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パーティーから裏切られたホワイトマジシャンは規格外  作者: つるぴかつるちゃん
第一章 アステリアの街で

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第16話  ジャン復活

カイラスたちはギルド長のリーザンと、生き残った僧侶を含む数名で緊急会議を開いた。


今回の事件について聞いていくと、やはり部屋の中で得体の知れない違和感があり、


その直後にクリブンが現れたという。


パーティーのメンバーはクリブンを弱いモンスターだと認識していたため、戦闘が始まるとすぐに手こずってしまった 。


そこにさらに一匹のクリブンが現れ、最初に非戦闘員であるホワイトマジシャンが倒れる。


戦士とマジシャンが必死に足止めをしている間に、なんとか僧侶が逃げてきた。


これが、今回の事件のあらましだった 。



今までのわずかな情報から、徐々に状況が見えてきた。


男僧侶とカイラスたちの証言を総合的に考え、一つの仮説を立てた 。


 1、場所は18階であること


 2、広めの部屋に全員いること


 3、その部屋でヒールを使うこと


 4、ヒール直後に得体の知れない違和感があること


この仮説が正しいと仮定し、もしこの現象が再現できた場合


16階にも同じような部屋があるので、そこで同様の検証を行うことも決定された。



ギルド長が「まずは・・・・・」と話し始め、慌ただしくなった。


ルナとリリエルは、ジャンの件もあるため、カイラスたちが帰って来るまで待機することになった 。




カイラスたちがギルドへと戻ると、待機していたリリエルとルナの元へとやってきた 。


彼らが出発しようとすると、ギルド長が再び塔へ行くことを告げ、7人で塔へと向かった 。



18階に到着し、いくつかの戦闘をこなし、ついに問題の部屋へとたどり着いた。


「ギルド長、準備は良いですか?」


とカイラスが問うと、リーザンは


「いつでもいいぞ」


と答えた 。



カイラスが頷くと、ルミアにヒールをかけるように頼んだ 。


ルミアはカイラスにヒールをかけた 。


しかし、何も起こらない。


違和感はなかった 。


カイラスは


「Cクラスのパーティーもこの部屋でヒールをかけたと言っていた。位置的なものが関係しているのか?」


と呟いた。


ギルド長は「関係ないと思うが」と前置きし、前回はリリエルとルミアのどちらが、誰にヒールをかけたのかを尋ねた 。


リリエルがライアスに、そしてルミアが具合の悪くなったルナにヒールをかけたことを告げると、彼らはそれを試してみた 。

その時、通路からモンスターが現れた。


即座に反応したルナ、ルミア、ギルド長がフレアを放つ 。


「燃え落ちる形からして、クリブンじゃないですねー」


ルナの言葉に、一行は残念そうな表情を浮かべた 。


「でも、ギルド長がフレアを使えたのには驚きました」


とリリエルが言うと、リーザンは


「私も実は元賢者なんだ」と告白した 。


驚く一行に、リーザンは続けた 。


「ギルド長という立場になってしまったから、冒険者は辞めてしまったが、内心まだ冒険して塔の攻略を続けたいと思っているよ 」


ルミアは「意外です。人の上に立つのにふさわしい人だと思っていました」と言った 。


リーザンは答えた。

「そうか?人の上に立つより冒険者の方が似合ってると思ってるが・・・・・。さあ、今は話よりもう少し検証してみよう」


全員が「はい」と答えた 。



先ほどと同じメンバーで、ヒールをかける順番を変えたり、ルミアとリリエルが同時に使ってみたりしたが、いずれも効果はなかった 。


偶然だとはいえ、あのCクラスのパーティーは一体どうやってクリブンに遭遇したのか 。


そして、自分たちはどうやってクリブンに遭遇したのか 。


再び振り出しに戻ってしまった 。




ギルドで解散した後、リリエルとルナはいつものように教会へと足を運んだ 。


医務室のドアを開けた瞬間、二人の動きはピタリと止まる 。


ベッドの上に座るジャンの姿があったからだ 。


二人は弾かれたようにベッドへと駆け寄った 。


「ジャン!このまま死んじゃうんじゃないかって思ったじゃないの!よかった、本当によかったわ」


とリリエルは安堵しながら涙を浮かべている。


ルナもまた、安堵と怒りが入り混じった表情で続けた。


「ジャンさん、あんな無茶をして、もうダメかと思いましたよ!」


ジャンは、ぼんやりとした頭で記憶をたぐり寄せ、二人に問いかけた 。


「エルミナの腕から、黒い棒のようなものが出てきたよな?あれが上手くいったところまでは覚えているんだが、気がついたらここにいた。ここは、たしか教会の医務室だよな?」


