SS―19.舞奈と俊則
侯爵様の邸宅でエスペリオとロローニの二人を浄化した夜。
俺は夢を見ていた。
懐かしい古い記憶。
やがてそれは形を成し、俺はそれを思い出す。
大好きな舞奈。
彼女との最初の出会い。
ああ、やっぱり。
俺と君は運命だったんだ――――――
※※※※※
市営の保育園。
多くの子供達がキラキラと目を輝かせ、入園式は滞りなく進んでいった。
桜が散り始め葉桜になる直前。
暖かいあの街は4月の上旬にはすでにピークは終わっていた。
「はい、皆さん。入園おめでとう。私は佐々木未来、あなた達の担任です。保護者の皆さま方、ぜひよろしくお願いいたします」
俺が入園した保育園。
年少組の担任、佐々木先生。
―――ああ、なんて懐かしいんだ。
それからしばらくは慣らし保育。
午前中の短い時間だけ俺は目を引く女の子と遊ぶ事が出来ていた。
「ねえ?としのりくんっていうの?わたしまいなだよ♡よろしくね」
「う、うん。まいなちゃん」
―――やばい。
―――夢で見てるはずなのに……
―――舞奈めっちゃ可愛い。
そして始まる通常保育。
思えばこの頃から俺の母さんは病んでいた。
「ねえとしくん。なんで女の子の格好なの?」
「まいなちゃん…う、うん……ちょっとね…」
―――なぜか一緒に居た舞奈。
―――でも彼女は可愛かったんだ。
―――だから……
「おい、この男女!!まいなから離れろ!!よわむしがうつるだろ!!」
―――ああ、健太だ。
―――小学校からは結構遊んだけど…
―――コイツ嫉妬していたんだ。いつも舞奈といる俺に…
それから俺は孤立していく。
心配した舞奈がたまに様子を見てくれたけど…
健太たちが色々言ったせいで、気付けば誰も居なくなっていた。
そんな6月の下旬。
あの日は大雨で道路が冠水。
みんなの親が迎えに来る事態になったとき、なぜか俺と舞奈の二人、親の事情で遅くまで残されていたんだ。
「……なんかひさしぶりだね?おかしいよね。おなじきょうしつにいるのに」
「…う、うん」
3歳なのにため息をつく舞奈。
少し大人っぽい仕草に俺は見蕩れていたんだ。
そして突然何かを思い出したように俺の手を取り興奮したような顔で見つめてくる彼女。
「そうだ。ねえ、『おまじない』ってしってる?」
「…おまじない?」
「うん。わたしねとしくんのこと心配なの。それで長野のおじいちゃんがねこういうの」
「……」
「コホン『…舞奈よ、この世には運命という理がある。それはレールの様なモノ。きっといつか出会う大切な人とかもじゃな。だからな、おまえがピンとくる相手。大事にしなさい。それはきっとお前を助ける。まあ『おまじない』のような物じゃな』……とか言うの。ねっ、だから負けないで?まいなおうえんしてるから」
―――今思えば舞奈の記憶力ヤベーな。
―――でも今ならわかる。
―――あれは道しるべ。
―――あの時俺と舞奈の運命は動き始めたんだ。
彼女の難しい話。
あの時の俺は全く分からなくて…
でも、応援するって言われたこと。
俺はそれが宝物になったんだ。
やがて月日が流れティナちゃんが短い間だけどうちの園に訪れた。
そして俺の運命はさらに加速した。
いつもうじうじしていた俺の、ティナちゃんを守るために奮い立たせた勇気。
一番に反応してくれたのはやっぱり舞奈だった。
メチャクチャ嬉しかったんだ。
俺はあの時もう。
将来舞奈と結婚したいって心の底から想っていた。
ヤベーくらいのませガキだね。
※※※※※
「…う…ん……っ!?舞奈?…あれ?」
「俊則…うなされていたよ?…大丈夫?」
長いのか短いのか。
俺は今見ていた夢をすべて忘れていた。
でも目の前にいる舞奈。
なぜか涙が出てきてしまう。
「っ!?俊則?ああ、大丈夫だよ?…私がいるから…絶対にいつまでも一緒だよ」
「うああ、舞奈…舞奈……」
俺はみっともなく彼女に縋りついた。
優しく包み込んでくれる温かくそして大好きな匂い。
ああ、君は。
俺の運命の人だ。
どうして俺の部屋に彼女がいたのか。
気付けば俺は聞くのを忘れていた。
でも彼女のぬくもり。
俺はもう絶対に手放さない。
死んで別れてしまった愛おしい彼女。
今のこの瞬間、俺は運命に感謝をささげていた。
※※※※※
翌朝。
俺は起きた時にテーブルの上にある舞奈のメモを見つけていた。
「…メモ?…ふふ、いつでも会えるのに…どれどれ……うん?」
メモには走り書きでこう書いてあった。
『ねえ、デートだけどさ。高校生に戻ろっか』
と。
高校生に戻る?
