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5歳で小説の内容を思い出して11年。現在ルネは16歳になる。
16歳。つまり原作の小説はとっくに始まっているのだ。
(原作が始まってから4年。学園は3年間だからアレクシス達は卒業してる。
リオネルは領地に戻って領主として父さんについて働いてるからこれで二人の接点は完全になくなったはず!)
ちなみにルネ自身は後継者ではないので王都にある学園には行かず領地にある学校に通っている。
このままアレクシスとは会うこともなく過ごしテオドールが王宮を追放された際には我が領で匿い支援する予定だ。
「そうすれば完全にフラグを折れるはず!」
一人意気込んでいたとき扉をノックする音が聞こえて一人の使用人が入ってきた。
「ルネ様、本日は町へ視察に向かうと伺いましたが時間は大丈夫ですか?」
そう言って上着を手にしている少女はマリーと言い幼い頃から我が家に仕えている。
歳もはルネと同じ16歳二人は幼馴染のような存在である。
「わっ。もうそんな時間か。ありがとうマリー。
今日はガティネ商会の様子を見に行く予定だから急がないと行けないんだった!」
ガティネ商会と聞きマリーは顔をあげる。
「ガティネ商会に?ではまた何か新商品を出すのですか?」
「そう、新しいブレンドのフレーバーティーを出そうと思ってるだよね。春限定のやつ。」
ルネは幼い頃から商会に顔を出して新商品の開発に携わったりしている。
この国は元々お茶などは東の国からの輸入に頼っていて割りと高価だ。その上種類もあまり多くない。
そこでこの領地で作れるお茶を開発した。
東の国々はお茶の原産地として有名なだけあって品質としてはどうしても劣ってしまうが国内で生産しているため安く、平民でも無理なく購入できる。
そのうえこの世界にはフレーバーティーという物がないらしく、前世の知識で試しに作って売り出した所これが思わずヒットしてしまった。前世でお茶にハマっていた母に感謝である。
ちなみに姉の趣味だったハーブを使った保湿クリームも試しに販売したところこれも売れに売れた為カンテミール家は小説の設定に比べて資産がだいぶ多い。
実はこれも没落回避計画の一部でもある。
主人公を匿う際の資金は潤沢であるほうがいいし、領地が潤い、安定していれば伯爵家にも力がつくし、そうすれば周りも不用意にカンテミール家に手を出せないはずだ。…多分。
アレクシスの性格を考えるとちょっと自信がなくなるが、まあお金はあるにこしたことはないだろう。