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第44話 神と少年

 良く認識できないボヤっとした世界で、何故かデスクでパソコンに向かいひとりの少年が腹を抱え笑っていた。


 「ぷっ、あははは!!あーはっははははは、ヒー、おかしい。全くあの顔!!」

 「はあーでもまあ、良かったかな。あいつ馬鹿みたいに真面目で優しいから。……凄いなルルちゃん。ファインプレーだね。うん。MVPをあげたいくらいだ」


 「あーいう感じになればあいつもきっと罪悪感が薄くなるしね。……むっつりめ。可愛い女の子3人も……羨ましい。……というかあの方法しかないよな。うーん、俺経験ないからなあ…理屈は分かるけど感情がいまいちわからん。むー、それは悔しいな。しょうがない、転生でもしてやるか」


 独り言ちる少年の後ろで白い靄が立ち上がりだんだんと人の姿に変わっていく。


 「決まったかの」

 「あー、運命神。おひさ!」

 「むう、お前さんはいちいち軽いのう。…おひさ?」


 にっこり笑う少年。


 「お主は現世で辛い思いをした分、良い条件で再度地球に戻れたのにのう。もう時間が切れてしもうたわい。で?どうするんじゃ」


 「うーん。そうだね……俊則を『パパ』って呼んでやろうかな。あいつ吃驚するだろうな」

 「…悪趣味じゃの。お前さん頭がよすぎて考えがおかしいのじゃから少しは加減せんと」

 「えー?小学生のくせに家事やってあほみたいに勉強する奴よりは普通だと思うけどな」

 「むう、こういえばああいう奴じゃな。で、実際どうするんじゃ」


 少年は椅子の背もたれに体を投げ出しながら半回転させ運命神に視線を向けた。


 「……次はもう病気のカルマは、因果はないんだよな」

 「……ああ、お前さんが苦しんだおかげできれいに消えたわい。次は健康体じゃ」

 「ふーん。俺はどうでも良かったんだけどさ……母さんとか父さんとか……俊則がな…あれが一番嫌だった。俺を心配して心を痛めるのが」


 運命神はため息をつく。


 「お主が悪いんじゃろうが。あの時すべての業を自分で背負いおって。わしらを頼りもせずに……」


 「あー、もうそれはいいじゃん。大昔の話だよ?まったくしつこいな。だからお前『想いが重い』んだよ。孫に受け継いでるじゃねーか」

 「うぐっ、だ、大体もとはといえばお主が……」

 「あーはいはい。私が悪うござんした。大変申し訳ありませんでした。…これでいいだろ?この話はおしまい」

 「ぐうっ」


 少年はかつてこの宇宙を創造した初めての神『創造神』だった。

 そして悪い神、悪神にわざと騙され、多くの業を背負った。

 ついにその因果を抜けていた。


 自分の創造したものが全てを滅ぼすのを止めるために条件を紡いでいた。

 他の神に一言も告げずに。

 そのおかげで今回遂に悪神を消せる準備が整ったのだが…

 今の創造神と運命神はどうしても納得できていなかった。


 そんな少年は多くの時代を苦しみながら転生を繰り返した。

 そこで出会う。

 心の真直ぐな少年に。


 本田俊則と出会った。


※※※※※


 はー、どいつもこいも……地球ももうだめかもな。


 少年、神薙大輔は、学校の教室で冷ややかな視線を同級生に向けていた。

 そしてあまりにも画一的な無個性の子供たちを見やり、あきらめの境地にいた。


 大輔は生まれた時から心臓の病気に侵されていた。

 もちろん分かっていて転生してきた。

 おそらくこれが最後だと確信していた。


 「ねえねえ大輔君、これって分かるかな?」

 「ん?ああ、これはね……」


 頭が良く物知りな彼はクラスの人気者だったが、やはりどうしても冷めていた。

 数千年生きてきた彼にとって周りはすべからくつまらないものに見えてしまっていた。


 彼に対し、どうしてもへりくだってしまう。

 本能が警鐘を鳴らすのだろう。


 「はあ、しょうがないか……」


 神薙大輔の日常はとても退屈だった。

 5年になった9月、大輔に転機が訪れる。

 転校生、本田俊則が彼の前に現れたのだ。


 「ん?…なんだコイツ?……心は…は?何コイツ?」


