表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/70

第22話 エリス嬢のその後

 「エリスお嬢様。お食事の用意が整いました」

 「ありがとうマーナ。分かりましたわ。すぐに向かいます。お父様は御一緒できるのかしら」


 あの事件からお父様はわたくしに対してとても優しく接してくださるようになりました。

 今までわたくしは第2王子殿下の婚約者だった関係もあり、表向きは第2王子陣営の主力のようにふるまうお父様でしたが、実は第一皇子派の筆頭だったのです。


 そのため親子とはいえ、政治的の関係はどうしても気を付けざるを得なかった。

 甘やかしてはくれていましたが避けられることも多くて悲しい思いもしておりました。

 王国の為お父様はずっと本心を隠しておられたのです。


 婚約破棄が公になったことでお父様はこの事を打ち明けてくださいました。


 私は知らぬ間にお父様に嫌われていたと思い込んでおりましたので、その話を聞かされた時、泣いてしまいました。

 嫌われていた訳では無いと分かり、そして優しく頭を撫でてくださり、もう大人ですが恥ずかしいくらい甘えてしまって……


 お父様もとても嬉しそうにしていらっしゃったのです。


 「いえ、本日は宰相様との打ち合わせで遅くなると伺っております。ラドリック様が同席されます」

 「そう、ラドリックお兄様が同席なさるのね。ふふっ楽しみだわ」


 ラドリックお兄様はわたくしより3歳年上の21歳です。

 久しぶりに会えるのをわたくし楽しみにしておりました。


 お兄様は領地経営の勉強の為隣国のアルカード共和国へ留学していましたが、つい先日お父様に呼び戻され、先ほど帰国されたばかりなのです。


 少々変わっておりまして21歳にもなるのに浮いた噂ひとつないお兄様。

 妹のわたくしから見てもとても格好いいと思うのですが、残念ながらいまだ独身でいらっしゃいます。


 変な趣味があるという訳ではないらしいのですが……私は今までお兄様が女性と居るところを見たことがないのです。


 「ドレスト侯爵家の跡取りだというのに。あいつは固すぎる。どこかによいお嬢さんはいないものか」


 いつもお父様がため息ながらにこぼしていらしたくらいですもの。


 もしかするとロナリア様をご紹介なさるのかもしれないですわね。

 お父様ロナリア様を大変気に入っておられましたから。


 この前の面談、ロナリア様は本当に素晴らしかったですもの。

 毅然とした態度でお父様と対等に駆け引きをされるなんて……

 はあ、本当に素晴らしいですわ。


 わたくしはとっくに気に入っておりましたけど。


 実はわたくしロナリア様のファンなのです。

 あの方は超有名百合クラブ『百合は世界を救う会』の創始者であり会長まで勤めておられるのです。


 わたくし会員ナンバー9番なのです。

 シングルですのよ!


 登録は偽名ですのでおそらくご認識はされていないでしょうけれど。

 まだ残念なことに寵愛はいただけておりませんが、今度お会いした時には……

 ああ、楽しみで仕方ありません。


 これまで第2王子の婚約者ということで表立っての行動が出来なかったことが悔やまれます。

 王妃様には息抜きを兼ねて可愛がってはいただけましたけど……

 やはりわたくしはロナリア様と……ああ♡


※※※※※


 「やあ、エリス。久しぶりだ。相変わらず美しいな。早速いただこう」

 「はいお兄様。お久しぶりでございます。お兄様も素敵ですわ」


 お兄様とお話をしながら頂く食事は一人で食べるよりとても楽しい。

 やっぱりお兄様、とてもかっこいいですわ。


 食後の紅茶を頂いていると、お兄様が私に心配そうな目を向けてきました。


 「エリス、大変だったな。聞いたぞ、レイナルドに助けられたとか。私もお礼を言わねばな。しかし殿下は……ふう、もう何も言うまい。すでに刑に処されたのだから」


 「はい。でも本当に助けてくれたのはロナリア様ですわ。とても美しく、そして悪に対しては冷酷なお方ですのよ」


 「ふっ、父上も大層褒めておられた。一度会ってみたいものだ」

 「まあ、女性に興味がないお兄様がそんなこと仰るなんて。雪でも降るのではないかしら」

 「ふむ。エリスは兄をどのように見ているのか、しっかり聞かなくてはならないようだな」


 ああ、楽しいですわ。

 まるでお母さまがいらっしゃったときのような、久しぶりの笑顔溢れる空間に、わたくしは嬉しく思うのです。


 お母さまは3年前流行り病で儚くなってしまわれた。

 お父様はお母さまを心から愛していらっしゃったため、今時珍しく第2夫人や愛人一人いない潔癖なお方なのです。


 殆どの貴族が多くの妻をめとられる中、お父様のような方は少数派ですわ。

 …確かロナリア様の御父上も、ルイラ様お一人を愛しておられましたわね。


※※※※※


 お兄様との楽しい食事を終え、自室に戻り今までの事にわたくしは思いをはせる。


 わたくしは幼少の頃より婚約者として恥ずかしくないよう、勉強も礼儀作法も淑女の嗜みもそれは必死に学んでまいりました。

 王子殿下を支る為に、あくまで予備ではございましたが、国母となるべく王妃教育も修めておりました。


 カイザー殿下に初めてお会いしたのは5歳の時ですから、もう13年の付き合いでしたが、あのお方はわたくしの事はお嫌いだったようですわね。


 結局1度も寝所へと招かれることもなかったのですから。

 まあ、おかげでわたくしまだきれいな体なのですから、良かったと思いましょうか。


 「きっとご縁がなかったのですわ。わたくしとカイザー様は」


 そして訳の分からない理由で婚約破棄の憂き目にあわされてしまいました。

 余りの事に思わず涙を流してしまいましたが、実はそれほどショックではございませんでした。

 もうわたくしとカイザー殿下の関係は2年も前に破綻しておりましたから。


 2年前までの殿下は、確かに能力的に第一王子のアルス殿下より数段劣ってはいましたが、とても優しい御方でした。


 わたくしは寂しそうに自分がだめだと語るカイザー様を確かに慕っていたのです。

 ですがある女性と出会い、カイザー殿下はまるで人が変わったかのように、わたくしを避け始めました。


 聖魔法に目覚めた男爵令嬢のミリー様と出会ってから。


 私は自分で言うのもなんですが、容姿は美しいと自負しております。

 夜会などで殿方の視線をいつも感じるほどには。


 「ふう、もう済んだことですわね。それよりも……」


 わたくしは部屋を見回し、侍女のマーナがいないことを確認し……

 いそいそとベッドへもぐりこみます。


 「ロナリア様♡……野盗をいじめている時のあの方の目……」


 あああ♡


 なんて素敵なのでしょう。

 思い出すだけでイケない所が疼いてしまいます♡


 はあはあはあはあ、刃物を美しくも神々しい赤く可愛らしい舌でねっとりと……

 あああああ、もうだめですわ♡


 淑女にあるまじき、わたくし自分を慰めてしまいました……

 次に会うときは絶対……


 ロナリア様♡エリスを可愛がってくださいませ♡


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