第19話 王の御前
今回は、イラストが多いです。
朝の光が窓から差し込み、ジャンの瞼を優しく照らす。
ゆっくりと目を開けると、見慣れない天井が視界に入った。
ここが教会の医務室であることに気づき、彼は大きく伸びをした。
「ふう・・・・・」
深い眠りから覚めた頭は冴え渡り、気分は最高だ。
ベッドから起き上がると、シーツを整え、顔を洗いに行った。
(ルナの記憶が戻って、リリエルの心の重荷も無くなって良かったな)
そんな事を思いながら医務室に戻ると、神父が優しく声をかけてきた。
「ジャンさん、体はもう大丈夫かの?」
「はい、おかげさまで。もう問題ありません」
神父はにこやかに頷き、ジャンの回復を喜んでくれた。
「昨日は言いそびれたがの。皆さん、本当に心配されていたようじゃぞ」
彼らが自分のことを心配してくれていたと聞き、ジャンは胸が温かくなった。
「それは・・・・・ありがとうございます。皆に迷惑をかけてしまったな」
「迷惑だなんて、とんでもないぞ。皆、ジャンさんのことを心から大切に思っているようじゃ。さて、元気になられたようじゃし、もう戻られても大丈夫じゃろう。向かう前に、こんなのがあるぞい」
そう言って神父が差し出したのは、朝食の入った籠だった。
教会の食事とは思えないほど豪華な内容に、ジャンは驚いた。
「これは・・・・・?」
「昨日は内緒にしてたんじゃが、皆さんが、ジャンさんが目を覚ましたと聞いてから、これを食べさせてあげてくださいと、こっそりワシの部屋に持ち寄っていたんじゃよ。どうぞ、遠慮なく召し上がるといい」
ジャンは深く頭を下げた。
籠の中には、ルミアとエルミナが焼いたのだろうか、甘い香りのするパン
ライアスが狩ったであろう獣の肉を使ったソーセージ
カイラスが作った力強いスープ
そしてリリエルとルナがくれたであろう、フルーツが詰まっていた。
「・・・・・みんな、ありがとう」
一口食べると、一つ一つの料理に、彼らの温かい思いが込められているのが分かった。
ジャンは感謝の気持ちを噛みしめながら、食事を終え、ギルドへ向かう準備を始めた。
ギルドへ着くと、いつものように活気に満ちていた。
受付のアーカスに声をかけ、顔なじみの冒険者たちに挨拶を交わす。
ジャンは、カイラスたちの姿を探した。
見ると、奥のテーブル2つを使って、カイラスのパーティーとリリエル、ルナが何か話し込んでいる。
ジャンは迷わず、そのテーブルへと足を向けた。
「みんな、ただいま」
ジャンの声に、全員が振り返った。
一瞬の静寂の後
ルナがキャーッと叫び声をあげ、勢いよく駆け寄ってきた。
「ジャン!昨日は本当にありがとう!ありがとう!」
ルナは嬉しそうに、その場で飛び跳ねた。
「ジャン、昨日はサポートしてくれてありがとう。本当に助かったわ」
リリエルは静かに微笑み、安堵の表情を浮かべている。
「ジャン、本当に良かったよ」
カイラスが力強くジャンの肩を叩いた。
ライアスも「がははは、やっと起きたか!」と豪快に笑う。
ルミアは感極まって「本当に・・・・・本当に良かったわ」と言葉を詰まらせ
エルミナは照れくさそうに「心配なんかしてないし」と呟きながらも、どこか嬉しそうだ。
「みんな、ありがとう。もう大丈夫だ」
ジャンは続ける。
「今朝、神父さんに朝食を頂いたよ。まさかみんなが持ち寄ってくれた物だったなんて・・・・・ありきたりな言葉だけど、ありがとう!!」
深々と頭を下げる。
ライアスはジャンの肩を叩きながら言った。
「良いって事よ!気にするな」
頭を上げるとみんな満面の笑顔だった。
ジャンは皆の温かい歓迎を受け、会議の輪に加わった。
彼らは、塔の調査について話し合っていたようだ。
カイラスが、今は情報が少なすぎて、クリブンを18階で出す方法が分からないことから
ここは一度飛ばし、19階から調査を再開するつもりだと説明した。
カイラスは続けて言う。
「18階の件は、また改めて考えることにし、当面Cクラスは17階までに制限することとする。」
全員が頷く。
