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王の名前を  作者: あまやどり
第三章 アティルト界
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妄執の弾丸

 このデザートウォーリア4・3は気力が初めて買った銃であり、格別思い入れが強い代物であることを蓮は知らない。


 庭を孤影が横切った。ハルファスが上空を羽ばたいている。今度はジャベリンを背負っていた。旋回して戻ってくるつもりだろう。


『串刺シニシテ、戦勝祝イニ飾ッテヤルゾ、小僧!』


百舌(モズ)速贄(はやにえ)かよ!」


 器用に足で槍を掴み、遠心力を乗せて投げつけてきた。


地獄に行け!(ラーザゼル)


 もはや一刻の猶予もなかった。弾丸を確認することもせず、蓮はデザートウォーリアを構えた。可部気力の“撃ちたい”という願望と怨念が煮詰められた銃を。ハルファスに狙いをつける。

 

「気力さんよ。死ぬ間際、“撃ち足りない”って言ってたな! 撃たせてやるよ、七面鳥撃ちじゃない、化け物鳥をな!」


 引き金を絞った。

 発射された銃弾は、常のものではなかった。金色に輝く、黄金製の銃弾。可部気力最期の未練だった。


「敵対者ロケル!」


 黄金の銃弾に魔方陣を通過させ、拡大する。黄金の砲弾は飛来するジャベリンを押し潰し、そのままハルファスの胸板を貫いた。


 風穴から煙が噴き出す。


見事ナリ!(メフォアール)


 先程までの狂相はどこへやら。鳩の堕天使は満足し、賞賛を送った。


 闘争を至上の快楽とするハルファスは、蓮が逃げ回ったり隠れて制限時間まで生き延びたとしても、こうまで素直に負けを認めなかったに違いない。

 蓮はアティルト界のギミックを読み切り、それで以てハルファスを撃退せしめた。だから認めたのだ。


『実ニ楽シメタ闘争デアッタゾ。礼ニ、コレヲクレテヤル』


 翼を一振りすると、羽根が放たれた。蓮の腕に刺さると、腕にハルファスの紋章が浮かび上がる。


『生キ延ビテ見セロ、“ハヴェレイ・クラヴ”。クルックー!』


 ひと鳴きすると、姿は霧のように消えた。風景もいつもの街並みに戻ってゆく。




「はあー。死ぬかと思った」


 安心からの脱力で、その場に座り込む。


『生き延びたか、命冥加な奴め』


 当然のようにデカラビアがすぐ脇でゲームをしていた。


「アイツ、最後に俺のこと小僧って言わなかったな。ハベレークラブとか。なんの言葉だ?」


 後半はデカラビアに向けて放たれた質問である。


『ヘブライ語で“戦友”だ。あ奴にとっては最大級の賛辞であろうな』


「河原で殴り合った系の友情かよ」


 汚れるのも構わず、ごろんと路上で横になる。既にブレザーは汚れ、数か所裂けている。今更気にならなかった。

 ハルファスは満足していた。遺恨も意趣返しもないと確信する。


『ところで』


「ん?」


『いまの質問も、当然ゲーム1本に該当するのであろうな? 計5本である。まいどおおきに』


「せ、セコイな! 俺の余韻を返せよ!」





 蓮は起き上がり、大きく伸びをした。


「そういや、あの猫も無事脱出したのかな?」


キリのいいとこまでで切り上げたら短めになりました(/・ω・)/

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