。

挿絵(By みてみん)


「い、いくぞっ! み、みんな!」

エヴァンが声を張り上げるが、その声は震えていた。


「ソ、ソフィア! ファ、ファイアボールを!」

エヴァンの指示に、ソフィアは慌てて杖を構える。


「は、はいっ! ファイア、ボールっ!」


しかし、炎は標的を逸れ、ジェイド・クラブの足元に爆ぜた。


「ボ、ボス戦で、また・・・・・・、はずしちゃった!」

ソフィアが顔を青くする。


「ぼ、ぼ、僕がやる! ウ、ウインドカッター!」

エレオスが焦り気味に詠唱するが、放たれた風の刃は天井に吸い込まれていった。


エレオスが呆然としている間に、リディアが素早く動く。


「も、もう! 私がやるしかないでしょ!」

リディアが前に出て、必死に詠唱を始める。

「パワーアップ! パワーアップ! パワーアップ!」


だが、緊張のあまり、効果が重複しないパワーアップを何度も唱える。



その隙に、ジェイド・クラブの巨大なハサミが、エヴァンに襲い掛かる。


「エヴァン!」

ルナが、反射的にフレアを放った。


ルナの魔法は、ジェイド・クラブの甲羅に命中し、一瞬だけ動きを止める。

その一瞬の隙に、フィリーネは的確に指示を出した。


「みんな、落ち着いて! エヴァン、防御! エレオスはウインドカッター! リディア、補助を! ソフィア、攻撃を!」


その声が、まるで霧を払うように彼らの心に響いた。


「防御!」

エヴァンが剣を構え、迫るハサミを受け止める。


「ウインドカッター!」

エレオスが放った風刃が、今度は確実にモンスターの体を切り裂いた。


「ソフィア、ファイアーアローを!」

リディアが励ますように声をかける。


「はい!ファイアーアロー!」

ソフィアの杖から、鋭い炎の矢が放たれた。

それは甲羅の隙間を正確に貫き、閃光と共に爆ぜる。


「いける!」

4人の動きが次第に整っていく。

エレオスの支援、ソフィアの攻撃、リディアの強化、エヴァンの前線。

それぞれが自分の役割を取り戻し、まるで一つの歯車のように噛み合い始めた。


エヴァンが攻撃の隙を作り、ソフィアの炎がそこを撃ち抜く。

エレオスの風が支え、リディアの魔法が力を重ねる。


完璧な連携が生まれ、ジェイド・クラブは次第に押し込まれていった。


そして、最後の一瞬。

「これで、終わりだっ!」


エヴァンの剣がまっすぐに突き出され、ジェイド・クラブのコアを貫いた。


光が弾け、巨大な体がゆっくりと崩れ落ちる。


沈黙。

次の瞬間、エレオスが震える声を上げた。


「ほ、本当に・・・・・・、倒したんだ!」


「やっと・・・・・・やっと、倒したんだな!」


エヴァンが息を吐き、仲間と視線を交わす。


2人は顔を見合わせ、手を取り合って涙をこぼした。

リディアは満面の笑みを浮かべ、ソフィアは安堵の涙を流しながら、リディアに抱きつく。


「やった!倒したんだよね?自分たちの力で!!」


とソフィアが泣きながら言うと、リディアが応えた。

「うん!みんな・・・・・・、本当にすごいよ!」


光の粒が静かに散る中、4人の笑顔が、ようやく本物の輝きを取り戻していた。



ジャンは、その姿に、かつての自分たちの姿を重ねていた。


その頃は、まだEクラスだった頃だろうか。

強敵を前に、ルシウス、ゼノン、リリエル、ルナと手を取り合い、やっとの思いで勝利を掴んだ。

胸の奥に残るあの喜びと安堵が、今ふたたび蘇ってくる。


「わぁ・・・・・・!」

ルナが思わず歓声をあげた。


リディアとソフィアは抱き合い、エヴァンとエレオスは互いの手を握って涙を流している。

その光景は、ルナにはまぶしく、そして心の底から嬉しかった。


フィリーネもまた、皆の勝利を自分のことのように喜んでいた。

そこへルナが近づき、そっと彼女の手を取る。


「フィリーネも、すごいよ! 私、ちゃんと見てたんだから!」


突然の言葉にフィリーネは目を瞬かせ、それからふっと優しい笑みを浮かべた。



「それが、みんなの実力だ」


ジャンが言うと、ルナも満面の笑みを浮かべた。

「そうだよ!最初から、みんなならできるって、知ってたもん!」


フィリーネも静かに微笑み、穏やかに言葉を添えた。

「ええ。皆の努力が、報われた瞬間ですね」


その言葉に4人は何度もお礼を言った。




20階のボス部屋を攻略した7人は、喜びを分かち合いながら21階へと進んだ。


エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアの4人は、それぞれのプレートを登録すると、プレートに刻まれた文字を見る。


