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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第二章 メルグレイスの事件、ヒルダロア2つの真相

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第60話  18階の奇妙な一致とわずかな違い

サーチ魔法で見たルナは、驚きながら言う。


「これ・・・・・南の塔と同じ・・・・・」

ルナは驚きながら言う。


目の前に広がっていたのは、他の塔で見た18階と寸分違わぬ構造。

通路の配置も、広間の柱の並びも、天井の装飾、広い部屋さえも同じだった。


「ここ、西の塔も同じだった。・・・・・じゃあ3つの塔は18階だけ、完全に一致してるってことか」

ジャンが低くつぶやく。


フィリーネも目を細め、ゆっくり頷いた。

「偶然じゃないわ。意図的に作られている・・・・・そう考えるしかないわね」


驚きと戸惑いが胸を満たすが、構造を知っている分、攻略自体は難しくなかった。


モンスターも南や北で遭遇したものと同じ。対応もすでに分かっている。


「ここは・・・・・楽勝だね!」

ルナが嬉しそうに声を上げ、魔法を放つ。


フィリーネが的確に支援を重ね、ジャンが後ろから守りを補強する。


戦闘は短時間で終わり、18階は難なく突破できた。

安堵も束の間、19階へと続く階段の前で、不意に異変を見つける。


「あれ?」

フィリーネが指を差す先、石壁に埋め込まれるように小さなカギ穴があった。


「鍵穴・・・・・?」

ジャンが近づき、じっと覗き込む。


「南にも北にも、こんなのはなかったよね」

ルナが首を傾げる。


「何の鍵なのか分からないけど、今は持っていない。無理にこじ開けても仕方ない」


ジャンがそう判断し、3人は顔を見合わせてうなずいた。

19階へと上がり、転移装置を操作する。




光に包まれ、外の世界に戻った瞬間。


目の前に広がったのは、息を呑むほど美しい光景だった。


「わぁ!」

ルナが感嘆の声を漏らす。


西の塔は海のそばにそびえている。

そのため、転移地点からは水平線が一望できた。


太陽はちょうど沈みかけ、真紅と黄金の光が海を染め上げている。

波の表面に反射する光は揺らめき、まるで無数の宝石が散りばめられたようだった。


「すごい・・・・・なんて綺麗なの」

フィリーネも思わず見とれ、胸の奥が熱くなる。


「はは、寝坊したおかげで、こんな景色に出会えるなんてな」

ジャンの言葉に、ルナが嬉しそうに笑う。


「うん・・・・・これだけで、今日来た価値があったよね」


だが、その幻想に浸るのは危険だった。

ここは魔の森。

強力なモンスターが潜んでいる。


「・・・・・近くに気配がある」

フィリーネが素早く察知し、声を潜める。


ジャンも即座に判断を下した。

「上に行こう!」


3人は飛行魔法を発動し、一気に上空へ舞い上がった。


地上から離れたその位置は、夕焼けと海を見渡す絶好の場所だった。


「わぁーーー!キレイ!」

ルナの目が輝く。


海と空の境界線に、赤い太陽がゆっくりと沈んでいく。

光はやがて橙から紫へと色を変え、夜の帳が降りる準備を始めていた。


「ずっと見ていたいくらいね」


フィリーネがつぶやくと、ジャンも静かに頷いた。


「・・・・・この景色、忘れられないな」

挿絵(By みてみん)


