第2話 この日を生きる
クェリケーと言う国のギルドで新たなメンバーと組んだ私は仲間と共に消息を絶ったギルドメンバーの捜索を行う依頼を受けていた。A級揃いのパーティーとあって依頼は無難にこなしたものの、リーダーのミードルが近くの遺跡に行きたいと言いだして…。
今回受けた任務は行方不明になったギルドメンバーの捜索だった。決まりはないが基本的にメンバーは4人で行動する。少な過ぎれば状況に対処できず、多過ぎれば魔物が寄って来るのでリスクが高まる。今回捜索するパーティーも4人だった。
ギルドに加入した際にもらえる端末はリアルタイムで当人の魔力の性質から分析して当人の適正的役割と等級を解析する。生物は無意識に大気中の魔素を魔力に変えているが、死ぬ際にはそれを放ち魔力は魔素に戻る。端末それを感知して所持者の生死も確認できる。
しかし些か正確性に欠けていたり、強い魔力に当てられたり衝撃を受けたりすると予期せぬ不具合を起こしたりする。生きているのに所持者が死んだと判定されたり死んでるのに他の誰かが持ってるだけで生存してる事になったり、判定不可のままになったりする。端末の異常で当人の生死が不正確になった場合はパーティーの認証で生死判定を送信したりする。
私達の受けた任務はメンバーの捜索だ。4人共端末による生死の確認ができない。長らく帰還しないので死んでると考えるのが妥当だろうが…。生きていればどうにか助けなければけない。死んでいれば端末か当人確認できる物を持ち帰らなければならない。ギルドとしては生死は早めに確認しておきたいのだ。
「あれじゃないか?」
コトリーが指をさした。その先を見ると確かに何かが転がってるのが見えた。私達は近くでそれを確認する事にした。具体的な人数は分からなくなってしまっているがメモにある持ち物や服装の特徴から今捜索しているギルドメンバーには違いないだろう。途中でミードルが私達を止めた。
「待て、様子がおかしい」
よく見ると死体が僅かに蠢ている。土スライムが死体を食べているらしい。迂闊に近寄れば危ない。ミードルは魔法を唱えると死体の近くに火球を浮かばせ熱で土スライムを退ける。土スライムは水に擬態して生物に飲んでもらい体内から宿主を食べたりする事もあるが、基本的には落ちてる死体を食べる。人間ぐらいのサイズの死体であれば3~4時間ほど。
スライムを退けてなお部位は残ってるので土スライムによって死んだのではなく死後に土スライムが発見して食べていたと考えるべきだろう。
各々端末を探した。見つかったのは3台。
「後1台はどこだろうな。一通り探したがどこにも見当たらない」
ジェスリーが首を傾げた。ミードルも腕を組んで考える。
「そもそもここにいるメンバーは何人なんだ?」
コトリーが言った。損壊具合が酷くて分かりづらいのだ。ジェスリーは死体を組み立てていく。顔色悪そうにするのでコトリーが背中をさすってあげていた。
「ジェスリー、充分だ。離れててくれ」
私が言うと「考えがあるんだな?」と言って離れた。回復魔法が専門だが他の魔法が一切使えない訳じゃない。久しぶりにやるので正確にできるかはわからないが…。私はいくつかの魔法を同時に発動した。
まず死体に残っている残留した魔力を視る。その性質と流れから推測して分別し回復魔法で可能な範囲で残ったパーツをくっつける。横一列に並べて置いた。
「1、2、3、4…4人。ここで全滅したのは間違いないようだな」
「そうか。どうも体つきに合わないと思ったんだ。この腕は4人目だったのか」
