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純文学&ヒューマンドラマの棚

5年前に亡くなった妻が孫になって戻ってきた




 ある日のこと。数年前に嫁いでいった娘が変な電話を掛けてきた。


「今週の日曜日に家に来るから。花梨に会ったらきっとビックリすると思う」


 花梨とは娘の子──つまり、僕の孫で。今年4歳になる。その孫とは毎年何度か会ってる、が。


「ビックリするって、何だ?」


 電話を終え、僕は首をかしげた。


 そして、日曜日。娘は孫を連れて家に来た。すると孫は、僕に会うなり泣きながら思いきり抱きつくと。


「久しぶり、陽一さん」

「……え?」


 僕は驚いて、思わずメガネを落としそうになった。会うたび僕のことは「おじいちゃん」と言っていたのに、何故か今日は、僕のことを名前で呼んだ。


「花梨?『陽一さん』はちょっと……。『おじいちゃん』って呼んで──」


 しゃがんで孫と目線を合わせ、そう話してる途中。僕の唇に柔らかいものが触れた。

 孫が、僕の唇にキス、したのだ。


 僕が驚いて固まってると、娘は慌てて僕の唇から孫の唇を引き剥がした。


「ちょっ!?も~…何見せつけてるのよ、()()()()!」


 と、娘は孫にそう言った。


「何言ってるんだお前?お母さんって……」

「あのねお父さん、ビックリすると思うけど……花梨はどうやら、お母さんの生まれ変わりみたいなんだ」

「そうなのよぉ~!まさかよりにもよって、娘の子供に生まれ変わるなんて~ねぇ?というわけで、私は花梨だけど、貴方の……陽一さんの妻だった弘美です。お久しぶりです、陽一さん」


 そう言って孫は、ぺこりと頭を下げた。


「……は?はああああ!!!?」





 僕の妻……弘美は、5年前に病気で亡くなった。僕は妻を一途に愛していたので、妻が亡くなった後、ショックで仕事以外家から殆ど出ない、引きこもり人間になってしまった。

 そして妻が亡くなって一年後。孫の花梨が生まれた。孫が生まれ、時折娘が孫を連れて遊びに来るようになると、塞ぎ込んでいた僕の心は少しずつ解放されていった─のだが。


「嘘、だろ?花梨が弘美だなんて……そんなジョーク洒落にならんぞ─」

「『弘美さんの全部を僕に下さい!結婚してくださいっ!』」

「それは……僕が弘美さんに言ったプロポーズの言葉。何で花梨が知って……?」

「私がその弘美だからね~。まあ、幼い孫の姿で急に『亡くなった貴方の妻です』なんて言われても、すぐには信じられないわよね~。でも私は弘美よ。そして、生まれ変わっても、貴方のことが……陽一さんのことが大好きよ」


 そう言って微笑んだ孫の顔は、確かに妻によく似ていた。




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― 新着の感想 ―
[一言] あ~~と笑顔に成りましたW でも記憶は無く成った方が良いかな~~。 流石に前世の記憶は色々不都合だし。
[一言] 最後の展開に驚きましたが、このあと昔話に花を咲かせるのかと思うとほっこりしました。 素敵な物語をありがとうございました。
[良い点] これは衝撃的ですね…!どうなっちゃうの!? 小さな奥様、想像したら可愛いですが(*´꒳`*) 読ませていただきありがとうございました♪
2023/12/27 19:56 退会済み
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