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第11話  それぞれの休日③

ジャンは宿に戻ると早速自分の部屋に入り、ヒールとハイヒールの魔法陣を出してジーッと、まるで謎を解くかのように見つめている。


(以前の回復系魔法は、もっとおかしな形の魔法陣だったな。それを再現できれば・・・・・)


ジャンはハイヒールの魔法陣をコピーし、その線の一つ一つを指でなぞり始めた。


その真剣な表情からは、一刻も早くエルミナを助けたいという強い気持ちがうかがえた。


しばらくして、コンコンと扉がノックされた。



ジャンが「開いてるよ」と声をかけると、広場に置き去りにされた3人、ライアス、ルミア、カイラスが不満げな顔で立っていた。


「おまえなあ、ワシらをあそこに置き去りにしていくなよ!」


ライアスは眉間にしわを寄せ、少し怒ったような口調で言った。


「悪い悪い、エルミナを救える方法を思いついちゃってさ。少しでも早く取り掛かりたくて、つい焦っちゃったんだ」


ジャンは申し訳なさそうに頭をかきながら、苦笑いを浮かべた。


「どうせまた意味不明なことでも考えてるんでしょ?」


ルミアは呆れたように肩をすくめながらも、話した。


「オレたちは、少しだけ塔へ行ってくる。9階までの低階層だから問題はないと思うが」


カイラスは落ち着いた声でジャンに告げた。


「低階層とは言え、気をつけろよ」


ジャンは、友を気遣う優しい眼差しで3人を見つめた。


「ああ」


カイラスはそう言うと3人で静かに部屋を出て行き、ジャンは再び魔法陣に向き合い、夜になった。



(ふう、あと少し、ラストスパートだ)


