5.俺、聖な少女と出会う
パーティーメンバーの面接を始め、本日二人目の面接希望者。
「えーっと、次の方は…… シェリアさん。まずは自己紹介から……」
「…………」
少し幼い体つき、言い換えれば幼女体型の彼女。調査票によればシェリアというらしい。
そして、幼女体型なシェリアは面接官の俺を前にして、船を漕いで居眠りをしていらっしゃる。余程の睡魔に取り憑かれていたのだろうか。
もっともチュートリアル説明時に、居眠りしていた俺が言える事では無いのかもしれない。だが、面接官を前にして居眠りできる精神の持ち様は真似できない。
調査票を見た限り、魔法職で後衛希望。
確かに彼女はローブを身に纏っている。ウィッチハットも中々にお茶目。であれば是非、どのような能力をお持ちなのか、お目に掛かりたいところ。
「あの…… シュリアさん? 魔法職ということで、よければ能力を見せて頂けませんか?」
「なんで?」
「なんでと言われても…… 採用の参考にしたい……から?」
「嫌。面倒。希望額で採用してくれるなら考えてあげる」
シュリアは腕組みしてそう言い放つと、再び居眠りを始めた。
可愛い娘に寛容な俺でも、彼女の態度には好感を持てない。
彼女の残念な点がもう一つ。態度もそうだが、なにより幼女体型で胸元が平らな事。俺の好物は巨乳娘であって、見た目で選ぶのであればこの娘に魅力を感じない。いいのさ、所詮ゲームのガチャでは能力よりも、見た目重視で獲物を狙いに行く俺だ。パーティーの娘達には花があった方がいいだろ?
「シュリアさん? 最後に一ついいですか? この希望報酬額、桁一つ間違えてたりしません?」
「間違えてないけど?」
「でも、さっき面接した人の10倍以上の額ですよこれ。他のパーティーでもこの額じゃ、誰も採ってくれないんじゃないかな?」
「文句あるの?」
「ありません……」
うん、ダメだこれは……
態度のキツイ彼女は解放して差し上げた。どこかのパーティーが、拾ってくれることをお祈りしならがね。
――ガタイの割に戦闘能力が無さそうな奴。態度がでかい割に、胸が小さい奴。もっと真面な娘は居ないものなのか……
早くも雲息が怪しくなってきた今回の採用面接。本日3人目のお出ましだ。
「失礼します…… 入っても良いですか?」
「どうぞ」
扉の外から声が聞こえた瞬間、俺は運命を感じた。この声の持ち主は絶対に可愛い!
そして、俺の期待を裏切らない容姿の娘が目の前に着席した。好みにドストライクな彼女を前に、テンションが上がり不自然な口調になってしまう。
「あ、あ、あ、あの、まずはお、お名前を」
「アリアと言います。よろしくお願いしますね」
「よよ、よろしくお願い、します!」
傍から見たら、どちらが面接を受けている立場なのか、良く分からないやり取りが繰り広げられる。目の前の彼女はアリアと名乗り、シスター服に身を包んでいる。そして、シスター服は胸元を魅力的に強調しており、俺の脳内速報でのサイズ判定はDといった所だろうか……
素晴らしい、容姿。
肝心な能力面は……
聞くまでも無く、彼女の職は聖職。調査票にもヒーリング(治癒能力)と記載されている。治癒能力を持った聖職者が引っ張りダコになるのは、ゲームでも良くあるパターン。どこのパーティーも彼女を狙いに来るだろう。もっとも幸いなことに、今回の採用面接は早い者勝ち。この娘を採用しない手は無い。
とは言いつつ、もう少しアリアについて理解を深めたいので、面接を続ける。
「アリアさんは普段何をしているんですか?」
「そうですね…… 聖職者としての務めは全般的に熟していますが…… 普段は修道院で寝泊まりさせて頂いています。そうそう、朝は修道院の子供達と祈りを捧げたりしていますね。それから、貧しい人たちに神からの預かり物を差し上げたりもします。あっ神の預かり物というのは、実際には私が焼いたパンの事なんですけど……」
アリアは目を輝かせながら、自らの務めを一から十まで説明する。迷いの無い顔で、紡がれる言葉には一切の偽りなど感じられない。偽りの自分を演じるどこかの世界の”就活”とは大違いだ。
アリアの話を一つ聞くたびに、彼女に対する好感が高まっていく。彼女の話からは一点の穢れも感じられない。素晴らしい……
穢れを知らぬ彼女こそまさしく聖と呼ぶにふさわしい存在であろう。