俺はいまいち理解せずに朝食の為に舞奈の部屋に向かったんだ。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます先輩」
「シュラド様、おはようございます」
ああ、まさに天国だ。
大好きな俺の彼女たち。
きっと世界でも一番かわいい3人だ。
「ねえ俊則、メモ見た?」
「うん」
「ふふっ、私さこの前ちょっとサプライズしたでしょ?あれからちょっと考えたんだよね」
得意げな舞奈。
目を輝かせてメチャクチャ可愛い。
「そしてついにたどり着きました!ジャジャーン!!」
取り出したるはなぜかおどろおどろしい色の怪しい瓶。
思わず固まってしまう舞奈以外の3人。
「あ、た、確かに色はちょっと…で、でも効果は問題ないよ?」
「っ!?ロナリアお姉さま?それ、飲むんですか?!」
「ま、舞奈さん?大丈夫なんですか?」
いきなり心配そうになり舞奈に声をかけるルルと絵美里。
不満そうな顔をする舞奈が俺に視線を向ける。
「う、うん。ありがとう舞奈。飲むよ?…それでこれいつ使うの?」
「あ、ありがと。ねえ俊則?明日って訓練とか休めるかな?」
「うん。今日言えば大丈夫。それじゃ明日…君とデートできるってこと?……ああ、嬉しい」
もちろんルルと絵美里とのデート。
それだって俺は最高に楽しかったし嬉しかった。
でもやっぱり。
舞奈とのデート。
俺は心が沸き立ってしまう。
「……もう。ばか……嬉しい。俊則」
「う、うん」
やばい。
なんか拗ねてそして恥じらう舞奈。
ああ、今すぐ抱きしめたくなっちゃう。
「むう。やっぱりロナリアお姉さまズルいです」
「うんうん。先輩なんだかすごく浮かれてる」
「え?あ、いや…ははは、は…」
突き刺さる美少女二人のジト目。
ごめん、それ俺には…
ご褒美と変わりませんよ?
改めて恵まれている現状に俺の心は温かくなっていったんだ。
※※※※※
デート当日朝。
俺は舞奈に呼ばれて彼女の部屋へ訪ねていた。
「はい。俊則、それ飲んでみて」
「う、うん」
俺は先日舞奈が作った怪しい色の瓶の蓋を開ける。
見た目とは違うすっきりとした柑橘系の香りが俺の鼻に届く。
「うえ?…いい匂いなんだね……俺てっきり…」
「…なに」
「あ、いや……いただきます」
なんかやっぱり舞奈気にしているみたい。
俺はおもむろに流し込み飲み干した。
「っ!?」
途端に熱くなる体。
そしてなぜか縮んでいく?