東 21階

西 --階

南 --階

北 --階


それを見た瞬間、胸の奥からじわりと実感が込み上げた。


「やったな、みんな!」


「うん!本当に倒せたんだね!」


「オレたち、すげーじゃん!」


「すごい・・・・・!」


4人はまだ興奮の冷めやらぬまま、互いに顔を見合わせ、笑い合いながらその瞬間を噛み締めた。


「とりあえず、今日はもう休もう」

ジャンの提案に、全員が頷く。

そして転移装置に手を触れ、光の中へと姿を消した。




塔の外に出ると、エヴァンたちは、改めてジャン、フィリーネ、ルナに向かって深々と頭を下げる。


「君たちのおかげで、オレたち、やっとボスを倒すことができたよ」

エヴァンの声には、心からの感謝がこもっていた。


「本当に感謝っす!じゃあ、オレたちはこれで!」

陽気なエレオスが笑い、リディアも手を振る。


だが、ソフィアだけがその場に残り、何かを言い出せずに立ち尽くしていた。


「どうしたんだ?」

エヴァンが、尋ねる。


「え?あ・・・、うん・・・」

ソフィアは言葉を濁し、何かを言い淀んでいるようだった。


「ソフィア、どうしたの?」

ルナが声をかけると、ソフィアは困ったように眉をひそめた。


「あの・・・・・その・・・・・」


「何か、聞きたいことがあるんじゃないかしら?」

フィリーネが静かに促すと、リディアが軽く肘でつつきながら、「ほら、言っちゃいなよ」と背中を押した。


ソフィアは意を決したように、まっすぐにジャンを見つめた。


「ジャンさん、ルナさん、フィリーネさん・・・・・。さ、3人の・・・・・、た、た、戦い方を・・・見てみたいです!」


声は震えていたが、その瞳には真剣な光が宿っていた。


「“さん”付けはいらない。それに、オレたちの戦い方なんて、大したものじゃない」

ジャンは苦笑しながらも、ソフィアの意図を察する。


「オレたちの戦い方を、参考にしたいのか?」


その問いに、ソフィアは力強く頷き、深く頭を下げた。


「はい・・・・・!Aクラスの人とBクラスの人が、どんな戦い方をしているのか・・・・・・ぜひ見て学びたいんです!」


ソフィアは、必死に訴えた。

ソフィアは、自分たちの実力はCクラス相当だが、ジャンたちのように戦えたなら・・・・・・

その想いが、彼女を突き動かしていた。


ルナは、慌ててソフィアの頭を上げさせた。

「ソフィア、そんなのやめて! わかったから! じゃあ、もう一回、20階に行ってみようよ!」


ルナの明るい声に、ソフィアの頬がみるみる赤く染まり、嬉しそうに頷いた。

「ありがとうございますっ!」


そして7人は再び、20階へと転移した。




ボスのいる扉の前で、ルナは真剣な表情で、エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアを見た。


「ねぇ、本当に私たちの戦い方で、参考になるのかな?」

ルナの問いに、4人は力強く頷いた。


「はい!お願いします!」

リディアが即座に答える。


「どんな戦い方なのか、自分の目で確かめたいんです!」

ソフィアの声も力強かった。


彼らの言葉に、フィリーネは静かに首を振った。

「たぶん、あまり参考にならないと思いますよ」


「どうして?」

ルナが首を傾げると、フィリーネは唇に指を当て、少しだけ茶目っ気を見せた。


