第21話 ジャンの魔法開発
ジャン サイド
ギルドから宿へ向かう道を歩きながら、ジャンは思わず笑みをこぼした。
まさかパーティー全員と会うとはな
たまにギルドでやるモーニングサービスの営業日だし
みんな考える事は同じって事か
ガツガツ食べて喉に詰まらせて慌てるライアス
誰かのコップが空になればすぐに水を入れるカイラス
黙々と、でも上品に食べるルミア
幸せすぎて今にも空中に飛んで行ってしまいそうな笑顔で食べるルナ
そんなルナを嬉しそうに見つめるリリエル
ライアスのように急いで食べて、むせるエルミナ
ライアスからは
「お前なあ、悟ったおじいちゃんのような顔してみんなを見てるんじゃねえよ。気持ちわりい!」
と言われ、みんなに笑われたが
冒険者をやっている以上、明日自分の命があるか分からない。
それは仲間も同じだ。
詳しくは知らないが、フィリーネはリリエルたちとの戦闘時に意識不明になり、両親に引き取られたと聞く。
誰がいつ、そんな状況に陥ってもおかしくはない。
もしかしたら今日明日、このメンバーの誰かが、あるいは今ギルドに食事に来ている誰かが亡くなるかもしれない
意識が戻らないような事があるかも知れない。
自分が死んでしまうかもしれない。
だからこそ、さっきのような時間が幸せに感じる。
そしてみんなの笑顔を思い出す。
エルミナもすっかり元気になり、リリエルもルナも、カイラスのパーティーに加わって、皆で支え合っている。
自分も助けられてばかりだ。
そんな事を考えていると、宿の入り口が見えてきた。
(またみんなで集まれたら良いな)
そう思うと、再び笑いがこみ上げてきた。
さて、今日やろうと思っていた事をやろう!
今までは魔法陣をコピーして、コピーした魔法陣を触ってちょっと違う効果を出すことをやっていた。
だけど今日は、既存の術式を応用するのではなく
魔力そのものの性質を根本から見つめ直し
全く新しい法則を見つけ出す。
それは、まるで大いなる自然の摂理を解き明かすような、途方もない作業だった。
「うーん・・・・・」
ジャンはベッドに座り込み、肘をついて頭を抱えていた。
目の前には、書き散らした魔力循環図や魔法陣のスケッチが散乱している。
「術式に縛られていてはダメだ。もっと、シンプルに・・・・・魔力とは、一体何だ?」
思考が堂々巡りしていた。
そもそもジャンは理論的な事は、ほとんど分からない。
見た魔法を思い浮かべると、何となく出来てしまう。
そう考えている中で、ふと、ある考えが閃いた。
魔力そのものを、何かに変換するのではなく、ただ外へ、ひたすらに放出する。
その行為にこそ、何らかの意味があるのではないか。
早速やってみる。
窓を開け、右手を外に向けて、魔力そのものを放つ
「シューーーーッ」
まるで風船から空気の抜けるような音が出るだけだった。
「まあ、そんなに上手くいくわけないか」
収納魔導具から杖を取り出す。
王様からもらった杖だ。
右手に持ち、魔力を・・・・・
「!?」
魔力が杖に蓄えられる!?
「何だ!?これ」
説明書を読んでみる。
魔力を蓄える事まもちろん、出す事もできる
もちろん、術式を介せば魔法も出せる。
ふんふん
なるほどね。
杖を空に向けてファイアーボールを打つ。
出来るな、今度は自身の魔力を使わずに、杖に蓄えられている魔力でファイアーボールを打ってみる。
面白いな、これ。
思考錯誤しながら、杖から自分の魔力を出す事もやってみるが
「シューーーーッ」
結果は変わらない。
今度は杖に蓄えられてる魔力を出してみる
「シューーーーッ」
くそ!うまくいかない!!
ルミアは
術式構築=料理レシピ
って言ってたもんなあ
上手く行くわけないか・・・・・
「あーーーーー!!もう!!くそーー!」
「ポン」
ん?
ポン?
今、ポンって言ったよな?
???
どこで?
オレ以外に誰か魔法を?
