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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

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第38話  ドラゴンとの戦いと、旧パーティー

塔の36階は、薄暗い洞窟のような空間だった。湿った土の匂いが立ち込め、所々に大きな岩が転がっている。


「本当に、ここにドラゴンがいるの・・・・・?」


リリエルが不安げに周囲を見回した。


結界の外に出て、歩き始めて1分も経たないうちに、奥から低く唸るような声が響き渡る。


「グルルルルルル・・・・・」


3人の視線の先に、巨大な影が姿を現した。


それは、鱗に覆われた強靭な体、鋭い爪、そして背中に生えた巨大な翼を持つ


まさに伝説に語られる通りのドラゴンだった。


「来た・・・・・!」


ジャンとルナは並んで身構え、リリエルは2人の後ろで戦闘態勢に入った。


ドラゴンは3人を一瞥すると、口を開け、灼熱の炎を吐き出した。


「飛び退け!」


ジャンの叫びと同時に全員が飛び退くと、炎は3人がいた場所を焼き尽くす。


リリエルは後ろへ飛び退いたが、火傷を負ったのでヒールで治療した。


しかし、周囲を見回しても、ジャンとルナの姿は見えなかった。



「え・・・・・?どこ・・・・・?」


リリエルが探すが見つからない。


ふと見上げると驚愕の表情に変わる。


ジャンとルナは、まるで羽が生えたかのように宙に浮いていた。


「あれが、飛行魔法!?」


リリエルは目を疑った。


何百年も前に失われたはずの魔法が今、目の前で使われている。


ジャンはリリエルに向かって叫んだ。


「リリエル、オレたちが戦っている間、回復魔法の準備をしておいてくれ!そして、もしドラゴンに隙ができればウインドカッターで支援してくれ!」


「わ、わかったわ!」


リリエルはそう返事を返す。




ドラゴンは、空を飛ぶジャンとルナに驚いたように、大きく翼を広げ、地響きのような唸り声を上げた。


「ガアアアアアアア!」


ジャンとルナは、ドラゴンの攻撃をかわしながら、素早く反撃に転じる。


「ルナ、まずは牽制だ!」


「うん!」


ジャンとルナは、それぞれに氷の魔法を放った。


「ブリザード!」


無数の氷の刃が、嵐のようにドラゴンに降り注ぐ。


だが、ドラゴンの分厚い鱗はそれをほとんど弾き、いくつもの氷の刃が砕け散った。


「硬い・・・・・!多少ダメージが通ったようだが・・・・・」


ジャンは眉をひそめた。


ドラゴンは、今度は鋭い爪で彼らに襲いかかった。


ジャンはそれを避け、さらにルナと2人で氷の魔法を放つ。


「アイスストリーム!」


二つの強力な氷の奔流が、ドラゴンの胴体に直撃した。


しかし魔法は反射され、2人に返って行く。


「「!?」」


瞬時に2人はそれをかわし、ドラゴンはジャンとルナを、どう猛な目つき睨みつけた。


「信じられない・・・・・!魔法が、跳ね返されるなんて・・・・・!」


ドラゴンは空を舞う2人に気を取られているようだ。


リリエルは、2人の戦いを見守っていたが、その圧倒的な力に愕然としていた。


ドラゴンは再び口を開け、今度はブレスを放った。


炎の奔流がジャンとルナを襲う。


ジャンは素早く身をかわしたが、ルナが放った魔法はブレスに打ち消され、ルナの身体に衝撃が走った。


「きゃっ!」


「ルナ!」


ジャンはすぐにルナに飛んでいく。


「私は大丈夫!」


「ルナはリリエルに治療してもらうんだ!オレはドラゴンを引き付ける!」


ルナが頷いた。


2人の様子を見たドラゴンは、再び巨大な翼を広げ、突進してきた。


「くそっ、これじゃ らちが明かない・・・・・!」


ジャンは、とっさに魔力弾を放った。


魔力弾はドラゴンの頭に命中し、小さな爆発を起こす。


しかし、ドラゴンの頭には、ほとんど傷がなかった。


「なんて防御力だ・・・・・!」


ルナは即座にリリエルの場所へ行き、ヒールをかけてもらう。


ジャンは、このままではジリ貧になると悟った。




このドラゴンは、今の自分たちでは到底太刀打ちできない。


「ルナ、リリエルを抱えて!」


「えっ・・・・・?」


ルナは戸惑いながらも、ジャンの指示に従い、リリエルを抱きかかえた。


「ジャン、どうするの!?」


リリエルが震える声で尋ねる。


「逃げる。このまま戦っても、勝ち目はない」


ジャンはルナに追いつくと、2人で一緒にリリエルを抱きかかえ、飛行魔法で一気に飛んで結界へ急いだ。


「グオオオオオオオーーーー!」


ドラゴンの咆哮が背後から聞こえる。


「結界内へ急げ!」


ジャンとルナは、全速力で転移装置へと向かう。


すると、ドラゴンは3人が逃げると判断したのか、地面すれすれを猛スピードで飛び、結界の前まで先回りして3人に向き直った。


空中で急停止する3人。


「結界前、塞がれてしまったわ」


リリエルとルナの顔が真っ青になった。


「ガアアアアアアア!」


ブレスが来る!


