表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/153

第3話  休日のトラブル

オレは朝から支援魔法の改良をしていた。


朝といえば、リリエルとルナがワイワイ言いながら出かけて行ったな。


ルナが言っていた服を見に行ったのだろう。



静かな部屋で1人、魔法陣を空中に出すとの設計図を指で描き直す。


部屋には朝の柔らかな光が差し込み、静寂が広がっている。


魔法陣の改良は、まるで複雑なパズルを解くような作業だ。


一つのピースを変えるだけで、全体のバランスが崩れることもある。


集中力を極限まで高め、細部にまで気を配る。


・・・・・


・・・・


・・・


・・



よし出来た。


一度魔法陣を消して休む。


しばらく後に・・・・・



(よし!魔法陣を出してみよう)


ヴゥン。


という音と共に、手元に魔法陣が現れた。


改良した支援魔法の魔法陣だ。


淡い光を放ち、複雑な模様が浮かび上がる。


「よし・・・・・良い感じだ」


思わず声が漏れた。


魔法陣から感じる魔力の流れはスムーズで、淀みがない。


細かい調整は必要だが、これなら実践で使えるレベルだろう。


新しい魔法に名前をつけようかと考えたが、どうにも良い案が浮かばない。


「よし、気分転換に散歩でも行くか」


そう決めて、オレは家を出た。



歩いていると、賑やかな声が聞こえてきた。


ギルドの前だ。


いつもよりざわついている。


何があったんだろうなと、興味を引かれて中に入ってみる。



「Bクラスだってよ!」


「ああ、実力あるしな」


ギルドの中は熱気に満ちていた。


冒険者たちが口々に何かを話している。


(どこかのパーティーがBクラスになったのか。


 Bクラスになりそうなグループといえば、カイラスさんのパーティーだと思うが、どうかな?)


そう考えていると、背後からポンと肩を叩かれた。振り返ると、赤ら顔の男が立っていた。


「よう、ジャンの兄ちゃんじゃねえか。ヒック、聞いたか?ヒック」


男の顔は酒でテカテカ光っている。


「お酒好きですねー。どこかのパーティーがBクラスになった話ですか?」


オレが尋ねると、男はにやりと笑った。


(この人、少し前にDクラスになったパーティーにいる人だな。


 酒好きだから近づかないようにしてたんだけど・・・・・名前は何だったかなぁ?


 思い出せない・・・・・)


男は胸を張り、得意げに言った。


「おう、そうよ!さすが情報通、ヒック、カイラス勇者御一行様だぞ。


 お前たちもBクラスなんだ、追い抜かれないように精進しろよー。がははは、ヒック」


男はそう言い放つと、ふらふらと他の冒険者の元へ向かっていった。


「ありがとござ・・・」


オレが言い終わる前に、男の姿は人ごみに消えてしまった。


(もう他の人に絡みに行ってるよ。困った人だな。


 でもBクラスか。話題になるわけだな。


 お祝いに酒でも買っていくか)



ギルドを出て、酒屋へ向かう。


カイラスさんが好きそうな、少し高級なワインを選んだ。


収納魔導具に片付け、再び歩き始める。



しばらく歩くと、人通りの少ない小道が見えた。


「この小道、確か塔に続いてるんだったよな?」


この道は、曲がりくねっていて狭い上、稀にモンスターが出ることがあるため、滅多に人が通らない。


まっすぐな新道ができてからは、なおさらだ。


だが、散歩にはうってつけだ。


静かで、ゆっくりと歩ける。


そんなことを考えながら進んでいると、急に違和感を感じて立ち止まった。


(これは・・・・・!?)


この気配は!この先で誰かが戦闘している!



