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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第二章 メルグレイスの事件、ヒルダロア2つの真相

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第62話  魔法陣の真実

翌朝。


朝食の席で、リリエルは旅支度を整えていた。

「昨日はありがとね。すごく楽しかったわ」


「もう帰っちゃうの?」

ルナが寂しそうに言う。


「ええ。アステリアに戻って、塔の攻略をしないと・・・ギルドの依頼も時々あるしね。1日だけのつもりだったから・・・・・」


ルナは切り替えて、すぐに笑顔に戻った。

「また遊びに来てね!」


「もちろん。今度はみんなと来るわね」

リリエルは、見送りはいらない、と宿を出て行った。





リリエルが去ったあと、宿には3人だけが残った。


「せっかくだから、今日は3人でのんびりしようよ!」

ルナが胸を張って提案する。


「そうだな・・・・・でも、昨日も3人で一緒だったじゃないか」


「ちがうもん! 昨日はジャンがいなかったんだよ!」


そこへフィリーネがニヤリと笑みを浮かべて口を挟む。

「あら、女3人だけじゃ楽しくなかったの?」


「ち、違うもん!」

ルナは両手をぶんぶん振って必死に否定する。


「私は・・・・・その・・・・・えっと・・・・・」

言葉に詰まるルナを、ジャンとフィリーネが面白がって突っつく。


頬をぷくっと膨らませたルナを引き連れて、ジャンとフィリーネはは笑いながら、3人で宿を出た。


午前中は市場をぶらぶら。美味しそうな屋台を見つけるたびにルナが

「わー!美味しそう!」

挿絵(By みてみん)


と飛びつき、フィリーネは服屋に立ち寄っては

「見て!ルナ、こっちは似合うかしら?」

とご満悦。

挿絵(By みてみん)


そんな2人のはしゃぎぶりを見て、ジャンは苦笑混じりに目を細めていた。


昼は街角のパン屋に落ち着き、ルナがパンをほおばりすぎて頬をリスのようにふくらませるのを、2人が大笑いしながら眺める。

そんな賑やかなひとときとなった。




どこにでもある、平凡な日常。

だがジャンにとっては、この「平凡さ」がどこか遠いもののように感じられた。


  母の魔法陣。


心の奥でずっとざわめき続ける疑問は消えない。



午後、フィリーネとルナは街の雑貨屋で夢中になっていた。


「ねぇねぇ、見て見てこの布! 刺繍がすっごく可愛いんだよ!」

ルナはぱっと布を掲げ、目を輝かせる。


フィリーネは少し身を寄せて覗き込み、目を細めて微笑んだ。

「ほんとだわ・・・・・すごく細かい。きっと職人さんの丁寧な仕事ね」


2人は布を広げては角度を変え、楽しそうに比べ合っていた。

ジャンは少し離れた場所で2人を眺めていた。



ルナとフィリーネ。



性格も役割も違うのに、こうして一緒にいると、まるで昔からの親友みたいだ。

そんな穏やかな光景を見つめていると、ほんの一瞬だけ、母と父の姿が脳裏をよぎった。


結界の内側で2人が暮らしていたであろう日々。

どんな顔で過ごしていたのだろうか。



そのとき、フィリーネの声が少し真面目になる。


「・・・・・・少し、しわが寄ってるわね」

彼女は針と糸を取り出し、卓上で小さく縫い始めた。


「ほら、ルナ。こういう刺繍って、4隅を留めておかないと布が引きつれちゃうの」

「え、そうなの? 一つだけ止めれば十分じゃないの?」

ルナが覗き込みながら針を指差す。


フィリーネは微笑んで、軽く布を引いた。

その瞬間、片側の糸がつれて、全体が歪む。


「ね、こうなるの。4つの角を均等に支えてるから、模様がまっすぐになるの。

どれか一つでも外れると、残りが全部引っ張られて歪んでしまうのよ」


ルナは感心したように頷いた。

「へぇ・・・・・・バランスって大事なんだね。なんか、人間関係みたい」


「ふふ、たしかにね」

フィリーネが柔らかく笑う。


ジャンは2人のやり取りを黙って見つめていた。

布の上の一本の糸が、他の力をすべて引き受け、きしむようにねじれている。

(・・・・・・そうか。4つで均衡を保っていたのに、3つが消えたせいで、残った一つに力が集中して・・・・・・)