そう直感したジャンは、すぐ横に通路があるのを確認し、ルナとリリエルを通路に突き飛ばした。


ジャンはドラゴンを見ながら、ルナとリリエルに叫んだ。


「オレが引き付ける。隙を見て結界内へ・・・・・」


「いや!ジャンと戦う!」


ジャンの言葉を遮り、ルナが叫んだ。


それを聞いたジャンは、優しくも力強く言った。


「ルナ、リリエルを頼む」


そう言うと、ドラゴンに向かって飛んでいく。




刹那、ドラゴンは口を開け、炎があふれ出す。


ジャンは両手をドラゴンの口に突き出すと、


「悪いな!オレは規格外って言われてるんだよ!ダブルブリザード!!」


そう叫んだ。


氷の二重渦になった奔流がドラゴンの口の中へ入っていく!


「ゴアアアアアーー!」


よし、ダメージが通った。


その瞬間、ジャンは通路の奥へ飛んだ。


ジャンを逃がすまいと、ドラゴンは咆哮を上げて追いかける!


ルナとリリエルはドラゴンがジャンを追いかけて行くのを見送った。


「今よ!」


リリエルの声が響いた。


通路を曲がると、すぐに結界内へ入った。


ルナは、ゼノンが逃がしてくれようとした時を思い出し、目から涙を流しながら、リリエルを抱えて結界内へ入った。


リリエルを下ろすと、ルナはすぐに行こうとするが、ためらった。


「ねえ、ルナはゼノンを助けに行ったこと、後悔してる?」


リリエルは優しくルナに声をかけた。


涙を拭きながら、首を横に振ってルナは答える。


「でも・・・・・」


「救えなかった」


リリエルはルナの言葉に重ねて続けた。


「ジャンも救えなかったら・・・・・、そう思うと動けない。そうでしょ?」


ルナは頷いた。


「私ね、さっきまで飛行魔法なんてウソだと思ってたのよ。でも飛び回る2人を見て思ったの。カッコイイって。そして私は2人の足を引っ張る・・・・・足手まといなんだなって」


ちょっと悲しそうな顔をして話すリリエル。


それをルナはすぐに否定した。


「そんなことない。リリエルは・・・」


「私は足手まとい・・・・・。」


ルナの言葉を遮り、真剣な顔になって続けるリリエル。


「だけどね。ルナは飛べるの。確かに、助けに行っても間に合わないかもしれない。でも私が助けに行ったら、ジャンは自力で何とかなるかもしれないけど、私は確実に死んじゃうわね。」



そこまで言うと、ちょっと意地悪そうな顔になり


「ルナ、ジャンのこと好きなんでしょ?」


「えっと、私は・・・・・その・・・・・今は関係が・・・・・」


ルナが顔を赤くして戸惑っていると、女神のような優しい笑みを浮かべて続けた。


「行ってあげて。あなたにしかジャンは助けられない!」


ルナは力強く頷くと、すごいスピードで飛んでいった。


「ふふふ、ジャン自身は気付いてるのかしら?あなたも、ルナのこと好きになり始めてるのよ。ジャンのルナを見る目、仲間を見る目と全然違うのよねー。焼けちゃうなー。私なんか2人の間に入れるわけないじゃない。はぁ、私も彼氏が欲しくなっちゃったなあ」


ルナが飛んで行った方を見つめながら、リリエルは呟いた。




ドラゴンに追いついたルナは、ドラゴンに追い詰められているジャンを見つけると、すぐに魔法を放つ。


「ブリザード!」


後ろからブリザードが当たったドラゴンは振り向きざまに、ブレスを吐く。


ルナは逃げながら再度ブリザードを放ち、ブレスを相殺する。


その時、ジャンはルナに振り返ったドラゴンへブリザードを放つと、すぐにルナの元へ飛ぶ。


ドラゴンはブリザードが来たジャンの方向を振り返るが、既にジャンはいない。




「どうして帰って来た!」


ジャンが強く言うと、ルナは優しく微笑んで、


「逃げる時は全員一緒だよ!」

挿絵(By みてみん)


目を見開いて驚くジャン。


「分かった。よし、タイミングを合わせてくれ」


ルナが頷く。


ドラゴンが再び振り返り、2人がいるのを確認すると、口を開け始めた。


その瞬間、ジャンは合図をし、2人で魔法を放つ。


「ダブルブリザード!」


「ブリザード!」


口の中に入っていく氷の刃


「グオアアアアア!!」


やや苦しそうに唸るドラゴン。


「ルナ!逃げるぞ!」


そしてすぐに転移装置に向かって飛ぶ。



ジャンとルナが猛スピードで飛んでくるのを見て、リリエルは一瞬安心したが、すぐ後ろにドラゴンが迫っていた。


2人が結界内に入り、ようやく転移装置にたどり着いた3人。


ジャンは、転移装置の前に降り立つとすぐに転移装置を操作しようとする。


その瞬間、ドラゴンの火炎ブレスが、結界内に入り込み、3人の背後から迫ってきた。


「きゃああああ!」


リリエルの悲鳴が響き渡る。


ジャンは、「バカな!」と叫ぶと、とっさにリリエルとルナを庇うように抱きしめた。


「転移しろ!」


ジャンの叫びとともに、眩い光が3人を包み込み、彼らはその場から姿を消した。



塔を出ると、ジャンは「ふぅ」とため息をつき、リリエルとルナは地面に座り込んでいた。




(リリエル サイド)