「それより、ジャン! すげーぞ! この間、ステータスアップの魔法をかけてもらったんだよ!その後で全ステータスアップの魔法をかけてもらったらどうなるか、エルミナが試してくれたんだ! そしたらな!何にも変わらなかったんだ!がはははは!!!」
ライアスのこの言葉に、オレは心の中で冷静に
それのどこがすごいんだ?と突っ込み、ライアスってこんなキャラだったか?と考えてしまった。
周りを見るとポカーンとしていたり複雑な顔をしていたり・・・・・
まあ、そんな反応になるよなあ。と思っていた。
そうそう、とルミアが話を切り出す。
「リリエル、ルナ、エルミナ、この間、魔法を2つ同時に使える人の話をしたの、覚えてる?」
3人は驚き、ルナが元気よく言った。
「もしかして、今日会えるの!?」
ルミアはニコニコして答えない。
エルミナは高揚し胸に手を当てている。
リリエルは、冷静さを保とうとしつつも、期待感が顔に出ながら話す。
「どこに行けば会えるの?」
「ああ、このギルドに今いるよ」
そうカイラスは、言うと、3人は目を見開き、ますます期待感を膨らませる。
ライアスは3人を見てると面白くなり、笑いながら
「がはははは!今、お前さんたちの目の前に居るじゃねえか」
そう言うと、ジャンを指差す。
3人は驚いてジャンを見ると、ジャンは、複雑な顔をしながら「オレ?」と言った。
ルミアが「ほらジャン、見せてあげなさいよ」と促すと
ジャンは右手にアイスアロー、左手にファイアーアローを作り出した。
エルミナは「え・・・・・!?」と言ったまま固まり
リリエルはガタガタ震えながら「信じられない」とつぶやき
ルナは口をパクパクさせているが、言葉になっていなかった。
ルミアは3人を見て、苦笑いをしながら答えた。
「そうなのよねー、全く理解できないわ。どうやったらこんな事出来るのかしらね」
その時、アーカスが顔をのぞかせた。
ここで3人は正気に戻ったのか、アーカスの方を見た。
「みなさんに朗報です」
アーカスはそう言うと、皆を見渡した。
「実は、王様がBクラスパーティー七人全員を王城に呼んでいます。すぐにでも向かってほしいそうです」
王様が自分たちを? 全員が顔を見合わせ、驚きを隠せない。
「理由は何ですか?」
カイラスが尋ねると、アーカスは首を横に振った。
「それは分かりません。ただ非常に重要な話だそうなので急いでください。悪い話ではないはずです」
急遽、彼らは王城へ向かうことになった。
道中、ルナが興奮した様子でジャンに話しかける。
「ねえねえ、ジャン! 王様って、どんな人かなー?この間、一瞬しか会ってないけどやっぱり、すごい偉そうなのかな?」
ジャンは首をかしげ、少し考えながら言う。
「さあなー。オレもこの間一瞬会っただけだからなあ。でも、この国の王様だ。きっと素晴らしい方だろう」
ルナは期待に胸を膨らませて言う。
「もしかして、もしかして、ジャンのこと、すごい!って褒めてくれるかも!? エルミナを助けたこととか!」
「がはは! あり得るな!」ライアスが笑いながら加わる。
「ジャン、褒められても舞い上がって転んだりしないでよね」
ルミアが冗談交じりに言った。
ジャンは「あはは、しないさ」と笑顔で答えた。
リリエルは静かにみんなと歩いている。
彼女の近くを歩くことで、ジャンだけでなく、パーティ全員は不思議な安心感を覚えていた。
エルミナは「王様かー、緊張するなー」とそわそわしている。
「大丈夫だよ、エルミナ。王様はきっと優しい人だ」カイラスが励ます。
エルミナは「カイラスはそう言ってくれるけど、絶対緊張するって!」と答えた。
王城に着くと、門番が彼らを中に通した。
広大な敷地、美しい庭園、そして荘厳な建物に、一同は息をのむ。
ジャン、リリエル、ルナは40階攻略の際に来ているのだが、ルシウスに付き合わされていた感があり、その時はあまり周囲を見ていなかったようだ。
やがて、彼らは玉座の間へと案内された。
玉座には、穏やかな笑みを浮かべた王様が座っていた。
優しい眼差しは、彼らの緊張を少しずつ和らげていく。