もうひと頑張り、とジャンは大きく息を吐いた。


喉の渇きを覚え、水を飲もうと立ち上がったその時、バーン!と大きな音を立てて扉が開いた。


そこに立っていたのは、血相を変えて息を切らしたライアスだった。


「エルミナの様子がおかしい!すぐ来てくれ!」


ライアスの切羽詰まった声に、ジャンは何も言わずにライアスと共にエルミナの部屋へ急いだ。




2人がたどり着いたエルミナの部屋は、空気が張り詰めていた。


エルミナはベッドの上で「うぅ・・・・・」と苦しそうにうなっており、手足や顔は、見るも無残なドス黒い色に変色していた。


「突然すまなかった。さっき帰ってきたらこんな状態だったから、つい・・・・・」


ライアスは自分の不甲斐なさに、顔を歪ませた。


「これはまずいな。くそ!あと少しなのに・・・・・!」


ジャンは唇を噛みしめ、悔しそうに声を荒げた。


「じゃあ、オレたちが見てるから完成させてくれ」


カイラスは冷静な声で提案したが、ジャンは首を横に振った。


「いや、それだとおそらく手遅れになる!未完成だが、緊急事態だ。理論上は機能するはずだ!」


「あなたの言う理論上って、少し安心できるのよね。お願い、エルミナを助けて!」


ルミアは今にも泣き出しそうな声でジャンに懇願した。


ジャンは力強く頷くと、震える手で新しい魔法陣を取り出した。


「こんな時にあれなんだけど、ジャンに聞いていい?」


ルミアは、ジャンの左手にある何かを見て、そっと尋ねた。


ジャンは「ああ」と答え、エルミナの額に右手を当て、左手のひらに描かれた奇妙な魔法陣をエルミナの左手に置いた。


「それ、魔法陣よね?間違っても、幼い子が書いた落書きじゃないわよね?」


ルミアは目を丸くして尋ねた。


その魔法陣は、彼女が知るどの魔法陣とは似ても似つかなかった。


「ああ、間違いない。以前、オレが使っていたヒールの魔法陣がこんな感じだったんだ」


ジャンは少し恥ずかしそうに笑った。


「あー、効かなそう」


ルミアは、思わず本音を漏らしてしまった。


「悪かったな。確かに効果はゼロに近い、だけどそのおかげで、あの膨大な魔力をヒール程度までに抑えられるんだ。それで、エルミナを救えるかもしれないんだ。やるぞ!」


ジャンは決意に満ちた表情で叫んだ。


カイラス・ライアス「頼んだ」


ルミア「お願い!」


3人は固唾を飲んで、ジャンの行動を見守った。




ジャンが「魔力開放!」と唱えたその瞬間、どおーーっと嵐のような魔力がジャンの体内に流れ込んできた。


それはまるで、嵐の海に投げ出された一枚の葉っぱのように、魔力の波にのまれそうな感覚だった。


その魔力はジャンの右手から入り、左手へ、そして魔法陣を通して回復魔法としてエルミナへと返っていく。


「カイラス、ルミア、今のままじゃダメだ。協力してほしい。このままだと魔法陣が崩壊する!」


ジャンは、魔力の波に耐えながら叫んだ。


ルミアは「え?」と驚いた顔で口元を押さえた。


彼女は魔法理論を知っているからこそ、魔法陣の崩壊が何を意味するのかを瞬時に理解し、最悪の事態を想像していた。


「オレたちは何をしたらいい?」


カイラスは、状況をすぐに理解し、冷静にジャンに尋ねた。


「ここからだと闘技場が近い。そこへ行って魔法を使い、可能な限り魔力をゼロに近づけて戻ってきてくれ。」


ジャンはルミアの今にも泣きだしそうな顔を見て、優しく声をかけた。


「それからルミア、魔法理論のことは何も分からないが、魔法陣が崩壊してもオレもエルミナも何か起こることはない。何と言っても、『規格外』だからな」


ジャンは、安心させるように微笑んだ。


その言葉に、ルミアも少しだけ笑顔になった。


カイラスとルミアは顔を見合わせ、頷くと、一目散に闘技場へと駆け出した。




「この板を使えば、ワシも協力できると思うが」


ライアスは、昼間にジャンに渡されたアイスアローの魔法陣が書かれた板を差し出した。


「ありがとう。でもライアスは、普段魔法を使わない戦士だ。仮に魔力をそれでゼロにしたとして、エルミナの魔力でライアスの魔力が回復しても、最大魔力の感覚が戦士の場合はつかみにくい。それに、今放出されているエルミナの魔力は、想像をはるかに超える魔力量だ。場合によっては、ライアスが即死してしまうリスクがあるんだ」