私は、さっきのドラゴンの圧倒的な力を思い出し、再び身震いした。


しかし、それと同時に頭の中には、もう一つの光景が焼き付いていた。


(飛行魔法・・・・・)


ジャンの言葉は、最初は信じられなかった。


何百年も前に失われたと、誰もが信じていた魔法。


歴史書にも、伝説としてしか語られていない魔法。


それが、本当に存在したなんて・・・・・。


嘘だとしか思えなかった私は、ジャンの言葉を疑っていた自分を恥じた。


そして、あの瞬間、空を舞うジャンとルナの姿は、あまりにも美しく、幻想的で、まるで夢を見ているかのようだった。


(本当に、ジャンとルナは、空を飛んでいた・・・・・)


彼らは、まるで鳥のように、自由に空を舞っていた。


ドラゴンの炎を軽々とかわし、空中で魔法を放つ。


それはリリエルの知る冒険者の常識を、遥かに超えていた。


(この世界には、まだ、私たちの知らない魔法があるのね・・・・・)


リリエルは魔法を使う者として、そして人間として、この世界の広大さと可能性を改めて知った。


そして、ジャンとルナの2人が、どれだけ特別な存在なのかを、思い知らされた。


(私は、この2人の力に、もっと、もっと追いつかなきゃ・・・・・)




(ジャン サイド)



「ごめん2人とも。危険な目に遭わせてしまった・・・・・」


オレは自責の念に駆られ、顔を歪めた。


「そんなことないわ!ジャンのおかげで、私たちは助かったのよ!」


リリエルが強く首を横に振った。


「そうだよ、ジャンがいてくれてよかったよ!」


ルナもまた、小さく首を振って微笑んだ。


オレは、2人の優しさに胸を打たれ、深く息を吐いた。


「まさか、あそこまで強いとは・・・・・」


オレは呟くように言った。


「本当に、伝説のドラゴンだったのね・・・・・」


リリエルは、先ほどのドラゴンの圧倒的な力を思い出し、再度身震いした。


「ああ。正直、想像を遥かに超えていた。魔力弾が効かない上に、魔法まで跳ね返されるなんて・・・・・」


オレは、疲労困憊の様子で肩を落とす。


(もしステータスアップをしてなかったら・・・・・一体ドラゴンはどれだけ強いんだ)


オレがそう考えていたところで、リリエルの声がした。、


「私、何もできなくてごめんなさい・・・・・」


リリエルは俯きながら謝ってきた。


「なんで謝るんだよ、リリエルがいてくれたから、命拾いしたんだ。ルナにヒールをかけてくれたじゃないか。ありがとう」


オレがそう言うと、少し表情が和らいだ。


「それと、ギルドに報告しに行かないとな」




ギルドに戻ると、ギルド長がジャンたちの顔を見た瞬間、安堵して迎えてくれた。


「3人とも、無事だったか!」


「はい、ギルド長。なんとか・・・・・」


ジャンは、疲労困憊の様子で答えた。


ギルド長は、静かに頷き、3人を奥の部屋へと案内した。


「詳しく話してくれ」


部屋に入ると、リーザンは静かに言った。


ジャンは飛行魔法を使ったこと以外、ドラゴンの圧倒的な力と防御力など、全てを話した。


「そうか。やはり、あのドラゴンは、伝説の通りだったか・・・・・」


リーザンは、静かに目を閉じた。


そして、しばらくの沈黙の後、リーザンは目を開け、ジャンに言った。


「ジャン。お前たちは、よく生きて帰ってきてくれた。それが、何よりだ。今日は帰ってゆっくり休んでくれ」


ジャンたちはギルド長に別れを告げた。




ギルドを出ると、2人に言った。


「オレたち、考えてみると、以前パーティーだったんだよな」


2人は「あっ」と声を上げた。


「そう言えばそうだったわね」


リリエルが言うと、ルナも続いた。


「そうだったね!なんか懐かしい」


ジャンは「ああ」と言った後少ししてから、リリエルに言った。


「オレとルナは明日、この街を出る。今後はカイラスたちと頑張ってくれ」


ジャンがそう言うと、リリエルは言った。


「寂しくなるわね。でも、この街に寄ることもあるんでしょう?その時はまた、元気な顔を見せてちょうだいね。」


「うん、もちろんだよー!パフェ、また食べようねっ!」


ルナがそう言うと、リリエルは苦笑いしていた。




その日の深夜、ジャンは悲鳴を上げて飛び起きた。





最後までお読みいただきありがとうございました。

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