リリエルは


「ええ、そうよ!私、神父さんとギルドに報告してくるわ!」


と言うと、ルナが引き留める間もなく部屋を飛び出していった 。


ルナはジャンに向き直り、穏やかな表情で言った 。


「ジャンさん、長かったですね」


ジャンはルナに聞いた。


「オレは、眠っていたのか・・・・・どれくらい眠ってた?」


ルナはいたずらっぽく微笑んで答えた。


「教えてあげません。長い時間、とだけ言っておきます。これは、ジャンさんへの罰です」


「そうか、長い時間・・・・・か。悪かった」


ジャンは申し訳なさそうに呟いた 。



ルナは、唐突に話題を変えた 。


「全然違う話になりますが、ジャンさんは18階に出るクリブンをご存知ですよね?」


ジャンは驚いて身を乗り出した。


「な、なんでそれを!?出たのか!?」


ルナは冷静に答えた。


「はい。もしご存知でしたら、どうやったら出るのか教えてもらえませんか?」


ジャンは落ち着きを取り戻し、首を横に振った。


「知らないんだ。ゴメン。もし何か分かったことがあれば、逆に聞きたいくらいだよ」


ルナが答える。

「分かりました。出る条件で分かっているのは、18階であること、ヒールを使った後に違和感があれば出てくることくらいなんです。情報が少なすぎて、それ以上は何も分からなくて」


ジャンは驚き


「それをやってみた、ということか?」


と聞くと、ルナは


「はい。私たちが遭遇した後に、Cクラスのパーティーが18階でクリブンに遭遇したんです 」


と答える。


ジャンは驚き、声を張り上げて言う。


「Cクラスの人間が叶う相手じゃない!」


ルナは静かに答える。


「そうなんです。でも、彼らは『何か』をやってクリブンを出したんです。その『何か』というのが、今のところさっき言った通りなんです。でも、一度塔を出て入り直すと、元の18階に戻ってしまうんです。だから、何かしらの条件があるのは確実なんです。」


ここでルナは首をかしげながら続けた。


「ただ魔法に関しては、今までが偶然ヒールだっただけで、別の魔法、例えばファイアーボールなんかでもクリブンが出る可能性はありますが、今のところは分かっていません 」


