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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

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第18話  晴れる心

翌日、約束通りにルナの記憶について話し合う場が設けられた。


ギルドの一角にある、あまり使われない応接室だ。


部屋の外には「使用禁止」の札がかけられ、中から鍵がかけられ、完全な密室となっていた。


集まったのは、ルナ、リリエル、ジャン、そしてギルド長のリーザン。


リーザンはジャンとリリエルを落ち着いた顔で見つめ、それからルナに優しい目を向けた。



「では、ルナさん。昨日約束した通り、この場を設けたのはルナさんの失われた記憶についてだ」


リーザンの言葉にルナはこくりと頷いた。


ルナは少し緊張した面持ちで、リリエルとジャンを交互に見る。


ジャンとリリエルはまっすぐルナの目を見ていた。


リーザンは静かに進行を始める


「まずルナさん、伝えたい気持ちは何かあるかい?」


ルナはリリエルの目を見ると


「リリエル、ごめんなさい!!」


そう言うと深く頭を下げ、続けた。


「私、自分の事しか考えてなかった。昨日、ギルド長に聞いたの。私が狂っていたって、リリエルは必死に私の名前を叫んでいたって・・・・・そんなリリエルの気持ち、考えていなかった」


深く頭を下げたままのルナ。


「ルナ。まず最初に謝らせて。今まであなたに嘘をついていたこと謝るわ、ごめんなさい」


リリエルの突然の謝罪に、ルナはパッと顔を上げる。


「ううん・・・・・いいの・・・・・それより」


ルナはここまで話すと、少し興奮気味に続けた。


「私、まずは真実が知りたい!」


ギルド長は頷くと続けた


「この話は、リリエルさんから聞いてもらうのが一番いいだろう。リリエルさん、準備はいいかな?」




リーザンに促され、リリエルは静かに頷く。


それから一度目を閉じ、深呼吸をした。


しばらくすると、ゆっくりと目を開けて落ち着いた声で話し始めた。


「ジャンが襲われた翌日、私たちが塔の21階でメガプロプトスに遭遇したこと、覚えてる?」


ルナは小さく首を振った。


「全く・・・覚えてない・・・・・」


リリエルは話を続ける。


「あの日、ルシウスとゼノン、フィリーネ、私、ルナの5人で塔の21階に行ったのよ」


ルナは信じられないといった表情で固まる。


「え?そのメンバーで?それって、ジャンと会った朝・・・・・ジャンがモンスターに襲われた翌日のことで間違いないの?」


リリエルは頷き、その日を思い出しながら話す



リリエルは順番に話していく。


自分が気絶している間に、おそらくルナはルシウスが殺される瞬間を見てしまった事を話すと


ルナは驚愕の表情をして。


「私・・・・そんな・・・・・ルシウスが・・・・・?」


言葉を失い、リリエルを見つめた。


リリエルはそんなルナの様子を気にかけながらも、続けた。


「私とフィリーネが意識を失っていた間、ルナとゼノン二人でメガプロプトスと戦っていたはずなの」


ルナは首を横に振った。


「え!?、そんな・・・・・私、ゼノンと二人でモンスターと戦ったなんて記憶・・・・・」


ルナは驚きの表情を浮かべる。


「あの時、ゼノンが『ルナ!お前だけでも逃げろ!このままじゃ全滅だ!』って・・・その時リリエルは気絶していた・・・・・?」


リリエルは静かに答える


「私、そこの記憶がないの。だからその時は気絶していたんだと思う」


しばらくの静寂。


「嘘・・・・・そんな・・・・・」


ルナは真っ青な顔で、声にならない悲鳴を上げる。



その瞬間、ルナの記憶がフラッシュバックして蘇ってくる。


ルナ「リリエル!!フィリーネ!!」


ルナ「イヤ!一人でも多く・・・」


ルナ「ダメーーーー! フレア!!!」


ルナ「いやああああーーーーー!!!」


映像は断片的で、モヤがかかったようにぼんやりとしているが、確かにそれは自分の記憶だった。


断片的だった記憶は、モヤが晴れるように、徐々に戻って来る。


ルナは頭が割れるような激しい痛みに襲われ、その場にうずくまってしまう。



「ルナ!」


リリエルが慌ててルナのそばに駆け寄る。



「大丈夫か、ルナ?」


ジャンも心配そうに声をかける。


ルナは痛みに耐えながら、辛そうに顔を上げた。


「これ・・・・・ほんとうなの?みんな・・・・・」



「何を思い出したか分からないが、おそらく本当だ」


ジャンは静かに頷いた。


ルナは震える手で、リリエルの服を掴む。


「じゃあ・・・・・じゃあ、リリエルとフィリーネを助けようとして、私は・・・・・ゼノンとルシウスを見捨てたってこと?」


ルナの言葉に、ジャンは静かに首を横に振った。


そのままリリエルが続ける。


「違うの。思い出したなら分かるでしょう?ルナはゼノンに逃げろって言われていたの。ゼノンはルナ、あなたを救ったの。だけど、ルナは一人でも多くの命を救おうと私とフィリーネが結界内に入った後、ゼノンがあなたにやったように、あなたはゼノンを救いに行ったの」


放心しているルナに、リリエルは言った。


「あなたは決して見捨ててなんかいない。ゼノンは、最後まであなたを逃がそうとしてくれていたのよ」


リリエルは優しい声でルナに語りかけた。


しかし、ルナの心には何も届かない。


「でも・・・・・ルシウスは、死んだんでしょ?私がフレアを打ったのと、メガプロプトスの金棒が当たったのは同時だった。フレアはほとんど効果ないって知ってたのに・・・・・」