ジェスリーがポンと手を叩いた。仲間が腕だけ持ち歩いていたとも考え難く、腕をなくすような怪我を負ったままクェリケー以外の町に逃げ延びたとも考え難い。死んだ事にして捜索を打ち切っても問題ないだろう。端末が回収できない以上は遺物を回収するしかなく、その遺物も腕しかないとなれば腕を回収するしかない。誰が腕を持つかという話になったがジェスリーが快く引き受けてくれた。頼りになる奴だ。
それで任務が終わると言う所でミードルが1つ提案をした。
「俺達の任務はここで終わり…だが、実はこの近くに遺跡があるんだ。俺はそこに行きたい」
「ミードル、そこは…」
「分かってる」
ミードルはコトリーの言葉を遮った。遺跡か…。各地に残る過去の建造物。ギルドにいる質屋に持って行けば物によっては大金になる。大金持ちのコレクターや考古学者が集めていたりするからだ。遺跡には多くの魔物が住んでいるので自殺行為にも等しいが、時折冒険者や金に困った貧困層が遺跡漁りをしたりする。
金にがめつく非常に強い用心棒を雇っているキャラバンの団体ですら遺跡には全く手を出したがらないほどなので余程お金に困っているか馬鹿でもない限り手を出す事はない。
「私は反対だ。まだ死にたくない」
当然反対した。
「まずは話だけでも聞いてくれ。コアトと言う仲間がそこで死んだんだ。頼りになるヒーラーで…でも身内が病に伏せって金に困ってた。入り口付近を探して少しでも金になりそうな物を持ち帰ろうって話になったんだ」
「入り口付近って…さすがに…」
「あったんだ。金目の物が。冒険者らしい身なりのエルフが覆いかぶさる様に昇り龍のブロンズ像を抱えて倒れてた。もっと奥の部屋から取って来て、入り口付近で背後を魔物に襲われて死んだんだろう。コアトはそれを持ち帰ろうとしてブロンズ像から死体を引き剥がしている所をスライムに襲われて死んだんだ。…大きなスライムだった」
コアトは歴史の本を愛読していたため芸術品などの遺物に詳しかった。遺跡に落ちていたブロンズ像がどれほどの価値があるものなのか知っていたからこそ興奮を抑えきれず足元が疎かになったのだそうだ。価値さえ分かっていなければ死なずに済んだろうに皮肉な事だ。
ミードルは今にも泣きそうな顔になって拳を握りしめた。あの日、派手な怪我をしていたのは任務のせいではなく既に手遅れだったコアトを助けに戻ろうとするミードルを止めるためにジェスリーと殴り合いになり、止めに入ったコトリーまで怪我をしたと言う経緯のためだったらしい。
「敵討ちをしようって言うんじゃない。昇り龍のブロンズ像を持ち帰って換金して、それを家族に渡すんだ。…まだ家族には死んだ事を伝えてない。せめて無駄死にじゃなかったって言いたいんだ」
ジェスリーとコトリーは黙った。私は首を横に振った。
「スライムは遺跡漁りをターゲットにして待ち伏せしてたんだよ。だからそのエルフの死体も食べずにいた。それぐらいの知能があるって事だよ。徒に死者を増やすだけだぞ」
ミードルは今回の任務の報酬の自分の分を私に差し出すとも言ったがそれも断った。繰り返すが私はまだ死にたくない。私が説得できないと諦めてからは私達に背を向けて歩き出した。コトリーは肩を掴んで止める。
「俺は1人でも行く。我儘なのはわかってるけど…」
するとジェスリーも同じ方角に向かって歩き出した。
「そろそろギャンブルで遊ぶ小遣いが欲しかった所だ」
「ジェスリー!?」
コトリーは困って私と2人を交互に見ている。こうなってしまっては私も腹を括るしかない。諦めて2人の背中を追った。コトリーも不安げな表情のまま同行する。
ミードルの言う通り遺跡はすぐ近くだった。慎重に慎重にと入り口に近付き中に入ると私達の目にはあまりにもおぞましいものが映った。魔物の巣窟である遺跡に一糸まとわぬ人間がブロンズ像を抱いて座っているのである。
その人物とは初対面だったが顔は見た事があった。そう、ギルドメンバーの確認時に。既に死亡とあった。
「コアト!!」