ジャンの胸の奥に、昨日の魔法陣が浮かんだ。

「・・・・・・これだ。残っている魔法陣が、他の3つの役割まで背負っているんだ。

だから結界が歪んで、家そのものを蝕んでいたんだ・・・・・・」


ルナが顔を上げた。

「じゃあ、消しちゃえばいいんじゃない? それで元に戻るなら!」


だがジャンは、すぐには頷けなかった。

針先が布をすくう音が、やけに耳に残る。

「・・・・・・いや。完全に断ち切ったら、布がほどけるかもしれない。もしかしたら、この歪んだ一本が、ギリギリのところで全体を保ってるのかもしれない」


フィリーネも静かに手を止めた。

「たしかに・・・・・・“残っているからこそ”、不安定ながら均衡している可能性もあるわね」


ルナは首をかしげた。

「うーん、難しいね。壊すのも怖いし、残すのも怖いってこと?」


ジャンは小さく頷いた。

「そうだ。どちらにしても、何かが変わる。だからこそ、慎重にならなきゃいけない」


フィリーネは静かに糸を結び直し、ルナはそれを見つめたまま呟いた。

「4つがなくても、きっとちゃんと繋がる方法があるよ・・・・・・ね、ジャン」


ジャンは答えず、遠くの空を見上げた。


(母さん・・・・・本当に消し忘れただけなのか? それとも・・・・・?)

胸の奥が熱くなる。


だが、まだ確信には至らない。

ただ小さな点と点が、かすかに繋がり始めたに過ぎない。


夕暮れ、3人は宿へ戻った。

窓の外に沈む陽を眺めながら、ジャンは1人、深く息を吐く。


日常の穏やかさの中に、確かに潜む「何か」。

その正体を突き止めるまで、自分は前へ進まなければならない。


そんな事を考えながら夜は更けていった。




翌朝。


街はまだ静かに眠りの余韻を残していたが、ジャンはすでに宿を出ていた。

ルナには家に行って来る旨の手紙を書いて出てきた。


夜が明けてすぐの澄んだ空気の中を歩きながら、昨日の会話が何度も頭の中で繰り返される。

【一本の糸・・・・・1つの魔法陣が残っているだけで、全体が歪むという事か】


母が刻んだ魔法陣。4つでひと組のはずが、一つだけ残っていた。

(確かめないと・・・・・)


足は自然と、あの家の前へと導かれていた。

まだ人通りは少なく、家々の影が長く路地を覆っている。


ジャンは深呼吸をして、家の外壁の隅に刻まれた魔法陣へと近づいた。

膝をつき、指先でなぞると、わずかに魔力が反応する。


「やっぱり・・・・・生きてる」

小さく呟き、目を閉じて魔力を込めてみる。


途端に、胸の奥でざらりとした感覚が広がった。

温かさと冷たさが混じり合った、不安定な響き。


確かに母の魔力だ。それなのに、どこかで濁っている。


(母さん・・・・・何を作ろうとしたんだ?)

記憶の底にある母の姿は、いつも優しく、微笑んでいる。


そんな人が、人を害する魔法を作るはずがない。


自分の母が最後に何を想い、なぜ結界を残したのか、今の自分にはまだ理解できない。

ジャンは立ち上がり、もう一度家全体を見回した。



ちょうどその時だった。


遠くからルナとフィリーネの声が聞こえてきた。

市場へ行った帰りらしい。


手を振る2人の姿を見て、ジャンも手を振った。


母の残した結界の正体。

魔法陣以外、何も手掛かりがない。




ちょうど合流したタイミングで、元ルナの家の後ろに住んでいるおじさんが出てきて問いかけた。


「おや、君たちか。・・・・・また家の中を見たいのかい?」


「いえ、周りを見に来ただけです。」

と姿勢を正して、ジャンは答えた。


続いてジャンが魔法陣の事など事情を話した時、おじさんは顎に手を当てて思い出すように語った。


「そういえば・・・・・セレスさんとアシュレイさんが出ていく日、見送ったんだけどね。引っ越しで忙しそうにしていた中、家の隅に行っては地面を撫でるように何かしてたよ。あれが魔法陣かどうかは分からないけど・・・・・ずいぶん丁寧に“消していた”ように見えたなぁ」


