第51話 いよいよヒルダロアへ
クレープを食べ終わると、ルナは満足そうな顔で立ち上がった。
そして勢いよく立ち上がり、両手を腰に当てる。
「よし!お腹いっぱいになったし、デートに行こ!」
ジャンは思わず瞬きをした。
「デート?」
「うん!せっかく、私たち付き合ったんだもん。メルグレイスの街で、デートしよ!」
ルナの突然の提案に、ジャンは戸惑いながらも、その言葉に胸をときめかせた。
けれど理性が、まだ僅かに抵抗を示す。
「でも・・・・・ヒルダロアに・・・・・」
「明日からでいいじゃん!」
ルナは、ジャンの手を取り、目を輝かせた。
「せっかくこの街にいるんだもん!今日だけ、楽しもうよ!」
その瞳は、いつものように、まっすぐで純粋な光を放っている。
ジャンは、その手の温もりに観念したように小さく笑った。
「・・・・・分かった。じゃあ、今日は一日、デートだな」
ジャンの言葉に、ルナは飛び跳ねて喜んだ。
その姿を見て、ジャンは自然と笑みをこぼした。
2人は、手を取り合って、街を歩き始めた。
昼間の喧騒が、熱気となって広がり、異国情緒をさらに深めている。
ルナは、市場で売られている珍しい香辛料や、色とりどりの服を見て、目を輝かせた。
「わあ、ジャン!見て見て!この服、すごく綺麗じゃない?」
ルナは、そう言って、鮮やかな青い服を手に取った。
ジャンは頬をかきながら、少し照れくさそうに笑う。
「ああ・・・・・・綺麗だな。服も・・・、だけどさ、ルナも・・・」
ルナは一瞬きょとんとしたあと、顔を赤くして俯いた。
「も、もう!そういうこと言わないでよ!」
ジャンは肩をすくめ、苦笑いを浮かべた。
その空気がくすぐったくて、どちらも自然に笑ってしまう。
しばらく歩くと、広場の中央で大道芸人が火を吹いていた。
ルナは思わずジャンの腕を掴み、目を輝かせる。
「わぁっ!すごい!ほんとに口から火が出てる!」
火の粉が夜の光のように散るたび、ルナは息を呑み、拍手を送った。
ジャンはそんなルナを横目で見ながら、目を細める。
「お前、ほんと楽しそうだな」
「だって、こういうの好きなんだもん!」
ルナは笑いながら、ジャンの腕に軽くもたれかかった。
「ねぇ、ジャン。今度、私たちも魔法で大道芸してみよっか?」
突然の提案に、ジャンは思わず吹き出した。
「おいおい・・・・・・また無茶言って。ま、ルナらしいけどな」
ルナは頬をふくらませながらも、楽しげに笑った。
「ふふ、絶対楽しいよ!」
夕暮れ時、空が茜色に染まり始める頃。
2人は静かな公園のベンチに腰を下ろした。
風が通り抜け、木々の葉がかすかに揺れる。
「今日は・・・・・・本当に楽しかったね!」
ルナは満足そうに笑いながら、ジャンの肩にそっと頭を預ける。
ジャンはその重みを感じながら、穏やかに答えた。
「ああ。オレも、すごく楽しかったよ」
ルナは少し恥ずかしそうに視線を上げ、唇を尖らせる。
「えへへ・・・・・・また、デートしてくれる?」
ジャンは少し間をおいて、ルナの髪を指先でそっと撫でた。
「もちろん。何度でも、な」
その言葉に、ルナの顔がぱっと明るくなり、嬉しそうに笑った。
やがて、夜空には星が瞬き始め、2人は手をつないで宿へと帰っていった。
街の明かりが遠くに滲み、並んだ影がゆっくりと夜の石畳に伸びていく。
宿に戻り、部屋のドアを閉めると、ルナはくるりと振り返り、いたずらっぽく微笑んだ。
その瞳は、まるでまだ昼間の光を宿しているようだった。
「まだ寝るには早いでしょ? 夜は長いよ!」
ジャンは小さく笑い、肩の力を抜いた。
「そうだな。・・・・・・何かしたいことでもあるのか?」
「うん!」
ルナはぱっと顔を輝かせて、窓の外を指さした。
「夜の空の散歩に行こうよ!」
その突拍子もない提案に、ジャンは目を瞬かせた。
「空の・・・・・・散歩?」
