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王の名前を  作者: あまやどり
第六章 血戦! フライングシャークvs宇宙ヒトデ
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宇宙ヒトデ降臨

ようやく仕事が一段落しました(/・ω・)/

「ほら、だからこんな時期にわ、私は反対して……」


 グレット博士は頭を抱えている。まるで、目を固く閉じて耳を覆えば、世界から隠れることができる、とでも言うように。


「ずっと後悔してばっかだな、この人。タグネイ船長は船長で、海の男でございって頼もしそうなのは見てくれだけ。実際は何もしてないし」


 大人たちの消極性に苛々し始めたが、ふとあることが閃いた。


「ひょっとしてこのマネキンたち、単なるサメ映画のエサ枠じゃなくて。出宇多の“何か”を象徴してたりするのか?」


 気力(えねる)のアティルト界がそうであったように。

 出宇多が不良コンビに利用されていた間、行長(ゆきなが)教師を始めとした大人たちが助けてくれなかったことを反映しているのだろうか。

 キャストの名前を思い出す。明るい金髪美女のジョー。褐色美女で悲観的な言動の多かったフィー。


「グレット博士……リグレット……?」


「レン! 上を!」


 イデアの声には余裕が寄り添っていなかった。




「こりゃ、余程のことがあったな」


 少ない言葉数が緊急性を物語っている。デッキに出てみると、まだ褐色美女のフィーもショットガン頼りのランも無事だった。

 そして、常軌を逸した光景に思わず息を呑む。


 数十匹のサメが空高く吸い上げられてゆく。そして、竜巻のように渦を巻いて、船に一斉に降り注いだ。さながらサメの竜巻だった。


「船内に退避しろ!」


 蓮が大声で叫んだ。


「船と人、どちらを守ればいいですか?」


 イデアの視線が人と船で逡巡する。


「自分を守ること優先!」


 腕を引っ張り、船内に匿う。単純に数と質量爆弾で押してくるサメ竜巻が、実のところ一番の鬼門だった。


 サメが雨のように降り注ぐ。口を大きく開けたサメが、船体を削り取ってゆく。



「まずいな。ロケルの欠点がもろに響いてる」


 蓮は歯噛みする。大きさのみならず、光量、速度、音までも増幅することが可能であると判明した“敵対者ロケル”であるが。唯一、効果時間だけは本来の10秒から1秒たりとも引き延ばせなかった。

 デカラビアが言うには『大天使ロケルに察知されない時間は10秒が限界である』ということらしかったが、このような連続した攻撃に晒されると脆い。



「ええい、一か八か、あのヒトデに頼ってみるか」




『堕天使は人間の魔力(ケセム)を取り込んで蓄える。それを活用してアティルト界を造るのである』


 フォルネウスの襲撃がほぼ確定となったあたりで、デカラビアが言ったことがある。


『だがキサマにも同じことが言える。キサマはこれまで幾人かの契約者の“死”に立ち会った。その際、彼らの魔力を幾分取り込んでおるのだ』


 気のない様子でゲームに興じているが、内容は軽々しいものではなかった。蓮はこれまで可部気力(かべ・えねる)出宇多凡人(いでうだ・ぼんど)の死に接してきた。群羽や新洋など、間接的に関わった者もいる。蓮は彼らから微量な魔力を受け取ってきたと言う。

 魔術に於いて「名前」と「死」は、魔力の授受、そして誕生と蘇生を司る。


「でも、魔力とやらがあっても俺は何も使えないぞ?」


『平時ではな。だが、条件が噛み合えば』


 単眼をぎょろりと少年に向ける。


『例えば、アティルト界などにある場合には――』




「お前を召喚できるってんだな! やってやる!」


召喚(ラーハズミン)、デカラビア!」


 中空に現れた“ダビデの星”の印章を介してデカラビアが姿を顕す。いつもと異なり、実体の姿で。


『フォォォ! チカラが(みなぎる)るのである!』


 体色が虹色に輝いており、無駄に目に痛い。


「なんだこのゲーミングヒトデ」


 デカラビアは単眼を上空へ向けた。


『食らえい木っ端ども! 母なる海の力を知るが好い! スターフィッシュ・レィッザァァァ!』


 単眼から極太の光線を放射する。降り注ぐサメの大軍を薙ぎ払った。


「おおー!」


 歓声を上げる。母なる海や スターフィッシュ(ヒトデ)発言が気にかかったが、言及しないでおく。


「デカラビアは魔力に極振りした堕天使ですから」


 7割がた消し飛んたサメ竜巻を見上げてイデアが言う。


「よ、よし、もう一発……!」


『うむ!』


 眼から線香のようにか細い光線が一条出る。


『ふむ。魔力切れであるな。ではさらば。ギャラはいつもの口座に振り込んでおくように』


 言うだけ言うと姿が消滅した。


「一発だけかよ!」


 イデアが「魔力だけ」と言っていたが、燃費も著しく悪いらしい。




 殲滅を免れたサメの軍団が最後の降下を敢行する。


「敵対者ロケル!」


 蓮は魔方陣を頭上に展開した。


「イデア、盾を」


了解(ベセデル)


 魔方陣をイデアの盾が通過する。15メートルに巨大化した黄金の盾が船体を覆った。傘のようにサメの雨を防ぐ。だが雨はすぐには止まない。


「ダメだ、やっぱり防ぎきれない」


 すぐに盾は元のサイズに戻り、船は(ひさし)を失う。


「ぎゃあ!」


 ランが食いつかれ、諸共に海に引きずり込まれた。


「ランさんが!」


 イデアが叫ぶ。


「……いや、アイツは“核”じゃない。たぶん」


「え?」


 蓮の表情には、9割の確信と1割の疑念。



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