駆け寄ろうとするミードルをコトリーが止めた。
「迎えに来てくれたんだね。でも置いて行って欲しくなかったな」
『コアト』がこちらにやって来る。コトリーが弓矢を構えて叫んだ。
「来るな!!!!」
『コアト』はその場に立ち止まる。そして首を傾げた。
「どうして?」
私は道具袋から聖水瓶を取り出すとそれを思い切り『コアト』に投げた。聖水瓶が当たって砕け中の聖水が飛び散った。複数の弦楽器を滅茶苦茶にかき鳴らした様な叫び声をあげると目や口や耳から黒い粘性のある液体が噴き出した。人間に擬態したり言葉をしゃべるスライムなんて聞いた事がないが、今は目の前で起こった事は否定できない。
やっとの事でアレが魔物だと認識したミードルは魔法を唱えて巨大な炎球を飛ばす。コアトに擬態したスライムは炎球に直撃し奥の部屋まで吹っ飛ぶ。ブロンズ像はすぐ近くに落ちた。
「あの像、あの像だけでも…」
ミードルが走る。私は彼の手を握ろうとしたが滑って掴めなかった。
「よせ、戻れ!!!」
奥で倒れたスライムがコアトの中に入り起き上がった。距離的に言えば今すぐにミードルに攻撃を仕掛ける事はできないだろう。だが…。
「!!!!」
ミードルの頭上からスライムが落ちて来た。私は魔法を唱えて彼の頭上に半球状のバリアを張った。
「戻れミードル!ブロンズ像は諦めろ!!」
私は必死に叫んだがミードルは迷ってる様で動きが鈍い。血迷ったのかブロンズ像に向かって走り出した。そしてブロンズ像を掴むとそれをこちらに投げる。危うく私の頭に直撃する所だったがジェスリーが受け止めてくれた。
バリアは壊れた。既にミードルの目の前にはコアトに擬態したスライムが。先程落ちたスライムはミードルの足元を囲っている。彼は端末を取り出すとこちらに投げた。
「ごめん…」
「ミードル!!!」
コトリーは矢じりを聖水に漬けてスライムを射って退路を作ろうとする。しかしミードルはコアトに擬態したスライムの冷たい抱擁を受け既に手遅れの様子だった。ジェスリーは無言で曲刀を投げてミードルの首を刎ね飛ばした。
「あっ……」
コトリーは短い悲鳴を上げると目を見開いたまま動かなくなった。ジェスリーはコトリーを抱えて来た道を引き返す。スライムは尚も私達を捕食せんと体液を飛ばしてくる。私は先ほどと同じバリアを張って逃げる。
どこまで追って来るか分からない。私達は走って走って走り続けた。ブロンズ像とコトリーを背負って走っていたジェスリーが疲れた頃に一度休憩を挟んだ。コトリーは放心状態で声をかけても返事をしない。
ジェスリーは深くため息をついた。
「クェリケーまで無事に帰れるか分からんな…」
私はブロンズ像の重さを確かめる。ここまでジェスリーが抱えてて無事だったのだから大丈夫だと思うが念のためにスライムの破片が残ってないか聖水をかけて確認してから持ち上げた。まぁ重いが私でも持てない程じゃない。
「ジェスリーには前衛にいてもらう。戦えない私がブロンズ像を持って、コトリーを引っ張る。それでどうだ」
「そうしてくれ。…しかし、コトリーはこんな状態で歩けるのだろうか」
「歩けなきゃ端末だけ取ってここに置いていく。コトリーを見殺しにするかここで全滅するか2つに1つだ」
ジェスリーはしかめた表情をして唸る。それから視界が明後日の方を向いて口をぽかんとあけたまま動かないコトリーに声をかけて正気に戻そうとしている。私は水を少し口に含んで休んだ。帰りに魔物に遭遇したら本当に全滅かもしれない。
…今頃ハイント達はどうしているだろうか。ふと彼らの事が頭に浮かんだ。ダイアと仲良く旅をしているんだろうか。あるいは…。私は首をぶんぶんと振って考えない様にした。もう関係ない話だ。
