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王の名前を  作者: あまやどり
第六章 血戦! フライングシャークvs宇宙ヒトデ
37/60

シャーク・アタック!(B級)

「ワォ! レイ! ひどいケガよ!」


 血まみれの男に取りすがる星条旗ビキニのジョー。そこへ、双頭のサメが飛び掛かった。2つの口でレイとジョーの1人ずつを丸呑みにして、甲板を滑って海に戻る。


「……今のは芸術点高かったなあ」


 アティルト界に何らも変化も起こらないので、2人は「ハズレ」だったようだ。憐憫の情も滲まないのは、やはり2人が「存在しない作りもの」であるという思いからだろう。


「ノンキなこと言ってていんですの?」


 ただ、今の発言はさすがに緊張感に欠けた。


「ゴメン、良くない」


 そこに、ヒレが異常に大きいサメが2匹、トビウオのように文字通り飛び掛かって来る。見れば遠くにいる大きなサメが、口からトビウオザメを次々と吐き出していた。


「生態間違ってるぞ、そこのサメ!」


 元がB級映画に生態系を説いても始まらない。


「よし、コイツを使ってみるか」


 蓮は腕に刻印されたハルファスの紋章に触れる。ハルファスが己を討ち果した蓮に褒章として与えた魔術。


契約(イーツェール)!」


 叫ぶと、周囲のクルーザーの部品が解体・再構成され、クロスボウを造った。左腕に固定する、リストロックタイプのクロスボウだった。同じく船の手すりを再構成して矢を作る。


()ー!」


 発射する。跳躍サメの鼻頭に命中し、サメはひるんだ。念じるだけで発射でき、巻き上げ機(ヤギの足)も必要ない。


「ハルファスのくれた魔術、攻城戦の好きな“城塞の堕天使”っぽい武器なんだけど……どうも世紀末モヒカンチックなんだよな」


 蓮がぼやいた。が、距離のある敵に攻撃する手段が手に入ったのはありがたい。


「ハルファスとバルバドスだけが扱える“魔弾”を……。よほど気に入られたようですわね」


 イデアが呟いた。



『アレぁ……鳩野郎か。ケッ! ただのクロスボウたぁ、しみったれたモンをくれてやったもんだ!』


 ハルファスの魔術を所持しているということは、蓮が実力差のある彼の堕天使を撃退した、という事実にフォルネウスは気付かなかった。




 トビウオのようなサメは更に襲い掛かって来る。クロスボウの矢をかいくぐり、1匹が殺到する。蓮を一息に呑み込もうと口を開けた。そこへ割って入る少女。


「オル・フレヴネ」


 サメの巨大な顎を、黄金の盾が食い止めた。逆にサメの歯が折れ散る。


「おっ、ナイスディフェンス」


 “盾”を出せる程度には、魔力が回復したらしい。


「伊達に毎日。食っちゃ寝しておりません!」


「せめて静養してた、って言い方にしとこうな」


2枚!(シュタイ)


 1枚目の盾で歯を食い止めている間に、もう1枚の盾が現れてサメの頭を叩き潰した。


「今の魔力ならば2枚(・・)は出せますわね」


 イデアの言葉を蓮は聞く。 


「盾を鈍器にするのは使用法が間違ってるんじゃ……」


――あの黄金の盾、何枚か出せるのか? 魔術師が盾を主体に、って不思議な戦い方だな。


 ソロモン王の逸話を本で浅く踏襲しただけの蓮には、古代王の戦い方がいまいち分からなかった。



 親サメは際限なくトビウオザメを吐き出し続けている。


「くそっ、親ガメは余裕で射程外か」


 このままでは。時間も体力も船体もいいように削り取られてしまう。


「仕留めてきますわ」


 黄金の盾を伏せるや、イデアが上に飛び乗った。


「ああ、頼……え?」


 ふわりと盾が浮かび上がり、親サメに向かって飛んだ。イデアは盾の上で、サーフィンのようにバランスを取っている。

 魔力で盾を動かしているらしい。外見通りに黄金が詰まった盾ならば、重量もかなりのものになるだろう。


「挨拶代わりに肘鉄を御馳走して差し上げます」


 サメは盾による突撃を鼻面に食らう。もう1枚の盾は開いたままの大口に突入し、口内を突き破って尻尾から飛び出した。親ザメは子ザメを生み出すのみで、さしたる戦闘力も持ち合わせていなかったらしい。