3人はしばし言葉もなく、ただ海に沈む太陽を見つめ続けた。

水平線の向こうへ完全に光が消える瞬間まで――。




3人は余韻に浸っていたが、次の瞬間、フィリーネはすでに軽く手を振っていた。


「じゃ、私は先に帰るわね。2人のいちゃいちゃに巻き込まれるのはもうごめんだから」


「えっ・・・・・そんなことしな・・・」


ルナが慌てて否定しかけたが、フィリーネは苦笑いを浮かべた。

「どうぞご自由にラブラブしながらゆっくり帰ってきなさい。私は先に宿に帰ってるから」


そう言い残し、彼女の姿はヒルダロアの方向へ飛んで行った。

「うぅ。ちょっと図星だったかも?」


ルナが頬を赤らめながらも笑顔でつぶやく。


ジャンは小さくため息をつきつつも、微笑んだ。

「まぁ、確かにフィリーネの前だと・・・・・な」


2人もヒルダロアに向けて飛び始める。


遥か前方には、飛び去るフィリーネの姿が小さく見えていた。

「フィリーネって速いよね!あの調子なら、全速力で一時間半もあれば帰れるんじゃないかな?」


ルナがそう呟くと、ジャンは横に浮かんでいる彼女に視線を向けた。

「・・・・・でも、オレたちは寄り道しながらゆっくり帰ろう。せっかく2人きりなんだし」


「うんっ!」

ルナはぱぁっと満面の笑顔になり、遠慮なくジャンの腕にしがみつく。


「もうっ、ジャンったら! そういうこと言うと、余計にべったりしちゃうよ?」


「・・・・・あぁ、分かってて言った」

そのまま2人は速度を落とす。


空は次第に群青へと変わり、やがて濃い紺色に沈んでいく。

「ねぇ、見て! 星が出てきたよ!」


ルナが指さした夜空に、小さな輝きが次々と顔を出す。

一番星が瞬き、続いて無数の星々が広がり始めた。


「綺麗だな・・・・・」

ジャンも思わず声を漏らす。


「魔物に怯えてたのが嘘みたいだ。こうして見ると、本当に世界って広い」


「ふふっ、なんだか、デートみたいだね」

ルナが頬を染めながら笑うと、ジャンは一瞬言葉に詰まった。


だがすぐに、少し照れたように小さく頷く。

「そうだな」


2人だけの空の旅は、静かで贅沢な時間となった。


時折草原で腰を下ろして休憩を挟みながら帰路についた。


やがて遠くにヒルダロアの街灯りが見え始めた頃には、すでに3時間が経っていた。

挿絵(By みてみん)


塔を出たときには夕焼けだった空も、すっかり夜に変わっている。


「帰ってきたね」

ルナの声に、ジャンも深く息を吐いた。


「ただいま、って感じだな」

2人はそのまま宿へ向かうことにした。




石畳の通りを歩いていると、ギルドの建物の前を通りかかる。

窓から漏れる明かりの中、見慣れた姿が目に入った。


「あれ・・・・・?、リリエルとフィリーネ?」

ルナが立ち止まり、指を差した。


ギルドの奥の席に並んで座っているのは、確かに2人だった。


「こんな時間まで話し込んでるのか……」

ジャンが呟く。


ギルドの扉を開けて中に入ると、リリエルとフィリーネは会話をぴたりと止め、こちらに視線を向けた。


リリエルは少し心配そうな顔をして、柔らかい声で言った。


「遅かったわね。帰りがずいぶん遅いから、何かあったのかと心配したのよ」


一方、フィリーネは唇の端を上げ、意地悪そうに笑う。

「やっと帰って来たのね」


そう言って隣のリリエルに顔を向ける。

「私の言った通り、のんびり帰ってきたでしょ?」


リリエルは少し肩をすくめながらも、安心した顔で話した。

「でも本当に遅かったのよ。だから心配していたの」


「・・・・・言った通りって、どういう意味だ?」

ジャンが怪訝そうにフィリーネへ問いかける。


フィリーネはいたずらっぽく目を細め、楽しそうに答えた。


「ラブラブでベタベタして帰ってくるってリリエルに教えてたのよ。もっと遅いと思ってたくらい」


「ラ、ラブラブ・・・・・・」

ルナの頬がみるみる赤く染まる。


けれど視線を逸らさずに、勢いよく言い返した。

「うん! ラブラブだったんだよ!」


その開き直りに、リリエルとフィリーネは同時に呆れ顔を浮かべる。

空気を変えるように、リリエルが軽く笑って話題を変えた。


「でも、飛行魔法があると確かに西の塔までは簡単に行けるわね。あっという間だわ」


そう言うと胸を張り、どこか誇らしげに声を弾ませる。


「実はね、私も昨日やっと飛行魔法を覚えたの。だから今日のお昼にアステリアを出て、試しに少し飛んでみたのよ」


少し苦笑しながら肩をすくめる。


「そしたら空を飛ぶのって、思ったより大変で・・・・・。まだ全然スピードが出せなくて。結局、日の暮れる前にようやくここに着いたの」


「えっ、じゃあずっと一人で飛んできたの?」

ルナが目を丸くする。


「うん。初めての空旅だったけど、なんとかね。でも、さすがに緊張したな」

挿絵(By みてみん)