だが、ルナの弾けるような笑顔を見て、思わず口元が緩む。
「ふっ・・・・・・いいな。行こう」
「やったーーっ!」
ルナは嬉しそうに両手を合わせ、勢いよく窓を開け放った。
外の風が、2人の髪をやさしく揺らす。
次の瞬間、ルナは軽やかに宙へと舞い上がった。
その後ろを、ジャンも静かに追いかける。
メルグレイスの街は、昼の喧騒が嘘のように静まり返り、無数のランプが星屑のように瞬いていた。
空を漂う風は冷たく、心地よい。
「わあ・・・・・・! すごい・・・・・・!」
ルナは両手を広げて、夜空の中をゆっくりと回った。
その笑顔は、ひときわ輝いて見える。
ジャンはそんな彼女を見つめ、思わずつぶやいた。
「・・・・・・本当に、楽しそうだな」
「だって、こんなに綺麗なんだもん!」
ルナは嬉しそうに笑い、そっとジャンの手を取った。
「ねえ、ジャン。見て、街の灯りが宝石みたい」
ジャンはその手を握り返し、優しく頷いた。
「・・・・・・ああ。本当に、綺麗だ」
夜風が2人の間を抜け、衣の裾を揺らす。
遠くを指さしたルナが、はしゃぐように声を上げた。
「見て、ジャン! あっちの方も、すごく明るいよ!」
ジャンは目を細めてそちらを見た。
「あれは・・・・・・おそらくヒルダロアだな」
ルナは嬉しそうに息をのむ。
「明日、あそこに行くんだね! なんだか、楽しみになってきた!」
そして、ぎゅっとジャンの手を握る。
「・・・・・・ああ。オレもだ」
その言葉に、ルナは満足げに笑った。
やがて2人は、夜空をゆっくりと旋回しながら、静かに宿へと戻っていった。
部屋に戻ると、ルナは余韻に浸るように大きく伸びをし、ふわりとベッドに身を投げ出した。
「今日は、本当に楽しかった! なんだか、夢みたいだよ・・・・・・」
彼女は仰向けのまま、隣に立つジャンを見上げる。
その瞳には、まだ夜景の光が映っていた。
「ねえ、ジャン・・・・・・今日も、一緒に寝てもいい?」
少しだけ頬を赤らめ、遠慮がちに笑うルナ。
ジャンは少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「ああ。もちろんだ」
彼が隣に腰を下ろすと、ルナは嬉しそうに身を寄せ、ジャンの胸に顔をうずめた。
「うん・・・・・・やっぱり、ジャンの隣がいちばん落ち着く」
ジャンはそんな彼女をそっと抱き寄せ、穏やかに囁く。
「オレもだよ。オレの隣は・・・・・・ルナじゃないと落ち着かない」
その言葉に、ルナの胸が熱く跳ねた。
2人の距離が、ゆっくりと縮まっていく。
唇が重なった瞬間、世界が静まり返る。
甘く、やさしいキス――それだけで、全てが満たされていた。
唇が離れると、ルナは恥ずかしそうに微笑み、ジャンの胸に再び身を預ける。
2人の呼吸が重なり、夜の静寂に溶けていく。
「・・・・・・ずっと一緒だよ、ジャン」
ルナが小さく呟くと、ジャンはその髪を撫でながら答えた。
「ああ。永遠にな」
ルナは微笑み、静かに目を閉じた。
2人の温もりがひとつになり、穏やかな夜がゆっくりと更けていった。
ジャンの胸の鼓動が、耳の奥で静かに響いている。
そのリズムが心地よくて、私はただ、その音に身をゆだねた。
あたたかい・・・・・・。
こうしていると、世界の全部が優しくなる気がする。
いつも強がって笑ってるけど、ほんとは、こんな時間がいちばん好きなんだ。
メルグレイスの夜の灯りが、窓からこぼれて、ジャンの横顔を淡く照らしている。
「あの光のひとつひとつが優しくて……まるで、私たちの時間を見守ってくれているみたい」
そんなふうに感じると、少しだけ切なくなる。
“このまま、時間が止まればいいのに”
そんな言葉が、心の中でそっとこぼれる。
でも、それは叶わない願い。
明日になれば、また旅が始まる。危険もあるし、笑ってばかりはいられない。
それでも――。
