第29話 共鳴する絆
「ここまで色々話してきたが・・・・・」
ベルトランは言うかどうか迷っている感じだ。
「塔の謎は・・・・・おぬし一人では、解決できんのじゃ。」
ベルトランの言葉は、まるで鋭い刃のように、オレの心に突き刺さった。
自分にはそれだけの実力がないのか?
いや、今はムリという話なのか?
それとも、オレの力では・・・・・
そんな絶望的な思いが、オレの胸を支配した。
「なぜだ? 36階のドラゴンを倒し、45階に鍵を差せば、それで終わるんじゃないのか?」
オレは、必死に食い下がった。
「本来であれば・・・・・な。ワシが仕掛けた制限解除魔法は、リアーナとセレスが出会わなければ、仲間と協力することでどうにかなったであろう。」
ベルトランはここでしばらく沈黙し、再び続けた。
「さっきも言ったが、『不完全であった制限魔法、リアーナとセレスの魔力共振、塔自体が持つ魔力』この3つが複雑に絡み合っておる。その結果おぬし一人ではどうにもならぬようになったのじゃ。」
オレは驚きで何も言えなくなっていたが、ベルトランは続けた。
「ワシの想定では、セレスとリアーナが、ワシが残した36階の鍵と、2人の共振の力、リアーナ、ラカイア、セレス、アシュレイ、サラフィナの5人で45階まで攻略しておれば、この塔の異常を解決するはずであったのだ・・・・・」
ベルトランが一瞬、話を止めた時、考えた。
もしその5人が45階を攻略していたら、今のオレは何をやっていただろう?
その思考を中断するかのように、再び話し始めた。
「いや、それどころか、その5人なら多少苦戦しても最上階まで攻略できたのじゃが・・・・・『たら』『れば』を話しても仕方ないのう」
5人はそこまで強かったのか!!だけど
母さんとリアーナ・・・・・
オレは、その言葉に、胸が締め付けられるような思いだった。
「じゃが、何かの因果か・・・・・ルナと、おぬしは出会い、パーティーを組んだ。」
ベルトランは、まるで未来を予見しているかのように、静かに語り続けた。
「セレスとリアーナほどではないが、ルナとおぬしの魔力も似ておる。もし、二人で力を合わせれば・・・不完全な制限魔法を、完全に壊せるかもしれぬ」
ルナと、オレの魔力が似ている?
信じられない。
しかし、もしそれが本当なら・・・
「ルナも、支援魔法を使えるのか?」
オレは、期待を込めて尋ねた。
しかし、ベルトランは、静かに首を横に振った。
「支援魔法は使えぬじゃろうて。じゃが、攻撃魔法なら・・・・・もしかしたら、おぬしが使える魔法を使えるかもしれんじゃろうて」
その言葉に、オレは希望の光を見た。
「例えば・・・・・おぬしが使えるようになった飛行魔法。あれは、少し違った使い方をすれば、人も、物も、そしてモンスターも識別できる、サーチ魔法としても使えるんじゃ」
オレは、衝撃を受けた。
飛行魔法が、そんな風にも使えるのか? 想像もしていなかった。
「慣れてくれば、おぬしなら、そうじゃな・・・・・3マイルほどまで、範囲を広げられるじゃろうて」
3マイル・・・・・? そんな広範囲に。
オレは、そのあまりにも巨大な可能性に、ただただ、驚くしかなかった。
「飛行魔法の、違った使い方って・・・どうやってやるんだ?」
オレは、興奮して尋ねた。
「それは、自分で見つけるのじゃ。」
ベルトランは、にやりと笑った。
その顔は、まるで子供に謎を解かせるかのような、楽しげな表情だった。
「1つ、おぬしに教えることがある。サーチ魔法を体得したら、ルナにも教えてやると良い」
なぜ、ルナに?
カイラスや、リリエル、他のパーティーにも教えてもいいじゃないか。
「さっきも話したが、おぬしとルナは魔力が似ておる。2人がサーチ魔法を使えるようになることで、共振が起こるじゃろうて。そして・・・・・テレパシーで会話ができるようになるはずじゃ。」
テレパシー・・・・・?