「何かの条件で出るという・・・」


とジャンが呟いていると、神父がドアを開けたところで立ち止まった 。



「おお、ジャン。目を覚ましたか。よかったよかった。体調が戻るまでベッドを使って構わんよ 」


そして神父は、茶目っ気たっぷりの笑顔で続けた 。


「しかし、ワシは邪魔なようじゃのう。年頃の男女、積もる話もあるじゃろう。失礼するよ 」


そう言ってドアを閉め、立ち去ってしまった 。


二人は顔を赤くして沈黙した。


しばらくして、沈黙を破ったのはジャンだった 。


「えっと、聞いてもいいか?」


ルナは顔を赤くしたまま「は、はい、何でもジャンさんの質問に答えます」と答えた 。



「その『さん』付け、やめない?何と言うか、よそよそしいと言うか、他人行儀みたいと言うか・・・・・」


ルナはしばらく考え込んでいたが、意を決したように尋ねた。


「反対に質問しても良いですか?」


ジャンは「ああ」と答える。


ルナは難しい顔をしてジャンに聞く。


「全然違う話になりますが、フィリーネのことはご存知ですか?」


ジャンは答えた。


「ルナたちのパーティーに新しく入ったホワイトマジシャンだよな?」


ルナは再び考え込み、口を開いた。


「答えることなく質問ばかりで悪いのですが、もう一つ、ジャンさん・・・いえ、ジャンがモンスターに襲われた日、フィリーネは私たちのパーティーの仲間でしたか?」


ジャンは思い出しながら答える。


「いや、いなかった。でも、その翌日にはいたな」


「やっぱり・・・・・フィリーネの名前は知っているのに、どこで聞いたかを知らないんです。これで確信しました。私、ジャンが襲われた翌日の記憶がないんです」


そうルナが答えると、ジャンは驚いて聞く。


「記憶がない?」


ルナは頷き、


「さっきの話から考えると、私はジャンが襲われた日、寝てから翌日起きたはずなんです。そうじゃないですか?」


と問いかけた 。


ジャンは「ああ、翌朝オレたちは、会った……」と答えた後、ハッとして口をつぐんだ 。


ルナは必死な表情でジャンに詰め寄った 。


「やっぱりそうなんですね。教えてください!ジャンが知っていることだけでも!私、疲れて教会に行って寝たわけじゃありませんよね!?」



ジャンは、どう答えるべきか分からず、黙り込んだ。


ルナは懇願するように言った。


「お願いです!私、知りたいんです!」


ジャンは考えながら答える


「何と言うか……オレは、ルナの心が壊れるのを見たくない」


ルナは呆気に取られた。


「なんですか?それ、答えになってないです!」


ジャンは更に言葉を選びながら続けた。


「聞いた話はオレからは言えない。どこまでが本当で、どこまで間違っているか分からないからな」


ルナは、藁にもすがる思いでジャンに訴えた。


「それでいいです!教えてください!」


ジャンは観念したように話し始めた 。


「オレがモンスターに襲われた日の翌日、ギルドでルシウスたちのパーティーと、カイラスたちのパーティーが会って、その時、オレはカイラスたちのパーティーにいた」


「そこで、私とジャンは会ってるんですね」


ルナは確認するように聞いてきた。


ジャンは頷き、続けた。


「その後、塔で何か起きて、ルナは心が壊れた。そして教会の医務室に運ばれた」


「『何か』って、そこが一番大切じゃないですか!教えてください!」


そう言って、ルナは食い下がって聞いてくる。


「オレは、その日ルシウスのパーティーにいなかったから、聞いた話しか知らないんだ」


ジャンは横に首を振りながら答える。


ルナは懇願するように聞いてきた。


「その話を教えてください!」


ジャンは、横に首を振った。


「じゃあ、私の中にはないはずの記憶について聞いていいですか?正直に答えてくれますか?」


ルナは、切り替えて聞いてくる。


ジャンは疑問に思いながらも答えた。


「ないはずの記憶?それは構わないが、心が壊れそうだと判断したら答えない。それでもいいなら・・・・・」


ルナは一瞬考え込んだ後、頷いた。


「リリエルとフィリーネがモンスターに攻撃されて気絶し、ゼノンが全滅するより良いから逃げるように言って、私がモンスターに攻撃した。それは合っていますか?」


ジャンは静かに答えた 。


「その場にいたわけじゃないから、正確には分からない。だが、リリエルに聞いた話では、リリエルとフィリーネが気絶したところは合っている。そしてその日、そこで起きたことが、ルナの心が壊れた原因だ」


ルナは絶句した。


自分の記憶ではないと思っていたことが、実は自分の体験だったこと。


そして、モヤがかかった記憶の中に、自分の心が壊れた真実があることを知ったのだ。


ジャンは続けた


「消えてしまった記憶を取り戻したいよな。リリエルは一部始終を見ているんだ。頼み込めば教えてくれるかもしれないが、心が壊れたルナを間近で見てるんだ。」


リリエルの焦燥した顔を思い浮かべながら、続ける。


「オレはその状況を見ていないが、リリエルはギルドで目の前にいるルナが拘束されるのを見るだけしかできない自分を責めていたんだ」


ルナは驚愕の表情で、震える声で尋ねた。


「私・・・・・拘束・・・・・され・・・たの?」


ジャンは「しまった!」と思った 。


話すべきではなかったと後悔したが、もう後の祭りだった 。


その時、医務室のドアが開き、リリエルとギルド長が入ってきた 。



ギルド長のリーザンはジャンの姿を見て安堵した。


「ジャン君、ようやく目が覚めたのか。一時はどうなるかと思ったが、安心したよ」


「ギルド長、ご心配おかけしました。もう大丈・・・」


ジャンがそこまで言ったところで、ルナがリリエルに叫んだ 。


「リリエル、本当のこと教えて!!私・・・・・私・・・・・」


ルナは震えながら、声を落として尋ねた。


「拘束・・・・・、されたの?」


リリエルは目を見開いて、でも静かにルナに聞いた。


「どうしてそれを!?」


ルナは驚き「やっぱり、本当だったんだ」と呟いた 。


ジャンは、抑揚のない声で「悪い、話の流れでつい・・・・・」と謝った 。



ルナは外へ飛び出した 。


「あ、ルナ待って!」と叫びながら、リリエルが追いかけていく 。


リーザンはジャンに尋ねた 。


「どこまで話したのか、教えてくれないか?」


ジャンはさっきの話の流れを伝えると、ギルド長は静かに言った 。


「もう隠しておくのは、ルナさんのためにも良くないだろう。話せる場を作ろう。ジャン君は、今日一日ゆっくりするといい」


ジャンはうつむきながら「すいませんでした」と謝罪した 。


ギルド長は言った 。

「心が壊れようとも、いずれ話さないといけないと思っていた。そのきっかけが今日の会話だった。そういうことだと思っている。ジャン君、自分を責めないようにな。今のルナさんにはジャン君が必要だ」


そう言い残し、部屋を出て行った 。






最後までお読みいただきありがとうございました。

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