「ジャン……ずっと、ずっと一緒だよね?」
問いかけるように指を絡めると、少しだけ彼の指が動いた。
その微かな動きが、まるで返事のように感じられて、思わず微笑む。
「ジャンは、私のこと、どう思ってるんだろう……?」
不安が、胸の奥で小さく揺れた。
でも、彼の寝顔を見ていると、そんな心配もすぐに溶けていく。
「やっぱり……大好きだな」
私はそっと微笑んで、静かに目を閉じた。
夢の中でも、この温もりを感じられますように――と願いながら。
翌朝、柔らかな朝日が窓から差し込み、ベッドに並んで眠る2人をやさしく照らしていた。
ジャンがゆっくりと目を開けると、隣には穏やかな寝顔のルナ。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
その顔は、まるで幸せそのもののようだった。
「ルナ、起きろ。朝だぞ」
ジャンがそっと肩に触れて声をかけると、ルナは小さく身じろぎし、まぶたをゆっくり開いた。
「んん・・・・・・おはよう、ジャン」
まだ眠たげな声でそう言い、ふわりと笑う。
ジャンは安堵した。
いつものルナが、ここにいる。
「よし。じゃあ、今日はヒルダロアに向かうか」
「うん! ヒルダロア、楽しみだね!」
ベッドから勢いよく起き上がったルナの笑顔に、ジャンもつられて微笑む。
宿を後にした2人は、朝の光の中を並んで歩き出した。
メルグレイスの街は、早朝から人々の声と香ばしいパンの匂いに包まれ、活気に満ちている。
「まずは歩いて街外れまで行こうよ。街並みもゆっくり見れるし!」
ルナは振り返り、期待に満ちた瞳でジャンを見上げる。
「分かった。歩いて行こうか」
ジャンの返事に、ルナは嬉しそうにぴょんと跳ね上がった。
そして何も言わず、にこにこと手を差し出す。
「・・・・・・なんだ?」
ジャンが首をかしげると、ルナは唇を尖らせて手を引っ込めずに言った。
「手、つなごうよ」
「は? いや・・・・・・今は周りに人がいるし、ちょっと・・・・・・」
ジャンは思わず目を逸らし、耳のあたりが赤くなる。
「だって、せっかく付き合ったんだもん! デートなんだから、手くらい、つなごうよ!」
ルナはむすっと頬をふくらませ、ぐいっと一歩近づく。
その様子は、まるで拗ねた子どものようだった。
「いや・・・・・・でも・・・・・・恥ずかしいだろ・・・・・・」
ジャンが困ったように頭をかくと、ルナはさらに眉を寄せる。
「えー! ずるい! ジャンだけ恥ずかしがってるのずるい!!」
その勢いに押され、ジャンは苦笑しながら肩をすくめた。
反論する気力が、完全に削がれてしまう。
「・・・・・・分かった。ほら、行くぞ」
ジャンはため息をつきつつも、ゆっくりと手を差し出した。
ルナの顔がぱっと明るくなる。
「えへへ・・・・・・やっと、だね」
嬉しそうに微笑みながら、ルナがその手に指を重ねた――その瞬間。
背後から、聞き覚えのある声が響いた。
「・・・・・・ルナ? ルナじゃない!?」
ルナとジャンは同時にびくりと肩を跳ねさせ、慌てて手を引っ込めた。
恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは見覚えのある女性。
南の街アステリアでルナと同じパーティーにいた、フィリーネだった。
「フィリーネ・・・・・!」
ルナは、信じられないといった表情で、フィリーネを見つめた。
フィリーネは、ルナの無事な姿を見て、心底安堵したように、胸をなでおろした。
「ルナ!?本当に、ルナなのね!よかった・・・・・よかった・・・・・!」
フィリーネはそう言って、ルナを力強く抱きしめた。
「フィリーネ・・・・・どうしてここに・・・・・?」
ルナは、フィリーネの突然の再会に、驚きを隠せないでいた。