「・・・・・!」

ジャンの胸に電撃が走る。


母は確かに全てを消そうとしていた。

だが、引っ越しの慌ただしさの中で、一つだけ残ってしまった。


ジャンは立ち上がり、おじさんと2人を連れて、魔法陣の前へ駆け出した。

そして外壁の隅に残された小さな魔法陣に手をかざす。


「・・・・・母さんが、守ろうとしたものを・・・・・今度はオレが終わらせる」

深く息を整え、集中する。


母の魔力と重なり合う自分の魔力を流し込み、魔法陣の線を一つ一つ、静かに、確実に消していく。




最後の光が弾けるように消えた瞬間。


「っ! 今・・・・・分かった!」

フィリーネの目が見開かれ、思わず声を上げる。


「ジャン! この魔法陣、何をするものなのか、ハッキリと見えたわ!」

フィリーネの目はきらりと輝いて、嬉しさと興奮がにじみ出る。


ジャンは驚きで身を乗り出し、目を凝らしてフィリーネに問いかける。

「な、何だったんだ!? 教えてくれ!」


ジャンは緊張し、焦った様子が表れている。


「これはね、『愛する者を守る結界』なの。ジャンのお母さんは、研究の末に、ついに開発に成功したのよ!」

フィリーネは自信を持って言う。


ジャンはあまりの驚きに、消した魔法陣を見ながらつぶやく。

「なっ・・・・・、そうだったのか・・・・・」


フィリーネはその反応を見て、少し深呼吸しながら、穏やかな声で続ける。


「そして、この家に住んでいた時に結界を張ったの。わずかに異なる4つの魔法陣を家の4隅に配置することで、1つの強力な結界が出来上がっていたのよ」


フィリーネは映像を思い出しながら、穏やかにな眼差しをジャンに向けている。


ジャンはその情報を整理しようとしながら、口を開く。

「4つで、愛する者を守る結界・・・」


彼の声は落ち着いているが、心の中にひっかかるものがあるようだ。


フィリーネは頷きながら、少し悲しげな顔をして言葉を選ぶように話を続ける。


「でもね、不完全な部分があったの・・・・・もし、どれか1つでも魔法陣が壊れてしまうと、それは住人の『生命力』を徐々に奪って、それを糧にして結界を維持しようとする暴走を始めるのよ」


