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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

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第40話  不思議な夜と、旅立ちの朝

ジャンはしばらく呆然としていたが、ヒールをかけ、シャワー室を出た。


考えても答えが出ない。


(夢で見たドラゴンに、本当にやられたのか!?)


(夢だと思ったが、夢遊病者のように実際に36階に行ったのか?)


(いや、絶対にそれは無い。)


(リリエルとルナは、今ここにいないし、夢の中でオレは死んだんだ。)



頭を冷やすか、とジャンは外に出て夜風に当たっていた。


日中の喧騒が嘘のように静まり返った通りに、湿り気を帯びた夜風がすっと吹き抜けていった。


見上げれば、深海のような濃い藍色の中に、星が宝石のように光輝く。


遠くに、まだ賑わっているだろう夜の街の喧騒が、ざわめきのように聞こえてくる。


しかし、ここに届くのは、その音の遠い残響だけ。


代わりに、耳を澄ませば、さまざまな夜の音が聞こえてくる。


すぐそばの植え込みから、鈴を振るようなコオロギの声。


それに合わせて、どこからか、もう一種類、違う虫の鳴き声が、まるで二重奏のように重なって響いている。


その声に耳を傾けていると、時間の流れがゆっくりと、穏やかになっているのを感じる


昼間とは違った街の静けさ。


(頭を冷やして正解だった)


こうして、ゆっくり過ぎて行く時間の中で、徐々に見た夢の事を忘れ始めていた。




そうすると、遠くから必死にジャンの方へかけてくる2人の女性が見えた。


近づいてくると、リリエルとルナだと分かった。


ルナはジャンの胸元へ飛び込んでくると、号泣していた。


リリエルも涙を流し始めて


「良かった!」


と言っている。



ジャンはルナが落ち着くまで待ってから聞いてみた。


「2人とも、こんな夜中に一体どうしたんだ?」


そうするとリリエルは衝撃的な事を話し出した。


「今日は最後の夜だから、ルナと一緒に寝る事にしたんです。そしたらあまりにもショッキングな夢を見て、飛び起きたんです」


聞いてみると、ジャンが見た夢と細部までピッタリ一致していた。


更に、起きた時に全身がヒリヒリすると思ったら、全身やけどを負っていた。


それだけでなく、ルナも全く同じ夢を見たと言うのだ。


ジャンが死んだところまでも一緒だったと・・・・・


傷はもちろん、リリエルのヒールで完治したが


まさか本当に死んでないよね?


という話になって、慌ててここまで来たと言う事だった。


そしてジャンも全く同じ夢を見た事を話すと、2人は目を見開き、言葉を失ってしまった。


一体何だったのか?


ジャンはルナとの魔力共鳴が起こした事なのか?


だとしてもリリエルも経験するのはおかしい。


考えても出ない答えに3人は言葉にならない何かを感じていた。



しばらくして、ジャンは切り出した。


「リリエルとルナを宿まで送るよ」


「イヤ!戻りたくない!」


ルナは駄々をこね、リリエルも


「出来れば今日は宿に戻りたくないんですが、ダメ・・・・・でしょうか?」


と言うので、夜遅いがフロントでダブルの部屋を追加で借りようとした。


「リリエルとジャンと同じ部屋でないとイヤだもん!」


そう言ってルナはまた駄々をこねた。


シングル以外の部屋は空いてない、という事だったので


結局、いまジャンが泊まっている部屋に、布団を2つ敷く事になった。


誰がどこで寝るか?という話になった時、ルナがすかさず


「私はジャンの隣がいい!」


と言い出し、ベッドはリリエル、床の布団にジャンとルナが寝る事に決まった。


ルナはチラッとジャンの顔を見ると、ふふっと笑い、それを見るジャンも笑顔になるのだった。


リリエルは居心地の悪さを感じ、


(帰ろうかしら?)


