表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第二章 メルグレイスの事件、ヒルダロア2つの真相

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/145

第45話  焦燥感

ジャンは、膝から崩れ落ちた。


ついさっきまでそこにあったはずの、ルナが差し出した手が、指先が、そしてその愛らしい笑顔が・・・・・


「ルナ?」


「ルナ!?」


「ルナーーーーーー!!」

ジャンの叫び声が、静まり返った広場に虚しく響き渡る。


ジャンの叫びが、ようやく現実の音を取り戻した。


周囲の人間は混乱し、悲鳴が響き渡る。


商人は商品を投げ出し、買い物客は逃げ惑う。


パニックの渦の中心で、ジャンは立ち尽くしていた。


「どこへ・・・・・!?」

ジャンはすぐさまサーチ魔法を最大限まで展開した。


ジャンの意識は研ぎ澄まされた感覚の網を張り巡らせる。


しかし、気配はどこにもなかった。


ルナは、つい先ほどまで確かにここに存在していた。


それが、まるで最初から何もなかったかのように、完璧に消えている。




「光に包まれて・・・・・消えたって・・・・・?」


逃げ惑う人々の間から、目撃者の声が聞こえる。


「あの女の子が、突然光に包まれて・・・・・」


「綺麗な光だったけど、不気味だった・・・・・」


口々に語られる言葉は、ジャンを苛立たせるばかりだった。


具体的な情報は何もない。




ジャンは、この街に隠された“歪み”を思い出した。


これまでの調査で明らかになった、街の地下や外縁部に張り巡らされた巨大な魔法陣のような存在。


ルナがこの魔法陣らしき物によって、どこかへ転移させられたのかもしれない。


ジャンは思考を巡らせると、すぐに行動に移した。


広場を飛び出し、街を駆け抜ける。


ギルドに戻って助けを求める時間すら惜しかった。


「ルナ、どこにいるんだ・・・・・!」




街中を縦横無尽に走り回る。


地下に広がる古代遺跡の入り口


夜通し調査した街外れの歪み


そして地図に印をつけたすべての地点を、再確認していく。


しかし、歪みはそこにあったが、ルナの気配は微塵も感じられなかった。


ジャンの胸に、焦燥と苛立ちが波のように押し寄せる。


ルナが消えてしまったという現実が、まるで熱い鉄を押し付けられているかのように、ジャンの心を焼いた。


冷静であろうとする理性と、心の奥底から湧き上がる衝動が激しくぶつかり合う。


ジャンはいつでも冷静で、感情に流されることはないと思っていた。


それは当然の心構えだった。




だが、ルナの存在は、いつの間にかジャンの心を占めるようになっていた。


アステリアで初めてのパーティーを組んだ時


ルシウス、ゼノン、リリエル、ルナ、そしてジャン


この時は、間違いなくただのパーティー仲間だった。


ルシウスはDクラスからCクラスへ昇格する時辺りから、支援魔法のチカラに心酔するようになり、徐々におかしくなり始めたが、その頃もまだルナは単なる『仲間』だった。


リリエルに対して、仲間だから守りたい、助けたい、役に立ちたいと思っていたのと同じように、ルナに対してもそうだった。


だが、いつの頃からだろう?


ルナの無邪気な笑顔、純粋な好奇心が、ジャンの心を少しずつ溶かしていた。


飛行魔法の特訓時、ルナには無理なんじゃないか?

と諦めそうになったジャンに対して


ルナは文句を言いながらも、あきらめず練習を続け、それを信じ励まし続けた結果、飛べるようになった。


2人で心を通わせたサーチ魔法の訓練。


それは、特別な感情の始まり・・・・・


「いや、違う・・・・・ルナはただの仲間だ」


ジャンは自分に言い聞かせるように呟いた。


「初期の頃から一緒というだけ、大切ではあるが、仲間として大切なだけだ!」


しかし、その言葉は空虚に響き、ジャンの心を鎮めることはなかった。


ジャンは首を振る。


仲間だから守りたい、助けたい、役に立ちたい!!それと一緒だ!


そう思い込もうとするが、ルナが危険に晒されているかもしれないという恐怖、ルナを失うかもしれないという絶望。


それらが、ジャンの心を激しく揺さぶっていた。


「くそっ・・・・・!」

ジャンは苛立ちに、壁を殴りつけた。


乾いた音が響き、血が出てくる。


その痛みが、かろうじてジャンの心を現実に引き戻した。


「ルナは・・・・・オレが必ず見つけ出す!」


ジャンの瞳に、再び強い意志の光が宿る。


それは、冒険者としての使命感でも、仲間意識でもない。


心の奥底で認めかけていた、ルナへの特別な感情が、ジャンを突き動かしていた。




ジャンの脳裏に、ルナの笑顔が蘇る。


蜜を絡めた菓子を頬張り、満面の笑みを浮かべるルナ。


大道芸人のパフォーマンスに目を輝かせ、子供のように拍手を送るルナ。


そして、サーチ魔法で心を通わせ、ジャンの心に温かい光を灯してくれたルナ。



更にルナの会話がよみがえる。


(教えてあげません。長い時間、とだけ言っておきます。これは、ジャンさんへの罰です)


(あっ、あの! まだ準備できてなくて! もうちょっとだけ! 短いバスルームが! 長くて・・・ね! 馬車だから! 星が鏡がでね ……わけわかんない!!!)