窓から身を乗り出してみるが、特に人影はない。
宿から遠くない所に何本か木があるが、そこに隠れているのでなければ人は見当たらない。
杖を一旦置いて、木に向かって魔力を出してみる
「シューーーーッ」
杖を取ってやってみる
「シューーーーッ」
イライラしながらつぶやく。
「さっきのポンは何だったんだよ!」
「ポン」
!?!?
また窓の外を見る。人はいない
杖を木に向けて力を込めて、魔力を放つ!
木に圧縮された魔力が当たり、弾けて消える
木に傷がついたわけではない。
「お!?」
術式は構築しない・・・と言っても、いつも魔法は感覚で使っているから術式構築してる感覚はない
ルミアたちは、右手と左手同時に別の魔法を出すのは魔法常識からは考えられないと言っていた。
魔力のみに集中、マジックストリームとでも言うのだろうか?魔力の流れ
それに意識を集中してそれをせき止めるイメージで、ある程度たまったら打つ!
「ボン」
今度は木にわずかだが、傷がつく。
よっしゃーーーー!!!
体が一瞬数インチ浮く
!!!!!
今、床を蹴った・・・・・か?
普通にジャンプしてみる。
いや、これとは明らかに違っていた。
飛んだんじゃなくて、浮いた感じだった。
とりあえず、浮くことは置いておいて、今は魔力の集中だ!
よし、塔へ行くか!!
塔へ急いだ。
1階に着くと、ふとルシウスたちと来た初日を思い出した。
あの時は初めての戦闘に足が震えていた。
上手く支援魔法がかけられなかったら、ここで死んでしまうかもしれない
そんな不安をルシウスは、優しくフォローしてくれた。
オレが支援魔法をかけ、ルシウスとルナが倒した初めてのモンスター、ゴブリン
今では、自身に睡眠魔法をかけて寝ない限り死ぬことはもちろん、ケガをすることも まずない。
あの時のルシウスは・・・・・と思いながら歩いていると、そのゴブリンが現れた。
さっきの要領で、魔力に集中、放つ
ポンと言う音と共にゴブリンに当たったが、キズ1つ付いてない。
クキャックキャッ
と獲物を見つけた!と喜ぶかのように近づいてくる。
あちゃー!失敗失敗
「ファイアーボール!」
初めて塔でファイアーボールを使った時より威力は上がってるなあ
と思いながら、燃え尽きるゴブリンを見つめていると、後ろからまた出てきた。
何度も何度も失敗し、練習する事で、コツを掴んできた。
ゴブリンが来る、魔力に集中、放つ!ボン!
傷つけられグギャー!と怒り狂って襲ってくるゴブリン、攻撃をかわしては
魔力に集中、放つ!
ボン!
5~6回当てると倒せるようになってきた。
ひたすら練習!
2~3回で倒せるようになり、ついには1回で倒せるようになった。
思いついたことがあるので、3階へ
クリブンが来た。
「お前、18階に出るやつとは違うよな!? ウインドカッター!」
真っ二つになった。
よし!
またクリブンだ。
魔力に集中、放つ放つ!
連射だ!
ボンボン!
キキャー!
と倒れる。
よし!
次は5階
これが、初心者には難易度高いんだよなあ
Eクラスはもちろん、Dクラスになったばかりのパーティーにはキツイよな
遠目にリーフスキンを確認。
パッと見た感じ、どう見ても普通のダンジョンの壁にしか見えないんだよなあ
リーフスキンもこちらに気付いていて、オレが気付かずに通り過ぎるのを待ってるんだろうな。
悪いな、リーフスキン。
分からないように、にやついてるが、おあいにく様
ちょっと試させてもらうぞ!
魔力に集中、放つ放つ放つ放つ
ボボボボン
ぐぎーーー!!
壁から離れ、目が吊り上がる
うーんさすがにちょっと強いな。あれでは倒せないか
怒りでこっちに向かってくると同時に何本もの蔓を針のようにしてこちらへ向けてくる。
蔓を伸ばそうとしたその瞬間、後ろから
「危ない!!ファイアーボール!!」
燃えたのは蔓だけだった。
あれ?と思って振り返ると、5人のパーティーがいた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




