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第1話  ボスを倒して

ルシウスが

「よっしゃー!!!40階のボスを倒した。


 これでオレたちは今日から世界初のAクラスだ!!」


と高らかに叫んだ。


だが、パーティーメンバーを見ると、喜んでいるというよりは、誰もが肩で息をしていて、疲労の色が濃かった。


ジャンは

(疲れているな)

と思いながら、この戦いを振り返っていた。


この勝利は、偶然仕掛けた罠がボスにうまくはまってくれたからだ。


その一瞬の隙をみんなが見逃さなかったからこそ、倒すことができた。


勝利は喜ばしいが、反省点も多い戦いだとジャンは考えていた。


そんなことを考えていると、ルシウスが


「よし、41階で登録したら帰るぞ」


と言った。


41階に向かうその足取りが軽いのは、勇者ルシウスだけだった。


この塔は階段を上がってすぐ水晶があり、そこにプレートをかざすと、階数が更新される仕組みになっている。


東 〇階

西 〇階

南 〇階

北 〇階


このように東西南北、それぞれの階数が表示されるのだ。


41階でプレートをかざすと、表示は


東 --階

西 --階

南 41階

北 --階


となった。


街に入ると、ルシウスはまっすぐギルドへ向かおうとした。


それを見たパーティーメンバーは、揃ってため息をついた。


「なあ、今日はもう休まないか?」


ゼノンがそう切り出すと、ルシウスは


「ああ、疲れてるなら帰ってくれ」


と素っ気なく返した。


ルナとリリエルは


「えっ!?」


という顔をした。


いつもなら


「何を生ぬるいことを言ってるんだ?ギルドに行くのが先だろ!」


と言うはずなのに、とでも言うのに・・・・・と思っているようだった。


解放されたメンバーはホッとしながら、それぞれ別れていった。


ジャンは


(Aクラス認定されると思うと気軽に足が向かうのだろう)


と考えながらも


(だが、総合で判断されるんだ。認定されればそれでいいが、オレはBクラスのままだと思っている。


 オレを含め、このパーティーはまだ弱いんだ)


と冷静に分析していた。



ギルドに入ったルシウスは、周りに目もくれず受付へと向かった。


「40階のボスを倒したぞ!」


ルシウスは目を輝かせ、ニコニコしながらプレートを受付嬢のアーカスに見せた。


アーカスもにこやかに応える。


「おめでとうございます。明日の朝、メンバー全員で王様に会うよう仰せつかりました」


「だーかーらー!40階のボスを倒して、41階に行ったんだけど?」


ルシウスは食い下がるが、アーカスは


「はい、おめでとうございます。素晴らしい功績です」


と笑顔を崩さなかった。


その笑顔に、ルシウスの顔はみるみる不機嫌になり


「それだけかよ!!」


と乱暴にプレートを手に取ると、ドスドスと足音を立てて扉を蹴ってギルドを後にした。



アーカスの後ろから人が出てきた。


ギルド長のリーザンだった。


「はぁ・・・・・、あの性格ではAクラスの勇者は務まらんよ」


とリーザンはため息をついた。


「腕はいいのだが、支援魔法なしではまだ弱い。本人がそこをどう捉えているかだな」


「ギルド長の目から見てもそう見えますか。ルシウス本人は弱いとは思ってないでしょうね」


アーカスは淡々と答えた。


「そうだな・・・・・。Cクラスの勇者カイラスと勇者ルシウスを一騎打ちさせたら、どっちが勝つと思う?もちろん支援魔法なしの一騎・・・」


リーザンが聞いている途中で、アーカスが遮り


「言うまでもなくカイラスでしょう。」


アーカスは、一切の迷いなく即答した。


リーザンは、その即答に少し驚いたように、面白そうな顔で「即答だな」と呟いた。


「ギルド長は違うご意見で?」


アーカスが静かに問いかける。


リーザンは、腕を組みながら真剣な顔つきに戻り


「いや、オレもそう思う」


と頷いた。


「数日以内に勇者カイラス一行はBクラスに昇格だ。その準備を頼む。」


「そうするとルシウスの機嫌を損ねそうです」


アーカスは、感情を読み取れない表情で言った。


「それとこれとは別問題だ」


リーザンは断固とした口調で言い切る。


「確かにそうです。勇者カイラス一行のBクラス昇格の準備をします」


アーカスは、淡々と答えた。


「ああ、頼んだ」


リーザンはそう言って、深く頷いた。


ルシウス一行のAクラス認定が見送られ、代わりにカイラス一行が昇格することになったようだった。



その頃、自分の部屋でゆっくりしていると、ドアがドンドンドンと強く叩かれた。


開けると、鬼のような形相をしたルシウスが立っていた。


「明日城に行くぞ、みんなに伝えとけ!」。


「ああ、いつもの時間と場……」ジャンが言いかけると、


「分かってるなら聞くな!」


ルシウスはそう言って、自分の部屋に戻っていった。


ジャンは


(あの様子だとAクラス昇格は見送られたな。当然と言えば当然だ)


と、改めて思った。





最後までお読みいただきありがとうございました。

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