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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第二章 メルグレイスの事件、ヒルダロア2つの真相

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第55話  北の塔へ

夜はさらに更け、星が瞬く中、ジャンとルナは宿に戻った。

2人はダブルベッドが置かれた部屋へと向かう。


部屋の扉を閉めると、ジャンはソファにどかっと腰を下ろし、ため息をついた。


「ルナ、あれはひどすぎる」

ジャンの言葉に、ルナはくすくすと笑いながら答えた。


「みんながジャンのこと、冷たい目で見てたね」


「お前のせいだろうが!」

ジャンはむっとした顔でルナを睨んだ。


ルナはそんなジャンの反応を面白がるように、ゆっくりと立ち上がると、ジャンに歩み寄った。


「ほら」

そう言って、ルナは自分のスカートの裾をめくり始めた。


ジャンの視線は、ルナの足に釘付けになる。

ルナは徐々にスカートを上げていく。


膝まで上げ、さらに太ももまでめくったところで、にやりと笑い、手を離した。


「見せてあげないよー、きゃはははーーー」

ルナはそう言って笑うと、逃げるように部屋の隅へと走った。


ジャンはすぐに立ち上がり、ルナを追いかける。

逃げようとしたルナは、足がもつれて転びそうになった。


「あ!」

ジャンは素早くルナの腕を掴み、そのまま抱きとめた。


ルナはジャンの胸に顔を埋める形になり、顔を真っ赤にしてパッと離れた。


ジャンは少し残念そうな表情を浮かべたが、ルナのその姿が可愛らしくて、すぐに微笑んだ。


ルナは少し俯きながら、ボソッと呟いた。

「あの日と同じ色だよ」


「え?あの日と・・・・・」

ジャンは顔を赤くして呟いた。


「あ、今想像したでしょー!エッチーーー!あはははは」

ルナはそう言って、再びからかうように笑って逃げた。


ジャンはもうルナを逃がすまいと、彼女をしっかりと捕まえて抱きしめた。


「ルナ」

ジャンの真剣な声に、ルナはドキリとする。


ジャンはルナの目をじっと見つめ、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「好きだ」


その言葉に、ルナの心臓は飛び出しそうになった。

「それ・・・・・、反則・・・・・」


ルナはそう呟きながら、ジャンの顔を見つめる。


2人は見つめ合い、長いキスを交わした。

唇が離れると、2人は静かにベッドに座った。


言葉はなかったが、お互いの鼓動が聞こえるかのような、温かい沈黙が部屋を包む。


ルナはそっと、ジャンの肩に頭を乗せた。

「・・・・・私も、大好き」


ルナの囁くような声に、ジャンは優しく微笑んだ。

2人はそのまま、ベッドに倒れこんだ。


温かいぬくもりと、満ち足りた幸せの中で、2人は穏やかな眠りについた。




空が群青から茜色に染まり、朝露が葉の上で宝石のように輝く頃、ジャンとルナはギルドの扉をくぐった。


すでにそこには、ライアス、カイラス、リリエル、ルミア、エルミナ、そしてフィリーネの姿があった。


旅立ちの朝の静かな緊張感が、一同の間に漂っている。

「もう行くのか?」 カイラスが、少し寂しそうな声で尋ねた。


ジャンは頷き、ルナを見た。

「ああ。ヒルダロアに立つ。ルナの母親の死の真相を突き止めるために」


「でも、私たちはまだ飛行魔法が・・・・・」

リリエルが言葉を濁す。


カイラスとルミアも、不安げな表情だ。


ルナは、そんな彼らの顔を1人ひとり見つめ、静かに、しかし決意に満ちた声で言った。


「ごめんね。でも、ママの死んだ理由を、どうしても知りたい!だから出来るだけ早く行きたいんだ!」


ジャンが、その言葉を継いだ。


「安心してくれ。ライアスはもう、ほぼマスターしている。エルミナも、今日中には間違いなくマスターできるだろうな。この2人から教われば、みんなもすぐに飛べるようになるさ」


