妄執の弾丸
このデザートウォーリア4・3は気力が初めて買った銃であり、格別思い入れが強い代物であることを蓮は知らない。
庭を孤影が横切った。ハルファスが上空を羽ばたいている。今度はジャベリンを背負っていた。旋回して戻ってくるつもりだろう。
『串刺シニシテ、戦勝祝イニ飾ッテヤルゾ、小僧!』
「百舌の速贄かよ!」
器用に足で槍を掴み、遠心力を乗せて投げつけてきた。
『地獄に行け!』
もはや一刻の猶予もなかった。弾丸を確認することもせず、蓮はデザートウォーリアを構えた。可部気力の“撃ちたい”という願望と怨念が煮詰められた銃を。ハルファスに狙いをつける。
「気力さんよ。死ぬ間際、“撃ち足りない”って言ってたな! 撃たせてやるよ、七面鳥撃ちじゃない、化け物鳥をな!」
引き金を絞った。
発射された銃弾は、常のものではなかった。金色に輝く、黄金製の銃弾。可部気力最期の未練だった。
「敵対者ロケル!」
黄金の銃弾に魔方陣を通過させ、拡大する。黄金の砲弾は飛来するジャベリンを押し潰し、そのままハルファスの胸板を貫いた。
風穴から煙が噴き出す。
『見事ナリ!』
先程までの狂相はどこへやら。鳩の堕天使は満足し、賞賛を送った。
闘争を至上の快楽とするハルファスは、蓮が逃げ回ったり隠れて制限時間まで生き延びたとしても、こうまで素直に負けを認めなかったに違いない。
蓮はアティルト界のギミックを読み切り、それで以てハルファスを撃退せしめた。だから認めたのだ。
『実ニ楽シメタ闘争デアッタゾ。礼ニ、コレヲクレテヤル』
翼を一振りすると、羽根が放たれた。蓮の腕に刺さると、腕にハルファスの紋章が浮かび上がる。
『生キ延ビテ見セロ、“ハヴェレイ・クラヴ”。クルックー!』
ひと鳴きすると、姿は霧のように消えた。風景もいつもの街並みに戻ってゆく。
「はあー。死ぬかと思った」
安心からの脱力で、その場に座り込む。
『生き延びたか、命冥加な奴め』
当然のようにデカラビアがすぐ脇でゲームをしていた。
「アイツ、最後に俺のこと小僧って言わなかったな。ハベレークラブとか。なんの言葉だ?」
後半はデカラビアに向けて放たれた質問である。
『ヘブライ語で“戦友”だ。あ奴にとっては最大級の賛辞であろうな』
「河原で殴り合った系の友情かよ」
汚れるのも構わず、ごろんと路上で横になる。既にブレザーは汚れ、数か所裂けている。今更気にならなかった。
ハルファスは満足していた。遺恨も意趣返しもないと確信する。
『ところで』
「ん?」
『いまの質問も、当然ゲーム1本に該当するのであろうな? 計5本である。まいどおおきに』
「せ、セコイな! 俺の余韻を返せよ!」
蓮は起き上がり、大きく伸びをした。
「そういや、あの猫も無事脱出したのかな?」
キリのいいとこまでで切り上げたら短めになりました(/・ω・)/