そう考えるのだった。




夜が明け、太陽がアステリアの街を優しく照らし始めた。


ジャンは早朝にリリエルとルナを宿に送り届けた。


旅立ちの準備を終え、ジャンは、ギルドへと向かう。


ジャンがギルドへ着いて、すぐにルナもギルドへ到着した。


いつも活気に満ちたギルドは、この時間にはまだ静けさに包まれていた。


カウンターの奥から顔を出したのは、ギルド長のリーザンと、その隣に立つアーカスだった。


「ギルド長、アーカスさん、おはようございます。ヒルダロアに向けて、今日出発します」


ジャンがまっすぐな眼差しで告げると、ギルド長は静かに頷いた。


「ああ、ジャン君。道中はくれぐれも気をつけていくんだ。特に、ヒルダロアへ向かう街道は、魔物が出没する場所も多い。何かあったらいつでも連絡するように」


ギルド長の言葉には、これまでの感謝と、少しの心配が顔に出ていた。


「はい、ありがとうございます。ご心配なく。私たちがこの街に戻ってくる頃には、もっと強くなって、ギルドに貢献できるようになります」


ルナが明るく言い放つと、アーカスはくすりと笑った。


「ふふっ、ルナさんは元気ね。まぁ、ジャンさんがいるから心配ないわね。ジャンさんも、ルナさんをしっかり守ってね」


アーカスも少し寂しそうな顔をする。


「もちろんそうします。アーカスさん」


ジャンが返事をした。


ギルド長は


「この街から2人もBクラスの冒険者が減るのか。人材養成頑張らないとな、頑張れよ!ジャン君、ルナさん」


と、ジャンの肩を叩き、ルナには握手を求めた。


ジャンはルナとギルド長のリーザンが握手する姿を見て、チクッと胸が痛んだ。


これは何だ?と思うジャンだったが、深く考えることなくルナとギルドを後にした。



ギルドを出てすぐ、広場に向かう途中で、見慣れた顔ぶれが彼らを待っていた。


カイラス、ライアス、ルミア、エルミナ、リリエルの5人だ。


みんなは、ジャンとルナを見つけると、少し寂しそうな、それでも明るい笑顔で駆け寄ってきた。


「ジャン!ルナ!本当に今日出発するのか?」


カイラスが少し残念そうに声をかける。


「ああ、これから出発するところだ。最後にみんなと会えてよかった。ちゃんと別れの挨拶ができて嬉しいよ」


ジャンは穏やかに微笑んだ。


「ジャンもルナもお気をつけて」


エルミナが深々と頭を下げた。


「またすぐに会えるわよね?」


ルミアが少し不安げな表情で尋ねる。


「うん!ルミア、大丈夫だよ。約束する!」


ルナはルミアとハグをして、力強く答えた。


「ワシも、お前らがいないと物足りんぞ!今度帰ってきたら、ワシの自慢の斧の切れ味を試させてくれ!」


ライアスが豪快な笑い声を響かせた。


「いやいやライアス、斧の切れ味をって!?そんな事されたら死ぬって!」


ジャンが答えると、みんな爆笑する。


「ジャン、ルナ。体に気をつけて。困ったことがあったら、いつでも頼ってね」


リリエルが優しい声で二人に告げ、そっとルナを抱きしめた。


「うん、ありがとう、リリエル」


ルナはリリエルと抱き合いながら、涙ぐんだ。


全員と別れの挨拶を終えたジャンとルナは、みんなに北の街外れまで見送ってもらうことになった。


5人は道中も、他愛もない話をしながら2人の隣を歩いた。


街外れの門をくぐると、そこでいよいよ本当の別れの時が来た。


「ここまでにしよう。みんな、本当にありがとう」


ジャンが深く頭を下げると、カイラスたちが少し寂しそうな表情を浮かべた。


「寂しくなるぜ、ジャン。いつでも帰って来いよ!」


カイラスがそう言い、強くジャンの肩を叩いた。


「じゃあ、行ってくるね!みんな!」


ルナが大きく手を振ると、2人は歩き始めた。


歩いていく2人の姿は、徐々に小さくなっていく。


5人は、その姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。



そして、ついに2人の姿が地平線の向こうに消えたとき、カイラスがぽつりと呟いた。


「なぁ、あいつら、馬車じゃなくて徒歩で行くのか?」


ライアスも首をかしげる。


「うむ、そうみたいじゃな。急ぎの旅では・・・・・ないのかのう?」


ルミアは冷静に言った。


「街道は魔物も出るし、いくらジャンがいるとはいえ、ルナは危ないんじゃないかしら?」


エルミナも心配そうな顔で言葉を継ぐ。


「ええ少し心配ですわ。あんなに長い旅路を歩いていくなんて」


彼らが口々に心配する中、リリエルだけは黙って空を見上げていた。


(きっと、飛行魔法で飛んでいくのよね)


リリエルは、ジャンとルナの飛行魔法を思い出し、胸の奥で微笑んだ。


2人は、きっと自分たちのペースで、自由に空を飛んでいくのだろう。


そう信じながら、彼女は静かに見送りの場を後にしたのだった。



街外れの門を背に、ジャンとルナは歩き続けた。


10分ほど歩いただろうか?


