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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

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第35話 デートの邪魔をしよう

次の日の夜も、ジャンはルナと二人、ほぼ人通りの少ない草原にいた。


ルナは嬉しそうに宙に浮き、上下に移動を繰り返している。


ルナに並んで、ジャンも微笑みながら一緒に上下している。


「ジャン、すごい!私、もう完璧に飛べるようになったー!」


「ああ、今日は横移動だ」


ジャンはそう言って、ルナに降りるように言った。


「ルナ。飛行魔法は、魔力の噴出をコントロールするだけじゃない。身体の重心移動と魔力放出の併用も大事だ」


ジャンはそう言いながら、数インチ飛ぶとわずかに身体を傾ける。


すると、ジャンの身体は、傾けた方向にゆっくりと滑るように移動した。


「そしてこんな風に、魔力を斜め下に出すんだ。そうすれば、更に早く進む」


ジャンは体を傾けただけの時より早く前へ進んだ。


ルナは、真剣な眼差しでジャンの動きを見つめた。


そして、すぐに実践する。


「えいっ!」


彼女は身体を前に傾け、魔力を噴出させた。しかし、身体は前に進むどころか、勢いよく地面に転げ落ちてしまった。


「いったぁい!」


「バランスが取れるようになるまでは、少しずつだ」


ジャンは苦笑しながら、ルナに手を差し伸べた。




その頃、アステリアの街にある宿の一室。


ルミア、エルミナ、リリエルの三人が、顔を突き合わせて話し込んでいた。


「ねぇ、ルナって、最近毎晩どこかに出かけてるわよね?」


口火を切ったのは、ルミアだった。


「そうね。毎日、ご飯を食べた後、急いで支度して出ていくわ」


エルミナが同意する。


「何か、隠し事でもあるのかしら?」


リリエルが首を傾げた。


ルナが夜に出かけていることは、3人は気づいていた。


昨日は宿の奥で3人揃ってルナが帰ってくるのを見ていたのだ。


そこにカイラスとライアスが、夕食を終えて部屋に戻ってきた。


ルミアは、二人に事情を説明した。


「ねぇ、カイラス、ライアス。ルナが毎晩どこかに出かけているの、知ってる?」


二人は顔を見合わせ、頷いた。


「ああ、知ってるぜ。最近は、ルナがいない時間の方が長いからな」


ライアスがそう言うと、カイラスも続いた。


「ルナのことだから、きっともっと強くなろうと、魔法の練習でもしているんじゃないか?」


「えー、でも、ルナが一人で?危ないじゃない」


ルミアは不安そうな顔をした。


「気分転換で、夜の散歩でもしてるんじゃないのか?」


ライアスがのんびりとした口調で言う。


「散歩にしては、毎日欠かさず出かけるし、戻ってくるのが遅すぎるって!」


エルミナがライアスの意見を否定する。


しばらく、5人でルナの行動について話し合っていた。


その時ルミアが、ハッと何かを閃いたかのように、両手を叩いた。


「私、気づいちゃった!」


「なによ、ルミア?」


エルミナが尋ねる。


「ルナって、毎晩出かける時、すっごく嬉しそうな顔してるわよ!いつも笑顔なの!」


その言葉を聞いて、エルミナとリリエルは、ピン!と浮かんだ事があった。


「「間違いない!」」


2人は声を揃えて言う。


「たぶんねぇ、ルナって、ジャンと付き合うようになったのよ!」


リリエルが興奮気味に言う。


「ああ!そうね!最近、ルナってば、ジャンにベッタリだったじゃない!」


ルミアが手を叩いて同意する。


「そうか!だから、夜に二人でこっそり会ってるんだ!」


エルミナも、全てを理解したように頷いた。


カイラスとライアスも、ルミアたちの推測を聞いて、顔を見合わせた。


「なるほどな!道理で最近、ルナの機嫌が良いわけだ!」


ライアスが納得したように言うと、カイラスも、


「これはもう決まりだな!ルナとジャンは付き合ってるんだ!」


と大声で叫んだ。


5人は、そうだ!そうだ!と声を上げ、大合唱になった。




こうなると妄想は止まらない。


ギルドではいつもルナはジャンの近くにいる、みんなで食事する時も隣にいるなど、ヒートアップして行く。


ライアスが、不敵な笑みを浮かべて、ニヤリと口角を上げる。


「なぁ、みんな。せっかくだから、二人のデートの邪魔をしてやろうぜ!」


ライアスの提案に、カイラス、ルミア、エルミナ、リリエルの4人は、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