「それに、私だって2日目には上下移動できるようになったんだもん。みんなも、きっとすぐにできるよ!」


ルナが、皆を励ますように明るく付け加えた。


ギルドの裏手にある、人目につかない路地裏。

そこには、小さな別れの儀式が待っていた。


皆が互いに顔を見合わせ、言葉にできない思いを交換する。


それは、短い間だったが、かけがえのない時間を共に過ごした仲間たちの、再会を誓う約束だった。


「じゃあ、行ってくるね」




ルナの言葉を最後に、ジャン、ルナ、フィリーネは、地面を蹴り、一気に上空へと飛び立った。


眼下に広がる街並みが、みるみるうちに小さくなっていく。


風が肌を打ち、空気が胸を満たす。


フィリーネが、その自由と解放感に満ちた表情で叫んだ。「飛行魔法って、最高ね!」


その言葉を合図に、フィリーネは一気に速度を上げた。


まるで、解き放たれた鳥のように、まっすぐに、そして猛烈な速さでヒルダロアの方角へと飛んでいく。


ジャンとルナは、その驚異的な速度に、ただただ呆然とするしかなかった。


「え、ちょ、速すぎないか?」

ジャンが叫ぶ。ルナも、


「フィリーネ、待ってよー!」

と続いたが、2人の声は風にかき消され、フィリーネには届かなかった。


最高速度で飛んでいるはずなのに、その距離は開くばかり。


しばらくして、フィリーネは遥か前方の空で、小さく振り返り、2人の速度が遅いと言いたげに、手を振って見せた。


「なんだよ、あれ・・・・・」

ジャンが驚きながら呟いた。


「フィリーネって、こんなに速く飛べたんだ・・・・・」

ルナもまた、驚きを隠せない様子で言った。


結局、2人はフィリーネに追いつくことができず、彼女の背中は、やがて地平線の向こうへと消えていった。


残されたジャンとルナは、自分たちの飛行速度を上げようと、必死に魔法を操るしかなかった。


広大な空の海を、フィリーネを追いかけるようにして飛んでいたジャンとルナは、全速力で追っていた。


杖からの魔力供給なので疲労は全くない。

前方に見えるのは、古代文明の遺跡だ。


その遺跡は、西側のおよそ半分が深い森に覆われ、まるで悠久の時を物語るかのように静まり返っていた。


「ルナ、フィリーネはどこまで飛んで行ったと思う?」


ジャンの声に、ルナは「わかんないよー」と答えた。


その時、下から、かすれた声が聞こえてきた。

「ジャン、ルナー!こっちこっちー!」


声に驚き降下すると、森の木陰でフィリーネが座り込んでいた。


彼女の肩は上下し、額には汗が光っている。


「最高速度で飛んでたら、さすがに疲れたわ。でも2人は、遅すぎ!」


そう言って、フィリーネは笑うが、その顔には明らかな疲労の色が浮かんでいた。


ジャンが、周囲の様子を探るためにサーチ魔法を放つ。


地面に放たれた光の波紋は、すぐさま地下へと広がり、彼らが立っている場所が、ただの森ではないことを示していた。


「すごいな・・・・・地下深くにも古代遺跡が広がっている。地上で見えるのは、ほんの一部だったのか・・・・・」


ジャンは感嘆の声を漏らし、ルナに促した。


「ルナも見てみろよ。サーチ魔法でも、見えない場所がたくさんあるんだ」


ルナは興味津々で目を輝かせ、自身もサーチ魔法を放った。


彼女の放った光は、ジャンのものよりもさらに深く、広く広がり、失われた都市の全容をわずかながら映し出した。


「わあ、すごーい!まるで地下に別世界が広がってるみたいだよ!確かに見えない場所があるね。今度、みんなで探検してみようよ!」


ルナの無邪気な声に、フィリーネは目を丸くした。

「え・・・・・サーチ魔法って、それももう失われたはずの魔法なのに・・・・・」


フィリーネは、ジャンとルナを交互に見つめ、信じられないという表情を浮かべる。


「ジャンも規格外だけど、ルナも規格外ね」


そう言って笑うフィリーネに、ルナは頬を膨らませて抗議した。


「私は規格外じゃないもん!ジャンに教わったんだから!」


しばらく休憩した後、3人は再び空へと舞い上がり、ヒルダロアへと向かった。


街の北西側には、天高くそびえる巨大な塔が、太陽に照らされて神々しく輝いている。

挿絵(By みてみん)