休憩後コトリーは自分の足で歩く程度には気力を取り戻していたがまるで怖がりの幼児の様相で戦力にはならなかった。交戦を避けるためにあらゆる努力をして魔物をやり過ごし、やっとの思いでクェリケーのギルドに戻る事ができた。私達はくたくたで報告を済ませた。コトリーをベッドで寝かせ私達はブロンズ像を質屋に持って行った。
鑑定の結果、ブロンズ像は贋作だと言う事が分かった。それでも遺跡にあった遺物は遺物だ。それなりの金にはなった。私達はそれを持ってコアトの家族の元へ向い全てを話した。ブロンズ像の換金分はミードルの希望通りの全額渡した。
遺族はその場に泣き崩れ散々コアトの事を口汚く罵った。私達はどうしていいか分からず立ち尽くしたが、やがて少しずつ冷静さを取り戻し「この世界にあの子の笑顔ほど価値があるものなどあるはずないのに…」と呟いた。それから何度も私達に頭を下げて家の中に戻った。
私とジェスリーは複雑な心境で一言も交わさずにギルドに戻った。ドッと疲れた私は宿泊地に戻る気力もなく勝手にギルドのミードルが使ってたベッドで休む事にした。ジェスリーもコトリーも文句はないだろう。柔らかいと思って倒れる様に跳び込んだベッドは硬かった。クソが。痛む心も体も全て微睡みで誤魔化して眠りにつこうとする。
「…ブロンズ像、高く売れたか?」
コトリーが私に話しかけて来た。言いたい事は山ほどあったがグッと堪えた。
「ああ。あれだけあればこのギルドぐらい余す事なく薬で埋められるだろうよ」
「そっか…そっか……」
そう言ってすすり泣きをしだした。どうせすぐにバレる嘘だろうが今のこいつに何も事実を突きつけてやれるほど私も冷酷じゃない。しばらくして寝息が聞こえて来る頃にジェスリーも帰って来た。酒の匂いが酷い。子供の頃は何かと覚える事が多くて苦労したが、大人になると何かを忘れる様に努めて苦労する物だ。私はそうしてきた。
どうせなら眠気が一緒に嫌な記憶も連れ去ってくれればいいのに。そんな今夜に限って、眠いと言うのに中々寝付けなかった。
翌朝になると私はギルドで食事を取った。クェリケーの料理は全てクソかと思ったがギルドの食堂の料理は意外に美味しい。それにメニューも豊富だ。後で宿泊地をチェックアウトしよう。これならギルドで寝泊まりして食事した方がいい。
財布の中を確認する。当人がそう提案した通りミードルの貰い分は私の財布に入っているので財布はそこそこ潤っている。食事の間暇なので辺りの噂に耳を傾けていると飛行船がこちらに着く日付が遅れると言う話を耳にした。憂鬱だ。
向かいの席にジェスリーが座った。
「よ、おはようさん。よく眠れたか?」
「おはよ。今朝来たらしい冒険者がうるさくて叩き起こされたからまだ眠い」
突然歌いだす奴、大声で意味不明な事を言いだす奴、喧嘩をおっぱじめる奴、食器を割ったりテーブルを壊す奴。賑やかにも程がある。
ジェスリーは料理が来るのを待ちながらテーブルに爪を当ててトントンと叩いている。あまり傷つけると怒られそうなものだが。彼は何か言いたい様でさっきからそわそわと落ち着きがない仕草をしている。
「これからどうする?ミードルは死んでしまったし、コトリーもあの様子じゃ戦闘は無理だろう」
「ああ…。そうだな。コアトはいい奴だった。ミードルもだ。コトリーの奴、何だか危なっかしくて放っておけない。しばらくは仕事には行けない」
「そうだろうな。これ返すよ」
私は財布から金を取り出してジェスリーに渡した。雇われた時に渡された金額の3分の2だ。危険な任務をこなしたとは言えこんな短期間で解雇されて満額貰うのは悪い。ジェスリーは首を振って断る。
「よしてくれ。あんたからその金を受け取ったらミードルが化けて出る。金には困ってないから安心してくれ」
「そうかい」