「賛成!」


「面白そうね!」


「やりましょう!」


カイラスも、満面の笑みで頷いた。


「よし!みんなで、ルナとジャンを探しに行くぞ!」


5人は、夜の街へと飛び出していった。


しかし、いくら街の中を探しても、ジャンの姿も、ルナの姿も見つからなかった。


「おっかしいな・・・・・。どこにいるんだ?」


カイラスが首を傾げる。


彼らは、まさか2人が街からやや離れた草原にいるとは、夢にも思わなかったのだ。


5人は、街の中を、いつまでも探し続けるのだった。




ライアスを先頭に、5人は街の通りという通りを駆け巡った。


「こっちだ、ジャンとルナは、きっとあっちにいる!」


ライアスがそう叫びながら、突き進んでいく。


その後を、ルミアとリリエルが手を繋いで追いかける。


「見つからないわねぇ・・・・・。どこにいるのかしら?」


ルミアが不安そうな顔で呟くと、リリエルが首を振った。


「きっと、2人きりになれる場所を見つけたのよ。街の中じゃないのかも知れないわ」


エルミナは、会話を聞きながら、周囲の建物の中や、路地裏を注意深く見つめていた。


「もしかしたら、もう宿に戻ったのかしら?」


カイラスがそう言うと、ライアスは首を横に振った。


「いや、毎晩毎晩遅いんだ。ルナは絶対まだ帰ってきてない」


5人は、街の広場、噴水、宿周辺、そして、普段ルナが立ち寄りそうなお店の前まで、くまなく探した。


しかし、二人の姿はどこにも見当たらない。


夜も更け、街の灯りが少しずつ消えていく。


焦燥感と、少しの失望感が、彼らの胸に広がっていった。


二人の姿は、闇の中に溶け込んでしまったかのように、見つけることはできなかった。




どれだけ探しても、いまだに見つからない。


「おかしいな・・・・・。もう帰ったのか?」


カイラスがそう呟くと、ライアスが首を横に振った。


「いや、ルナの部屋の明かりはまだついてなかった。それに、ルナはああ見えて、一度決めたことは最後までやり遂げるタイプだ」


「じゃあ、一体どこにいるっていうのよ・・・・・」


ルミアが肩を落とした。


「街の外なら、どこを探したらいいのか見当がつかないわ、もう帰りましょう」


エルミナが提案し、5人は肩を落として宿へと戻ることにした。


その帰り道、彼らがとある酒場の前を通りかかった時だった。


酒場の中から、酔っぱらいの男たちの声が聞こえてくる。


「おい、聞いたか?ここ2~3日、街の東にある草原で、夜な夜な男女が何かやってるらしいぞ」


「ああ、オレも聞いた!魔術師らしいぜ。炎が出たと思ったら雨や雪が降ったり天変地異みたいな事が起こってるって話だ」


「馬鹿なこと言うんじゃねぇよ。あんな場所で夜、魔術の練習なんてするかよ。きっと男女でイチャイチャしてんだろ」


5人は、その会話を耳にした瞬間、ピタリと足を止めた。


「ねぇ、今の話・・・・・」


ルミアが、興奮したようにエルミナの袖を引いた。


エルミナとリリエルは、顔を見合わせて、にやりと笑みを浮かべる。


カイラスも、その言葉の意味を理解したようだ。


ライアスは、口角を上げ、不敵な笑みを浮かべた。


「そうか、やっぱり街の中じゃなかったか。そういうことなら話は早い。みんな、急ぐぞ!」


ライアスの言葉に、全員が頷く。


「行くわよ!」


ルミアが声を上げ、5人は一目散に草原へと足を向けた。




その頃、ルナはややふらつきながらも、かなり安定して飛べるようになっていた。


魔力を出す感覚を掴んでからは、彼女の吸収力は驚くほど早かった。


「すごい、ジャン!私、もう一人で飛べるようになったよー!」


「ああ、すごいな、ルナ。随分と安定してきた」


2人は、休憩を取ることにした。


ジャンは、ルナの横に座り、彼女に水筒を差し出す。


「ほら、休憩だ。無理はするなよ」


「ありがとう!」


ルナは、嬉しそうに水筒を受け取ると、ごくごくと水を飲んだ。


そして、満足そうにため息をつく。


「ねぇ、ジャン。私、初めて空を飛んだ時、まるで鳥になったみたいで、すっごく楽しかった!」


「ああ、オレも最初そうだった。でも、この魔法は、もっと色々なことができる。近々、ルナと一緒に空を飛んで、この街を見下ろしたいな」


ジャンの言葉に、ルナは顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いた。


「うん。私もジャンと一緒に、空を飛びたい!」


二人は、満月が輝く夜空の下で、楽しそうに語り合っていた。