「よく来てくれた、勇気ある若者たちよ」
王様の声は、穏やかで深みがあった。
「私が呼んだのは他でもない、君たちに礼を言いたかったからだ。
勇者 カイラス・クリストフ
戦士 ライアス・バーリトン
賢者 ルミア・メルディーナ
ホワイトマジシャン エルミナ・サンクレア。
そして
ホワイトマジシャン ジャン・クレメンス
僧侶 リリエル・セラフィー
マジシャン ルナ・ノアール。
皆に感謝している」
王様はそう言って1人ひとりの名前を呼ぶと立ち上がり、彼らの前に歩み出た。
「君たちがエルミナの治療に尽力してくれたことそして、その際に発見された黒い棒状の物について、我が国の魔術師たちが調査をしてくれた」
王様は、一同の顔を一人ずつ見て、笑顔で続けた。
「その結果、驚くべき事実が判明した。エルミナの腕から現れたあの棒は、およそ一万人分の魔力を蓄えることができる、非常に貴重な魔力蓄積棒だったのだ。ここに持ち込まれた後もまだ数千人分の魔力が残っておった。これほどの物、今まで発見されたことはない」
その言葉に、皆が驚きを隠せない。
「一万人分の魔力・・・・・!?」
ルナが目を丸くする。
「ああそうだ。一万人分だ。国としても、その魔力を大いに活用させてもらうことになった。そこで、その感謝の印として、君たち一人ひとりに、ささやかながら贈り物をしたい」
王様はそう言って手を叩くと、二人の近衛兵が、七つの箱を運び込んできた。
「ライアスには、この国が誇る最高の素材で作られた、この斧を」
ライアスに手渡されたのは、鈍い銀色に輝く、重厚な斧だった。
ライアスは驚きながらも、深く頭を下げた。
「カイラスには、伝説の剣士が使っていたと言われる、この剣を」
カイラスは、その剣を手に取ると、その重さとバランスに驚嘆の声を上げた。
「ルミアとリリエル、ルナには、それぞれに合うように調整された、この杖を」
三人に渡された杖は、それぞれ異なる輝きを放っていた。
ルミアの杖は青く、リリエルの杖は緑、ルナの杖は茶色に光っている。
「そして、エルミナとジャンには、白魔導士専用に作られた、特別な杖を」
エルミナとジャンに渡された杖は、純粋な白色をしていた。
他の杖とは異なり、何の装飾もない、ただただ白い杖だったが、手にした瞬間、膨大な魔力が流れ込んでくるのを感じた。
「さて、皆、驚いた顔をしているな。
実は、君たちに贈ったこれらの武器やアイテムには、秘密が隠されている」
王様はそう言うと、微笑んだ。
「君たちが発見してくれた魔力蓄積棒。
あれを細かく砕き、0.1インチほどの大きさに加工して、それぞれの武器やアイテムに埋め込んである。
これにより、君たちの魔力は、底知れぬ力を発揮するだろう」
その言葉に、一同は再び驚愕した。
自分たちの手にある武器や杖が、とてつもない力を秘めているというのだ。
「王様、こんな貴重なものを・・・・・本当にありがとうございます」
カイラスが皆を代表して礼を述べた。
「感謝するのは私の方だ。君たちのおかげで、この国はまた一つ、豊かになった。そして、これからも君たちの活躍を期待している。困ったことがあれば、いつでも私を頼るといい」
王様の言葉に、皆は深く感動した。
そして、王様は再び玉座に戻り、一同に退出を促した。
「皆には、もう休んでほしい。今日はありがとう」
皆が玉座の間を後にしようとすると、王様がジャンに声をかけた。
「ジャンよ。そなたには、まだ話がある。皆は先に行ってくれ。二人きりになりたい」
その言葉に、一同は驚き、ジャンを心配そうに見つめた。
しかし、ジャンは落ち着いた表情で皆に頷いて見せた。
「大丈夫だ。先に行って、休んでいてくれ」
皆は心配そうな顔で、玉座の間を後にした。
扉が静かに閉まり、部屋にはジャンと王様だけが残された。
最後までお読みいただきありがとうございました。
カイラス、ライアス、ルミア、エルミナは、イメージと違う。と思う方はいるかもしれませんが、勝手に自分好みで書いています(^-^;