振り返ると、見送ってくれたみんなの姿は、すでに遥か遠くに霞んでいた。


「もう見えなくなっちゃったね」


ルナが少し寂しそうに呟く。


「ああ。そうだな」


ジャンは穏やかな笑顔をにルナに向ける。


「みんな、俺たちが徒歩で行くと思ってるんだろうな」


「そうだね!カイラスたち、馬車に乗らないの?って顔をしていたし」


ルナはくすりと笑い、そしてジャンの顔を覗き込んだ。


「ジャン。そろそろ、アレ、やっちゃう?」


ジャンの口元に、わずかに笑みが浮かんだ。


「ああ、そうだな。ここまで来れば人目も無いだろう。その前に」


そう言うとジャンは、収納魔導具から杖を出す。


「ルナも杖を出して」


そう促す。ルナも杖を出すと


「ん?この杖をどうするの?」


ルナは首をかしげる。


「説明書を読んでないな?これは・・・・・」


と言いながらジャンは、杖に魔力蓄積棒のかけらが埋められていて・・・・・と色々、杖について説明した。


「すごーい!!という事は、自分の魔力を使わずに杖に蓄えられた魔力で飛べるって事なのーーー!?」


驚いて聞いてくるルナにジャンは脱力した。


その他にも杖について色々説明した。


「ほへーーー!そんな事が出来るんだねー!!」


目を丸くして驚くルナ、そして笑顔になると


「分かった!これからは毎晩、寝る前には杖に魔力を貯めとくよー!」


と言ったルナにジャンは


「そろそろ行くぞ」


そう言うと、杖の魔力を使い飛行魔法で空に舞い上がった。


「待ってー!」と言いながらルナもまた、杖の魔力で舞い上がり、ジャンを追いかけた。



二人の体はぐんぐんと上昇していく。あっという間に街の屋根よりも高い位置まで達した。


「わあ!すごい! アステリアの街・・・・・あっちには塔がある!塔にはみんなとよく行ったねー」


ルナは興奮した声を上げ、2人でアステリアの街を見下ろしている。


ルナは街に向かって手を振りながら


「バイバイ! アステリアー!また帰って来るからねーーー!」


そう叫ぶと、向きを変えてジャンと2人でヒルダロアに向けて飛び始める。


ルナとジャンは速度を上げ、広大な空を滑るように進んでいく。


風を切り裂く音が耳元をかすめるが、ルナは目を輝かせ、その景色に夢中になっていた。


街を離れるにつれ、見渡す限り広がるのは、魔物がはびこる危険な森と、草原。


徒歩では約10日、馬車では3~4日の道のりだ。


しかし、ジャンの飛行魔法をもってすれば、それは数時間ほどの旅路となる。


「こんなにすごい魔法、ジャンと私以外にできる人なんていないよね!」


ルナが感嘆の声を上げる。


「ねえジャン。今から鬼ごっこね。ジャンが鬼!」


突然言って笑顔でルナが逃げる。


「おいルナ、ずるいぞ」


そういってジャンが追いかける。


二人は、誰にも知られることなく、人々の頭上を遥かに超えて、一路 北の街ヒルダロアを目指して飛んでいくのだった。





--- 第一章 --- 完


最後までお読みいただきありがとうございました。



これにて1章は終わりになります。


約1か月ほどで、駆け抜けました。

ここまでお読みいただきありがとうございました!!


明日、間章を公開し、その次から、いよいよ第2章に入ります。


基本的には2章も毎日更新予定ですが、現在、2章全体を修正しています。


その関係で、毎日更新できるか分かりませんが

引き続き楽しんで頂けると幸いです。

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