ジェスリーの頼んだ料理が運ばれて来た。彼は口に放り込む様にして食べる。よほどお腹が空いていたのだろう。私も止まっていた食事の手を進める。
「惜しい話だ。お前はもうすぐ飛行船に乗ってどこかに行っちまう。俺はお前ともう少し仕事がしたかったな」
「案外叶うかもよ」
2人で笑った。私はヒーラーとして衰える一方だ。このギルドに長居はできない。お互いに今後の付き合いはあまり長くないだろうが仲良くしておいて損はない。さすがにB級、C級になった私をパーティーに入れてくれるほどお人よしではないと思うが。
私は山の様に並べられた料理を食べるジェスリーより先に食事を終えてギルドを出た。宿泊地で予定より早いチェックアウトを済ませると来た道を戻ろうとする。途中で変な屋台を見かけた。
【イカサマ屋】
どうも気になる。眺めていると店員と目が合った。無視しようと思ったら声をかけられた。
「やあ、僕とゲームしていかない?」
「また今度な」
「そんな!まだ何も説明もしてないのに!」
私は声も聞かずにそそくさと立ち去ろうとする。
「初回は無料なのになぁ…」
その言葉を聞いて立ち止まった。正直に言うとここ最近は娯楽に飢えていた。私は葛藤の末にイカサマ屋に戻って話だけでも聞いてみる事にした。やる事は簡単なボードゲーム。イカサマ屋はイカサマをして勝とうとするのでそれを見抜いて指摘して正解ならこちらの勝ちだ。最後まで指摘できずに負けるか3回ミスするとこちらの負けになる。
イカサマ屋にイカサマし返してゲーム自体に勝ってもこちらの勝ちになる。代わりにイカサマを指摘されて正解だった場合はこちらの負けになる。こちらと違ってイカサマ屋は1回でも指摘ミスをすると負けになる。やるボードゲームはイカサマ屋が用意するが事前に仕掛けがないか確認する時間は貰える。更に言えばこちらが勝てば賭け金が3倍になって帰って来る。まあ初回は無料なので勝っても負けても関係ないが。
「後は説明聞くより実際にやった方が早いよ。さーさやろうやろう」
「あ、ああ…」
まずはカードゲームだ。私はカードを1枚1枚確認する。特に変わった様子はない様に見えるが…。カードを返して早速とゲームを開始した。私が知ってるゲームで勝負する。どのタイミングかどのタイミングかと見張っていたが、結局ボロ負けした上に何一つ指摘できなかった。
「あはは、ペナルティ無しで3回まで指摘できるんだから当てずっぽうでも言ってみれば良かったのに」
「ぐぬぬ…」
「次から賭け金貰うけどやる?」
「やる」
次のボードゲームに移る。精神的な動揺を誘おうと思って大金を突っ込んだがイカサマ屋は涼しい顔をしていた。私は早速と渡されたボードに仕掛けがないか入念にチェックする。そしてイカサマの仕掛けを発見してそれを指摘した。まだゲームも始まっていないと言うのに勝利して本当に3倍の額を受け取る事になった。
イカサマ屋は損したと言うのにむしろ嬉しそうにニヤニヤしている。
「儲かったねぇ。勝ち逃げしちゃいなよ」
「冗談じゃねえ。尻の毛まで毟ってやんよ」
イカサマ屋は一度屈むと麻袋を取り出した。それを机の上にドシンと乱暴に置くと紐を解いた。中からじゃらじゃらと金貨が出て来る。私は思わず唾を飲んだ。
「毟って♡」
私は全財産を机の上に乱暴に置いた。イカサマ屋も最初は驚いていたがすぐに不敵な笑みを浮かべた。
「ええ度胸しとるやないけ、吐いた唾飲まんとけや!!!!」
私達は食べる暇も惜しんでぶっ通しでゲームを続けた。お互いに騙し騙され、玩具は私達の手汗が一杯染みた。もう何度負けて何度勝ったか分からない。百年はそうしていたんじゃないかと思う程長い長いゲームに没頭し、そして私は一文無しになった。
3話ぐらいで終わればいいやって思って書き出して現在4話を執筆中でナオキです