「本物のサメ(コーレシュ)と比べて品がなさ過ぎますわね」


 そのまま盾を返して船に帰還する。


「すごいな。ついでにフォルネウスをド突いて欲しかった」


魔力(ケセム)が残り少ないですから、これ以上はあまり戦えませんわよ?」


 やはり少ない魔力で苦慮しているらしい。




 ここで良くないことに気付く。


「マズったな。キャストを守ってるだけじゃ埒が明かない」


 どうしても後手後手に回らざるを得なくなっている。


「それに、“核”を持ってるのが人間と決めつけるのも危険だ」


 もしも核が船のどこかに隠されていた場合。人間にかかり切りになって、奪われたら目も当てられなかった。


「分担いたしましょう。わたくしは盾で人を守りますから、レンは核を船の中で探してください」


 イデアがぴしゃりと言う。実は蓮も提案したかったことだった。核探しは、サメ映画の知識のある蓮の方が適性があるし、イデアの盾は防衛に向いている。


「分かった。ここは任せるから、イデアは何かあったら知らせてくれ」


 言い残して船内に引き返した。



 船内の様子は、まるで時が止まっていたかのように変化がなかった。グレット博士は教え子がサメに殺されたというのに、


「こんな季節にフィールドワークなんか計画するんじゃなかった。そもそも連中に焚きつけられなければ……」


膝を抱えて隅でぶつぶつ唸っている。

 タグネイ船長も、騒音を流すばかりの通信機器“エンカ”を前に苦い顔をしていた。


「辛気臭いなあ、もう」


――大人2人が軒並み頼りにならないぞ。甲板で奮闘してる向こう見ずな若い連中の方がよっぽどマシだ。


 船内だけあって物は少ないが、怪しもうと思えば全てが怪しく見えた。金庫やダーツなどの小物もある。


「“出宇多くんの趣味は釣りで、核は釣り竿でしたー”なんてことだって考えられるからな」


 疑い出したらきりがなさそうだった。




『おもしれえ、この世界妙ちきりんなサメどもがたくさんいやがるぜ!』


 愉快そうにエラを叩いて喜んでいるフォルネウス。


『かーっ! 早く参加してえってのに、どうしてこう魔力が少ねえんだ、ココはよ!』


 魔力不足は元を辿ればフォルネウスの自業自得と言えた。



「レン! なんだか造り物めいたサメが来てます!」


 言われて甲板を覗き込むと、片方の目がカメラアイで、至る所が装甲とチューブで覆われたサメが襲い掛かっているところだった。どことなくチープでわざとらしい姿でもある。


「メカシャークか。本当にコアなサメニストだったんだな」


 ぼやいていると、すぐ傍の窓が音を立てて割られた。1匹の醜悪なサメが、体当たりで乗り込んできた。


「うげ、キモい」


 そのサメは身体の半分が腐り落ちており、骨や内臓が剥き出しの部分が随所にあった。半分ほど腐り落ちているお蔭で、他のサメよりも身軽で飛び込んでこれたらしい。


「ゾンビシャークかよ!」


 腐肉をまき散らして飛び込んでくる死体サメを迎え撃つ。


「敵対者ロケル!」


 腐肉サメが小さいサイズになったところを、小型金庫で受け止める。手早く扉を閉じた。サメはすぐに元のサイズに戻る。閉じ込められたゾンビシャークは小さな金庫の中で元の大きさに戻ろうとして、圧潰した。腐汁が金庫の隙間から流れ出す。


「うあ、ばっちい」


 靴の汚れをカーペットで拭った。


「オル・フレヴネ!」


 メカシャークの方も、イデアが喚び出した黄金の盾に叩き伏せられ、爆発四散した。その爆風で、美女が船から転落する。イデアは盾に飛び乗った。乗ったまま盾を飛ばし、空中の美女をキャッチする。盾を移動手段にも活用していた。


「散り際までB級してるなぁ」


 妙な方向に感心した。






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