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王の名前を  作者: あまやどり
第六章 血戦! フライングシャークvs宇宙ヒトデ
27/60

尺余りのミステリ

 昼休み。蓮は手早くサンドイッチを口に放り込み、パックコーヒーで胃に流し込んだ。蓮は食事に大して興味がないので、1人のときは適当に済ませてしまう。


「路上で溺死か。警察は頭を悩ませてるだろうな」


 だが、堕天使の助力があればおよそ不可能はないことを蓮は知っている。読みかけのハラルト・シュテュンプケ著「鼻行類」を惜しそうに閉じた。


「手段は問題にしなくていい。要は、動機を詰めていけばいいだけだ」


『どういった風の吹き回しであるか? 干物の転生体としか思えんような、呼吸以外のすべてに怠惰なキサマが随分と前向きではないか』


 レトロなミステリゲームをプレイしていたデカラビアが疑問を呈する。


「よくそんな悪質な言い方が思いつくな。ヒトデ怪人」


 廊下に出る。


「ああ、それと1つ」


 スマホで検察しながら、デカラビアに話しかける。


『なんであるか? 余はこの知的ゲームとの頭脳戦で忙しいであるぞ』


「その連続殺人事件のゲーム。犯人は相棒の若手刑事だってさ」


 何でもないことのように告げる。わざわざネットで検索するあたり、蓮も執念深い。ややあって。


『ゲ、外道! 無道! 非道! きききキサマには人情というものがないのであるか! 神も仏もないのである!』


 眼から滝の涙を流して猛抗議してきた。


「堕天使が人情とか神とか仏とか引っ張り出すな。生憎、俺は干物どころか陰湿なんだ。たとえ呼吸を忘れてても恨みは忘れないぞ」

 

 「干物の転生体」呼ばわりの強烈な仕返しだった。


 