ジャンはライアスの気持ちを汲み取りながらも、静かに、そして真剣な声で説明した。


ライアスは、悔しそうに拳を握りしめた。


「そうか・・・・・仲間が苦しんでいるのに、ワシは何もできんのか・・・・・」


「いや、やっているさ。さっきだって、オレを呼びに・・・・・あ、魔法陣が崩壊する!」


ジャンの左手から、パキパキッパキキッと乾いた音が聞こえたかと思うと、バリーン!とガラスの割れるような大きな音が部屋に響いた。


「魔力閉鎖!ふう、2人が出て行ってまだ間もないのに、もうこうなったか・・・・・」


ジャンは魔法陣が思ったより早く壊れた事にため息をつきながら、エルミナの方を見た。


エルミナの苦しそうな表情は少し和らいでおり、うめき声も止まっていた。


肌にはまだ黒さが残っていたものの、さっきよりは良くなっていた。


ジャンはライアスに、また危なそうになったら闘技場へ呼びに来るよう伝え、自分も闘技場へと向かった。


闘技場に着くと、カイラスとルミアは一心不乱に魔法を使っていた。


2人はジャンの姿を見ると、駆け寄ってきて、心配そうにエルミナの様子を尋ねた。


ジャンは状況を説明し、自分も魔力を空っぽにするために来たことを伝えた。


「魔法陣を空中に描ける人って、本の中の世界だけだと思ってた。その人の魔法陣が壊れると死ぬってことだったけど、あなたは何ともないの?」


ルミアは、未だに信じられない、という表情でジャンに尋ねた。


「ああ、何ともないさ。さあ、エルミナのために頑張ろう!」


ジャンは、力強く2人に呼びかけた。


両手に冷気を集めると、空に向かって放った。


「ダブルブリザード!」


「ねえ、カイラス。あいつ、本当にホワイトマジシャンなの?実は怪物か何かじゃないの?」


ルミアは、呆然とした表情でカイラスに耳打ちした。


「オレもそんな気がしてきた」


カイラスは苦笑いを浮かべた。


「おい、聞こえてるぞ!」


ルミアが「あらごめんなさい」と言って、次の魔法を使おうとしたとき気付いた。


「さすがに何度も連発するのは疲れるわね。エルミナのため・・・・・」


そこまで言うと、ルミアは脱力し、ポツリとつぶやいた。


「あいつは何なの?この世の魔法法則を完全に無視してる。カイラス、どう思う?」


気を取り直したルミアは、再び魔法を放ち始めた。


「目の前の光景が信じられんよ」


カイラスも脱力しながら答えた。


「ん?このブリザード、何か変なのか?」


ジャンは首を傾げた。


「ブリザードが使えるホワイトマジシャンってだけで変だけど、それ以上に、何で数十秒以上経っても放出し続けられるのよ!この世の魔法法則を完全に無視してる!」


ルミアは目を吊り上げながら叫ぶが、ジャンはあっけらかんと答えた


「いや、通常は放ったら終わりなんだけど、それは不便だから、魔力を注入し続けたらどうなるのかなあって思ってやったら、できちゃったんだ」


ルミアは、まるで熱弁を振るう教授のように、勢いよく言った。


「その時点でおかしいのよ!術式構築を料理に例えて言ったけど、ジャンがやってることは、鍋にカレーを作って、鍋に火をかけ続けたらカレーが無限増殖してるって感じよ!そんなこと、絶対にないでしょ?あなたはそれをやっているの!」