太陽が真上に来た頃、3人はヒルダロアの食堂で昼食をとった。


長い旅路の疲れを癒すように、温かいスープと焼きたてのパンを口にする。


フィリーネがアストリアでの出来事を面白おかしく話すと、ジャンとルナも声を上げて笑った。


「さて、と」

食後、ジャンが立ち上がり、塔の入り口を指差した。


「いよいよ、ここからだな」

ルナとフィリーネも頷き、3人は塔へと向かった。


ヒルダロアの塔は、他の街にある塔と比べ、どこか厳かな空気をまとっているように感じられた。


塔の中はひんやりとしていた。


下層のモンスターは、ゴブリンやクリブン程度。ジャンとルナは息の合った連携で瞬く間に片付けていく。

「ファイアーアロー!」

「ウインドカッター!」

交わる魔法が爆ぜ、敵は塵となった。


「さすが、最強のカップルね」

フィリーネが小さく笑う。


階を重ねても、2人の勢いは止まらない。氷と炎が交錯し、敵は次々と倒れていく。


そして、10階。巨大な石扉の向こうにはゴーレム。

「行くぞ、ルナ!」

「うん!」


炎と氷の魔法が轟き、最後にルナの「フレア」が核を貫いた。

ゴーレムは崩れ落ち、静寂が戻る。


「・・・・・・今日はここまでにしよう」


10階を攻略した3人は、11階への階段を上り、今日の攻略はここで終えることにした。


転移装置にプレートをかざすと、そこには、これまでの記録が刻まれている。


ジャンとルナは

東 --階

西 --階

南 42階

北 11階


フィリーネは

東 --階

西 --階

南 26階

北 11階


自分たちの歩みが、1枚のプレートに記録されていくのを、3人は感慨深く見つめた。


塔を出ると、空には3日月が輝いていた。


ヒルダロアの街の明かりが、まるで星のようにきらめいている。


「今日は、お疲れ!」

ジャンが言うと、フィリーネは微笑み、ルナはジャンの腕にそっと自分の腕を絡めた。




夜が街を包み込む中、、ジャンはルナに静かに語りかけた。


「行ってみようか」ルナは言葉もなく、ただ小さく頷いた。

2人は街の中心地を離れ、人通りの少ない道を歩いていく。


月明かりが2人の影を長く伸ばし、やがて視界が開けた先に、2軒の家が寄り添うようにして建っていた。


片方は、角地に建つ、かつてジャンの両親が結婚前に住んでいた家。

その隣にある家、それはルナの母親、リアーナが住んでいた家だ。


リアーナとジャンの母親セレスは、隣同士で非常に仲が良かったという。


しかし、今、2つの家は、まるで時が止まったかのように静まり返っていた。


「ここだな・・・・・」


ジャンが言うと、ルナが、辛そうな顔で呟く。


「子どもの頃は楽しかったなぁ・・・・・」


その言葉とともに、ルナの目から一粒の涙がこぼれ落ちた。

ジャンは何も言わず、ただ静かにルナを抱きしめた。


ルナの小さな震えが、ジャンの胸に伝わってくる。


「ママ、どうして死ななければいけなかったの?」

ルナの声は、独り言のように小さく、しかし悲しみに満ちていた。


「どうしてこの家は18階のたたりと呼ばれるの?私たち、ここの塔の18階で、死ぬのかな?イヤだよ、ジャン。私を置いて行かないでね」


ルナは、まるで迷子になった子どものように、ジャンの服を強く握りしめた。


ジャンは、ルナの髪をそっと撫でながら、力強く答える。

「ああ、置いて行かない。いつまでも隣にいる」


その言葉は、ルナを安心させるためのものだったが、ジャン自身の心にも響いた。


同時に、彼の心には、怒りの炎が静かに燃え始めていた。


(セレスの呪いなんて!)


ジャンは心の中で叫んだ。


(そんなものあるわけない!母さんは優しい人だったんだ!)