「だって・・・・・私たち、化け物みたいですから」


「もぅ、そんな言い方しないでよ! 化け物扱いはやめて!」

ルナが頬をふくらませる。


ジャンは思わず吹き出した。

「ははっ・・・・・・まぁ、言いたいことは分かるけどな」


「ちょっと、ジャンまで!?」

ルナが抗議の目を向けると、ジャンは肩をすくめて笑った。


「正直、否定しづらいかもな」


「認めちゃうんですか・・・・・・」

フィリーネは苦笑し、わずかにため息をついた。


そんなやり取りに小さな笑いが起こり、張り詰めていた空気がふっと和らぐ。


ルナは扉に手をかけると、くるりと振り返り、4人にいたずらっぽく笑ってみせた。


「これから見ること、絶対に誰にも言っちゃダメだよ!」


「は、はい!」

4人は緊張した面持ちで頷いた。




そして、扉が開かれる。


巨大なカニのモンスター、ジェイド・クラブが、鋭いハサミを掲げて威嚇する。


ジェイド・クラブが動き始めると、フィリーネは静かに呪文を唱えた。


「来るわ」

フィリーネが静かに杖を構え、呪文を紡ぐ。

「マジックアップ」


淡い光がジャンとルナの身体を包み込んだ。

それだけで、彼女は一歩下がり、詠唱を止める。


リディアが不思議そうに首をかしげた。

「あの・・・・・なぜ、他の補助魔法をかけないんですか?」


フィリーネは優しく微笑む。

「見ていれば、分かりますよ」


ジャンとルナは軽く目を合わせ、頷き合った。

次の瞬間、2人の姿がふわりと宙に浮かび上がる。


ジェイド・クラブの足と同じ高さで、空中に停止する。


「え・・・・・?」

「うそだろ?」


エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアは、目の前で起こっている信じられない光景に、卒倒しそうになっていた。


「な、なんで人間が飛んでるんだ!?」

「何が起きてるの!?」


驚愕する4人の前で、ジャンとルナは空中で左右に分かれ、同時に詠唱を始めた。


「「ウインドカッター!」」


放たれた風の刃が、まるで生き物のように曲線を描きながら、ジェイド・クラブの脚を次々と切り裂いていく。


ジェイド・クラブは、全ての足を切り落とされ、重い音を立てて、巨体が地に沈む。


ジャンとルナは息を合わせ、次の呪文を同時に放った。


「「エクスプロージョン!」」


爆音とともに光が弾け、眩い炎が一瞬にして全てを包み込む。

爆風が収まった時、そこにモンスターの姿はなかった。

残されたのは、光の粒子だけ。


エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアは、誰1人、言葉を発せなかった。

戦闘はほんの数秒。

あまりに圧倒的で、理解が追いつかない。


「い、今のが・・・・・・本気じゃない・・・の?」

リディアの声が震えていた。


静まり返る中、ルナがにこっと笑って振り向いた。

「ね?フィリーネが言ったでしょ? あんまり参考にならないって」




「これが・・・・・Aクラスの戦い方・・・・・なのか!?」


ジェイド・クラブを瞬殺したジャンとルナの姿を前に、エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアの4人は呆然と立ち尽くしていた。


