歯術師〜はじゅつし〜

――その歯は、魔を癒し、罪を語る。

魔法が日常に溶け込む異世界。
だが唯一、歯の治療だけは「神の領域」とされ、厳しく禁じられていた。
歯には“記憶”と“魔力”が宿るとされ、癒すことは魂への介入――すなわち禁術。

前世で心を折られた歯科医師は、異世界で少年・レオ＝アーデルとして転生する。
ある日、妹の歯の痛みに触れた瞬間、彼の内に眠る“魔流視”の力が目覚める。
それは魔力の流れを視て、操作する異能――
誰にも見えぬ「魔力の回路」を自在に制御することで、彼は歯を癒し、人を救う。

しかしその力は、やがて魔法教会の目に留まる。
「癒してはならぬ歯を癒す者」として、異端者の烙印を押されながら、
彼はただ一つの信念を胸に戦う――
「痛みを放っておけない。ただ、それだけだ」

学院で、旅先で、そして戦場で――
繊細な魔法が、世界を揺るがす。
これは、“小さな治療”が“世界の理”を覆す、
異端の歯医者の英雄譚である。