ジャンの両親が引っ越した後に住み着いた人々が非業の死を遂げたという噂は、「セレスの呪い」と呼ばれた。


そしてルナの母親リアーナが18階で命を落とし、その後に住み着いた人々が塔の18階で命を落とした事から「18階のたたり」と言われた元ルナの家。


ジャンは、この2つの噂の真相が、決して呪いなどではなく、何らかの魔法的な罠や、あるいは全く別の原因によるものだと確信していた。


彼は、ルナの母親の死の謎を解き明かすこと、そして、両親の家の汚名を晴らすことを、改めて心に誓った。


そして何より、愛するルナを、何があっても守り抜くことを。


2人はしばらくの間、ただ互いの温もりを感じながら、静かに佇んでいた。




月の光が2人を優しく包む中、ジャンとルナは無言で宿へと帰った。


言葉はなかったが、互いの手がしっかりと握りしめられ、そこに流れる静かな時間が、2人の心をつないでいた。


過去の悲しみが、2人の間に特別な感情を呼び起こす。


部屋に戻ると、ジャンはルナをそっと抱きしめた。

言葉にならない想いを伝えるかのように、何度も何度も口づけを交わした。


それは、互いの存在を確かめ合い、深い絆を再確認するための儀式だった。




翌朝、テーブルを囲んで朝食をとりながら、3人はミーティングを始めた。

議題は、もちろん塔の攻略だ。


ジャンがまず話し始める。


「11階から17階までは、敵の出現も法則が読みやすいし、危険度も一気に跳ね上がるわけじゃない。ここは・・・・・」


話を進めて行く。


17階までの話し合いは、終わりに近づき、ルナが言う。

「私たち3人なら対応できるね!」


「むしろ、足並みを揃えて進んだ方が安全だと思います」

フィリーネも柔らかな声で同意する。


ジャンは「よし、じゃあ決まりだ。これから18階の進み方を決めよう」


ジャンの提案に、ルナとフィリーネは頷いた。


しかし、話は18階の攻略方法へと移ると、2人の意見が割れた。


「ママの死の真相を早く知りたい!、だから今日のうちに18階を攻略したい」

ルナが強く主張した。


「でも、18階は『18階のたたり』と呼ばれるほど危険な場所なんだ。焦らず準備を整えて、明日改めて挑もう」

ジャンは慎重論を唱えた。


2人の意見が平行線をたどる中、フィリーネが静かに口を開いた。


「ねえ、2人とも。ひとまず18階まで行かない?遅くてもこのメンバーなら、たぶん昼過ぎには18階にたどり着ける。そこで昼食を挟んで食堂で再度話し合わない?そうすれば、また落ち着いて話せるでしょ」