「私・・・・・アステリアで意識がなかった時、両親がメルグレイスに強制的に・・・・・ね。でも、両親とは昔から仲が悪くて・・・・・」
フィリーネはそう言って、少し悲しそうな顔をした。
「それで、どこに行くんだ?」
ジャンは、冷静な口調でフィリーネに尋ねた。
「これから、ヒルダロアに向かおうと思ってるんだけど・・・・・・」
フィリーネの言葉に、ジャンは「そうか」とだけ答えた。
「ところで、そちらの方は?」
フィリーネはジャンの顔をしばらく見つめ、首を小さく傾げた。
「フィリーネ、ジャンのこと覚えてないの?」
ルナが不思議そうに尋ねる。
そうすると、フィリーネではなく、ジャンが口を開いた。
「いや・・・・・・どこかで見たような気はするんだが」
ジャンの答えに、ルナは目を丸くした。
「えっ? だってアステリアで、カイラスたちとルシウスたちが塔を調査したときに・・・・・・」
その言葉で、ジャンは『はっ』と気付いた。
「あの時、新しくルナたちのパーティーに加わったのが、フィリーネだったのか!」
ジャンは姿勢を正し、改めて向き直る。
「自己紹介が遅れたな、フィリーネ。オレはジャン。ルナの仲間だ」
「・・・ああ。思い出しました。ルシウスから“亡くなった”と聞かされ・・・・・・」
そこまで言ったところで、フィリーネは口をつぐみ、はっとしたように表情を曇らせ、深く頭を下げた。
「・・・・・・申し訳ありません。軽率でしたわ」
「気にするな。オレは生きているし、フィリーネは、意識不明だと聞いていたからな。無事なら、それで十分だ」
ジャンは穏やかに微笑んで応じた。
「それにね、フィリーネ!」
ルナが元気いっぱいに割り込むと、ジャンの腕に抱きつく。
「ジャンは私の大事な人なの!」
ジャンは不意を突かれて頬を赤らめる。
「えっ・・・・・・まさか・・・・・・」
フィリーネは驚きに目を見開いた。
「そう! 私たち、付き合うことになったんだよ!」
ルナは嬉しそうに報告した。
一瞬、フィリーネは呆然としたが、やがて優しい笑みを浮かべる。
「・・・・・・そう。よかったわね、ルナ」
「うんっ!」
ルナは満面の笑みで応えた。
ジャンが口を開く。
「それで、フィリーネもヒルダロアに行くんだな?」
「ええ。私も向かうつもりです」
フィリーネは落ち着いた声で答えた。
「じゃあ一緒に行こうよ! 私とジャンと、3人で旅しよっ!」
ルナは目を輝かせて提案する。
「・・・・・・3人で?」
フィリーネは少し驚いたように2人を見つめた。
ジャンは考えるように一拍置いてから、優しく頷いた。
「ああ、それも悪くないな。旅は道連れだ」
「やったー! フィリーネと3人だー!」
ルナは飛び跳ねんばかりに喜ぶ。
「・・・・・・ふふっ。ありがとう、ルナ、ジャン」
フィリーネは頬を緩め、静かに2人へ礼を示した。
「よし、じゃあ、ヒルダロアに向かおうか!」
ジャンが東の草原の先に広がる森を指差す。
ルナも元気よく頷いた。
「待って!」
フィリーネが慌てて2人の背中に声をかける。
「あそこに見える森は……人の心を狂わせる何かがあるって、昔から言い伝えられているの。だから、まずは南へ迂回して、それから東へ向かう方が安全よ」
彼女はそう言って地図を取り出し、指先でなぞりながら丁寧に説明する。
だが、ジャンとルナは真剣に聞いているようには見えず、顔を見合わせてにやにや笑っていた。
「……ちょっと、聞いてるの?」
思わず眉をひそめて問いかけるフィリーネ。
「フィリーネ……」
ルナが真剣な顔で呼びかける。
「何かしら?」
「私たち、フィリーネと肩を組んでいい?」
「えっ?……どうして?」
「だめ?」
ルナは上目遣いで見つめてくる。その瞳は悪戯っぽくきらきらと輝いていた。
フィリーネはわけが分からず、首をかしげ思った。
(今、危険な森の話をしていたはずよね? どうして急に肩を組むなんて……からかわれてるのかしら?)