それは、セレスとリアーナの間に起きていた、魔力の共振!?。
「いや、待ってくれ、なぜオレとルナはテレパシーが使えるんだ?母さんとリアーナの方がオレとルナよりも・・・」
その質問を予想していたように、オレの話を遮り言った。
「簡単な話じゃ、セレスはサーチ魔法が使えた。リアーナは使えなかった。それだけじゃ」
母さんがサーチ魔法を使えた!?
初耳だ。
じゃあ、母さんは空を飛べたのか?
見た事ないが・・・。
だけどオレとルナは、互いの魔力を共鳴させることで、心を通わせることができるというのか。
オレは、その言葉に、運命の糸を感じた。
この偶然の出会い。
この奇妙なパーティー。
すべては、この瞬間のために、定められていたのだろうか?
オレは、ルナを思い浮かべた。
ルナの悲しい過去。
そして、オレの悲しい過去。
もしかしたら、二人で力を合わせれば、その過去を乗り越えることができるのかもしれない。
そして、ベルトランの残した謎を解き明かすことができるのかもしれない。
「おぬしは、この話を聞いて、多くの疑問が湧いてきたじゃろう」
ベルトランの言葉に、オレは頷いた。そうだ。頭の中が、たくさんの疑問でいっぱいだった。
「その疑問、すべてワシにぶつけてみるが良い。」
ここで意地悪そうな顔になり
「答えるかどうかは、質問次第じゃな」
オレは、その言葉に、希望を見出した。聞きたいことは山ほどある。
「ルナと、オレの魔力が似ているのは、なぜだ? 何でリアーナは18階で頭を抱えて動けなくなったんだ?」
次々と疑問をぶつけるオレに、ベルトランは静かに微笑んだ。
「その答えは・・・・・いずれ、おぬし自身が、その目で確かめることじゃろうて。じゃが・・・」
ベルトランは、そこで言葉を切った。
オレのその体から、淡い光が放たれ始めた。
「そろそろ時間じゃ。おぬしを、元の世界に帰さねばならぬ」
「待ってくれ!」
オレは、思わず叫んだ。まだ、聞きたいことがたくさんある。
まだ、この男と話したい。
「待ってくれ! まだ、何も解決していない! なぜ、この空間に呼び出されたのかも、分からないままだ!」
オレの言葉に、ベルトランは悲しげに微笑んだ。
「それは・・・・・おぬしに・・・・・共振が作り出したロボットの謎を解き明かして欲しいから・・・・・そう言っておくかの?」
頭が混乱する。
「は!?共振が作り出したロボット!?意味が分から・・・」
ベルトランはオレの話を遮る。
「じゃが…おぬしには、おぬしの人生があるじゃろうて。ルナにも、ルナの人生があるじゃろうて。この話にとらわれず、自分の人生を生きるのじゃ。ついでに1つ、あのボタンはおぬしがいないパーティーが押しても何も起きなかったのじゃ」
オレは納得できなかった。
「ロボットの謎を解き明かせとか、オレがいなければボタンは動作しないとか、そんなこと言っておいて」
オレはベルトランに怒りをぶつける。
「勝手にオレを巻き込んでおいて、自分の人生を生きろなんて、無責任だ!」
だが、ベルトランは、静かに首を横に振るだけだった。
「確かに無責任じゃろうて。じゃが、それがワシの、精一杯の償いじゃ・・・・・」
オレの体が、さらに強く光り始めた。
「待ってくれ! 最後に一つだけ聞かせてくれ! シオンは・・・・・シオンは、本当に死んだのか?」
オレは、震える声で尋ねた。
「シオンは・・・・・」
ベルトランは、ハッキリと告げた。
「!!?」
その光が、さらに強くなる。
「待ってくれ!」
オレは、懇願するように叫んだ。
だが、その声は、光の中に掻き消されていった。
光が太陽のように明るくなり、オレの視界をすべて奪った。
そして、その光が消えた時・・・・・




