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商会に行くために急いで準備をしているとお茶を入れていたマリーが何か思い出したように口を開いた。
「ルネ様、町に行かれるのであれば気を付けて下さいね。最近は何かと物騒ですから。」
行きも帰りも馬車である上に出歩くのは昼間なので何かありようもないなと思いながら聞き流していると、その気配を察したのかマリーは更に言い募ってきた。
「先日も行方不明の者が出て未だに見つかっていないんですよ。これで六人目です。」
「マリー。それって全員若い女の人だった気がするんだけど、俺は関係なくない?」
げんなりとした顔で言い返していると別の声が割り込んできた。
「マリーが心配するのも無理はないルネは綺麗な顔をしているからな。」
声のしたほうを見るといつの間にか部屋の中にリオネルがいてからかうような顔でルネを見ていた。
ルネがジトッとした目でリオネルを睨むが、リオネルは全く気にした様子もなく、更に続ける。
「小さい頃から女の子に間違えられていただろう?鏡を覗いて現実を見てみなよ。」
そう言ってルネを鏡の前に立たせる。
改めて自分の姿を見て思わずため息をついた。
この世界に転生して16年たつが、前世25年間典型的な日本人の顔を見慣れていたのでいまだに違和感がある。
サラサラな茶色の髪はまだ珍しくないとして新録のような緑の瞳、超バサバサな睫毛、毛穴どこ?な陶器のような白い肌。
なんか無駄に小説の絵師の影響が出てる気がする。
「こんな田舎の町じゃあルネの顔は目立つからね。本当は俺がついて行けたらいいんだけど、今回の失踪事件のこともあって忙しいんだ。だから十分気をつけるんだよ。ちゃんと護衛の騎士も連れて行きなよ。」
そう言うとリオネルはさっさと部屋を出て言ってしまった。国境を警備する騎士団を統率する立場にあるリオネルは実際多忙なのだろう。
忙しい中弟が町にでると聞いて事件のこともあり心配になったのだろうが。
「いったい兄さんのなかで俺っていくつに見えてるんだろうな。」
なんとなく納得いかず苦笑しつつ馬車に乗り込むのだった。
次回はアレクシス視点です。