オレは駆け出すと、すぐに視界に入ったのは、信じられない光景だった。


ルミアさんが、エルミナさんに必死にハイヒールをかけている。


その前後を、カイラスさんが剣を、ライアスさんが斧を構えて警戒していた。


オレに気づくと、2人は一瞬剣と斧を向けてきたが、すぐに警戒を解いた。


「ライアスさん、魔物ですか?」


最も近くにいたライアスに声をかけた。


彼の顔はこわばり、額には冷や汗がにじんでいる。


「ああ、何か分からねえがエルミナが右手に光線を受けた。


 とっさにかわしてかすっただけのようだが回復系魔法が効いてねえんだ」


ライアスの声は焦りを帯びていた。


エルミナは苦痛に顔を歪め、脂汗を流している。


「エルミナさんの代わりに皆さんに支援魔法をかけても良いですか?」


「ああ、頼む」


カイラスは即座に答えた。


彼の顔にも、緊迫した様子が浮かんでいる。


オレは、いつもの4つの支援魔法

パワーアップ

スピードアップ

マジックアップ

ディフェンスアップに加え


今日完成させたばかりの魔力消費半減の魔法を、自分にかけ、そして全員にかけた。



「「「え!?」」」


三人の驚きに満ちた声が響いた。


ルミアは目を見開き、信じられないといった表情でオレを見ている。


「無詠唱!?それにこの感じ・・・・・」


ルミアは言葉を失っている。


ライアスは、自分の体に満ちる力に驚き、興奮した表情で斧を握りしめている。


「ワシにこんなにチカラがあったのか!?と勘違いするほどのステータスアップじゃねえか!」


彼の声は、歓喜に震えていた。


ルミアは、希望の光を見出したかのように、再びエルミナにハイヒールをかけた。


「これならエルミナを回復させることが出来るかも? ハイヒール!」


「ああぁぁぁ!痛い!痛い!」


しかし、エルミナの悲痛な叫び声が響き渡る。


ルミアの顔から、一気に血の気が引いていく。


「これでもダメなの?どうしたら・・・・・」


ルミアは絶望感に襲われ、固く目を瞑った。


その目から、涙が溢れ出していた。



「カイラスさん、ライアスさん、モンスターの気配は?」


オレは二人に尋ねた。


ライアスは、警戒しながら周囲を見渡している。


「今はねえ。


 だがさっきは何もねえ所から突然の殺気を感じたんだ。


 気づいた時にはエルミナがやられてやがった、くそ!」



「エルミナさん、睡眠魔法をかけても良いですか?


 眠ることで、ひとまず痛みは無くなると思います。」


「は・・・・・い・・・・・、っ!! おねが・・・・・い」


エルミナは、もはや言葉を紡ぐこともできず、苦痛に耐えながらかろうじて頷いた。


三人は、その様子を驚きながら見守っている。


オレは、エルミナの額に流れる脂汗を拭ってやり、睡眠魔法を発動させた。


苦痛に満ちていたエルミナの表情が、穏やかな寝顔に変わった。


その瞬間、三人の表情から緊張が解け、安堵の色が浮かんだ。



「ジャン、あなたってすごいわね」


ルミアは、涙を拭きながらオレに言った。


「え?なにがですか?」


オレがそう尋ねると、突然ライアスの笑い声が響いた。


「がはははは!お前気付いてねーのかよ。いやー、ジャン、


 お前はすげーよ!!無詠唱だぞ?しかも睡眠魔法?聞いたこともねえよ。


 ルミアは聞いたことあるか?睡眠魔法 がはははは」


ライアスの言葉に、ルミアは首を横に振った。


「睡眠魔法なんて聞いたこともないわ」


カイラスも、感心したように頷いた。


「戦闘で使えば、かなりのアドバンテージだな」



「いえ、モンスターには効くんですが3秒以上触れている必要があるんです。


 弱いモンスターなら、倒してしまった方が早いですし、強いと、その3秒間が長くて使えない。


 なのでこの睡眠魔法は人専用にしています。でも寝ないといけないのに眠れない時は、自分にかけて使うことはあるなぁ。」


オレはそう説明した。ルミアは少し残念そうな表情を浮かべた。


「それは残念ね」


ジャンは周りに警戒ながら言う


「ひとまず教会にエルミナさんを連れて行って診てもらうのが先ですね」


「そうそう、『さん』付けと敬語はいらないぞ。オレたちだって『ジャンさん』とは呼んでないんだからよ がははは」


ライアスは、そう言って豪快に笑った。


「ああ、分かったライアス」



オレは、エルミナを背負いながら歩き始めた。


ルミアは、まだ信じられないといった表情でオレを見つめている。


「まさか浮遊魔法?飛行魔法?そんなのあるとか言わないわよね?」


「あははは、さすがにそんな魔法は知らないなー」


オレが笑いながら答えると、ルミアは真剣な表情に戻り、尋ねてきた。


「じゃあ聞くけど、さっき支援魔法を使ってくれたじゃない?