フィリーネの冷静な提案に、2人は納得した。


「わかった、フィリーネの言う通りにしよう。ルナもそれで良いな?」


ジャンが頷き、ルナもそれに同意した。




3人は塔へと向かい、再び攻略を開始した。


11階から17階までの道は、これまでと比べてモンスターの強さが増していた。

だが、ジャンとルナの攻撃魔法、そしてフィリーネの支援魔法の連携により、着実に階層を上っていく。


そして、ついに18階に到達した。

そこには、1つの広間が広がっており、その光景に3人は息をのんだ。


「これって・・・・・」ルナが信じられないといった様子で呟いた。


「アステリアにある南の塔の18階と、全く同じ作りだ・・・・・」

ジャンが冷静に状況を分析する。


入り口付近だけ同じかと思い、ジャンがサーチ魔法を展開する。


彼のサーチ魔法は1.5マイル先まで感知できるため、このフロア全体の構造を把握するには十分だった。


その結果、判明したのは、このフロアの構造が、アステリアの塔の18階と細部まで全く同じであるということだった。


「やはり、同じだ」

ジャンが声を潜めて言った。


ルナもサーチ魔法を展開する。

「どういうことなの!?」


ルナの声に、場の空気が一瞬張りつめる。

だがその時、フィリーネが静かに口を開いた。


「ねえ、昼食にしない? お腹が空いていると、冷静な判断もできないわ。塔を出てから、もう一度話し合いましょう」


その穏やかな提案に、ジャンもルナも顔を見合わせ、うなずいた。

ルナはなおも胸の内に焦りを抱えながらも、フィリーネの言葉に従い、塔を出ることにした。


この18階が、アステリアの塔と同じ構造であることは、今後の攻略において重要な意味を持つはずだ。


3人は、この事実にどう向き合っていくか、話し合う必要があった。




食堂へ向かった3人は、簡単な食事をとりながら、再び話し合いを始めた。


「アステリアにある南の塔の18階と、ヒルダロアにある北の塔の18階が同じ構造だなんて・・・・・」ルナが戸惑いを隠せない様子で言った。


「塔って、世界に4つありますが・・・・・もしかして、他の2つの塔の18階も同じ構造なんでしょうか?」


フィリーネが素朴な疑問を口にした。


ジャンは静かに首を振った。


「可能性は低いんじゃないか?南の塔はフィリーネも26階まで行ってるから分かると思うが、17階以下の構造は全く違う。それに、西の塔は誰も行ったことがないからな」


「じゃあ、なんで南の塔と北の塔の18階だけが同じ構造なの?」


ルナが不思議そうに尋ねた。


ジャンは考え込んだ。


「何か、特別な意味があるのかもしれない。あるいは、何かの仕掛けか・・・・・」


「例えば?」


ルナが聞くと、ジャンの手を握りしめた。


「オレの母さんが結婚前に住んでいた家は、セレスの呪いって言われてるけど、母さんが引っ越した後に住んだ人が非業の死を遂げたこと、これは、もしかしたら何か関係があるのかもしれないな」


ジャンの言葉に、ルナは目を丸くした。

「うん、それはあるかも知れない・・・・・」


ルナはそう言うと、続いて静かに呟いた。


「もしかしたら、この18階の謎が、ママとパパの死の真相を解き明かす鍵になるかもしれないね」


「ああ、そうだ。きっと、この塔は、ただのダンジョンじゃない。オレたちの過去と、未来をつなぐ場所なのかもしれない」


ジャンもまた、ルナの言葉に呼応するように言った。


2人の間には、フィリーネには理解できない、特別な空気が流れていた。


フィリーネは、そんな2人のやり取りを静かに見守っていた。


ジャンが真剣な顔で問いかける。

「ルナ、昼食も済んだ。これから18階に行くか? それとも明日にするか?」


ルナも同じく真剣な表情で答えた。

「今日はね、もっと大切なことがあるんだよ!」


ジャンとフィリーネは顔を見合わせ、同時にルナを見つめる。

次の瞬間、ルナはパッと笑顔になり、瞳をキラキラさせて言った。


「この後は、ジャンとデート! アステリアで調べてたんだよー! ヒルダロアの美味しいものはね・・・」


あまりに唐突な言葉に、ジャンとフィリーネは固まった。

完全に予想外の展開だった。


フィリーネが、今まさに昼食を終えたばかりのテーブルを見て、軽くため息をついた。

「私、もうお腹いっぱいなの。ジャンも、ついさっき食べたばかりでしょ?」


「ああ、これ以上食べたら、腹が限界突破しそうだな」

ジャンが腹をさすりながら言うと、ルナはにっこり笑って、胸を張った。


「美味しいものは別腹だよ!」


フィリーネとジャンは、ほぼ同時に「はあ・・・・・・」と呆れ声をあげる。


それでも、ルナはまったく気にした様子もなく、楽しげに続けた。


「それでねー、ギルドの2つ先の交差点を曲がると・・・」

延々と楽しげに話し続けるルナを横目に、フィリーネが小声でつぶやく。


「私、てっきり18階に行く流れになると思ってたんだけど。今、ルナ・・・・・・お菓子の話してるわね」


「あ、ああ・・・・・・朝のテンションからして、絶対に“攻略”モードだったはずなんだが」

ジャンは額を押さえながら苦笑する。


そんな彼に、フィリーネが柔らかく微笑んで言った。

「明日、何が起こるか分からないしね。・・・・・・だから、今日はデートに行ってあげて。 ルナ、こんなに生き生きしてるんだもの」


ルナの話がようやく一段落したところで、ジャンは小さく息をつき、言葉を選ぶように口を開いた。

「・・・・・・じゃあ、明日の朝、もう一度18階に行こう。今度は、しっかり準備して」


ルナは嬉しそうに笑い、力強くうなずいた。

その瞳には、真実を求める強い意志と・・・・・・そして、これからのデートを心から楽しもうという決意?が宿っていた。




ジャンとルナの2人は街へ、フィリーネは宿へ足を向けた。


ジャンとルナの2人は夕方には宿に戻った。

3人は、明日に備え、早めに就寝することにした。


その夜、ジャンとルナは、再び一つのベッドで眠りについた。互いの温もりを感じながら、夢の世界へ入って行った。




最後までお読みいただきありがとうございました。

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