困惑しつつも、ルナの真剣な眼差しに押され、断りきれなかった。
「……いいわ。でも、本当にどうしてなの?」
「ありがとっ!理由は後でね!」
ルナは笑顔でフィリーネの右に、ジャンは左に立つ。
「ジャン、フィリーネを真ん中にして、左右から肩を組むよ」
2人は息を合わせるように動き、当たり前のようにフィリーネの肩へ腕を回した。
突然のことに、フィリーネはますます警戒を強める。
「ちょっと……一体何を始める気なの?」
「大丈夫!フィリーネは動かないでね」
ルナはそう言って、まるで秘密の儀式でも始めるように、真剣な顔で念を押した。
「……絶対に、誰にも言ったらダメだからね!」
「わ、分かったわよ……」
困惑と戸惑いの入り混じったまま、フィリーネは頷くしかなかった。
「いくよ、ジャン!」
「ああ!」
ルナとジャンの声が重なった瞬間――フィリーネの身体がふわりと浮き上がり、地面が遠ざかっていった。
「え・・・・・?」
フィリーネは、状況が飲み込めず、目を白黒させた。
彼女の視界は、瞬く間に変化していった。メルグレイスの街並みが、みるみるうち上空からの視点に変わっていく。
「ちょ・・・・・ちょっと待って!な、何なのこれ・・・・・!?」
フィリーネは、パニックになり、声を上げた。
「大丈夫だよ!フィリーネ!落ち着いて!」
ルナの声が、横から聞こえてくる。
フィリーネは、恐る恐る顔を上げ、ルナとジャンを見た。
2人は、まるで鳥のように、空を優雅に飛んでいる。
その姿は、まるで夢の中にいるかのようだった。
「これは・・・・・飛行魔法・・・・・?でも、そんな・・・・・!失われた魔法のはずじゃ・・・・・!」
フィリーネは、信じられないといった表情で、声を震わせた。
ジャンの声が、耳元で聞こえてくる。
「ああ、失われた魔法らしいな。オレたちも、最近使えるようになったんだ」
ジャンの言葉に、フィリーネはますます混乱した。
「最近って・・・・・どういうこと・・・・・?そんな・・・・・嘘でしょ・・・・・?」
フィリーネは、半信半疑のまま、目を白黒させていた。
しかし、その視界に映る景色は、紛れもない現実だ。
森を上から見下ろし。風が、頬を優しく撫でる。
3人は、あっという間にメルグレイスの街から遠ざかり、森の上空を飛んでいた。フィリーネが警告した、人を狂わせるという森だ。
しかし、空から見る森は、ただの美しい森だった。静かに広がり、木々が風に揺れている。
「すごい・・・・・本当に・・・・・空を飛んでる・・・・・」
フィリーネは、驚きと感動で、声を震わせた。
その間も、3人の飛行速度は衰えることなく、あっという間に森を飛び越えた。
フィリーネの視界に、再び街が見えてきた。
「あれが、ヒルダロアの街だ」
ジャンの言葉に、フィリーネは目を輝かせた。
そして、3人は、街外れの草原に静かに降り立った。
メルグレイスを出発してから、わずか30分後のことだった。
「・・・・・本当に、着いた・・・・・」
フィリーネは、呆然とした表情で呟いた。
「どうだった?空の旅は」
ルナが、楽しそうにフィリーネに尋ねた。
フィリーネは、一瞬言葉を失ったが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「最高だったわ!こんなにすごい魔法、見たことない!」
フィリーネは、興奮を隠せない様子で、身振り手振りを交えながら語り始めた。
その様子は、まるで子供のようだ。
ジャンとルナは、そんなフィリーネの様子を見て、微笑み合った。
「さあ、ヒルダロアの街に入ろうか。」
ジャンはそう言って、街へと続く道を歩き始めた。
ルナとフィリーネも、その後ろを、嬉しそうに並んで歩いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。