「どうも時間的に、俺があいつらをノした直後に殺されたっぽいからさ」


 三船玲の情報が正しければ、であるが。


「犯人に魔術を使ってるの見られた可能性があるんだよ」


『なんだつまらん、保身であるか』


 心底つまらなさそうに言うデカラビア。『先のネタバラシで人類の評価が黙示録レベルにまで下がったのである』とか怨念を吐き出している。


「保身だ悪いか。群れから追放されないために、人類が原始人の頃から身に付けてる習性なんだぞ」


 説明になっていないことを力説する。


『“自分の身がかわいい”をよくぞそこまで壮大に飾れるものであるな』


 追及するのも馬鹿馬鹿しくなったのか、これ以上の言葉の追加はなかった。


『で、無闇に歩いているわけでないのならば、心当たりがあるのであるな?』


「動機の線を辿(たど)るなら、有力な容疑者が1人いる。去年まで“奴隷くん”呼ばわりされて、あの2人にカモにされてたのが」


 2つ隣のクラスを、通りすぎるフリをして覗き見る。窓際の席に、陰気そうな少年が座っていた。その周辺を、宙を鮫が泳ぎ回っている。


出宇多凡人(いでうだ・ぼんど)。やっぱりコイツだったか」


 堕天使の姿は、本来は契約した本人にしか視えない。だがデカラビアの魔眼は、隠蔽された堕天使の姿を暴き出す。


「デカラビアはこういった時に便利だな。問答無用で堕天使(共犯者)の姿が見える。証拠も自白も必要ないから、サスペンスドラマにしたら15分で終わる。とんだ尺余りだ」


 そのまま通り過ぎる。一瞬、鮫がこちらを見た。


「デカラビア、あの空を泳いでたオトモダチは誰だ?」


()れ者めが。同族を人間などに売るわけがなかろう』


 意外と義理堅い回答が返ってきた。


「好きなゲームを5本、DL特典付きでどうだ?」


 詠の依頼をこなして、懐に余裕があるからこそできる買収だった。


『アイツはフォルネウスってケチな鮫野郎ですぜダンナ』


 舌の根も乾かぬうちに仲間を売る海産物。報酬をチラつかされたときの蓮とよく似た反応である。


「ドリル並みの手の平高速回転だったな。フォルネウス、か。水でも操りそうな見た目だな」


 溺死というキーワードから、蓮は魔術の見当をつけようとしていた。


『ちなみにヤツは余の盟友でもある』


「なおさら売っちゃ駄目だろ、人として。……堕天使だからいいのか?」


『それで、どうするのであるか?』


 いそいそとゲームのダウンロードリストを見始める海産物。


「まずはパトロンに報告かな」


 蓮は懐からスマートフォンを摘み出した。


『ふむ、このDL特典の“超難関アルティメットモードに挑戦可能”がそそられるであるな』


「……チュートリアルで(つまず)いてる奴が手を出すんじゃない!」



* * * * *



 三船玲は知識欲の権化である。探偵社で助手の真似事をしているのも、その延長だった。

 神無市の情報をネットで集めていると、奇妙な人物の奇矯な言動が目立つように思えてきた。その中で、比較的頭と口の軽そうな数人をウオッチする。


 例えば、ハンドルネーム“ギー”。やたらとモデルガンのコレクションを自慢している男。

 例えば、ハンドルネーム“レア子”。パチンコと酒と成功者への不満しか話題にしない女。


 彼らの言動は爪弾(つまはじ)き者のそれだが、時折胡乱(うろん)なことを呟いていた。


【あの鳥、いつもイケニエイケニエ言ってきやがる。そんなことより純金の銃弾出せよ】


【おっし、4日ぶりに大勝ち。予知の通り! アイツ、図体デカくてジャマだけどたまに役に立つ】


 ちなみに、三船のハンドルネームは“トーシロ”である。


 個人のSNSやXの呟きでも、背景の画像や固有名詞から住居を絞ることはできる。


 “ギー”はガス銃で太い樹木を撃ち抜く動画を上げて自慢していたが、コメントで「あり得ない」と嘘つき呼ばわりされていた。

 三船は動画に映っていた池や山から、神無市にある鉢賀(はちが)運動公園と特定し、実際の樹木を確認している。

 結果、「あり得ない」行為をギーがやってのけている痕跡を認めた。


 三船はにわかに銃の知識を詰め込んで、メッセージで“ギー”と個人的な接触を図った。

 だが、“ギー”なる人物は偏狭を狭量で煮固めたような性格で、まともに会話が成立しない。彼の口が滑らかになるのは、自分が改造したガス銃のことを話すときだけであった。

 核心と思しき「鳥」の話題を切り出しても、「ふーん」と気のない返事をするばかり。


 だが“レア子”は違った。ギャンブルで大勝ちして機嫌がいい時に、それっぽく話を合わせていると、


【ふーん、アンタもなんだ。アタシのはライオンなんだけどさ】


などと返してくる。これからおだてあげて更に情報を、と思っていた矢先に連絡は途絶えた。ついでにギーの方も。


 漠然と、2人はもう生きていないだろうと玲は予感した。自滅したか、殺されたか定かでないが。

 これ以上の情報収集は不可能になった。


「なーにか起きてるワケ」


 そして、クラスメイトの不可解な死亡にも興味を持つことになる。




* * * * *



《契約者が同級生を殺害?》


 パトロンこと磯蔵詠(いそくら・よみ)に報告する。


「フォルネウスの契約者だそうで。どうする?」


 少々の沈黙。


《当面は様子見だね。我々は警察でも正義の味方でもないよ》


 詠は答える。


「どっちかって言うと、悪の手先、いや使い魔だからな」


 相手は電話口で乾いた笑いを浮かべた。


《せめて秘密結社と言ってくれ。今回は殺された側にも相応の原因があったようだ。以後事件を起こすつもりがないのなら、放っておき給え》


 今なら、都市伝説めいた噂が立つだけで済む。


《ただ、その出宇多氏の動向には注意を払っておいてくれ給え》


「再犯の予知でも視た?」


 詠の未来予知(プレコグ)は強力無比である。


《いやなに、ただの経験則さ。分不相応なチカラを手にした小人の行動などたかがしれている。力に酔っ払って、短絡的になるだろうからさ》


 群羽と新洋を短絡的な暴力で撃退した自分を思い出し、蓮は渋い顔をした。


三船玲のアナグラムは次回で(/・ω・)/

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