「確かに、それは変だ」


ジャンは、ルミアの言葉に納得したように頷いた。


「やっと変って認めたぞ」


カイラスは笑いながら言った。


そんな話をしながら魔法を使っていると、全員の魔力が尽き始めたのでジャンは言った。


「魔法の連続使用で疲れてるところ悪いが、エルミナの所へ急いで戻ろう」


3人は、エルミナの部屋へと急いだ。


部屋に戻ったカイラスとルミアは、先ほどよりは穏やかな顔になったエルミナを見て、ようやく安堵の表情を浮かべた。




「早速やりましょう」


ルミアは、決意を秘めた声で言った。


ジャンは、そんなルミアとカイラスのまっすぐな瞳を見つめながら、静かに頷く。


「まずはカイラスから頼む」


ジャンは、右手をエルミナの額に、そして左手をカイラスに差し出した。


「くれぐれも無茶はするな。魔力流入はこの間の比じゃないぞ。最大魔力になる前には絶対離脱しろ」


ジャンは、真剣な表情でカイラスに忠告した。


「そんなにすごいのか?分かった。やってくれ」


カイラスは、覚悟を決めたように、ジャンの手を取った。


ジャンは、ちらりとルミアに視線を向けた。


「ルミア、今回はハイヒールをかけなくても問題ない。おそらくだが、術式構築できる集中力は保てないほどだと思う。そこは状況に応じてやってくれ」


「分かったわ」


ルミアは、引き締まった表情で頷いた。


「くどいようだが、魔力流入はこの間の比じゃないぞ」


ジャンは、念を押すように再び言った。


カイラスとルミアは、静かに頷いた。


その2人のまなざしから、ジャンは、エルミナを助けたいという強い思いが、空気を通して伝わってくるのを感じていた。


絶対に成功させる! ジャンは心の中で強く誓い、深く集中した。




「やるぞ。・・・・・魔力開放」


再び、嵐のような魔力が流れ込んでくる。


さすがにきついな、とジャンは思った。


「こんなにすごいのか!!クッソ、何秒も持たねえぞ!」


カイラスは、苦痛に顔を歪ませながら叫んだ。


「ああ無理するな、ルミア、スタンバってくれ」


ジャンは、カイラスに声をかけた。


ルミアは頷き、すぐにジャンの隣に来た。その直後、カイラスが手を離した。


「悪い!ルミア頼んだ」


カイラスは、荒い息を吐きながらルミアに告げた。ルミアは、迷わずジャンの左手を握った。


「魔力開放!」


ジャンが再び唱えると、ルミアの顔から血の気が引いていく。


「きゃっ!な、何なの?この・・・ま・・・りょく・・・カイ・・・ラスは、こん・・なのを・・・・耐え・・・・」


ルミアの声は震え、途切れ途切れになった。


「無理はするな!今意識を失ったらそれこそ終わりだぞ」


ジャンの強い声に、ルミアは必死に頷いた。


しかし、彼女もこれ以上は危険だと悟ったのだろう、早々に手を離した。


ルミアはそのまま床に座り込み、荒い息を繰り返した。


「さすがにすごい魔力だ。魔力・・・・閉鎖!」


ジャンも「ふう」と安堵のため息をつき、椅子に深く腰かけた。エルミナの顔色はさらに良くなっていた。


「エルミナはしばらく大丈夫そうだな。オレはまた部屋に戻って魔法陣の完成を急ぐ。エルミナに変化があったら伝えてくれ」


ジャンはそう言い残すと、部屋へ戻っていった。


部屋のドアが閉まると、静けさが戻ってきた。




その頃、リリエルは、ルナが部屋でぐっすり眠っていることを確認し、1人静かにギルドへ向かっていた。


ギルドの受付には、いつもの受付嬢ではなく、見慣れない男性のギルド職員がいた。


話を聞くと、今日は早番で、もういないという。


リリエルは、「また改めて来ます」と告げ、重い足取りで外へ出た。


「ふう」


リリエルは深くため息をついた。ルシウスに言われた言葉が、頭の中にこだまする。


(Eクラスなら別のパーティーに簡単に入れる、それこそAクラス・Sクラスくらいの強さであれば、むしろパーティーに入ってくれと頼まれるだろう?)


確かにその通りかもしれない、とリリエルは思った。


EクラスやDクラスから声がかかることはまず考えられない。


もちろん、声がかかれば個人的には入っても構わないが、同じ仲間というよりは、先輩のように見られてしまうだろう。


自分が入ることで戦力差がありすぎて、逆にパーティーの成長を妨げてしまうかもしれない。


この街はBクラスが最高クラスだと聞いているが、どこかの街にはAクラスがいるらしい、という噂は聞いたことがある。


だけどSクラスは現状、聞いたことがない。


私たちはBクラスで、実際に42階まで進んだパーティーは世界でも私たちだけだ。


あの時Aクラスになっていたら、どこかのパーティーから声がかかったのだろうか?


42階まで行ったという実績があっても、Bクラスだから声がかからないのだろうか?


そもそもこれは自分たちの問題だ。ギルドに相談すること自体、間違えているのかもしれない。


リリエルは再び「ふう」とため息をつき、歩き出そうとした。




その時、後ろから声をかけられ、振り返った。そこに立っていたのは、ギルド長のリーザンだった。


「さっき受付で職員と話しているところを、偶然見かけてね。何かあったのかい?」


リーザンは、穏やかな口調で尋ねた。


リリエルは、自分たちの問題だし、ギルド長に直接話すのは迷惑かもしれない、と一瞬思ったが、意を決して話し始めた。


「私たち、いえ、私とルナはどうなるんでしょうか?Bクラスで中途半端なのは分かっているんです。でも、ルシウスとゼノンが亡くなり、フィリーネは今も意識が戻っていません。」


リリエルの表情が曇って行く。


「ルナはパッと見た感じでは問題なさそうですが、いつまたあのような状態になるかと思うと、2人で塔へ行くのは怖いです。ジャンは、ルシウスがやったこととはいえ、パーティーから抜けてしまっています。」


リリエルは言いながら、泣きそうになるのをこらえながら続けた。


「私とルナは、ルシウスがやろうとしていたことを知っていたのに、反対できませんでした。もう冒険者をやめるしかないのでしょうか?」


リーザンは、ここで立ち話もなんだから、とギルドの中に入ることを提案した。




2人はギルドの奥、少しだけ静かな場所に座り、リーザンは話し始めた。


「ここだけの話だが、ルシウス君がもし生きていたとしても、今回の塔の調査終了後には、強制的に冒険者資格を取り上げるつもりだった」


その言葉に、リリエルは驚き、目を見開いた。


「ゼノン君も亡くなってしまった。彼も主犯格の1人だったようだが、そうじゃないかね?」


リーザンの問いかけに、リリエルは頷き説明をする。


「はい、ルシウスとゼノンでモンスターの餌を撒いて、ジャンを殺す作戦を立てていました。私とルナも同罪ですよね?」


リリエルは肩を落とし、俯いた。


リーザンは、そのことには触れず、静かに話を続けた。


「ルシウス君は冒険者になりたての頃、向上心にあふれ、素直な青年だったんだが、ジャン君のステータス上昇率の上に、あぐらをかいてしまった。それが、このような結果になってしまった」