「な、なんだよ・・・・・、これ」

エレオスが、震える声で呟いた。


リディアは、信じられないという表情でジャンに詰め寄った。


「ジャンって、ホワイトマジシャンだよね?ホワイトマジシャンが、なんでウインドカッターとかエクスプロージョンなんて使えるの!?」


「オレはホワイトマジシャンだ」

ジャンは淡々と答える。


「いや、それはもう賢者の領域でしょ!?」


「賢者じゃない」


「そ、そんな・・・・・ホワイトマジシャンが使えるわけないじゃない!」

リディアは混乱気味に叫んだ。


その横で、ソフィアもルナに駆け寄る。

「ルナ・・・・・本当にマジシャン、ですか?」


「うん!正真正銘、マジシャンだよ!」


ルナが元気いっぱいに答えると、ソフィアは困惑した表情で首を傾げた。


「でも・・・・・マジシャンは、ウインドカッターなんて、絶対に使えるはずが・・・・・」


「昨日、使えるようになったんだーっ!」

満面の笑顔で言われ、ソフィアは言葉を失った。


その様子を見ていたフィリーネが、静かに笑みを浮かべる。


「だから、言ったでしょう?あの2人、もはや化け物みたいだって」


「フィリーネ! ひどいよ、それ!」

ルナが抗議の声を上げる。


ジャンは苦笑しながら肩をすくめた。

「まぁ、否定できないな。オレたちは、とある街では“規格外”って呼ばれてるくらいだし」


ジャンがそう言うと、ルナは目を丸くした。


「ちょ、ちょっとジャン!? “たち”って言ったけど、ジャンだけでしょ!? しかも、それ認めるの?認めちゃっていいの!?」


ルナのツッコミに、フィリーネもジャンも、そしてエヴァンたちも、思わず吹き出した。



笑いが落ち着くと、リディアが再び真剣な表情で前に出る。


「でも・・・・・・もし本当にホワイトマジシャンだって言うなら、証明してみせてよ!“マジックアップ”をかけてみて」


彼女の声には、ほんの少し挑むような響きがあった。

きっと、ジャンはきっと賢者なんだと、どこかで思っていたのだろう。


「ああ、わかった」


ジャンは静かに答えるが、何も唱えるそぶりを見せない。


しかし、次の瞬間、エヴァン、ソフィア、エレオス、リディアの4人は、自分たちの身体が光に包まれているのを感じた。


「かけたよ」

ジャンの穏やかな声が響く。


「う、うそ・・・・・無詠唱!?」

リディアが目を見開き、震える声を上げた。


誰もが言葉を失ったまま、ただ光に包まれた自分の手を見つめている。


常識が、静かに崩れていく音が聞こえるようだった。


ジャンとルナ、そしてフィリーネ。

彼らの“当たり前”は、他の誰にとっても“伝説”の領域だった。




ジャンが一歩前に出て、穏やかに口を開く。

「オレを含めて、ルナも、フィリーネも・・・・・・失われた魔法を扱える。もちろん、全部じゃないがな」


その言葉に、エヴァンたち4人は息を呑んだ。


「たとえば、飛行魔法」


ジャンがそう告げた瞬間、ルナとフィリーネが軽く頷き、3人の身体がふわりと宙に浮かんだ。

風が巻き、衣の裾が静かに揺れる。


「ま、また浮いて・・・・・・る?」

リディアが声を詰まらせると、ソフィアも続ける。

「な、なにこれ?」


エヴァンとエレオスは言葉も出せず、ただ見上げるだけだった。


浮遊したまま、ジャンは落ち着いた口調で続ける。

「フィリーネは、古代魔法の中でも特に希少な“ルーセントハート”を使える。 ルナは、マジシャンだけど本来扱えない風の魔法を操る」


ルナが「えへへ」と笑いながら、小さな風を指先で巻き起こしてみせる。

その風は柔らかく舞い上がり、ソフィアの金髪をそっと撫でた。



「オレ自身も、ロックウォールやロックバインド」


ジャンは言葉を区切ると、ゆっくりと手のひらを掲げた。

その手のひらに、淡い光がふっと灯る。

「そして、こうして手のひらに光を灯もす、ライトという魔法も使える」


その光は穏やかで、焚き火のような温もりを帯びていた。


3人はゆっくりと地上に降り立つ。

光が静かに消え、風が止む。


ジャンは、仲間たちに穏やかな眼差しを向けた。

「オレたちは、この世ではもう、古文書の中でしか目にすることのない魔法が使えるパーティーなんだ。だから、“職業”とか“クラス”なんていう枠は、もう意味を持たないんだ」


その微笑みは静かで、それでいてどこか誇らしかった。


エヴァン、ソフィア、リディア、エレオス──4人はただ、呆然と彼らを見つめていた。

自分たちの常識が、音もなく塗り替えられていくのを感じながら。





最後までお読みいただきありがとうございました。

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