「うおっ?!」
「……あああ、俊則だ……ああ、としのりっ!!」
突然抱き着く舞奈。
「ま、舞奈?……っ!?声が?!!…えええっ?!!」
ふと視線をそらし目に入る姿見。
そこには日本にいた時の俺が、金髪美女に抱き着かれている様子が映し出されていた。
「舞奈?!…これって…」
「うん。魂に記憶されている姿に変身できる薬。すっごく頑張ったの。…まあ効果は短くて…24時間なんだけどね」
そう言いながら舞奈はもう一つの瓶を開けて飲み干した。
輝く彼女の体。
そしてあり得ない感動が俺を包み込む。
「……どう、かな?…あうっ、私日本にいた時…やっぱりちっぱいなのよね…ロナリア本当にチートだわ…っ!?うわっ!?」
もうだめだ。
もうたまらない。
俺はがむしゃらに彼女を抱きしめていた。
「と、と、としのり?!ひゃん♡」
「ああああ、舞奈だ……俺の大切な舞奈……あああ、もう…だめだ…」
「ちょ、ちょ、ちょっと、まっ…あんっ♡」
俺はあまりの感動に抱きしめながらも彼女の可愛らしいお尻に手を這わしていた。
真っ赤に染まる可愛い日本にいた時の姿。
俺の頭は爆発寸前だ。
「ま、まって?…うあ、こ、この体…び、敏感なのっ!!」
「ひうっ?!」
彼女の懇願。
俺はどうにか手を離した。
「ふう。……もう。俊則のエッチ♡」
「ぐはああっっ?!!」
やばい。
破壊力半端ない。
(あうう、ど、どうしよう……こ、この体……未使用だ……あうう♡)
何故か挙動不審になる舞奈。
俺は思わずいぶかしげな眼で彼女を見つめた。
「えっと…大丈夫?」
「う、うん」
改めて見つめる彼女。
いつものロナリア嬢の服が少し大きめで…
確か日本にいた時の彼女は156cm。
ロナリア嬢は165cmだから10cmくらい違うはずだ。
それに胸も…うあ、やばい。
メチャクチャ興奮してしまう。
感じたい…心の底から恐ろしいほどの欲求が沸き上がる。
それを感じたのか、何故か胸を隠すしぐさをする舞奈。
逆に強調され、俺はもう目を離せない。
「も、もう。本当にえっちなんだから…ねえ」
「う、うん?」
「着替えるから…出て行って」
「……え?…え、で、でも……見たい…かな」
「はあっ?!…も、もう…あうっ、そんな顔して……」
仕草1つ。
俺は目に焼き付けたい。
だって目の前にいる女の子。
俺の大好きな、運命の女の子の本当の姿なんだ。
「ダメ?お、俺もここで着替えるから…っ!?ご、ごめん、俺もテンパって変な事…」
「……いよ」
「……」
「分かったよ。いいよ。ここにいて。…で、でもいきなり触るとかはダメだからね?今日はデートに行くんだから」
「う、うん。……ありがとう」
「うあ、そ、そんなお礼なんて……あーもう、早く着替えよっ!!」
「うん」
二人して視線を外さず見つめ合い着替えをする。
傍から見たらひどく滑稽なそれに気づき、どちらとも問わず笑い声を出してしまう。
「あはは、はははは。…おかしいね。なんだか私たち、付き合い立てのカップルみたい」
「あははは、そうだね。…うん。でもそうかも」
「うん?」
「だって俺舞奈とまだエッチもしてないよ?キスだってチュッてしただけ」
思い出すあの水族館のデート。
俺達はまだ恋人としての付き合いをしていなかった。
「……私のお尻触ったくせに」
「ぐはあっ?!!」
う、うん。
確かに触っちゃった……
やばい。
感触が……
「っ!?も、もう、本当にえっちだね。ふんだ」
「あ、ご、ごめん」
「あとでちゃんと、優しくエスコートしてよね。…それで許してあげる」
「う、うん」
そんなこんな。
愛すべき時間。
俺達の準備は整い、心に残るデートが幕を開ける。
次でラストです。
本当にありがとうございました。
よろしければ『知識チートの黒髪黒目の少女は結局物理で黙らせる』もよろしくお願いいたします。
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