(絶ーーーーーっ対、行こうね!ジャン!)


(すごい!ジャンと私のコンビって、最強だね!)


ジャンは首を振り言い聞かせる。


「こんなこと思い出しても何も変わらない!集中だ!」




ジャンは目を閉じ、意識を集中させた。


「必ず、見つけ出す・・・・・!」


ジャンは再び広場に戻った。もう一度サーチ魔法を展開する。


もしかしたら、見落としている何かがあるかもしれない。


ジャンは、広場の中央に立つ噴水に手をかざした。


魔力を、1点に集中させる。


その時、ジャンの意識が、かすかな光の残滓を捉えた。


それは、ルナが消えた広場から、まっすぐ伸びる1本の道のように見えた。


「これだ・・・・・!」


ジャンは目を見開き、その光の残滓を追う。


それは、街の地下に広がる古代遺跡の入り口へと繋がっていた。


「やっぱり、あの魔法陣が関係しているのか・・・・・!」


ジャンは、すぐさま古代遺跡の入り口へと向かった。


しかし、そこには、異変の調査中に何度も行き止まりとなった岩盤があった。


「くそっ、これじゃ入れない・・・・・!」


ジャンは苛立ちを隠せない。


その時、ジャンの頭の中に、ルナの声が響いた。


(ねえ、ジャン。この中に、入ってみたくない?)


ルナの無邪気な声が、ジャンの心を一瞬にして凍り付かせる。


「ルナ・・・・・? お前、どこにいるんだ!?」


ジャンは周囲を見渡すが、そこにルナの姿はない。


(ルナ! どこだ!? 返事をしろ!)


ジャンは、テレパシーで、そして声で必死にルナに語りかける。


「ルナッ・・・・・!」


ジャンは、その場に崩れ落ちそうになる。




ルナの意識が、確かにジャンの心に触れた。


しかし、それはあまりにも短く、か細い光のようだった。


(さっきの言葉は、幻聴だったのか?)


(絶望の中でまやかしだったのか?)


だが、ジャンはここで、確かにルナを感じた。


再びルナの意識を捉えようと、ジャンはサーチ魔法を張り巡らせる。


だが、もう何も感じられない。


「くそっ、どうすれば・・・・・!」


ジャンは、立ち上がると再び広場へと戻った。


行き場のない怒りが、ジャンの心を支配していた。


街の人々は、広場での出来事からまだ立ち直れていないようだった。


何人かの人々は、遠巻きにジャンの様子を伺っている。


しかし、誰もジャンに近づこうとはしなかった。


「ルナは、どこにいるんだ・・・・・」


ジャンは、もう1度だけ広場でサーチ魔法を使う。


しかし、やはり何もなかった。


「どうして・・・・・どうしてだ・・・・・!」


ジャンは、自分の無力さを痛感した。


「いや、諦めるな・・・・・」


ジャンは、自分に言い聞かせるように呟いた。


まだ、できることがあるはずだ。




ジャンは、ルナが残した言葉を思い出した。


「入ってみようよ、ジャン。ちょっとだけ・・・・・」


その言葉が、ジャンの心を強く揺さぶった。


(そうか、テレパシーだ!)


ジャンは、かつてルナと心を通わせたサーチ魔法の応用を思い出した。


テレパシーは、互いの意識を直接繋げる魔法だ。


通常は、相手の魔力を感知できなければ使うことはできない。


しかし、もしルナの意識が、まだこの街のどこかに残っているのだとしたら・・・・・。


ジャンは、目を閉じ、全神経を集中させた。


(ルナ・・・・・聞こえるか・・・・・? ルナ・・・・・!)


しかし、返事はない。


ただ、虚しい沈黙が返ってくるだけだった。


ジャンは、何度も、何度も、ルナに語りかけた。


しかし、どれほど声をかけても、ルナからの言葉は返って来なかった。




一方、その頃。


ルナは、深い闇の中にいた。


周囲には、光も音もない。ただ、凍えるような冷たさと、重苦しい空気がルナを包み込んでいた。


「ここ、どこ・・・・・?」


ルナは、不安にかられて、震える声で呟いた。


ルナの視界に映るのは、ただの漆黒の闇だけだった。


身体は、まるで浮いているかのように軽く、重力から解放されたような感覚に陥っていた。


「ジャン・・・・・どこにいるの・・・・・?」


ルナは、必死にジャンの名前を呼んだ。


だが、ルナの声は、この闇に吸い込まれていくようで、誰にも届かない。


ルナは、自分を襲った光を思い出した。


それは、とても温かく、心地の良い光だった。


しかし、次の瞬間、ルナは意識を失い、気が付くとこの場所にいたのだ。


「私、どこかに連れてこられちゃったのかな?」


ルナは、不安に耐えかねて、涙をこぼした。


こんなにも心細いのは、初めてだった。


いつもそばにいてくれたジャンの姿が、今はどこにもない。


「そうだ、ジャンに・・・・・!」


ルナは、ジャンと心を通わせたテレパシーを思い出した。


この闇の中で、唯一の希望だった。


(ジャン・・・・・聞こえる・・・・・? 私、ルナだよ!)