それからリリエルは少し恥ずかしそうに笑った。


「本当はもう宿に泊まろうと思ったんだけど、せっかくなら3人と同じ宿がいいなって思って。だからここで待ってたら、先にフィリーネが帰って来て話してたの」


「そっか・・・・・だったら一緒に行こう。ちょうど戻るところだったんだ」

ジャンの言葉に、ルナも大きく頷く。


「そうそう! みんなで泊まった方が楽しいよ!」


「宿なら時間を気にせずおしゃべりできるしね」

フィリーネも微笑み、自然と4人で並んで宿へ向かうことになった。




宿に到着すると、リリエルがシングルの部屋を追加で申し込んだ。


ジャンとルナの部屋は少し広めだったため、集まる場所は自然とそこに決まり、それぞれ荷物を置いたあと、思い思いに部屋に集まってきた。


そして、椅子を引いたり、ベッドの端に腰を下ろしたりする。


やがて落ち着いた空気が流れ、4人はテーブルを囲む形で輪になった。


「それで、西の塔はどうだった?」

リリエルが興味津々の眼差しを向けてきた。


ジャンが少し考えてから言葉を選ぶ。


「思ったより危なげなく進めたよ。ただ・・・・・18階だけは、やっぱり南や北と同じ構造だったんだ」


「・・・・・18階だけ、全く同じ?」

リリエルの瞳が鋭く光る。


フィリーネが補足するように続けた。


「南の塔も北の塔も、そして今回の西も。構造が完全に一致していたのよ。広間の柱の並びも、通路の数も。偶然じゃない」


「となると、やっぱり何か意図がありそうね。古い文献でも、その理由は見つかっていないけど・・・・・」

リリエルは顎に手を当て、真剣な顔で考え込んだ。


ルナは身を乗り出しながら話を続ける。

「しかもね! 19階へ上がる階段の前に、カギ穴があったんだよ。今までの塔にはなかったのに!」


「カギ穴?」


「うん。何のためのものか分からないけど・・・・・きっと何かあると思うんだ」

4人の視線が交差し、部屋に静かな熱が広がる。


それから話題は自然と移り、リリエルの旅の道中のことへ。


「初めて空を飛ぶのって、本当に怖かったの。ちょっと風に流されただけで、心臓が止まりそうになって」


「分かる! 私も最初は怖かった!」


ルナが勢いよく相槌を打ち、2人は盛り上がる。


ジャンはその様子を見ながら苦笑いを浮かべ、フィリーネは小さく頷いた。


気がつけば話は尽きず、塔の話から魔法の練習法、さらにはヒルダロアでおすすめの食堂にまで広がっていった。


窓の外ではすでに星が瞬き始めている。

それでも4人の笑い声は途切れることなく、夜は静かに更けていったのだった。




夜更けのフィリーネ


夜も更け、宿の廊下はしんと静まり返っていた。


さっきまでジャンとルナの部屋から楽しげな声が聞こえていたが、今はもう収まっている。


リリエルの部屋もまた灯りが落ち、静かだった。


フィリーネは一人、自分の部屋の窓辺に腰を下ろし、月明かりを眺めていた。


ヒルダロアの街は静かに眠り、塔の影は遠くに溶けている。

夜空には星々が凛と瞬き、まるで見守っているようだった。



(・・・・・不思議なものね)



心の中で呟く。


たった2日でいろんなことがあった。

西の塔の18階の鍵穴、そしてリリエルとの再会。


けれど、彼女はあくまで通りすがり。

彼女は、明日にはアステリアに戻っているだろう。


結局、自分にとって本当に頼れるのは――ジャンとルナ。

この2人なのだ。


その事実を胸に抱いた瞬間、胸の奥にわずかな不安が浮かぶ。


  自分は、本当にこの2人を守れるのだろうか。


支援職として後方から支えることはできる。


けれど、あの18階で感じた絶望と、偶然にすぎないかもしれない「ルーセントハート」。


あれを再現できなければ、次は・・・・・・。



「私にできるのかしら?」



小さく声に出す。


ふと、昼間のジャンとルナの笑顔が思い出される。

2人は本当に息が合っていて、互いを信じ切っていた。

羨ましいほどに。



「でも・・・・・私が、2人を支えなきゃ」



口にしたその決意は、誰に聞かれることもなく夜に溶けていく。

けれど、それだけで胸の重みがほんの少し軽くなった。


窓を閉じ、ベッドに横たわる。

まぶたの裏には、淡い金色の光が残っていた。


あの日、自分の胸に宿った「ルーセントハート」。


それを再び呼び起こせるように、そう強く願いながら、フィリーネは静かに眠りへと落ちていった。



挿絵(By みてみん)


リリエル「今回も読んでくださって、本当にありがとうございます。」


リリエル「あの、今日はちょっと私から、お話をさせてくださいね。」


リリエル「空を飛ぶって、あんなに嬉しくて、でもちょっと怖いんですね」


リリエル「上から見たアステリアの街並みと、ヒルダロアの街並み、本当にきれいでした」


リリエル「それでも、風が強くて何度か落ちかけちゃいました」


リリエル「アステリアからヒルダロアまでは、思ったよりずっと時間がかかってしまったの」


リリエル「でも、ルナやフィリーネと再会できて、本当に嬉しかったわ」


リリエル「あの笑顔を見た瞬間、全部の疲れが吹き飛びました」


エルミナ(ひょっこり登場)「ねぇ、ちょっといい? 一人だけの登場ってずるくない?」


エルミナ「しかも、ジャンとも会えたのに“嬉しかったです”って言わないの?」


リリエル「えっ!? い、いえ、もちろん嬉しかったです! その・・・・・・言葉にするのが、ちょっと恥ずかしくて!」


エルミナ「ふふっ、リリエルったら、相変わらず素直じゃないのね」


リリエル「も、もう! いきなり出てこないでください!」


エルミナ「じゃあ、そろそろ締めましょうか」


リリエル「はいっ、それではー」



リリエル・エルミナ「「次回もお楽しみにーー!!!」」



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