ルナの言葉に、ジャンは何も言えずに黙り込んだ。


リリエルも、ただルナの背中をさすることしかできなかった。


「私・・・・・ルシウスを見殺しにしたの?」


ルナはうつろな目で、天井を見つめていた。


リリエルは必死に否定する。


「それは違うわ、ルナ」


その時リーザンが静かに口を開いた。


「ルシウスはメガプロプトスの攻撃で死んだ。君は最後まで戦っていた。君のフレアは、ルシウスを救うために放ったものだったんだ。」


「でも・・・・・でももし、スターフレアとかエクスプロージョンを使っていたら・・・・・もしかしたらルシウスは・・・・・私が、迷わなかったら・・・・・」


ルナの言葉に、部屋の中は沈黙に包まれた。


「じゃあ、ゼノンは?私が結界に行ったから、あの間にゼノンが・・・・・戻ったらゼノンも・・・」


誰も、ルナの言葉を否定することはできなかった。


その時、ジャンが静かに口を開く。


「オレは、あの時にルナが間違っていたとは思わない。リリエルも言っていたが、ゼノンはルナを救おうとメガプロプトスの足止めをした。だけど、ルナもゼノンと同じことをした。ゼノンを救いに行こうとしたんだ。」


ジャンの言葉に、ルナはハッとして顔を上げる。


「私・・・ゼノンと同じことを・・・」



「ああ、そうだ。ルナはゼノンを救おうと、自分の危険を顧みずにゼノンの元へ戻ったんだ。そしてゼノンも、ルナを助けるために自らの命を危険に晒した。お前たちは、お互いを守ろうとしただけだ。どちらかが一方的に犠牲になったんじゃない。どちらも相手を大切に思うあまりに、同じ選択をしたんだ。」


ジャンはルナの顔をじっと見つめ、優しく言葉を続けた。


「迷うのは当たり前だ。その時点でルシウスが犠牲になっていたんだ。フレアはあまり効かない、だけどそれ以上の魔法だと仲間も傷つけるかもしれない。」


ジャンは、一度話を止めると、しばらく考えてから続けた。


「そんな状況の中で、大事な仲間が目の前で傷つくのを見て、冷静でいられる人間なんていない。お前が迷ったのは、それだけゼノンのことを大切な仲間だと思っていたからだ。だから、ルナがしたことは、何も間違っちゃいない。」


そう言って、ジャンはルナの肩にそっと手を置いた。その温もりに、ルナの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。


「ルナ、もういいのよ」


リリエルはルナを優しく抱きしめた。



「辛い思いをさせてごめんね。でも、あなたは1人じゃない。私たちがそばにいるから」


リリエルの温かい言葉に、ルナは声を上げて泣き始めた。


「私は・・・・・私は・・・・・」


ルナは泣きながら、言葉にならない感情を吐き出していた。


ジャンとギルド長は、静かに二人を見つめていた。



どれくらいの時間が経っただろうか。ルナの泣き声が落ち着いてきた頃、リーザンが口を開いた。


「ルナさん。この話を聞いて、君が今すぐに受け入れられるとは思っていない。まさか今日、記憶が戻るとは思わなかったが、真実を知ることは、君にとって必要なことだと思って、この場を設けたんだ」


ギルド長は立ち上がると、ルナの頭を優しく撫でた。


「何か話したいことがあれば、いつでも私に言ってくれ。ギルドは、君たちの味方だ」


リーザンの言葉に、ルナはゆっくりと顔を上げた。


彼女の目はまだ赤く腫れているが、どこかスッキリしたような表情をしていた。


「ギルド長・・・・・ありがとうございます」


ルナはそう言って、涙を拭うと、頭を下げた。



「ああ、良かった。じゃあ、私はこれで。あとは君たちでゆっくり話すといい」


そう言ってリーザンは部屋を出て行った。


部屋にはルナ、リリエル、ジャンの3人だけが残された。


リリエルはルナの手を握り、優しい声で言った。


「ルナ、私はルナの記憶が戻ったら、また錯乱するかもしれないと、あなたを信じられなかった。それがルナも私自身も苦しめてたのね。もっとルナの事を信じる事が出来るようになりたいわ」


「リリエル……ありがとう」


ルナはリリエルにそう言って、少しだけ微笑んだ。


ジャンはそんな二人の様子を、少し離れたところから見つめていた。


「ルナ・・・」


ジャンがルナに声をかけようとした、その時


「ジャン・・・・・」


ルナはジャンの声に被せるように言った。


「私、ジャンにも謝らないと・・・謝って許される事じゃないのは分かってる。だけど・・・、本当に今更だけど、ごめんなさい・・・・・」


こう言ってルナは深く頭を下げた。


ジャンは戸惑いながら聞いた。


「どうして謝るんだ?」


スッと背筋を伸ばしたルナは


「私・・・・・知っていたんだ、ルシウスの計画・・・それに反対できなかった。」


ルナはそう言って、再び目に涙を浮かべた。


ジャンは静かにルナのそばに歩み寄り、優しく言った。


「ルナ。オレに謝る必要なんてない。何も悪くない。それは全部、ルシウスとゼノンがやったことだ」


ジャンの言葉に、ルナは静かに頷いた。


ジャンは優しく微笑む。


「ルナは、ただルシウスに洗脳されていただけ・・・それだけだ。オレは今生きている。それで良いじゃないか」


ジャンの優しい言葉に、ルナは少しだけ安心したような顔をした。


まだルナの心の中に霧がかかったような部分があるのは確かだ。


しかし、仲間たちの優しい言葉と温かい手によって、その霧は少しずつ晴れていくだろう。


「うん・・・・・ありがとう。ジャン、リリエル」


ルナはそう言って、二人に微笑んだ。


その笑顔は、まだ少し悲しみを帯びていたが、それでも確かに希望の光が宿っていた。






最後までお読みいただきありがとうございました。

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