ルナは、全魔力を込めて、ジャンの意識に語りかけた。


しかし、ルナの言葉は、まるで霧の中を彷徨うかのように、ジャンには届かなかった。


「どうして・・・・・どうして繋がらないの・・・・・」


ルナは、絶望に打ちひしがれた。


ルナは、もう2度とジャンに会えないのではないかという恐怖に襲われた。




ジャンは、諦めずにテレパシーを試みていた。


何度も、何度も、ルナに語りかける。


ジャンの心が、絶望の淵に沈みかけていた、その瞬間。


(ルナ・・・・・!)


ジャンの魔力が、わずかに揺らぐ。


それは、ジャンの言葉に反応したかのように、ジャンの心を揺さぶった。


(ルナ・・・・・!)


ジャンは、必死にルナに語りかける。


その時、ジャンの意識に、かすかな光が灯った。


それは、間違いなくルナだった。


「繋がった・・・・・!」


ジャンは、歓喜に震えた。


ジャンは、このわずかな光を頼りに、ルナの意識に語りかける。


(ルナ! どこにいるんだ!? 返事をしろ!)


(ジャン・・・・・! ジャンだ・・・・・! よかった・・・・・)


ルナの声が、ジャンの心に響き渡る。それは、少し震えていたが、間違いなくルナの声だった。


(今、どこにいるんだ!?)


(わかんない・・・・・何も見えないの・・・・・。真っ暗で、冷たくて・・・・・)


ルナの声は、不安に満ちていた。


ジャンは、ルナの恐怖をありありと感じ取った。


「大丈夫だ、ルナ。必ず、お前を見つけ出す・・・・・!」


ジャンは、ルナを安心させるように、強く語りかけた。


そして、ジャンは、ルナとのテレパシーを維持したまま、サーチ魔法を展開した。


「このテレパシーの魔力追跡なら・・・・・!」


ジャンは、ルナの意識から発せられる魔力の波長を、詳細に分析する。


それは、ジャンの魔力とルナの魔力が似ているからこそできる事だったが非常に難易度が高かった。


だが、絶対にルナを救う、という強い意志が奇跡を起こす。


ルナの意識が、まるで羅針盤のように、ジャンの進むべき道を指し示していく。


「見つけた・・・・・!」


ジャンは、ルナの意識が、街の地下に広がる古代遺跡の中に存在していることを突き止めた。


「やっぱり、あの遺跡が関係していたのか・・・・・!」


ジャンは、すぐさま古代遺跡の入り口へと向かった。


そこは、ルナと調査した場所だった。


しかし、入り口は閉ざされており、岩盤が道を塞いでいた。




(古代遺跡の中であれば、広場からでもサーチ魔法で分かるはずなのになぜ!?)


ジャンはサーチ魔法を展開する。


螺旋階段、扉、大きな広間さえもハッキリ分かる。


昨日ルナと築いたアイスウォールさえも・・・・・


だがルナはいない。


捉えられない、というべきなのか?


全くルナを感じられない。


だが、テレパシーの魔力追跡では、間違いなく古代遺跡の中を指している。


「なぜだ!サーチ魔法で捉えられないなんて・・・・・そんな事あるのか?」


ジャンは、ルナの意識に語りかける。


(ルナ、今どこにいる?)


(壁・・・・・壁に囲まれてるみたい・・・・・。でも、なんか、魔力が・・・・・?)



ルナの意識が途切れた。


ジャンは岩盤に手をかざしたまま、その場に立ち尽くす。


ルナの言葉は、まるで謎かけのようだった。


壁に囲まれている。


それは、ルナが閉じ込められている場所が、ただの岩盤ではないことを示唆していた。


ジャンは、もう1度ルナの意識に語りかける。


(ルナ! ルナ! 聞こえるか!?)


しかし、返事はない。


わずかに繋がったはずの糸は、またもや途切れてしまった。


ジャンは、目の前の岩盤を必死に叩いた。


何度叩いても、攻撃魔法で破壊を試みるも、岩盤に魔力を送り込むも、びくともしない。


だが、どれほど意識を集中しても、ジャンは何も感じ取ることができなかった。


「くそっ、どうすれば・・・・・!」


ジャンは、この岩盤が、ルナを閉じ込めている場所への唯一の入口だと考えていた。


しかし、どうやっても開かない。


何度も何度も色々試す。


ジャンの知識、経験、魔力、その全てをもってしても、この岩盤を動かすことはできなかった。


ジャンは、自らの無力さを痛感した。


ジャンは、必死に頭を巡らせる。


この岩盤を開ける方法、ルナを救い出す方法。


しかし、何も思い浮かばない。


焦燥感が、ジャンの心を締め付けていく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