しばらく沈黙が流れた。


リリエルは、ギルド長がそこには触れなかったから、自分もルシウスたちと同罪だと感じていた。


ギルド長が無言ということは、自分ももう・・・・・そう考えると、リリエルは沈黙に耐えられなくなり、覚悟を決めて話した。


「冒険者資格を剥奪される準備はできています」


リリエルは顔を上げ、リーザンをまっすぐに見つめた。


リーザンは穏やかに話し始めた。


「ルナさんはあの状態だ。誰かの助けがまだ必要だ。だが、私を含め、ギルド職員の中で、ジャン君やリリエルさんほどルナさんを知っている人はいない。このまま無罪で、というわけにはいかないが、塔の異常について、まだまだ分からないことが多い。」


ここで優しい笑顔になり


「その調査に引き続き協力してくれる、という条件ではどうだろう?罰が塔の調査協力、ということだな。表向きは、強制的に協力することで資格の剥奪はない、と明文化はするが、実際は強制しないよ」


リーザンの提案に、リリエルは、驚いた。


同時に、こんなことも考えられなかったんだなと、自分の愚かさを反省した。


もし、ルシウスにメンバーを辞めさせられても、ギルドに相談することで解決することがあったかもしれない。


場合によっては、ジャンを見殺しにすることもなかったかもしれない。


そう考えると、自分はルシウスに洗脳されていたのかもしれない、とさえ思った。



「カイラス君たちのパーティーにエルミナさんがいることは知っているかな?」


リリエルは頷いた。


「女性のホワイトマジシャンでしたよね?その方がどうされたんですか?」


「詳しくは話せないが、モンスターに襲われて昏睡状態なんだ。それをジャン君が治せそうだと動いてくれているんだ。エルミナさんがお見舞いに行くと、カイラス君たちも喜ぶんじゃないか?ジャン君も、元仲間が駆けつけてくれたと勇気づけられると思う」


リーザンの言葉に、リリエルは表情を明るくした。


「今日はもう遅いので、明日にでも行ってみます」


「さっき闘技場で、ジャン君、カイラス君、ルミアさんがいたから聞いてみたんだ。エルミナさんは今晩が山らしく、闘技場で魔法を使っていたそうだ。エルミナさんを救うことと、闘技場で魔法を使うことがどう繋がるか分からないが、そういうことらしい」


リーザンの話に、リリエルの頭の中は混乱した。


「え?エルミナを救うことと、闘技場で魔法を使うこと、全く関係ない・・・・・ですよね?全然分かりません」


「私も分からんよ。だが、今この時間、治療してるんじゃないか?確かに夜遅いし、行く行かないは任せるよ」


ギルド長がそう言い、その後2人は少しだけ会話を交わして別れた。




リリエルは、宿へ向かう道すがら、ジャンならフィリーネを助けられるんじゃないか?いや、ジャンだからこそ助けられるんじゃないか?そんな思いが頭の中を駆け巡っていた。


自分の部屋に入ると、リリエルはベッドに横になった。


今、まさにジャンたちは頑張っている。


いや、でもこんな遅い時間だし、さすがにやってないだろう。


やっていたとしても、自分が行くと治療の邪魔になりかねない。


教会とは違うから邪魔にはならないか?


教会とは違うからこそ、邪魔になってしまうのでは?


お見舞いに行くとしても、店が開いてないから何かを買っていくこともできない・・・・・ギルドで酒は買って行ける。おつまみも・・・・・。


お見舞いに酒やおつまみはないわね。


そうして、夜は静かに更けていった。











最後までお読みいただきありがとうございました。

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