そして、5人が草原の入り口にたどり着いた時、彼らは息を潜め、身を隠した。


その様子を、草陰から見守る5人の顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。


彼らは、2人の親密な雰囲気を目の当たりにし、確信した。


やはり、2人は付き合っているのだ、と。


そして、その楽しそうなデートを邪魔してやろうと、彼らの胸は、期待と悪戯心で満たされていた。


誰もが息を潜め、2人に近づくタイミングを伺っていた。


月明かりの下、楽しそうに談笑する2人の声が、風に乗って聞こえてくる。


5人は、その様子を、草陰からじっと見つめるのだった。




その時だった。


ジャンが、談笑していた口をピタリと閉じた。


ジャンの視線が、草むらがある方へ向けられる。


「ルナ、黙って」


ジャンは、小声でルナにそう告げた。


ルナは、ジャンの真剣な表情を見て、すぐに言葉を止めた。


次の瞬間、ジャンがサーチ魔法を使う。


ジャンは、草陰に隠れる5人の魔力を探知した。


「え?・・・・・あの5人が」


ジャンは、わずかに眉をひそめた。


彼は、ルナの耳元に口を寄せ、さらに小さな声で囁いた。


「ルナ、みんなが来てる。カイラス、ライアス、ルミア、エルミナ、リリエルの5人だ」


その言葉に、ルナは驚いて目を丸くした。


「えっ・・・・・?どうしてここに?」


「たぶん、飛行魔法の練習を何か別の事と勘違いしてるんじゃないか?」


ジャンは、呆れたようにため息をついた。


「どうするの、ジャン・・・・・?」


ルナは不安な顔でジャンに聞いた。


「いいか、オレの合図で、すぐ近くの森の草陰に隠れるんだ。でも、あくまでも自然に・・・・・だ」


ジャンは、そう言うと、わざとらしく大きく咳払いをした。


「もう夜も遅いし、今日はこれくらいにするか」


ルナは、ジャンの意図を察し、演技をするように頷いた。


「うん・・・・・。そうだね」


2人は、5人の方へ背を向け、森へ向かって歩いていく。


ジャンとルナが、森の入り口に差し掛かった




5人は、2人が立ち去るのを見て、顔を見合わせた。


ライアスは、他の4人に、そっと手で合図を送った。


「今だ、追いかけるぞ!」


ライアスが他の4人に聞こえる程度の声で叫び、5人は草陰から飛び出した。


彼らは駆け出し、一気に距離を詰める。


「ジャン!ルナ!待てよ!」


ライアスの声が、暗闇に響いた。




ジャンは、その声を聞くと、ルナの耳元で囁いた。


「いいか、今だ!」


2人は、森の草むらに身を隠すと、すかさず飛行魔法を発動させた。


2人の身体が、一気に宙へと舞い上がる。


音を立てないように、魔力を最小限に抑え、風を操るようにして、森の木々の上を飛んでいく。


そして、2人はあっという間に、街へと戻って行った。


草原から少し離れた夜空で、2人は草原の方を見る。


「あははははは!」


ルナが、堪えきれないといった様子で、声を上げて笑った。


「今頃、みんな、どうしてるかな?」


ジャンが、楽しそうに言う。




その頃、カイラスたち5人は、ジャンとルナが消えた森の中で、呆然と立ち尽くしていた。


「どこだ・・・・・?」


「いないぞ!?」


カイラスとライアスが、森の中を駆け回り、2人の姿を探す。


「ジャン!ルナ!いるんだろ!?」


彼らが大声で叫んでも、返事はない。


ルミアとエルミナとリリエルは、二人が最後に立っていた場所で、ポカーンとしていた。


「おかしいわ・・・・・。間違いなく(ぜったいに)ここにいたはずなのに・・・・・」


ルミアが、地面に落ちた葉っぱを拾い上げて呟く。


「まさか・・・・・。消えちゃった?」


リリエルが、不安そうな顔で尋ねる。


「そんな馬鹿な!」


カイラスが、信じられないという顔で、首を横に振った。


5人は、まるで狐につままれたかのように、ただ、その場に立ち尽くしていた。




その頃、宿の部屋では、ジャンとルナが肩を震わせて笑い合っていた。


「きっと、みんな、驚いてるよねーーー!」


「ああ。オレたち二人が、空を飛んで宿に帰ったなんて、夢にも思わないだろうな」


ジャンが、そう言うと


「ふふふ。私たちだけの、秘密だよ!」


ルナは、そう言うと、また二人で笑い合った。





最後までお読みいただきありがとうございました。


本日は18:00に、もう一話投稿します。

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