 その時にかけたハイヒールなんだけど、いつもより魔力消費が少なかったのはなぜなの?」


オレは、エルミナをおんぶしながら、少し照れくさそうに答えた。



「今朝、支援魔法を作ってたんだけど・・・・・」


三人は、驚きに満ちた表情で、目を白黒させている。


「「「魔法を作った!?!?」」」


三人の声が、驚きと戸惑いを含んで響いた。


カイラスは、信じられないといった様子で、呟くように言った。


「ホワイトマジシャンって魔法開発出来るのか・・・・・」


ライアスは、オレの背中のエルミナを見て、心配そうに声をかけてきた。


「おいおい、エルミナはオレたちが運ぶよ」


ジャンは、いやいい、と手で合図する。



「オレは支援職だ、


 さっきの魔物がまた突然襲ってきても、ほぼ何もできない。


 だからライアスとカイラスは咄嗟の時に攻撃を頼む。


 支援魔法はまだ切れてないから何かあってもすぐに対応できるはずだ。


 さっきの話の続きだけど、マジックアップをコピーして・・・・・」


三人は、言葉を失い、驚愕の表情でオレを見つめている。


ルミアは、震える声で言った。


「魔法を・・・・・コピーなんて・・・・・」


ジャンは驚くルミアを見ながら続ける。


「コピーした方の魔法陣を出して、模様を変えていくって言ったら良いのかな?


 そんな感じで書き換えて出来たのが魔力消費半減の魔法で


 基本的に無詠唱で発動させることが出来るから名前は付けてないんだ。


 まだ魔力の消費が半減まで行かないから、もう少し細かい修正が必要なんだけどな」



カイラスは、茫然とした表情で呟いた。


「凄すぎる・・・・・もう・・・・・言葉が出てこないと言うか・・・・・」


「結果論だけど、師匠に厳しく教えられたのが良かったと思ってるよ」


オレは、遠い目をしながら過去を思い出していた。


ライアスは、そんなオレを見て豪快に笑った。


「がははは、ジャンを見てみろよ。遠い目をしてるぞ。よっぽどしごかれたんだろうなあ」


遠い目をしたままジャンは答える。


「色々あったなぁ・・・・・」


ルミアは、オレの顔を心配そうに覗き込む。


「死にそうな顔してるわよ。大丈夫?」


「ああ、ちょっと昔を思い出しただけだ。あ、そうだ。簡単な物で良ければ魔法の書き換え、実践しようか?」


ジャンは提案してみる。



「はぁ!?そんな簡単にできるの!?!?」


ルミアは、信じられないといった表情で叫んだ。


「書き換えはリスクもあるから簡単には出来ないけど、例えば」


オレはそう言って、ファイアーボールの魔法陣を出してコピーをした。


ルミアは、魔法陣を見て、すぐにファイアーボールだと分かった。


「ルミアだったら見覚えのある魔法陣だと思うけど、これの片方は今は邪魔だから消して」


魔法の発動をやめた時のように、スッと左側の魔法陣が消える。


(何でホワイトマジシャンがファイアーボールを使えるの?あり得ないわ)


ルミアがボソッと呟いたが、オレには聞こえなかった。


「本当は全てが絶妙に絡み合っているからこんな簡単には出来ないけど


 ファイアーボールの場合はここを触っても大丈夫なんだ」


オレは、まるでホワイトボードに書かれた文字を指で消すように、魔法陣の中にあるひとかけらを消した。


「ここで魔法を発動させる。いまは適当に名前を付けるとして。ファイアーミニ!」


唱えた瞬間、小指の先ほどの火の玉がチリチリと音を立てながら、1フィート弱進んで消えた。



ルミアは、呆然とそれを見つめている。


「このようにファイアーボール魔法陣の中にある、点ともいえるような短い線を消しただけで、こんな事になる。


 だからと言って適当にやったら99.99999%はさっきのように使えないものになるか


 魔法の発動前に暴発が起こって使い物にならないものが出来てしまう。


 さっきの魔法陣は紛らわしいから消しとこう」


オレは、ファイアーミニの魔法陣を出して、手を空にスライドさせた。


すると、コップに炭酸を注いだ時のような音、シュワーッという音と共に空気中に消えた。


ライアスは、信じられないといった表情で、口を開けている。


「お前って規格外だな!」


ルミアに至っては、目の焦点があっていない。


「ハハハ・・・・・魔法コピー、書き換え、消去・・・・・ホワイトマジシャンがファイアーボール・・・・・ハハハハハ」


ルミアは、乾いた笑いを繰り返していた。


「教会に付いたぞ」


カイラスの声が、緊張した空気を破った。


教会に着けば何とかなる、心のどこかでみんな無意識に楽観視していたのだが・・・・・。






最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