 普通ではない彼の心に、なぜか興味をひかれた。

 まだ11歳にもかかわらず、何故か達観した瞳。

 そしてすべてを見下し、自分に酔っている眼が気になったし、正直イラついた。


 「餓鬼のくせに。生意気だ」


 そう思っていた。

 だけど、違ったんだ。

 コイツ無茶苦茶真面目で優しい奴だった。

 そして自分で決めて切り開くだけの精神力を持っていた。

 さらには俺に対し対等に接してきていた。


 「面白いな」


 そして友情が紡がれていく。


 中学に上がり心臓の負担が増え、大輔は殆どを自宅で過ごした。

 まあ別に良かったのだけれど、母親がたまに泣くのがつらかった。


 友達も最初はたくさん来て辟易していたけど、数か月が過ぎセミの鳴き声がうるさくなるころにはもう、俊則しか来る事はなくなっていた。


 「きっとこいつも……まあ、当たり前か。いつ死ぬか分からない俺のところに来るもの好きはそうそういない」


 だけど、俊則は、秋風に木の葉が舞う季節になっても、たまに雪が降る寒い冬になっても、彼の元を訪れた。


 そして意味のない話を心から笑いながら話していく。

 何より俺を助けようと俺に内緒で努力していた。


 「なんなの?コイツ。……お人よしめ。……しょうがないから付き合ってやるか」


 涙を目に浮かぶのを認識しながら大輔は独り言ちる。


 高校の年になると、いよいよ大輔は限界に近づいていた。

 そして俊則も、父を亡くし現実に打ちのめされ、全てをあきらめてしまった。


 「それもまた…人生か。……俺は助けてやれない。俊則……自殺だけはするなよ」


 そんな思いで彼は親友と接していた。

 でも俊則は、大輔の前では弱音を見せない。

 いつもにこやかに学校の事やバイトの事を楽しそうに話していく。


 そしていつも「またな」って言って帰っていく。

 母さんがどれほど感謝しているかあいつは知らないのだろうけど。


 そして最後に大輔は後悔してしまう。

 もうだめだと思っていた彼は、つい優しい俊則に甘えてしまった。


 「入院するから来てほしい」


 それが俊則の心に重くのしかかるとも思わずに。

 結果的に俊則は舞奈に出会い救われた。

 大輔は違う世界でそれを見て安堵したものだ。


 しかし悪神の毒牙が彼を殺してしまう。

 大輔は誓う。


 必ず悪神を滅ぼす。

 そして親友を助けると。


 せっかく長い年月をかけ、因果を解放し、自らが問題なく再転生できる機会を失ってまで。


 「ふん、それが友情だろうが」

 「俺の幸せなんて烏滸がましいんだよ。数千年のケリくらいはつけてやるさ」


※※※※※


 「なあ、運命神。お前まさか自分を犠牲にする気じゃないだろうな」

 「ひょ?異なことを言う。お前さんには関係なかろう」

 「ああ?ふざけるなよお前。許さないぞ」


 少年から凄まじいオーラが立ち上る。

 カルマを終えた少年は一部だがその力を取り戻していた。


 「……ふう、そのつもりじゃったがな。どうやら出番はないようじゃ」


 運命神はちらりと視線を下に向ける。


 「『神滅』のスキルか」

 「そうじゃな。誰かさんが知らぬ間に付与しおってからに。全くわしらに活躍させたくないようじゃ」


 そして少年を睨む。

 まあ、半分冗談だ。

 圧が全く感じられない。


 「ふん、せっかくお前だって(つがい)を見つけたんだろうが。さっさと楽しめばいいものを」

 「ふぉっふぉ、そうさせてもらうわい。……見届けたらな」

 「ああ、そうだな……ん!?……良い事思いついた」


 少年は邪気のない顔でにっこり笑う。

 運命神は猛烈に嫌な予感がした。


 「なあ運命神。甥っ子ならいいと思わないか?」

 「!?まさか……ふう、まあ確かに因果は刻まれぬだろうよ」


 「はははっ、ああ、俊則、また会えるな」


 少年は遠い目をしにやりと顔をゆがめた。


 「なんつー悪い顔じゃ」


 運命神のつぶやきが訳の分からない空間に響いていた。


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