ジャンはその言葉に、ある事を確信したが信じられない、という目で問いかける。


「それは・・・もしかして・・・?」


フィリーネは俯きながら、静かに答えを返す。

「そう、これが、この家に住んだ人が非業の死を遂げた『セレスの呪い』と言われていたものの正体だったのよ」


フィリーネの声には深い哀しみがこもっていた。


ジャンは確信した。

母親が残してしまった1つの魔法陣の暴走が引き起こした惨劇に、言葉が出なかった。


ルナはその話を聞いて、叫んだ。

「そんなの・・・・・酷いよ! 守るためのものだったのに・・・!」


ルナの顔には信じられないという表情が浮かんでおり、驚愕が隠しきれない。


フィリーネは優しく微笑みながら、少し穏やかに言葉を続ける。

「でもね、映像が見えた瞬間に、かすかに胸を圧迫していた気配が、ふっと消えたの。・・・・・もう、この家を覆っていたものは、何も残っていないわ」


ルナはその言葉に胸がいっぱいになり、少し涙ぐみながらそっとジャンの手を取った。

「ジャン・・・・・よかったね。呪いが・・・・・消えて、本当に、・・・・・よかった」


ジャンはフィリーネの言葉を聞いて、安堵の息を吐き、プレッシャーから解放されたように呟く。


「・・・やっぱり母さんは・・・人を害するなんて、そんな人じゃなかったんだ」


ジャンは胸の内で解放感を感じながらも、たった1つの消し忘れた魔法陣が起こした悲劇を思い、目を閉じながら力なく笑う。


するとおじさんが、複雑な表情で言った。

「呪いではなかったんだな・・・・・」




突然ルナは思い出したように顔を上げ、涙を拭き、おじさんを見て言った。

「おじさん、子どもの頃に、うちに時々遊びに来た男の子、覚えてる?」


おじさんは答える。

「時々母親と一緒に遊びに来ていた、あの男の子、覚えているよ 初恋の相手だろう?」


「えっ!?・・・・・初恋って・・・・・知ってたのっ!?」

ルナは驚き、頬を真っ赤に染める。


そして、視線をジャンに向けながら、言う。

「その男の子って・・・・・ジャンのこと、だよ」


ルナは迷わず、ジャンの腕をぎゅっと抱きしめる。


「今も変わらない。私はずっとジャンが好き。だから、はっきり言うね。私たち、付き合ってるんだよ!」


おじさんは「おおっ」と目を丸くし、すぐに嬉しそうに頷いた。


「そうか、そうか! いやぁ・・・・・こんなに素直に言えるなんて、いいことだ」


その横でフィリーネは、額に手を当てて深い溜息をついた。


「・・・・・まったく、また始まりましたね。ラブラブの見せつけタイム・・・・・」

けれど、その口元にはどこか柔らかな笑みが浮かんでいた。




ジャンの母が意図的にやったわけではなかった。

だが、呪いの謎が解け、そして3人の絆がまた一歩深まった

そんなひとときだった。



ジャン「ここまで読んでくれて、ありがとう。・・・・・・いやぁ、久しぶりのあとがき登場だな」


ルナ「ほんとだね。最近、リリエルばっかり出てたもんね〜」


リリエル(少し照れながら)「わ、私、ジャンと一緒にあとがきに出られて、う、嬉しいです」


ジャン「お、おう、そう言ってもらえると、なんか照れるな」


ルナ(ピタッ)「え!?なにそれ?」


ジャン「え、なにが?」


ルナ「“嬉しい”って言われて“照れるな”って、どういう関係?」


ジャン「どういうって、普通の挨拶だろ!?」


フィリーネ(微笑みながら)「あらあら。リリエルも、嬉しいって言葉を選ぶあたり、女の子らしいわね」


リリエル「えっ!? ち、ちがっ! そんなんじゃないです!」


ルナ(腕を組んで)「ふーん、“そんなんじゃない”ねぇ。・・・・・・ねぇ、ジャン。もしかして、家の前でコッソリ何か話してた?」


ジャン「いや、してねぇよ!? ルナ、落ち着け!」


リリエル(慌てて)「本当に何もしてません! ただ、ジャンの分析がすごいなって思っただけで!」


ルナ「“すごいな”って、そうやって持ち上げて好感度稼ぐタイプなんだ!」


リリエル「ち、ちがいますっ!!」


フィリーネ(くすり)「ふふ。嫉妬するルナも可愛いわね」


ルナ(顔を真っ赤にして)「し、してないよっ! 全然してないから! ただっ!ちょっとだけムカついただけだもん!」


ジャン(苦笑い)「それ、完全に嫉妬のやつだろ」


ルナ「ちがうもんっ! ジャンは私の恋人なんだから、変な勘違いされたくないだけだよ!」


リリエル「か、勘違いなんてしてませんっ!!」


フィリーネ(にこり)「まぁまぁ、落ち着いて。リリエルが本当に恋してたら、ルナ、どうするの?」


ルナ(即答)「全力で阻止するっ!!」


ジャン「あ、あぁ」


リリエル「そ、そんな宣言しなくてもっ!」


フィリーネ「ふふ。愛されてるわね、ジャン」


ジャン「いや、俺としては命の危険を感じるんだが・・・・・・」


ルナ(怒り半分・照れ半分で)「ジャン! 次のあとがき、リリエルと2人で出たら許さないからねっ!」


リリエル「ひ、ひどいですー!」


フィリーネ(にこやかに)「ふふっ、賑やかですね。それではーー」


ジャン&ルナ&フィリーネ&リリエル「次回もお楽しみに!」


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