三船玲暗躍
今回登場する3人、使ってる魔術から「契約した堕天使は誰か?」考えてみるのも面白いかもしれません(/・ω・)/
「見ちゃった見ちゃった!」
出宇多を尾行していた三船玲は、一部始終を見物していた。会話のために姿を見せていたデカラビアやフォルネウスの姿も。
「でからびあ? ふぉるねうす? 調べたら何か出てきそうなワケ」
正確には、「出宇多を尾行している蓮を尾行していた」。尾行している者が素人の場合、「自身も尾行されている」という考えに恐ろしく疎い。
「カイジシャチョーもきっと同類ね。……ぃよーし! 燃えてきたワケ!」
知識欲に目を爛々」と光らせた。彼女の厄介な点は、その欲望が恩義や友情を軽く塗りつぶしてしまうことにある。
* * * * *
廃工場前で3人の男が争っている。少年、青年、老人と年齢が離れており、彼らは一仕事終えた直後だった。
老人が本を出した。変哲もない昔のマンガである。下手な虎の絵が描かれたページを広げる。
「そら、出てこい出てこい」
本を3回ノックすると、本から虎が飛び出した。ただし虎は平面で、元の絵のパースが狂っていたせいで少々歪な頭身をしている。
「ガァ!」
咆哮は本物と遜色なかった。
「見てくれは悪くても、力は本物と変わらんからな?」
老人が得意げに言う。平面虎が青年に襲い掛かった。だが相手は薄ら笑みを浮かべて、虎に息を吹きかける。途端に虎は糸が切れた操り人形のように倒れた。大きなイビキを立て始めた。
「あ、あわわ」
こうまで呆気なく無力化されると思っていなかった老人は必死でマンガをめくるが、この緊急事態にノック3回の「儀式」は大きな負担となる。ノックをする間もなく手を押さえられる。顔面に息を吹きかけられると、急激な睡魔に襲われて昏倒した。
「虎と同じ性能っつーことは、同じように寝るってことだもんなあ。強めに吹きかけちまったから、もう二度と目覚めねえ“眠りジジイ”になっちまった。けど念のためだ」
男は大きめの石を持ち上げ、何度も振り下ろした。ごしゃり、と頭が潰れる感覚が手を伝わる。
「けっ、大人しく条件を吞んでりゃ見逃してやったのによ」
老人の死亡を確認する。
「オッサンもだよ」
いつの間にか、別の少年が背後に立っていた。胴体に巻いていたウエストポーチの口を開ける。中から大量の蜂が飛び出した。明らかにウエストポーチの容量より多く、雲霞の如く舞い上がる。
魔術「蜂の軍勢」。蜂を「神の脅威」に例えた旧約聖書由来の命名を、しかし少年は知らない。
蜂の軍勢はあっけなく男を包み込む。必死に息を吹きかけるが、効果範囲にいた数匹が眠り落ちるばかりで、一向に数が減らない。
男は一斉に刺されて絶命した。
「バッカでー。どっかの偉い人が“戦は数だよ”つって言ってたろ」
蜂はウエストポーチに戻ってゆく。
「おんやあ?」
そこへ通りかかる、大きな紙袋を抱えた男が1人。もう夕方だというのにサングラスをしている。
「あちゃーっ、死体が増えるよ」
まだ中学生らしき少年はウエストポーチに手をかけた。堕天使と違い、蜂はあくまでも使役されるだけの昆虫。人間にも見える。生かして帰すわけにはいかなかった。
男――京都快児は頭を掻く。
「やっぱなあ~。珍しくパチで大勝ちするから、なんか起きると思ったんッスよねー」
蜂が飛び出し、臨戦態勢に入る。
「な、やめとこうぜ? 罪もない人間なんか殺したら夢見が悪くなるッスよ」
日頃の自分を棚に放り投げて言う。無論、少年は見逃す気など毛頭なかった。強盗時にガードマンを2名、そして今、取り分を巡っての仲間割れで安来人、築雄伊作の2名を殺している。いまさら何人殺しても大勢に変化はない。
「しっかたねえ」
サングラスを外し、少年を、正しくは少年のやや上方を睨んだ。
「も、戻れ!」
気が付けば少年は叫んでいた。なぜか、唐突に、理由もなく。蜂を戻さなければ、と思ったのだ。
蜂を戻し、バッグのジッパーを開ける。そこで我に返った。
「な、なにをしてるんだ? 行け、行け!」
再度蜂に命令を下すころには、快児は遠くに逃げ去っていた。
「オッマワッリさーん! 事件ッスよー!」
叫び声を聞いて、少年は尻に帆かけて逃げ出した。
「いやあ、覚えたての魔術に助けられたッスね~」
日頃の行いから、警察を呼べば困るのは快児も同じだった。
「いやでもこれ、目がいってえ。どうせ視力落とすんな、らパチでぺカる方がいいねえ」
サングラスを外し、ずきずきと痛む目を押さえた。
安来人
築雄伊作
のアナグラム元はなんでしょうか?
使い捨てキャラで、かなりネタに走ってます。虎を出してた老人が安、眠らせていた青年が築雄です(/・ω・)/




