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10.俺、の戦いはこれからだ!

いわゆる異世界と呼ばれる場所に放り込まれた初日から、借金を作りに行こうとしている強者がいるらしい。はい、俺です。借金という言い方は夢が無い、ここは先行投資と称しておこう。


優秀なメンバーを集めるためには潤沢な予算が必要。優れた部下を揃えパーティーを強化すれば、より高い難易度のクエストに挑める。高い難易度のクエストを熟せば評価も上がり、予算も増える。借金もあっという間に返済。その後再びパーティー強化という好循環に持ち込もうという魂胆だ。我ながら俊才である。

おっと、小学生でもそんな異思いつくといったツッコミは不要だ。

もっとも先行投資してでもパーティー強化、これはインターン参加者の同士からの受け売りではある。アリアという聖者を採用した俺を散々虚仮にしてくれた同士。確か名前は……忘れた。


ともあれ、同士から紹介された金貸し屋へとやって来た俺。元居た世界の小綺麗で明るいローン屋とは大違い。店内は小汚く、眼つきの悪い野郎共が睨みを効かしてくる。

小心者の俺、縮こまりながらカウンターの呼び鈴を鳴らす。すると更に恐ろしい事に、ごっつい男が現れた。俺をもやしと例えるなら、その男は大根くらいの体格の良さ。以後、大根男と心の中で呼ぼう。借金を踏み倒した日には胴体を逆パカされるのは必至だ。おっと失礼、逆パカは死語であった。


「で、いくら必要なんだ、細いの?」

「えっと、まぁこれくらいですね」


細いの呼ばわりされた俺は、希望額含め必要事項を記入した書類を大根男に渡す。記入内容に目を通した大根男は腕を組み、威圧的に告げる。


「つい最近、別の世界からやって来たんだって?」

「えぇ、正確には今日やって来たんですけど」

「そうか……この世界で実績の少ない奴はウンと高い利子設定になる。まぁ、幸いお前さんは会社が身元を保証してくれてるから、そこまで高い利子にはならないけどな」


利子率優遇、これは思わぬ福利厚生なのか? もしかしたら、こちらの世界ではあの会社は有名どころだったりするのかも知れない……


借用書にサインを交わすと、直ぐに融資された現金を受け取った。

金貸し屋からの去り際、大根男に一言忠告される。


「万が一、踏み倒すようなことがあった日にはどうなるか……分かるよな?」

「――あっ、はい」


大根男含め、眼つきの悪い野郎共が指を鳴らしながら俺を凝視する。冗談抜きに、この世界に居られなくなるやつだこれ……


――――――――


事務所に戻ると、直ぐに面接のセッティングを始める。忙しく準備を進めている俺を眺める、同士の新井。俺を虚仮にしたうえ、俺の武勇伝をネタに他の奴と談笑している。陰キャの粘着質な性格を舐めるなよ同士! 元居た世界の女の様にネチネチといつまでも根に持ってやるからな。

そして将来、優秀なパーティーを率いて笑っているのは俺だ!


一生働かないのが夢とか言いつつも、気づいてみれば割と本気になっている俺。毎日薄暗い部屋で同じゲームに齧りつくのも悪くは無いが、時にはこんな刺激的な経験があっても良いのかもしれない。

組織に属して働くのは(しゃく)だが、少しくらい外の世界……いや異世界で本気を出してみるのも面白そうだ。


面接部屋の準備が整い、面接官として席に着く。さぁ今度はどんな娘が来るのかな。


「あの……失礼します」

「どうぞ」


ノックと同時に可愛らしい声が扉の向こうから聞こえ、扉が開かれる。

さぁ、俺の異世界インターンはまだまだ始まったばかりだ!

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